『つむじ風、ここにあります』(木下龍也/書肆侃侃房)
『つむじ風、ここにあります』(木下龍也/書肆侃侃房)
つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋がそっと教えてくれる
タイトルはこの歌からとったものですね。
電車の中でちょっと見てみようかな、と読み始めたらあっというまに
どんどん読んでしまった。付箋を持ってなくてよかった。好きな歌に
付箋つけようとしたらぴらぴらのぴらぴらぴらぴらで付箋だらけになる
ところだった。
と、一気読みしたあとうちでもう一度。少し冷静に。
ほんとうにどの歌も感心したりステキだったり切なかったりさりげなく
も上手いなあと思う。
あと作者が若くてハンサムな青年って知ってしまっているので、あー
若いな~~~~とも思う。若いのって生きるの苦しいから。万能感も
絶望感も突き刺さり方が年いってからとは全然違うよねー。初々しい。
(そして生きながらえてしまった自分を思う)
山口県の方だそうで、後ろの見返しの著者写真、帽子かぶっててモノクロ
でっていうだけで勝手ながら中原中也をイメージ。別に全然似てないけど。
山口は私が大学の時4年間くらしたところ。別に山口っぽさはないよなー
と思うけど、なんとなくこれまた勝手に親しみを覚える。
歌は別に日本どこでも若者みんなこうなんじゃないの、という感じかなあ。
イマドキ地域性なんてものはなかなかないか。
「対佐藤」の一連面白かった。鈴木じゃだめなの?
ほむほむっぽいなあというか、あの辺な感じかなあというのを思ったのが
いくつもあったけれども、でもこういうものかなあとも思う。うーん。
優しかったり苛立ちがあったり観念的な死を思っていたり。とてもわかり
やすいけれども、とても非凡でひきつける力がある。分かりやすいのに
鮮烈ってやっぱり凄い才能だなあと思う。かっこいいです。たぶん今なら
では、という歌ばかりな感じがする。「2011年から作歌をはじめ」
だそうです。この早い時期に歌集出すという、そういう価値がある一冊
だなあと思いました。
いくつか、好きな歌。
液晶に指すべらせてふるさとに雨を降らせる気象予報士
駅までの距離を歩数で数えたらやっぱり五百三歩目で犬
改札と老婆は凍りついたまま朝の流れをせき止めている
雑踏の中でゆっくりしゃがみこみほどけた蝶を生き返らせる
たくさんの孤独が海を眺めてた等間隔に並ぶ空き缶
バラバラになった男は昨日まで黄色い線の内側にいた
右利きに矯正されたその右で母の遺骨を拾う日が来る
空欄に入る言葉を考えよ やっぱり僕が考えるのか
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