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『死の泉』(皆川博子/ハヤカワ文庫)

*結末まで触れています。


『死の泉』(皆川博子/ハヤカワ文庫)
 
<生命の泉(レーベンスボルン)>は、未婚のまま身ごもった女たちが安心して
出産するための施設。優良なドイツ、アーリア人の子どもを増やすため、子ども
を産むことは奨励されていた。
戦時下のドイツ。
マルガレーテは審査をパスし、入所した。
そこで出会う美しい歌声を持つ少年、エーリヒ。その兄のようなフランツ。
彼らの歌声を愛し育てようとする医師、クラウス・ヴェッセルマンに子どもを
養子にするために必要だからと求婚される。自分の子どもを守るため、二人の
少年を守るため、結婚を受けれたマルガレーテ。やがてドイツが負けていくに
つれて、彼女たちの安全も脅かされることになる。

この本の単行本は1997年。この文庫は2001年。吉川英治文学賞受賞
だそうです。
みっしり長大な物語。
戦後のミュンヘン。少年たちの復讐譚に変わり、しかし最後には誰もが死に
向かう、という感じだけれども、でもでも。ヴェッセルマンは生き残ったのか。
というかこの物語自体が物語りだから、っと。
実はエーリヒは、ミヒャエルは、と畳み掛けてくるどんでん返しの終盤かっこ
よかった。でも銃撃戦はいまいち物足りなかった。

作者、ギュンター・フォン・フュルステンベルク、訳、野上晶の『死の泉』
となっている。なので、「あとがきにかえて」を野上晶が書いている。
ご丁寧に奥付があり、そのあとで普通の「あとがき」もあった。
野上晶の略歴に『薔薇密室』を訳したことになってる。ふむふむ。
 
「あとがきにかえて」で出会った作者、ギュンターはヴェッセルマンって
ことでいいのかなー。何が、どれが、どのくらい、どこまで、物語であり
作中の現実なのか。と、最後のところでクラッとくるのが素晴らしい。

この作品でも、マルガレーテの幻想みたいなのがするっと地続きで紛れて
くる混乱の感じが不思議。
腰が癒着する双子とか、この作者のずうっと続いていくモチーフなんだなー。
耽美な世界。複雑に緻密に巧緻に作り上げられている物語。
とても面白かった。
けど、こんなに凄い好きな耽美世界なのに、好きじゃあないなあ。不思議。
色気が足りないかなあ。まあそこは作者は求めてないところだろうから、
求めたくなる私が悪いんだな。
3冊読んでひとまず皆川さんに満足。読んでみてよかった。

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