『追悼の達人』(嵐山光三郎/新潮文庫)
『追悼の達人』(嵐山光三郎/新潮文庫)
文人たちの死の後、どんな追悼がなされたか。
明治、正岡子規に始まって、大正、昭和は小林秀雄まで。
追悼の紹介、その文人本人と周りの人々のこと。一人あたり12ページ程度で
さらりと書いてあって、知ってる人のことも知らない人のことも、とても
面白かった。
嵐山光三郎って初めて読んだ。こんなにもいろんないろんないろんなこと
よく知ってるなあとびっくりする。薀蓄が嫌味にならずに、通り一遍のこと
より少し踏み込んでいるバランスが絶妙に思う。面白かった。
追悼だっつーのに批判したりもけっこうしてるのね。文人というのは
やっかいだなあ。
宮沢賢治は死後にこそ見出され広く愛されるようになった、とか。よい
追悼をしてくれる友人を持ちえるかどうかが人徳なんだろうか。
子規の追悼にずらーりと句が並んでたりするのは面白い。糸瓜忌、って、
季語になったりもするわけで、有名人の忌日の句はみんな追悼句、って
ことになるのかなあ。
短歌だと挽歌ね。挽歌はいっぱいあるけど、決まった忌日みたいなのは
ない、と、思う、けど、どうなんだ。
なんとなく、追悼ということがひしひしと身近に感じるようになってきた。
短歌やるようになったというのもあるし、自分も年をとったし。
人はいつか必ず死ぬ。
わかっていても、追悼する人にはあんまりなりたくない。でも、いつか
その日はくるんだよなあ。
しんみりしつつ。面白かった。
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