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『迷子のカピバラ』(秋月祐一/風媒社)

『迷子のカピバラ』(秋月祐一/風媒社)

  地下鉄で迷子になったカピバラにフルーツ牛乳おごつてやらう
 
これが始まりの一首。

私、ハダカデバネズミ、上野動物園に見に行ったことあります。
すてきですよねハダカデバネズミ。

100首みたいです。歌集としてはわりと少なめの歌数でしょうか。
歌集として、というよりまず、すごく可愛い本だなあと思いました。
青いベースの絵に、白地のシールはったみたいなタイトルスペース。
タイトルと著者は黒文字でさりげなくきちんと。そういう箱の中に、本。
中の本はグレーの厚紙な表紙。きれいな青の箔押しでタイトル。著者。
背表紙はなくて、本を閉じている青い糸が見えているの。
長方形をびろーんと長く開くページ。遊び紙のいろもきれいな青。
浅黄色? ページの紙の手触りもいい。写真も著者。
空や、町や、生き物の、独特な色合いの写真。トイカメラとか、
いろいろ使ってるのかなあ。
 
短歌はねえ、甘い。

生き物の歌がいくつかあって、でも猫とか犬じゃなくて、テグーとか
インコとか、グリーンイグアナとかカンガルーとか、ハリネズミとか
スッポンモドキとか、キキチとかキキチって何?とか。

珍獣使いの秋月さんだそうです。ちょっと変わった生き物の歌を
よくよんでいたんだって。タイトルもカピバラです。迷子にならないで
ねと思う。

甘い。
あのねえ、素敵な恋して素敵に暮らして素敵なひとのことを大好き
なんだね。
ああ。短歌は相聞だなあ。相聞ていいよなあ。と、もーー。きゅんって
何の音ですかーっ!とCMみたく叫びながら走り出したいいやそんな
全力じゃあないかなあ。
背中でくっついたりどうでもいい他愛ない話みたいな日常の体温がなんだか
大切だよね、という感じかなあ。

甘いというか、優しいんだ。
ちいさな生き物を両手でつつんでにこにこして一人でいて。でも二人で
そのちいさいのを大事にしようねみたいな。

ちょっと寂しいとかちょっと辛いとか。もう別にこどもじゃないほろりと
した感じがちゃんとあるなーと思った。

持っていて、読んでいて、眺めていて、大事にしたくなる本でした。

いくつか、私が好きだった歌。
 
  あまりにも脆弱なきみを守れずにぼくは葡萄でありつづけてる

  すこしづつたがひを奪いあふやうにこのたそがれを空から剥がす
 
  ながいながい橋の途中で「シリウスが好きだ」と言つてぼくをにらんだ
 
  開けてごらん影絵のやうな家々のどれかひとつはオルゴールだよ
 
  倒れない程度に無理をするこつをはやくおぼえてカンガルー、カンガルー
 

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