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『特捜部Q-カルテ番号64-』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)

*具体的内容、結末まで触れています。


『特捜部Q-カルテ番号64-』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)

バクはカールのかつての同僚。バクの妹エスタは娼館をやっていた。男に
硫酸をかけられるという事件が起こり、バクはカールに一緒に片をつけに
いってくれと頼んできた。
それをきっかけに、ローセが見つけた過去の事件。自殺とみなされたリタ・
ニルスンの失踪事件。彼女が姿を消したのは1987年の9月。ローセと
アサドが調べだすと、同じ時期に不審な行方不明者がなお数人いることが
わかった。
2010年の今、クアト・ヴァズが設立させようとしている政党、<明確
なる一線>は勢いをつけつつあった。次の選挙では議席をとるかもしれない。
その主張には人種差別的な面があるが、クアトたちはたくみに言い逃れて
いる。だが、クアトたちが長年密かに続けてきた活動は、彼らが一方的に
有害と判断したものを闇に葬ることだった。
 
今回も、過去の事件が徐々に現在に繋がるのが見えてきて、そして今、
ああっ危ないっ!というハラハラドキドキにせまってくるのがたまらなく
面白かった。
過去の事件が物凄く重苦しくて辛くて、読みながらじわじわと落ち込んだ。
優生学みたいなのが支配的思想であったこと、が、あるんだろうか。ある
んだよね。勝手な中絶。勝手な不妊手術。ニーデは幼い頃きちんとした
教育を受けられなかったがゆえに、知的障害とみなされ、男たちの欲望に
弄ばれ、そのことを自分で判断する機会もろくになく、施設送りになり。
救いは、ハンストホルムたちに出会い、教育を受けてまともな仕事へ、
結婚への未来が開かれたこと。
それも、クアドの中傷によって失いかけ、死にかけ。復讐。
ニーデの人生が過酷すぎて本当に辛い。もちろんこれはフィクションで
ニーデは登場人物。でも、女子収容所があったという事実はあるそうだ。
この小説はフィクションだけど。でも、辛かった。

人権侵害に過剰に反応するアサド。ローセの分身ユアサは、実際いる
ローセの姉妹の名前だった、とか、アサドの背景にはなんかすっごい重大事
がありそう、とか、ちらっとはわかるんだけど、でもやっぱりわかんない。
カールが相棒を失った事件のことも、いくつか捜査は進んでいるようだけど、
でもまだ全然わからない。カールが陥れられそうになるとか、なんなんだ、
というのはまーだまだひっぱられるんだねー。あ、カールは離婚は今回で
成立したようで、それはよかったね。

ハーディに優秀な理学療法士?かな? ミカというなんかすっごい美青年
っぽい人がついてくれて、ちょっと希望が見えるのは嬉しかった。ミカが
今後も出てくるのかな~もっと見たいな~。
レギュラー的な登場人物はみんな魅力的で、変化があったりなかったりの
感じも面白くて、シリーズでひっぱられるのも楽しみで読めて面白い。
事件の重さがすごいから、ちょっとした遊びのバランスがありがたいと思う。

ニーデの復讐。それが完成されなかったこと。ギデが入れ替わっていたこと。
そのギデもまた殺され。クアド・ヴァズがもうほんと最低最悪酷くて憎くて、
でも死んで。カールが見つけられるまでの二日間とかどれほどだったのか、
瀕死のアサドの回復を見るまでとか、もー、ほんっと最後の最後の20ページ
くらいかな、もう~ほんっとに息がとまる思いで読んだ。
アサドがまた歩けるようになっててよかった。ニーデのお墓に花を飾る人が
いてよかった。一度でも、彼女が「わたしはこれでいい!」と自分を肯定
することができたことがあってよかった。なんにもよくない。けど、どうか
安らかに。


訳者あとがきによると、5作目も出ているみたいで、早く読めるといいな。
また1作目『檻の中の女』が映画化だそうで、それ、どんなのか見たいなあ。
デンマークのって、日本で公開されるのかどうか微妙な気がするけど。
シリーズは10作の予定らしい。順調に書かれて、順調に翻訳されて、ずっと
読めることを願ってます。

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『檻の外』(木原音瀬/ホリーノベルズ 蒼竜社)

*具体的内容、結末まで触れています。


『檻の外』(木原音瀬/ホリーノベルズ 蒼竜社)

 檻の外 
 雨の日 
 なつやすみ
 
堂野崇文のところへ、喜多川がやってきた。
突然現れ、妻子がいるとわかって、黙って立ち去って、しばらくして、
近所に引越ししてきた。

『箱の中』の続き。
喜多川がいくら思っても、探し出しても側にいても、無理でしょう、
どうするのどう決着つけるんだろう? と不思議に思いながら楽しみに
読んだのです。が。
やはり木原さんは私の予想を超える酷さでまとめててびっくりした。
んー。
切ない二人の物語とかどころじゃないー。すごいひどいー。面白かった。

まあ、妻が浮気ね、それはいい。実は二人目は浮気相手の子ね。まあいい。
でも娘殺させるかねえ。すげーわ。
そしてあそこまで妻麻理子は身勝手になれるかねえ。優しい夫のことは
愛してる。でも平凡な毎日にちょっとした刺激が欲しくてパート先で浮気。
不倫関係二年。相手の妻が嫉妬に狂い、娘殺す。不倫相手の子を夫に
無理矢理認知させ、別れたくないと執着してみせる。ちょっと不倫した
くらいでなんで自分ばかりこんな目にあうの、と夫にブチ切れ。ええー。
どん引きな妻の姿、それを淡々と書いてる。何より、娘殺されてるのに
まだ我が身可愛さのことしかない、って。
身勝手な女、というにしても酷い。
まー実際そういう女はいるのかもだけどー。
でもそれなら、あとあとのほうで、息子が実はいい息子に、とか、田口
と結局は結婚して家庭をつくるとか、そういうこと書かないで欲しい。
気持ち悪すぎて、いくらほのぼのと「なつやすみ」を書かれても、私は
全く乗り切れなくてどん引き気分のままでした。
これ、感動するか??? 別に感動しないよね。しなくていいし。
喜多川と堂野も、微妙にいい人でも切ない恋物語でもないよなあ。
目の前の相手にすがりつくって感じで。
こういう動物的な感じの愛っていうのが、でも、きれいごとじゃない感じ
とも思えて、面白かった。人間て、こんなにもどうしようもなくても、
生きるんだなーと思う。
いいですね。
こういう酷い身勝手な女にも、淡々と等間隔に突き放しているような
書きぶりがさすが。登場人物の誰のことも好きになれない感じが凄いわ。

