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『都市と都市』(チャイナ・ミエヴィル/ハヤカワ文庫)

*結末まで触れています。


『都市と都市』(チャイナ・ミエヴィル/ハヤカワ文庫)
 
ベジェルで見つかった若い女性の死体。ティアドール・ボルル警部補が
事件を追ううちに、これはウル・コーマとの関わりが深いらしいとわかる。

ベジェルとウル・コーマ。
地理的にはほぼ同じ場所にある二つの都市。入り組んだ境界。それぞれの
都市の住民は相手側を<見ない>ようにしながら暮らしている。
国境をくぐることなく相手側を<見る>、相手側に干渉することは重大な
犯罪、<ブリーチ>行為として罰せられる。<ブリーチ>は超越的絶対的
な権力を持ちどこからともなく現れ、違反者をつれさり秩序を回復する。

ボルルはウル・コーマへ捜査協力のために行く。考古学を学ぶ学生だった
彼女、マハリアについて捜査を進めるにつれ、友人だったヨランダや、教官
のボウデンも姿を消した。
 
「ヒューゴー賞」「世界幻想文学大賞」「ローカス賞」「クラーク賞」
「英国SF協会賞受賞」ってずらっと賞とったことが表紙に記されてます。
読み始めた時には、何が幻想文学? と思ったけど。ミステリというか
ハードボイルドというか。警察小説な感じ。ヨーロッパかなあ。どこか
東欧とかかなあ、と読んでいるうちに、<ベジェル>と<ウル・コーマ>
という二つの都市が重なり合っていて、とかいうのが、何がなんだか
混乱する。殺人事件の捜査を進めているんだけれども、その「都市」の
ありようのわけのわからなさのほうの謎めいた感じが面白い。
ファンタジー? SF?
でもあくまで語り口としては、事件捜査のために国際協力する刑事の
お話、というもの。
<ブリーチ>とか<オルツィニー>とか、なんなんだ! というのがずっと
もやもやよくはわからない。ん~。ファンタジーなのか。
地道に事件捜査しているのに霧の中靄の中世界がはっきり見えない感じ、
面白かった。

二つの都市、とかブリーチ、人の認識の問題、ってことでいいのか。
この国だけのことらしくて、外国から見れば奇妙な暮らしをしている
ちっぽけな国、という感じみたい。
分裂前の歴史とかあるみたいなんだけど、タブー視されているのか
この世界的には当たり前すぎて封印されているのか、全然説明されない。
もやもや。わからない。
東西に分かれていた頃のベルリンとかイメージしてみたけど、それも
違うしなあ。韓国と北朝鮮とか? でもそれもやっぱり違うし。
そもそも現実と重ねてのイメージじゃない、ということらしいし。

北欧のミステリ読んでいる感覚と思う。特捜部とかのやつ。
私は英語圏な感じならかろうじて結構リアルな気分でイメージできるけど、
(それでも実際には行ったことがあるわけじゃないのでイメージでのリアル)
北欧だと社会情勢とか自分が持っているイメージが少なくて、たぶん結構
リアルに描いているのだろうなーという警察ミステリ読んでも、ほわん、と
別世界な感覚しかない。人の名前のわからなさ。性別もイメージできないし。
そういう風に、ベジェルやウル・コーマもあるのだ、とも思える。
まー本の中の世界ってどんなにリアルに描こうとも別世界かな。
 
ボルルはブリーチへスカウトされて、どちら側でもなく生きる、って。
それはなんだか切ないのだけれども。ささやかな別れの仕草。いるのに、
見てはいけない、っていうそのもどかしさ。でもそういうものだ、という
諦め。
分厚いガラス越しに見るような、水族館の水の中の物語であるかのように、
くっきりとは見えてこない不思議な感じだった。
一応は、事件解決したの、か。まあ犯人はわかったし。でも、あやうい
よなあこの二つの都市。ブリーチ。あやうい。それがうつくしいのかなあ。
奇妙で、よかった。

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