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『消滅のリスト』(五條瑛/小学館文庫)

*具体的内容、結末まで触れています。


『消滅のリスト』(五條瑛/小学館文庫)
 
ひっそりと、ある会議が開かれた。参加者は多いわけではない。だかそこで
世界の平和への道が定められる。
 
雑誌連載からいきなりの文庫みたい。かなり分厚い。読み応えたっぷりで満足。
基地のある街。兵隊が大好きな女。ささやかな情報のやりとり。それが大金に
変わる可能性、それを守ろうとするもの、奪い取ろうとするもの。
結局誰がどう得をするんだ? と、最後までハラハラして読んだ。面白い。

日本はスパイ天国だとか、今きな臭いのは東アジアだとか、どのくらい本当
なんだろう、いや小説だし、と思う。冷戦後、中国こそが巨大なもう一つの
勢力であるのは間違いないし、米軍を抱えて日本は何やってるんだろうなあ、
というのがこわいような平和ボケでいいような。よくはないのか。

一人うまいこと立ち回るバードはかなり魅力的。
帯津さん、最初は女性ってわかんなくてその辺のミスリードもちょっと
面白かった。五條さんの手法としては珍しい気がする。ジゼルというニューハーフ
スパイのキャラもなんか面白い。とんだドジっ子ちゃんだけど、180超えで
迫力の美女風で武術もそこそことか、絵になるなあ。

沖縄とか広島。港町の関根とか。虚構と実際と混ざっていて、現実との
バランスが不思議な感じがする。もちろんフィクション。小説の世界。
世界の平和のために、犠牲として差し出す、滅ぼされてもいい都市を予め
選定しておく、というアイデアは、合理的なようにも思わされるのがこわい。
どーなんだろうなあ。冷戦時代にはありえたのか? いや、ないかー。ないわー。
うーん。
でもそんな重大事が、ちっぽけな個人の歪んだ恨みでどうにかされてしまうかも、
というのは、なんかありそうでこわい。最後のネットストーカー的大地くんの
逆恨み、全く理不尽な妄想で、データが勝手にひっくり返されてしまうかも、
というこの後味の悪さ。
どんなに合理的に理性的に進めようとしたって、人間が関わる限り、不測の
事態は起こりうる。こわい。やだなあ。

あちこちに散らばってた謎や人物のつながりが見えてくる終盤のたたみかたは
相変わらずお見事。でも単純にすっきり解決!しないのもさすが。
エリーさんたちはなんとなくうまく納まった感じだけど、他はなんだか、
すっきりできてないよねえ。でもなにもかもすっきりしないんだよ、という
話で、ああ世界の平和って。と思う。
これは単発ものかなあ。今回大好きに惚れてしまうキャラはいなかったけど
やっぱりとっても面白かった。満足。

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