最後には喜多川の死までいく時間ををさらさらと書いていて、
喜多川のことだけが切なかった。でも確かに、堂野より先に死んだという
のはよかったねえと思った。
彼らが住んでいたのは鎌倉なんですかね。いいなあ。

さらに番外編小冊子があったらしい。妻麻理子も多少は救いがあるように
描かれているんだろうか?いやーどんなことが描かれていようとも最悪な
ことには変わりないしー。まあそんなこんなも別にいいかな、と。
誰のことも好きじゃないし誰のことも魅力がない。こんなにも雨の中の
小説なのにこんなにもドライ。そしてどんな人間でも、それぞれの幸せが
あるんだねと思う。凄いです。

で、これ実は文庫化されて出てるようで。でもやっぱり、箱の中、檻の外
脆弱な詐欺師だっけ、その辺までで、このノベルスの「雨の日」「なつやすみ」
は入ってないらしいのね。
何故そういうことをするのかわからない。。。むしろその番外編小冊子まで
全部収録で完全版で文庫化っていうのならわかるんだけど。講談社だっけ。
一般書で出すから、二人末永くいつまでも暮らした、というような幸せな
結末のほうはいらないのかなあ?
「美しいこと」も、同じく文庫化では、あとのほうのらぶらぶなの入れてない
みたいで。なんでだ。
まあ単純にページ数の問題ってことなだけかもしれないけどさー。
「檻の外」までだったら、まあ一応一緒に暮らすようにはなった、けど、
二人で末永くってのもまあ予想させるような終わりだけど、でも、その後を
こんなにも書いているのにそれはさくっと除外って一体なんなんだ。
著者もそれでいいってことで文庫化してるんだろうけど。
そのへんの感覚が私にはわからない。著者的には一応そこで終わった、って
ことで、書き下ろし短編のほうは別になくてもいいの? そもそも雑誌掲載
からノベルズのときに書き下ろししてるみたいで、そっちのがページ数合わせ
だったのかなあ? それでも書いたお話だし書いた二人のその後とかだし、
そのことに愛着はないのか? なんか大人の事情? 全然知らないけど~。
う~ん~~。
不思議です。。。

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『麒麟騎手 寺山修司論』(塚本邦雄/沖積舎)

『麒麟騎手 寺山修司論』(塚本邦雄/沖積舎)

塚本による寺山修司論。6つの論があって、それから、塚本から寺山への手紙集。
「雁の涙」と章題がついたそれは、1954年、寺山18歳(塚本34歳か)
から、1972年寺山36歳(塚本52歳)というものが収められている。
塚本からの手紙をとっておいたんだねえ。

この本が最初に出たのは1974年らしい。寺山の死は1983年だそうなので
まだ二人とも生きてる時に、書簡公開するものなのかあ、と、ちょっと不思議な
気がする。で、私が買ったこれは2003年のもの。改装版だそうだけれども、
どう違うのかは不明。年譜のところかなあ。
そして塚本の年譜は2000年までで、病気入院あたり。塚本の死は2005年。
私は短歌に興味持ってはいたものの、まだ全然何も知らなくて、塚本邦雄の名を
まともに知ったのはすでに死後だったなあ。

寺山修司についても、大学の演劇部に入った頃、名前を認識した程度で何も
知らない。正直歌集もまともに読んでない。なんとなく、演劇の人、という
印象。そしてもっさりしたおじさん、という印象。でも、この前世田谷文学館
で、寺山修司展を見て、手紙や葉書を見て、きゅんきゅんきてようやくファン
になってしまった。何を今更なんだけどー。
そしてこの本で、塚本の熱烈な手紙の数々を読んで、またしてもきゅんきゅん
してしまって身悶え。凄い。完全にラブレターでしょ。愛されまくりの寺山。
特に二十歳前後の寺山への愛は凄い。三日と開けずに手紙出すとか。もー。
岡井隆の名前も頻繁に出てくる。前衛短歌運動みたいなことをやってた頃なのか。
手紙のやりとりだよねー。塚本も寺山も病床にあって、という時期のようで、
体を大事にね、と労わり励ましてる塚本が健気で可愛い。寺山のお手紙も一緒に
あればいいのにー。ないのかなあ。なんとなく妄想で補ってしまうけれど、
愛される天才病弱美少年とその才能と美貌に夢中の大人、って感じになって
私の脳内が妄想で暴走で大変なことに。風木みたいなことになる(笑)竹宮恵子
の絵でこのへん漫画家してください(笑)

寺山が美少年だったのか、は、私にはわからないのだけれども。
写真の印象は中年のおじさんのあたりしかわからなくて、若き日に出会った
彼らには美少年だったのかなあ。

手紙のなかに出てくる「バロン」というのは中井英夫なのかな。
「伯爵」といってるのも同じく?それとも別にまたいるのか?私はあまり
詳しくないので微妙にもどかしい思いもしつつ。でも本当に面白い。短歌界
というか、塚本寺山岡井でなんかこう世界を動かすみたいなところがあった
んだよねーというのが物凄い。かっこいい。痺れる。
岡井失踪で寂しい、みたいなことを書いてたりして、ああもう。きゅんきゅん。
三人の中では塚本が一番年上で、8歳違いで岡井隆、15歳違いで寺山修司、
ということですね。
そういう年齢の幅というか違いがよかったかな、みたいなことを岡井先生が
お話されてたことがあるような気がする。
なーんかいいな~。
塚本が熱心に愛する人だったのね、と思う。
寺山はもうほんとマルチに多才で全部で天才で凄くて、短歌とは離れて
我が道を突き進む感じで。岡井先生はじっくりがっつりという感じかなあ。
塚本については私はとにかく怖い印象なんだけど(実際のところ何一つ知らない
んだけど、何一つ知らないのに怖いと思わせる怖さ)こういう手紙見ると
気に入った相手のことはとことん愛するのかなあと思う。いいな~。

