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『特捜部Q-カルテ番号64-』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)

*具体的内容、結末まで触れています。


『特捜部Q-カルテ番号64-』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)

バクはカールのかつての同僚。バクの妹エスタは娼館をやっていた。男に
硫酸をかけられるという事件が起こり、バクはカールに一緒に片をつけに
いってくれと頼んできた。
それをきっかけに、ローセが見つけた過去の事件。自殺とみなされたリタ・
ニルスンの失踪事件。彼女が姿を消したのは1987年の9月。ローセと
アサドが調べだすと、同じ時期に不審な行方不明者がなお数人いることが
わかった。
2010年の今、クアト・ヴァズが設立させようとしている政党、<明確
なる一線>は勢いをつけつつあった。次の選挙では議席をとるかもしれない。
その主張には人種差別的な面があるが、クアトたちはたくみに言い逃れて
いる。だが、クアトたちが長年密かに続けてきた活動は、彼らが一方的に
有害と判断したものを闇に葬ることだった。
 
今回も、過去の事件が徐々に現在に繋がるのが見えてきて、そして今、
ああっ危ないっ!というハラハラドキドキにせまってくるのがたまらなく
面白かった。
過去の事件が物凄く重苦しくて辛くて、読みながらじわじわと落ち込んだ。
優生学みたいなのが支配的思想であったこと、が、あるんだろうか。ある
んだよね。勝手な中絶。勝手な不妊手術。ニーデは幼い頃きちんとした
教育を受けられなかったがゆえに、知的障害とみなされ、男たちの欲望に
弄ばれ、そのことを自分で判断する機会もろくになく、施設送りになり。
救いは、ハンストホルムたちに出会い、教育を受けてまともな仕事へ、
結婚への未来が開かれたこと。
それも、クアドの中傷によって失いかけ、死にかけ。復讐。
ニーデの人生が過酷すぎて本当に辛い。もちろんこれはフィクションで
ニーデは登場人物。でも、女子収容所があったという事実はあるそうだ。
この小説はフィクションだけど。でも、辛かった。

人権侵害に過剰に反応するアサド。ローセの分身ユアサは、実際いる
ローセの姉妹の名前だった、とか、アサドの背景にはなんかすっごい重大事
がありそう、とか、ちらっとはわかるんだけど、でもやっぱりわかんない。
カールが相棒を失った事件のことも、いくつか捜査は進んでいるようだけど、
でもまだ全然わからない。カールが陥れられそうになるとか、なんなんだ、
というのはまーだまだひっぱられるんだねー。あ、カールは離婚は今回で
成立したようで、それはよかったね。

ハーディに優秀な理学療法士?かな? ミカというなんかすっごい美青年
っぽい人がついてくれて、ちょっと希望が見えるのは嬉しかった。ミカが
今後も出てくるのかな~もっと見たいな~。
レギュラー的な登場人物はみんな魅力的で、変化があったりなかったりの
感じも面白くて、シリーズでひっぱられるのも楽しみで読めて面白い。
事件の重さがすごいから、ちょっとした遊びのバランスがありがたいと思う。

ニーデの復讐。それが完成されなかったこと。ギデが入れ替わっていたこと。
そのギデもまた殺され。クアド・ヴァズがもうほんと最低最悪酷くて憎くて、
でも死んで。カールが見つけられるまでの二日間とかどれほどだったのか、
瀕死のアサドの回復を見るまでとか、もー、ほんっと最後の最後の20ページ
くらいかな、もう~ほんっとに息がとまる思いで読んだ。
アサドがまた歩けるようになっててよかった。ニーデのお墓に花を飾る人が
いてよかった。一度でも、彼女が「わたしはこれでいい!」と自分を肯定
することができたことがあってよかった。なんにもよくない。けど、どうか
安らかに。


訳者あとがきによると、5作目も出ているみたいで、早く読めるといいな。
また1作目『檻の中の女』が映画化だそうで、それ、どんなのか見たいなあ。
デンマークのって、日本で公開されるのかどうか微妙な気がするけど。
シリーズは10作の予定らしい。順調に書かれて、順調に翻訳されて、ずっと
読めることを願ってます。

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