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映画「風立ちぬ」

*具体的内容に触れてます。


映画「風立ちぬ」

大正末から、昭和。戦争へと向かう日本。
堀越二郎は飛行機に憧れ、飛行機の設計者になろうと決意する少年だった。
憧れは、イタリアのカプローニ。彼に夢の中で出会い、美しい飛行機を作る夢を
共有する。
やがて成長し、軍用機の開発に従事する二郎。
日本が勝つとか負けるとか、それよりもなによりも、飛行機を作り続けること。

避暑地で、かつて関東大震災の時に助け合った美少女と再会した二郎。恋をして、
結婚を誓って。しかし彼女は結核をわずらっていた。短い結婚生活。
いつも、風が吹いていた。

ジブリ作品を映画館で見るのなんて何年ぶりだろう。ラピュタ以来かも。
でもこれ、映画館で4分の予告見たときに、なんか、やられてしまって、見なくては
と思いました。

全編夢のようでした
うつくしい夢。悪夢。なにもかもその両方が夢のようでした。
イメージフィルムみたいかなあ。
ずっと風がふいていた。ずっと夢みたいだった。悪夢でさえもうつくしいところだけ
描いていた。
関東大震災も、不況の日本も、勝ち目のない戦争につっこんでいく日本も、
軍とか特攻とか、ドイツの旅とか、美少女との恋とかままごとみたいな結婚の日々とか。
実在の人物、ゼロ戦開発した堀越二郎の半生30年をベースにしながらつくった物語。
プラス、堀辰雄の小説も。『風立ちぬ』は読んだことある、けど、覚えてないなあ。

大河ドラマで一年がかりで描いても描ききれないだろう物語の要素たっぷりながら、
それをこんなにもうつくしい夢と悪夢だけで描ききるなんて。

図面ひいて計算して、試作してテスト飛行で空中分解しちゃったりもして。
ものづくりなこともたっぷりじっくり描きながらも、風がふいて夢にすりかわる。
貧しい日本。弱い日本。
それでも飛行機をつくり戦争した日本。

飛行機を作りたい。
その少年の頃からの夢を、実現させた二郎。エンジニア仲間にも上司にも恵まれて、
ひたすら飛行機を作った二郎。
夢の中で何度も出会う、憧れの技師、カプローニ。うつくしい飛行機を作ろう!と
いう夢を何度も案内するカプローニ。
とてもきれいで、素敵で、かっこいい夢の中の世界なんだけれど、それやってるの、
あの大戦中なんだよねー。。。

ドイツの技術に追いつくぞ、とか。そのドイツ、ヒトラーのいるドイツなんだよね。

飛行機をつくることにひたむきな技術者。
彼と愛し合う儚い少女のような妻。
なにもかもなにもかも。全部夢のよう。
挫折も苦しみもあるんだけど、飛べなかった飛行機の空中分解の残骸もあるんだけど。
作り続けるんだよなあ。
飛行機の夢。夢の飛行機。
その風の中の夢は、なんという化け物かと思った。

映画は、見ている最中に私は泣いたりはしなかったんだけど、見終わってじわじわと、
あとからあとから苦しくなってくる。
大震災の場面。あの恐怖の一端を今の私は知っている。
戦争に、日本が負けることを知っている。
一機も帰ってこなかったよ、というゼロ戦。うつくしく空を飛ぶゼロ戦。
全部、失われた命の物語だ。
どれほどの死がそこにあったか知っている。
なのに、これはとてもうつくしい夢の映画だった。きれいだった。風がふいてた。

男の子の夢だ。飛行機がかっこいい。飛行機が空を飛ぶ。飛行機に乗る。飛行機を
つくる。
開発や、テストの飛行機の飛ぶ姿のうつくしさとはかなさ。空中分解する飛行機。
あんなもので空を飛ぼうとしていたのかと愕然とする。
日本は貧しく後進国。
それでも、飛行機はかっこよくて、飛行機は夢で、飛行機で飛ぶんだなー。

萬斎さまが出ているの知らなかったので、声を聞いてうれしかった。
役柄も似合ってるなあ。さすがの雰囲気。夢の中の憧れであり、夢の中の不気味さ
でもあり。
上司のエライ人な国村さんもかっこよかった。
二郎と学生時代からのずーっと仲良しな本庄が、西島さんで、兄つぁま!と思って
にまにましてしまった。かっこよかった~。似合ってた~。よき友、よき理解者、
ライバルであり協力しあう仲間。夢にいつも半分魂もっていかれてる二郎よりは
ずっとリアリストな本庄。それでも技術者仲間な感じが素敵~。かっこい~。

あ、あと効果音? HP見たら、人がやったらしい? なんか人の声みたいだなあ、
と思ったりもしてて、ほんとにそうなのか、と、びっくりした。微妙に怖い。
そういうのもちょっと悪夢っぽかったのかも。

庵野さんの主役二郎も、ま、棒読みだと思うけど、そういうもんじゃないかな、
って気もするし、私は別にいやではなかった。あのぼさーとした感じながら
奈緒子に「きれいだよ」とか「大好きだよ」とか「帰らないで」とか言うのが
むしろもえる。もえる。きゅん。

技術者理系眼鏡飛行機夢中青年で、かっこい~。に加えて、詩の朗読があったりで
文学青年風味もあるわけで。贅沢~。もえた。
技術者仲間でのわいわいした感じとかももえた。
いいなー。

なんかこう、すとんと余計な物語をそぎ落として悪夢と夢の風の映画に仕上げきった。
これはなんなんだろう凄いのかなんなのか、なんなのすごい。
見に行ってよかったです。

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Posted by: Derek | April 09, 2014 at 11:59 AM

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