ものすごく面白かった。
もっとちゃんといろいろ知りたいと思った。せっかく短歌が近いところに
いるんだから、ちゃんと勉強しろよ自分と思った。
(こんな不純な動機で知りたいとかっていうのはダメだろうか。うーん。
こんな不純なワタシなので人に聞くのがなんかうしろめたくて^^;)
読んでみてよかったー。

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映画「華麗なるギャッツビー」

*具体的内容、結末まで触れています。


映画「華麗なるギャッツビー」

1920年代、アメリカ。ウォール街は好景気に沸きたち、貧しいものは貧しく、
富めるものは際限なく金を得て、ばらまいていた。
一時作家をめざしたものの、今は証券マンとなっているニック。豪華な屋敷の
隣の小さな家を借りた。
いとこのデイジーは、億万長者と結婚しているものの、夫の女癖の悪さには
悩まされていた。
ニックの隣人、城といったほうがふさわしい豪邸で夜毎繰り広げられる豪華な
パーティ。住人はギャッツビー。怪しい噂ばかりで誰もその招待を知らない。
ある日、ニックにパーティの招待状が届く。ギャッツビーからの招待状。
それを受け取ったのはニックただ一人。他の客は勝手に集まってバカ騒ぎを
繰り広げていたのだった。初めて対面したギャッツビーは、ニックに特別な
親しみを見せるのだった。
 
2Dで見てきた。3Dで見る意味あるのかなあ?と疑問で。雪や活字や
豪華な城やパーティのシーンは3Dで奥行き入り込んでいくといいんだろう
なと思ったけど、個人的には2Dで十分満足。(できるだけ3Dで映画見たく
はないんだよー。眼鏡に眼鏡とか頭痛くなるし)

タイトルは前々から知っているものの、なんか今更~な気分で読んだことが
ない名作という感じだった。派手な退廃って感じかな、程度しか知らず、
初めて、こういうお話だったのかと知りびっくり。
純情恋物語ですか。

ディカプリオのギャッツビーにニックが初めて出会うシーン。ゴージャスな
パーティの最中、派手に花火が打ちあがり、ラプソディ・イン・ブルーの
音楽の盛り上がりとともにディカプリオが振り返って、アイムギャッツビー、
と笑顔で名乗られると。ああ。ニックの胸が打ちぬかれた音が聞こえた気がする!
私もときめいた! ま、ディカプリオもおっさんだよなああ、と思ったものの、
あれは打ち抜かれる!きゅん~。

んで、何故そんなにも大金持ちなのか謎のギャッツビーですが、実は、
ずっとニックのいとこのデイジーに恋していて、この豪華な城もバカ騒ぎの
パーティも、何もかも今は人妻となってしまったデイジーのため!戦争で
別れてしまった彼女を今も愛していて、彼女を取り戻すため、わざわざ彼女の
屋敷の対岸の城を買い、夜毎彼女のうちの桟橋の緑の灯りを眺めていたのだ。
な、なんだってー!
ニックにお茶会のセッティングを頼み、好意だよ、といわれて動揺し、そして
ニックのしょぼいおうちの周りを急遽整えさせ花を山盛り運び込み、お菓子も
持ち込み、と、めいっぱい準備してお茶会しよーってのに、デイジーが
やってきたとたん、豪雨の表に逃げ出し、びしょ濡れになってもどって、
緊張のあまり口もきけない。とかっ。中学生でももっとましだぜ!!!と
いうような純情ぶりを見せるギャッツビー!!可愛い!!!笑った。

ギャッツビーの運命の女、デイジーが、どうにもこうにも。とっても可愛い
けれど、頭からっぽ、というか、からっぽでいようという良家の子女でねー。
今の夫、億万長者のトムとの間に女の子ができてるんだけど、女の子で
ほっとしたわ。バカに育て、って。というような台詞があって。
あー。良家の娘のよさってそれなの???と、ギャッツビーの執着がちょっと
よくわからないんだけど、でも、そういうからっぽな美人にメロメロになる
っていうのも、なーんか、その、貧しさからの成り上がりなギャッツビーには
新鮮すぎたのかなあ、と、不思議なような、納得してしまうような。
ギャッツビーといっしょにいたいわ、とか、逃げ出したい、とか、さんざん
いちゃついておきながら、やっぱりトムとは別れられない。
まあ、5年の時間をなかったことにはできないってのはいいとしても、
でも、ほんと、デイジーあんたはいったい何なんだ~!という気がするねえ。
でもそういう女がいいんだろうねえ。

トムと話をつけようとして、お前はそもそも育ちが違う、てなことを
あげつらわれて、逆上して殴りかかりそうになるギャッツビー。迫力あった。
そこで殴らず止まったことも凄かった。でもそれで怯えて心が離れてしまう
デイジーとかってもー。デイジー。デイジー。所詮お金持ちに庇護される
ことでしか生きられないお嬢様のままのデイジー。なんか、わかるけど、
ギャッツビー可哀相~~~。
適当にギャッツビーに濡れ衣きせるトム酷い~~。

結局、ギャッツビーの友達はニックだけ、ね。
その後の大恐慌の前に誤解濡れ衣とはいえ殺されてしまったのはギャッツビー
には幸せだったのかも。希望もった瞬間の死だし。でもギャッツビーの才覚
があれば、大恐慌もなんとか乗り越えたりできたのかなあ。
やるせない。
誰もこないお葬式。階段で一人で泣いて眠るニック。取り残されたニックが切ない。
ニックはギャッツビーを愛してただろー。ギャッツビーも、誰かに語りたい、と
いう願いを叶えてくれたニックを大事に思っただろう。初めて、友達という存在
を得ることに不慣れな感じのギャッツビー可愛かった。

