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『双頭のバビロン』(皆川博子/東京創元社)

*結末まで触れています。


『双頭のバビロン』(皆川博子/東京創元社)
 
上海。ウィーン。ハリウッド。
ゲオルグ・グリーズバッハ。正確に名乗れば男爵ゲオルグ・オズヴァルド
・ハンス・マリア・グリースバッハ・フォン・ノルデンヴァルト。
彼は生まれた時には双子であった。母の子宮で居場所を争った双子。
特別な双子。腰のところがくっついたまま生まれた双子。しかし、片方を
できもの扱いし、分離の手術がうまくいったあと、片方、ユリアンは
いなかったものとして忘れ去られた。
ゲオルグはたくましく成長し、軍人となろうとし、しかし決闘騒ぎのあと
廃嫡されて新大陸へ旅立った。
ハリウッドで成功。俳優かつ監督となり、こだわりの映画を撮る。
 
ユリアンは、世話係であったヴァルターにひきとられ、ひっそりとした
古城の病院で育つ。ツヴェンゲルという同じく身寄りのない子どもと
二人、教育を受け、喧嘩もし仲良くもし、深い絆を結ぶ。
ヴァルターの興味は、特別な双子に特別な能力、離れていても感応しあう
能力があるのではないかということにあった。自動書記でゲオルグの記憶
を感じることに成功したものの、いつでもできるというものではなかった。
ゲオルグも、脚本を書こうと集中し無意識になるとき、ユリアンの思いを
書き始めてしまうことがあった。

ヴァルターの死。
裏切られた、という自分の激情がゲオルグを突き動かし殺させたと
思い込んだユリアン。なんとしても確かめたくて、新大陸をめざす。

って、あらすじも書ききれない。もっともっと複雑。もっともっと
あっちこっち。この話でも魂の双子という感じで意識がするっと変わる
のが続けて書かれてあって、んんん?と思うとあとからわかる、という
混乱が面白かった。

世紀末のヨーロッパ。くっついていた双子。双頭のバビロン。上海。
やっぱりものすごく耽美的退廃的うつくしくてうっとりな世界。そして
同時に汚猥に塗れた悪臭がただよい、それもまた素晴らしい。
ハリウッドの俗っぽさもたまらない。
華麗なる世界。すごくすきなイメージの数々。面白く読んだ。
でもなあ。やっぱり大好きじゃないなあ。なんだろう。こんなに凄いと
思うのに。
やっぱり私は登場人物に物凄く惚れちゃうキャラもえな感じ、か、
作者に惚れる、とか、なんかこう、強烈に惚れさせてくれる何かがある
のが大好き、なんだな。
ゲオルグもユリアンもツヴェンゲルも素敵ですが。惚れないなあ。
ゲオルグの語りとかユリアンのモノローグとかたくさんなんだけれども、
全体的に俯瞰の感じが遠くて大好きにならないのかなあ。
こんだけ壮大に複雑に物語があみあげられているので、俯瞰しなきゃ
無理かと思うしいいんだけど。
こんなに私が好きな世界があるのに大好きになれない自分がどうにも
自分で不思議。面白く読んだのに。

最後には、ゲオルグの自動書記は想像に偏っていて、実はユリアンの
ほうが残っていた、と、そこはまたあとでゲオルグは感応できたのかな。
あの願いのように、棺に土をかけてやれたのかな。そうであってほしい。
太字になっていたから、ゲオルグが感応できた、ということでいいのか。
ユリアンとツヴェンゲルのふたりの最後の時間が穏やかでうつくしかった
のであろうと思うのが救いかなあ。
ああでもそうか。やっぱり残酷さが物足りない気がするのかなー。
複雑な気分。うつくしくて凄い面白かったのに物足りなくて残念。
ないものねだりをしたいほどに素敵世界でした。

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