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『檻の外』(木原音瀬/ホリーノベルズ 蒼竜社)

*具体的内容、結末まで触れています。


『檻の外』(木原音瀬/ホリーノベルズ 蒼竜社)

 檻の外 
 雨の日 
 なつやすみ
 
堂野崇文のところへ、喜多川がやってきた。
突然現れ、妻子がいるとわかって、黙って立ち去って、しばらくして、
近所に引越ししてきた。

『箱の中』の続き。
喜多川がいくら思っても、探し出しても側にいても、無理でしょう、
どうするのどう決着つけるんだろう? と不思議に思いながら楽しみに
読んだのです。が。
やはり木原さんは私の予想を超える酷さでまとめててびっくりした。
んー。
切ない二人の物語とかどころじゃないー。すごいひどいー。面白かった。

まあ、妻が浮気ね、それはいい。実は二人目は浮気相手の子ね。まあいい。
でも娘殺させるかねえ。すげーわ。
そしてあそこまで妻麻理子は身勝手になれるかねえ。優しい夫のことは
愛してる。でも平凡な毎日にちょっとした刺激が欲しくてパート先で浮気。
不倫関係二年。相手の妻が嫉妬に狂い、娘殺す。不倫相手の子を夫に
無理矢理認知させ、別れたくないと執着してみせる。ちょっと不倫した
くらいでなんで自分ばかりこんな目にあうの、と夫にブチ切れ。ええー。
どん引きな妻の姿、それを淡々と書いてる。何より、娘殺されてるのに
まだ我が身可愛さのことしかない、って。
身勝手な女、というにしても酷い。
まー実際そういう女はいるのかもだけどー。
でもそれなら、あとあとのほうで、息子が実はいい息子に、とか、田口
と結局は結婚して家庭をつくるとか、そういうこと書かないで欲しい。
気持ち悪すぎて、いくらほのぼのと「なつやすみ」を書かれても、私は
全く乗り切れなくてどん引き気分のままでした。
これ、感動するか??? 別に感動しないよね。しなくていいし。
喜多川と堂野も、微妙にいい人でも切ない恋物語でもないよなあ。
目の前の相手にすがりつくって感じで。
こういう動物的な感じの愛っていうのが、でも、きれいごとじゃない感じ
とも思えて、面白かった。人間て、こんなにもどうしようもなくても、
生きるんだなーと思う。
いいですね。
こういう酷い身勝手な女にも、淡々と等間隔に突き放しているような
書きぶりがさすが。登場人物の誰のことも好きになれない感じが凄いわ。

最後には喜多川の死までいく時間ををさらさらと書いていて、
喜多川のことだけが切なかった。でも確かに、堂野より先に死んだという
のはよかったねえと思った。
彼らが住んでいたのは鎌倉なんですかね。いいなあ。

さらに番外編小冊子があったらしい。妻麻理子も多少は救いがあるように
描かれているんだろうか?いやーどんなことが描かれていようとも最悪な
ことには変わりないしー。まあそんなこんなも別にいいかな、と。
誰のことも好きじゃないし誰のことも魅力がない。こんなにも雨の中の
小説なのにこんなにもドライ。そしてどんな人間でも、それぞれの幸せが
あるんだねと思う。凄いです。

で、これ実は文庫化されて出てるようで。でもやっぱり、箱の中、檻の外
脆弱な詐欺師だっけ、その辺までで、このノベルスの「雨の日」「なつやすみ」
は入ってないらしいのね。
何故そういうことをするのかわからない。。。むしろその番外編小冊子まで
全部収録で完全版で文庫化っていうのならわかるんだけど。講談社だっけ。
一般書で出すから、二人末永くいつまでも暮らした、というような幸せな
結末のほうはいらないのかなあ?
「美しいこと」も、同じく文庫化では、あとのほうのらぶらぶなの入れてない
みたいで。なんでだ。
まあ単純にページ数の問題ってことなだけかもしれないけどさー。
「檻の外」までだったら、まあ一応一緒に暮らすようにはなった、けど、
二人で末永くってのもまあ予想させるような終わりだけど、でも、その後を
こんなにも書いているのにそれはさくっと除外って一体なんなんだ。
著者もそれでいいってことで文庫化してるんだろうけど。
そのへんの感覚が私にはわからない。著者的には一応そこで終わった、って
ことで、書き下ろし短編のほうは別になくてもいいの? そもそも雑誌掲載
からノベルズのときに書き下ろししてるみたいで、そっちのがページ数合わせ
だったのかなあ? それでも書いたお話だし書いた二人のその後とかだし、
そのことに愛着はないのか? なんか大人の事情? 全然知らないけど~。
う~ん~~。
不思議です。。。

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