ディカプリオは迫力ありつつもなんか可愛い、なんか甘い、なんか純情な
おっさんでいいなあと思った。
ニックのトビー・マグワイアは、スパイダーマンの頃より今の感じのが
私はだいぶ好きだった。ちょっとげっそりしてる感じがいい。
デイジーのキャリー・マリガンはきれいで、愛されるだけの女、というの納得
だった。
衣装。ドレスやジュエリー、ほんっときれいでステキで華麗でうっとり~。
ティファニーはじめ、いろんなハイブランドが衣装提供してるらしい。
パーティシーンではこれでもかと華美に装った人々がわさわさしててクレイジー。
素晴しい。
バカバカしい祝祭感と、パーティのあとの虚無と、スクリーンいっぱいの絢爛を
楽しみました。

本も読んでみようかなあ。

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『月に笑う』上下(木原音瀬/リブレ出版 ビーボーイノベルズ)

*具体的内容、結末まで触れています。

『月に笑う』上下(木原音瀬/リブレ出版 ビーボーイノベルズ)
 
加納路彦は中学二年。小柄でひ弱。いじめにあいつつもなんとか
やりすごそうとしていた。ある日、公園で殴られ、ズボンを捨てられて
ていたところを、若いチンピラヤクザに助けられる。
山田信二というヤクザに喧嘩で殴り返すことを教わり、なんとなく
時々一緒に遊び、そして塾をサボってでも一緒にいることが増えた。

と、そんなこんなで、1、2、3と上下巻。1が雑誌掲載だったみたい。
2003年。そして書き下ろしでノベルズ、2009年。そ、そんなに
間があいてからノベルズ化で、書き下ろしのほうが断然多くて、
なんか凄い。
1の時点では、中学生の路彦と下っ端チンピラヤクザの信二。
こらこら信二くん、中学生にいたずらするんじゃない、って感じ
だったのだけれども、2、3と時間は進み、路彦が高校生になり、
大学生になり、最後には社会人になってた。
そして、1では路彦視点で、子どもで、なんだかわからずにわーわー
ってなっていたのが、2、3は信二視点で。チンピラヤクザだったのが
組の解散、東京に出てインテリヤクザの下について、って立場も
変わっていって、優等生ないい子の路彦がいつのまにかたくましく成長
していき、ついには受け攻めの立場も交代ーと、リバーシブルなのって
BL的には珍しいんだっけ。どっちもおいしい感じでよかった。
 
1の頃に、路彦が受けたことを、のちに全部信二に返していってる
構造が面白いかも。信二くんは大学生路彦にもう子ども扱いで、もう
何も考えなくていいよ、僕のものにしてあげる、って、せっくす三昧。
ちょっとあの、「愛のコリーダ」だったっけ。阿部定モチーフのあの感じ
を思いながら読んだ。
逃げなさいよー。んー逃げても未来はないからあれしか仕方ないと思うけど。
黒い花嫁の着物着せてあんあんいってやりまくりでそのずぶずぶな感じは
すごいいいと思ったけどー。
お互いがしたことされたこと全部お互いにしてされて、イーブンになって
やっと、結ばれたのかなあ。いや、路彦のほうがいっぱいしてあげてるね。
好きになっちゃったから仕方ない。

木原さんのお話って、やっぱり動物的だなあと思う。初めての愛を盲目に
愛しつづけてしまう感じがとても純粋であり、でもそれ、いいの?とも
思ってしまって、心が痛い。
一方がかなりまっとうというか、賢いというか、強くあるのに、もう一方
は、どうにもバカで、そのバカさが無垢な天使的な感じで、動物的で、
なーんか、その対比も、いいのかそれ? という気がしてしまう。
路彦と信二も、最初の上下関係がきれいに逆転してイーブンになった、かと、
ちょっと思うんだけどでも、うーん。圧倒的に路彦がまっとうなんだけど
でもそれが愛に関しては狂っててて大丈夫かよと思う。
まあこの結末は穏やかに結ばれていく感じがしてよかったねと思いました。
木原さんの書くお話って静かで優しくて愛いっぱいになるのに、すごく
ナチュラルに酷い。
まっとうさと狂ってる感じのあやうさにびっくりする。面白いなあ。

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映画「オブリビオン」

*ネタバレ、結末まで触れています。

映画「オブリビオン」

2077年。人類は、スカヴというエイリアンとの戦いに勝利したものの、
核によって地球を汚染してしまった。
人の住めなくなった地球。人類は土星の衛星タイタンへ移住してゆくが、
海水を利用する施設を残した地球を管理メンテナンスする人間が残された。
地上のドローンのメンテナンス要員、ジャック・ハーパーと、ペアのヴィカ。
地上にはまだスカヴの残党がおり、ジャックはその戦闘にも備える。
ある日、落下してきたロケット。NASAのロケットだった。救出できた
宇宙飛行士は、ジャックが何度も見る夢の中で出会う女性と同じ姿だった。

昨日見に行ってきました。
トム・クルーズ主演。スーパーかっこいいモテ男トム・クルーズを堪能!
かっこいいなあ。若返ってる?と思っちゃうほど。かっこいいトム全開!
登場人物はジャックと、その妻?ペアのヴィクトリア(ヴィカ)。そして
落ちてきた宇宙飛行士、ジュリア。
スカヴというエイリアンの残党、みたいなのが、最初あれはプレデター?
みたいなマスクかぶってるんだけど、でもそれが実は人類だったー!
なんだってー!
そして実は人類はエイリアンに勝利なんかしてなかったー!ジャックは
なんとクローンだったー!ジャックは宇宙飛行士で、最初にエイリアンに
捕まった男だったのだー。(と、ヴィカとね。二人で捕まったってことね)
エイリアンはジャックのクローンをじゃんじゃん作って地球侵略を成し遂げ
たのだったー!なんだってー!
と、中盤からばんばん明らかになっていく勢いは面白かった。

最初の頃は、孤独なジャックが淡々とドローンのメンテナンスに励み、
記憶を消されているはずなのに、断片的にある思い出に耽ったりという
静かな映画。
風景の大部分はCGじゃなくて実際に撮影したものらしい。とても綺麗な
地球。遙かな景色。人間がいないほうが地球にはよいのではないか、と
いう感じ。
でも空には破壊された月。
その景色がすごくよかった。
宣伝にやってきていたトムが、映像美が素晴しい、と言ってたけど、
ほんとそうだった。
バブルシップだとか、ジャックとヴィカが暮らしているタワーの部屋、
未来のデザインがとってもクール。
んでも、2077年っていって今から60年後くらいでそんなにテクノロジー
進歩しないんじゃないの?と思ってたら、それ実はエイリアン側だったのね、
と納得。まあ、それは納得するにしても、なんかいろいろ納得できない
疑問はいっぱいある気がするけど。
実はクローン、とか、実は敵と思っていたのが人類、とか、小さな植物を
大事にしてみるとか、なんかいろいろ、他の作品連想ーみたいなのもあり。
あのー、サリー(のふりしてるエイリアン側の三角の拠点?)の中の人間?
あれ、マトリックス的な? 海水から核エネルギーってどういうこと?
ジュリアはなんで60年もたってから地球に落ちてきたの?
わからない。。
でもまあいいか、なーと。

ラスト、あの隠れ家にやってきたのは52号なジャック。でも、それって。
どーなの。クローンとしてのジャックを受け入れられるの?でもそもそも
49号なジャックだってクローンだったものね。オリジナルのジャックは
とっくに死んでいるんだよね。ジュリアが愛してるというのは誰。クローン
でもいいの?クローンて、何?クローンは記憶も共有するの?細胞レベルの
記憶?でも、ジュリアにプロポーズしたとか、そういうの細胞レベルの記憶?
うーーーん。
クローンとは、なんて、ものっすごい古典的な命題のような気がするけど。
クローンというかレプリカント的なもの? あと2週間でタイタンへいける
わ、なんていってたのは、実は耐用年数的に死ぬってことだったりして、
と思ってみたけど、でも52号いるしなあ。というか、地球上にたぶんその
50人なり100人なりのジャックがいるってことなんじゃないのかなあ?
同じだけ、ヴィカもいるんじゃないのかなあ?
それどうしたんだろう。どうなんだろう。うーん。クローンの記憶って。

アクションもそこそこあったし、かっこよかったけど、とてもレトロな
静かな映画だったなという印象。正直もっとつまらないかと思っていたので、
(ごめんねトム)これ古典的なだけに普遍的命題って気がして考えさせられた。
面白かった。

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『つむじ風、ここにあります』(木下龍也/書肆侃侃房)

『つむじ風、ここにあります』(木下龍也/書肆侃侃房)
 
  つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋がそっと教えてくれる
 
タイトルはこの歌からとったものですね。
電車の中でちょっと見てみようかな、と読み始めたらあっというまに
どんどん読んでしまった。付箋を持ってなくてよかった。好きな歌に
付箋つけようとしたらぴらぴらのぴらぴらぴらぴらで付箋だらけになる
ところだった。

と、一気読みしたあとうちでもう一度。少し冷静に。
ほんとうにどの歌も感心したりステキだったり切なかったりさりげなく
も上手いなあと思う。
あと作者が若くてハンサムな青年って知ってしまっているので、あー
若いな~~~~とも思う。若いのって生きるの苦しいから。万能感も
絶望感も突き刺さり方が年いってからとは全然違うよねー。初々しい。
(そして生きながらえてしまった自分を思う)

山口県の方だそうで、後ろの見返しの著者写真、帽子かぶっててモノクロ
でっていうだけで勝手ながら中原中也をイメージ。別に全然似てないけど。
山口は私が大学の時4年間くらしたところ。別に山口っぽさはないよなー
と思うけど、なんとなくこれまた勝手に親しみを覚える。
歌は別に日本どこでも若者みんなこうなんじゃないの、という感じかなあ。
イマドキ地域性なんてものはなかなかないか。

「対佐藤」の一連面白かった。鈴木じゃだめなの?

ほむほむっぽいなあというか、あの辺な感じかなあというのを思ったのが
いくつもあったけれども、でもこういうものかなあとも思う。うーん。
優しかったり苛立ちがあったり観念的な死を思っていたり。とてもわかり
やすいけれども、とても非凡でひきつける力がある。分かりやすいのに
鮮烈ってやっぱり凄い才能だなあと思う。かっこいいです。たぶん今なら
では、という歌ばかりな感じがする。「2011年から作歌をはじめ」
だそうです。この早い時期に歌集出すという、そういう価値がある一冊
だなあと思いました。

いくつか、好きな歌。
 
  液晶に指すべらせてふるさとに雨を降らせる気象予報士

  駅までの距離を歩数で数えたらやっぱり五百三歩目で犬
 
  改札と老婆は凍りついたまま朝の流れをせき止めている
 
  雑踏の中でゆっくりしゃがみこみほどけた蝶を生き返らせる
 
  たくさんの孤独が海を眺めてた等間隔に並ぶ空き缶
 
  バラバラになった男は昨日まで黄色い線の内側にいた

  右利きに矯正されたその右で母の遺骨を拾う日が来る

  空欄に入る言葉を考えよ やっぱり僕が考えるのか

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『映画比較劇場』(北野ルル/沖積舎)

『映画比較劇場』(北野ルル/沖積舎)
 
同人誌に連載なさっていたのを本にまとめたものだそうです。
二つの映画を取り上げて、比較してみて。コメントと短歌つきの
映画紹介、という形は面白いなあと思いました。
とりあげている映画も新しいもの古いものいろいろ。著者の好みや
社会を見る目、というのも見えてきます。
連載のうちに比較だけでなく、単体でとりあげる映画になったり。
平成6年から平成17年までという長期のものをまとめたのだなあと
納得。

私も映画が好きです。レンタルはしないので、基本的には映画館で
見るのみ。それとテレビ頼りだなあ。物凄く好きになると買う。
けど、買ってしまうと満足してあまり繰りかえしてみたりしてない。
映画館で集中してみる映画が好きです。あと音響ね。うちのテレビ、
そりゃブルーレイでクリアに細部まで見られるのはいいけど、やはり
音響がなあ。映画館で体感するようなわけにはいかない。

映画評はどれもクールで、たまにさりげなく皮肉めいているのが
面白かった。
バカな男とか耐え忍ぶ女とか旧弊な日本映画っぽいのはお好きでは
ないようで。まったく同感。

新旧「太陽がいっぱい」のところは特に惹かれた。
私、アラン・ドロンのやつも名作特集みたいな時に映画館で見た。
正直、若き日のアラン・ドロンを知らなかったので、スクリーンで
見たあの青い目には射抜かれました。なんてなんてなんてなんて
なんて素敵なんだ。これは。スター、というのを目の当たりにした
思いだったなあ。
「リプリー」は、殺されちゃうほうのジュード・ロウのが断然好きで。
トムの不安に焦点がいってもなんか。まあそうかなあ、という程度の
印象しか残ってない。私は太陽のほうが好きだったなあ。
と、そんな思いを共感しながら読みました。「リプリー」のほうの
リアリティーを書かれていて納得。でも太陽のほうがいいよね、と、
なんか語り合いにいきたくなる気がしました。

映画と一緒に紹介するべきかもだけど、んーと。でもまあ、いくつか、
好きだった歌。素敵です。
 
  二百年生きていまだも青年の香を放ちつつこころ老いにけり
 
  血を包む袋であれば人間のぢきにやぶれてしまふかなしさ
  
  フランス語と英語の違ひ「プレヤン・ソレイユ」と「リプリー」の響き
 
  誰もむかしこどもたつたがかなしくてかなしくてもう想ひ出さない

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『葛城副編集長の最後の賭け』(高遠琉加/角川ルビー文庫)『告白』(高遠春加/AZノベルズ イースト・プレス)

*結末まで触れています。


『葛城副編集長の最後の賭け』(高遠琉加/角川ルビー文庫)
 
葛城家は、その地方での名士。だが、葛城夏彦は今はその家とは絶縁している。
そもそも父がそこを飛び出したのだ。もともと縁は薄い。
だが、そこで援助されながら育った諒は、葛城家への絶対的な恩義に囚われて
いた。
 
成澤准教授の時に出てた、友達、葛城副編集長のお話。成澤さんもちらっと
登場。蒼井くんとは仲良しが続いているようでなにより。
で、まー、幼馴染と身分違いと執事と王子様、みたいな盛りだくさんの要素
つめこまれたお話だった。イマドキ身分違いって難しいだろ、と思うけど、
なかなか上手くつくられていたと思う。逆に上手く作られていすぎて、その
状況で、諒くんはどーやって夏彦様と結ばれる展開にいけるわけ???と
心配してしまった。まあ、夏彦がおじいさまの一声で本家の跡継ぎに!?
という強引さでなんとか。でもそれまた、跡継ぎのために嫁とれとかなんか
すっごく後々また諒くんが苦しむことになりそうで、どうなるんだか、心配。
まー実際継ぐことになるかどうかは明確にはなってないけど。
と、いろんな心配をさせてくれて面白かった。
わがまま王子様の本来の跡継ぎ候補、和也くんは、まー見事に厭な奴だった
けど、でも、それはそれで、そう歪んじゃうかわいそうな生い立ちな気がして
可哀相だったなあ。どうなるのかねえ。
これも文庫一冊の単品かな。この分量だとこのくらいだよねという感じで、
あまり細かいことは気にしないことする。


『告白』(高遠春加/AZノベルズ イースト・プレス)

中学の頃からの友人、弓弦と計司。今は若くして小さな会社の共同経営者。
マンションの部屋の隣同士に住む彼らのもとへ、計司の息子なんだけど、と、
14歳になるという少年、開がやってきた。

昔は春加という名前だったのですね。2003年1月発行。
クールでからっぽで壊れてる人間計司と、好きじゃないけど愛してるという
穏やかな弓弦。開くんによってかき乱される関係。

まあまあな感じ。こんなこと私が言うのもおこがましいというか何様なんだ
けど、やっぱり長く書かれていると上手くなるのねというか。どっちかという
と、最近に書かれた長めのお話のほうが私は好きだなあと思った。
らぶらぶしーん、開くんに見られた!っていうのがセクシーで素敵!
でも声とかの書き方はいまいちな気がしてそこはちょっとなー。
哀しい過去とか、いいんだけども、どうにもぺらい感じにしか読めない。
息子とか婚約者とかもどうにも道具でしかない感じ。うーん。
ま、そういうもんかなと気にしないでおく。

すっかり高遠さんの大ファンだけど、私の好みとしては、長いお話を書いて
欲しいなあ。ゆっくりペースな作家さんかな?と思うけど、できれば、
あんまり間をあけないで。。。数は多くなくてもじっくり書いて欲しい~、
と、勝手ながら願ってます。『世界の果てで待っていて』続きが読みたい~。

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『DEADLOCK』『DEADHEAT』『DEADSHOT』(英田サキ/キャラ文庫 徳間書店)

*具体的内容、結末まで触れています。

『DEADLOCK』『DEADHEAT』『DEADSHOT』(英田サキ/キャラ文庫 徳間書店)
 
同僚のポールを殺した。その容疑で捕まった麻薬捜査官だったユウトは
冤罪の訴えも虚しく実刑。刑務所へ送られる。だが、ひそかにFBIから
接触があった。テロリストが刑務所に潜伏しているらしい。乏しい情報
だが、そいつを見つけ出すことができれば、刑務所から出られる。

著者さん刑務所ものが好きなんだー!ということらしいです。うんうん。
私も結構好きかも!
というわけで、刑務所なんで当然男だらけ、日系で若く見られちゃう
ユウトはいきなり危ない奴に目をつけられてやられそうになる危機。
同室になったディックは、そっけないものの親切な警告をしてくれたり
助けたりしてくれるのだが。
まー、やられちゃうよね。
まー、ディックとは恋に落ちるよね。うんうん。ディックは金髪青い目の
完璧な美形。ゲイ。ユウトはそんなつもりなかったのに、だんだん彼に
惹かれてゆく。最後にはユウトのほうから今だけ、と、熱く求める。
きみら、刑務所が暴動って時になにやってるんだー。とはいえ、ま、
気にしないで、楽しかった。
実はディックはCIAの契約社員みたいな?
もともと軍人で、テロリストへの復讐に今は燃えるみたいな。

2では、ユウトも無事出所してFBI見習いみたいになって。
唯一テロリストと接触した男として、捜査に加わる。FBIとCIAの
対立みたいなことになって、ディックに再会できたものの冷たくされて。
でもでもー。みたいな。
テロリストは実はネイサンだった!あんなに親切に刑務所内のみんなの
力になろうとしていたもの静かな穏やかな彼が。というそこの過去なんか
も多少明らかになり。コロンビアの私兵ね。なるほど。
で、ここで、ユウトの力になってくれる、大学教授なロブとの出会い。

最初、あまりにもユウトに都合よくいろんな情報引き出してくれるロブは
実はユウトを騙しているんじゃないのか!? と、けっこうハラハラして
読んでいたんだけど、ま、ゲイなのでユウトに惚れて、ってことはある
ものの、ほんとに頼りになる協力者だった。疑い深い読者でごめんなさい。。。
多少下品なジョークをとばしても、ハンサムで大人で有能で優しい、ロブ
こそがもっともご都合キャラだと思った。。。
 
3ではユウトはネイサンにさらわれちゃって、舞台はコロンビアの奥地へ!
そして銃撃戦!
おおー!と盛り上がったものの、わりとあっさりと終わりだった。
物足りない。。。ゲリラとかテロリストとか、CIAにFBIに、副大統領
になろうとする政治家がらみと、てんこもりなのに、なんか、あれ、あらら、
くらいで終わっちゃった。
まーそういうのが好きすぎる私が悪いのか。もっとぐちゃぐちゃに陰謀とか
ゲリラの本拠地を襲うならなんかこういろんな計画とかっ、と思うけど、
まあ、そういうのはそういう小説や映画があるもんね。BL的にはかなり
書いてるほうなんだろうなと思う。

ユウトとディックの、互いを思い、大好きでいるのに、すれ違い、みたいな
切ないのは堪能しました。復讐しか考えられないディック。それをひたむきに
追うユウト。もっとずるい大人になりなよーと思うけど、そうはいかないのが
切ないねえ。
最後にはでも海辺で二人幸せに、未来にむかって、って、甘いエンド。
これからは素直になってね。

面白さはそこそこ。満足感はまあまあ。えろしーんもなんでだか色気が
足りない気がするー。完全に好みの問題で。イラスト、すごくきれいだけど、
でも、やっぱり色気が足りない気がする。ほんと完全に私の個人的好みで。
なんか、自分が好きそうな感じなのに好きになれず物足りなく、それなりに
楽しかったんだけど、うーん。残念。

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『迷子のカピバラ』(秋月祐一/風媒社)

『迷子のカピバラ』(秋月祐一/風媒社)

  地下鉄で迷子になったカピバラにフルーツ牛乳おごつてやらう
 
これが始まりの一首。

私、ハダカデバネズミ、上野動物園に見に行ったことあります。
すてきですよねハダカデバネズミ。

100首みたいです。歌集としてはわりと少なめの歌数でしょうか。
歌集として、というよりまず、すごく可愛い本だなあと思いました。
青いベースの絵に、白地のシールはったみたいなタイトルスペース。
タイトルと著者は黒文字でさりげなくきちんと。そういう箱の中に、本。
中の本はグレーの厚紙な表紙。きれいな青の箔押しでタイトル。著者。
背表紙はなくて、本を閉じている青い糸が見えているの。
長方形をびろーんと長く開くページ。遊び紙のいろもきれいな青。
浅黄色? ページの紙の手触りもいい。写真も著者。
空や、町や、生き物の、独特な色合いの写真。トイカメラとか、
いろいろ使ってるのかなあ。
 
短歌はねえ、甘い。

生き物の歌がいくつかあって、でも猫とか犬じゃなくて、テグーとか
インコとか、グリーンイグアナとかカンガルーとか、ハリネズミとか
スッポンモドキとか、キキチとかキキチって何?とか。

珍獣使いの秋月さんだそうです。ちょっと変わった生き物の歌を
よくよんでいたんだって。タイトルもカピバラです。迷子にならないで
ねと思う。

甘い。
あのねえ、素敵な恋して素敵に暮らして素敵なひとのことを大好き
なんだね。
ああ。短歌は相聞だなあ。相聞ていいよなあ。と、もーー。きゅんって
何の音ですかーっ!とCMみたく叫びながら走り出したいいやそんな
全力じゃあないかなあ。
背中でくっついたりどうでもいい他愛ない話みたいな日常の体温がなんだか
大切だよね、という感じかなあ。

甘いというか、優しいんだ。
ちいさな生き物を両手でつつんでにこにこして一人でいて。でも二人で
そのちいさいのを大事にしようねみたいな。

ちょっと寂しいとかちょっと辛いとか。もう別にこどもじゃないほろりと
した感じがちゃんとあるなーと思った。

持っていて、読んでいて、眺めていて、大事にしたくなる本でした。

いくつか、私が好きだった歌。
 
  あまりにも脆弱なきみを守れずにぼくは葡萄でありつづけてる

  すこしづつたがひを奪いあふやうにこのたそがれを空から剥がす
 
  ながいながい橋の途中で「シリウスが好きだ」と言つてぼくをにらんだ
 
  開けてごらん影絵のやうな家々のどれかひとつはオルゴールだよ
 
  倒れない程度に無理をするこつをはやくおぼえてカンガルー、カンガルー
 

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映画「グランド・マスター」

*ネタバレしてる、かな?


映画「グランド・マスター」

イップ・マンの一代記。ブルース・リーの師である彼は、様々な流派の頂点を
極め、武術家として生きる。 

ウォン・カーウァイ監督作品。もーそれしか言えないって感じに監督作品。
カンフー映画、ってわけじゃないなあ。カンフーでの戦いのシーンはとても
うつくしくかっこよくよかったけど、カンフー映画じゃないよなあ。

主演、トニー・レオン。カンフーシーンもうつくしかった。
でも、ただ黙って立っている姿。だまって見つめている姿。あの目。そういう
のが実にうつくしかった。
武術家として生きる。日中戦争?で生活はろくにできなくなる。子どもを
餓死させてしまう。ただ、それでも、彼は武術家だった。
かつて戦ったルオメイ。ゴン家の跡を継ぐ彼女のことが忘れられずにいた。
ルオメイもまた。
しかし、二人の間にはなにもない。戦ったことがあるということ。見つめあう目。
 
チャン・ツィイーが、ルオメイなわけですが、彼女はほんとうに本当に、
綺麗だ。清らか、というのかなあ。無表情なのに可憐。カンフーシーンも
実に見事にうつくしかった。凄い。
最後にイップ・マンに会うときだけ、真っ赤な口紅してるのよ。綺麗だった。
二人がふれあったのは、戦いのときに交えた手や足のさばきだけ。
なのにねえ。
きれいだった。

雨の中の戦いとか。スローな水。うつくしい動き。マトリックス?みたいな
映像~と思ってしまったけど。
シーンごとにはほんとうに、溜め息もののうつくしさで。
でも全体としてはなんか単調だし正直眠たいーとなったけどねえ。絵のような
映画でした。

あと、カミソリ。彼は一体なにー。こわかった。すごくかっこよかったけど。
白薔薇理髪店ってのやってたみたいなんだけど、でも、あ、あんな迫力の
こわもての人ばっかで、あぶなっかしくて怖すぎて髪とか切ってもらえないっしょ。
髭剃りとか無理すぎるぅ~。こわい~(笑)

シーンごとには、印象的にうつくしいんだけど、全体的にはぼんやりした感じ。
最後に出てきた少年が、ブルース・リーになるんだね。
カンフーはとても凄かったけれど、うーん。愛の映画ですかね。きれいでした。

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『百鬼夜行 陽』(京極夏彦/文藝春秋)

『百鬼夜行 陽』(京極夏彦/文藝春秋)
 
「青行燈」「大首」「屏風闚」「鬼童」「青鷺火」「墓の火」
「青女房」「雨女」「蛇帯」「目競」

という十の短編集。
京極堂のシリーズの脇役だった人たちの物語。

もちろん面白い。独特のリズム。薀蓄や読者論みたいなのもあり。
「大首」の大鷹。てめー素晴しい変態だな。屍体になんかしよーとして
んじゃねーぞ。ああああ。

「蛇帯」にはセツちゃんが。あのがさつでぺらぺらぺらぺらよく喋る子。
またなんかあるんだなあ。大変だなあ。日光榎木津ホテル。日光の話、
本編はいつなんだ。どうなんだ。

この本が出たのが2012年3月。定本とかってなってる。『陰』と
同時刊行だった。文藝春秋にあのシリーズうつる、ってなってから
結局新刊てこれしか出てない、よね?
いつ。
いつ出るの続き。
どうなってるのー。

最後の「目競」はエノキヅさんのちびっこの頃からのお話で、あの目、
視えるものを自分なりに処理してるちびっこエノさんが可愛くて可愛くて
切なくて仕方ない。
終戦の頃の、照明弾の閃光で目がやられて、また視えるようになって、と
いう苦しみのあたり、実にさらっとそっけなく短く書かれているけれど、
嗚呼どんなにか、と思うと切なくて苦しくてたまらない。
中禅寺の対応も、もーーーーーーっ。
初対面のときいきなり記憶が視えてるんですよ先輩、みたいなことだった
らしいけど、なんで初対面でいきなりそうなの?
中禅寺くんのほうが実は前々から気になっててひそかにエノキヅさんの
様子を見つめてて観察してそう判断したのだと思う。きゃ。
やっぱエノキヅさんはかっこよくてかっこよくて可愛くて素敵。うっとり。
はやくー本編出てー。エノキヅさんのことがもっと読みたい。

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『箱の中』(木原音瀬/ホリーノベルズ 蒼竜社)

*具体的内容、結末まで触れています。


『箱の中』(木原音瀬/ホリーノベルズ 蒼竜社)

何もやってない。痴漢なんかやってない。冤罪を訴え続けた堂野崇文は
無罪にはならず、実刑になった。刑務所で十ヶ月。ごく普通の市役所勤めの
三十男。周りの犯罪者が怖い。孤独な彼に取り入った男にさらに騙され、
精神的にもおかしくなりかける。
そんな中、ぼんやりしているだけの男と思っていた喜多川が、不器用
ながらも、少しずつ助けてくれるのを感じる。
「ありがとう」というだけで、やけになついてくる喜多川。この刑務所の
中だけでのつながりだった。

「箱の中」と、「脆弱な詐欺師」、あとがきにかえての「それから、のちの」
というお話。
刑務所の中で堂野くんが病んでいくおかしくなっていく感じがじわじわと
こわかった。淡々と描かれているのが余計怖くて。木原さんはナチュラルに
ずいぶんひどいことを描くんだよなあ。
喜多川が堂野にするのも、公開レイプみたいなもんって、それ、えーとー。
箱の中にしてもずいぶん酷い。でもそこが微妙に麻痺している堂野くんの感じも、
なんかそういうものかなあ、と思わせるのが凄い。こわいわ。

喜多川は28歳ながらとても子どもっぽい。育ちが痛い。辛い。教育はろくに
受けてないと。大きな子ども。あるいは大きな犬。動物に近い、ただの生き物
な感じ。
芝さんがあんな執着が愛なのか? というような台詞があったけど、ほんと
それは愛なのか?と、よくわからない。愛、かなあ。でも愛じゃなきゃ何だ。
あのー、ひな鳥が最初に見た動くものを親と信じてついていくみたいなもん
じゃないのか。最初にまともそうな親密さを見せてくれた相手を愛する。
他に、誰もいなかったんだ。と、心が重くなる。
他に、何もない。他に何もいらない。堂野だけが欲しい、と、その執着は、
愛なのか。愛でいいのか。それでいいのか。

出所後、ひたすら堂野を探してもらうために興信所にお金払うために
働いて働いてお金かせいで。それ全部つぎこんで。騙されても気づかない。
喜多川のイノセントさは無自覚な暴力みたい。まわりの他の人間が勝手に
傷ついてしまう。

カモにしてやろーとする探偵も単なる小ずるい男で、まさに脆弱。愚か。
悲しい。
全部辛い。心が重くなる。
喜多川は堂野を見つけ出し会いにいくのかなあ。行くんだろうなあ。
そして、堂野はどうするのかー。喜多川をあんなに懐かせておいて、でも、
それ、堂野が悪いってことでもないし。外に出たらもう、っていうのも、
堂野が悪いってことじゃないし。辛いなあ。
続きがあるんだよね。読むのこわくて楽しみ。

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