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『都市と都市』(チャイナ・ミエヴィル/ハヤカワ文庫)

*結末まで触れています。


『都市と都市』(チャイナ・ミエヴィル/ハヤカワ文庫)
 
ベジェルで見つかった若い女性の死体。ティアドール・ボルル警部補が
事件を追ううちに、これはウル・コーマとの関わりが深いらしいとわかる。

ベジェルとウル・コーマ。
地理的にはほぼ同じ場所にある二つの都市。入り組んだ境界。それぞれの
都市の住民は相手側を<見ない>ようにしながら暮らしている。
国境をくぐることなく相手側を<見る>、相手側に干渉することは重大な
犯罪、<ブリーチ>行為として罰せられる。<ブリーチ>は超越的絶対的
な権力を持ちどこからともなく現れ、違反者をつれさり秩序を回復する。

ボルルはウル・コーマへ捜査協力のために行く。考古学を学ぶ学生だった
彼女、マハリアについて捜査を進めるにつれ、友人だったヨランダや、教官
のボウデンも姿を消した。
 
「ヒューゴー賞」「世界幻想文学大賞」「ローカス賞」「クラーク賞」
「英国SF協会賞受賞」ってずらっと賞とったことが表紙に記されてます。
読み始めた時には、何が幻想文学? と思ったけど。ミステリというか
ハードボイルドというか。警察小説な感じ。ヨーロッパかなあ。どこか
東欧とかかなあ、と読んでいるうちに、<ベジェル>と<ウル・コーマ>
という二つの都市が重なり合っていて、とかいうのが、何がなんだか
混乱する。殺人事件の捜査を進めているんだけれども、その「都市」の
ありようのわけのわからなさのほうの謎めいた感じが面白い。
ファンタジー? SF?
でもあくまで語り口としては、事件捜査のために国際協力する刑事の
お話、というもの。
<ブリーチ>とか<オルツィニー>とか、なんなんだ! というのがずっと
もやもやよくはわからない。ん~。ファンタジーなのか。
地道に事件捜査しているのに霧の中靄の中世界がはっきり見えない感じ、
面白かった。

二つの都市、とかブリーチ、人の認識の問題、ってことでいいのか。
この国だけのことらしくて、外国から見れば奇妙な暮らしをしている
ちっぽけな国、という感じみたい。
分裂前の歴史とかあるみたいなんだけど、タブー視されているのか
この世界的には当たり前すぎて封印されているのか、全然説明されない。
もやもや。わからない。
東西に分かれていた頃のベルリンとかイメージしてみたけど、それも
違うしなあ。韓国と北朝鮮とか? でもそれもやっぱり違うし。
そもそも現実と重ねてのイメージじゃない、ということらしいし。

北欧のミステリ読んでいる感覚と思う。特捜部とかのやつ。
私は英語圏な感じならかろうじて結構リアルな気分でイメージできるけど、
(それでも実際には行ったことがあるわけじゃないのでイメージでのリアル)
北欧だと社会情勢とか自分が持っているイメージが少なくて、たぶん結構
リアルに描いているのだろうなーという警察ミステリ読んでも、ほわん、と
別世界な感覚しかない。人の名前のわからなさ。性別もイメージできないし。
そういう風に、ベジェルやウル・コーマもあるのだ、とも思える。
まー本の中の世界ってどんなにリアルに描こうとも別世界かな。
 
ボルルはブリーチへスカウトされて、どちら側でもなく生きる、って。
それはなんだか切ないのだけれども。ささやかな別れの仕草。いるのに、
見てはいけない、っていうそのもどかしさ。でもそういうものだ、という
諦め。
分厚いガラス越しに見るような、水族館の水の中の物語であるかのように、
くっきりとは見えてこない不思議な感じだった。
一応は、事件解決したの、か。まあ犯人はわかったし。でも、あやうい
よなあこの二つの都市。ブリーチ。あやうい。それがうつくしいのかなあ。
奇妙で、よかった。

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映画「孤独な天使たち」

*結末まで触れています。


映画「孤独な天使たち」
 
ロレンツォ。14歳。人に馴染めず、耳をヘッドホンでふさぎ音楽ばかり
聞いている。
学校行事のスキー・ウィークに行く、と嘘をついて、地下室に一人閉じこもる。
一週間の一人の時間を持つはずだった。
そこへ、突然現れた、異母姉のオリヴィア。行くあてがない、という彼女は、
強引に地下室に居座る。ドラッグを絶つ時間と場所が必要だったのだ。
 
ベルナルド・ベルトリッチ監督が30年ぶりに母国語イタリア語で撮った作品、
だそうです。が、私はあんまりベルトリッチにこだわりも思いいれもないので
正直それがどうだとかはよくわかりません。
ポスターを見てかなり惹かれた。
横たわる少年と少女の顔のアップ。タイトルも素敵。
そして、挿入歌にD・ボウイ、と知って、見に行こうと思った。予告動画見ると
イタリア語で「スペースオディティ」歌ってる! いやイタリア語のやつは
「ロンリー・ボーイ、ロンリー・ガール」というのだけれど。
知らなかった~。というわけで勢いでボウイの40周年記念エディションを
買ったりして。名曲。
 
ものすごく端的に言うと、人付き合い苦手のマザコン少年が一週間引きこもり
するはずだったけど、強烈な仲悪い異母姉にせっかくの時間をむちゃくちゃに
されるけどそれがなんかふっきれるきっかけになる。という成長物語、かなあ。
でも、もちろんそんな単純に、青少年よかったね、というものでもなくて。

オリヴィアはロレンツィより何歳年上なのかはっきりわからないけど。
二十歳は超えてるのかなあ? 18歳で芸術的ななんか賞をとったりして
写真家めざしたりしてたのかな? 父親がオリヴィアとその母を捨てて、
ロレンツォの母と結ばれて、って過去みたい。オリヴィアは盗みとか暴力とか
なんか問題娘みたいな。今はヤク中だし。
二人はお互いのことを知っているけど、会うのは久しぶりらしい。
ともあれ、説明は少ない。セリフも多いわけじゃない。
14歳の男の子ってしょーがないな~~~~~~と思う。

地下室に篭る前に母親とのシーンとか学校とかカウンセラーとか? との
シーンはあるけれども、映画はほとんどが地下室。そしてほとんど、ロレンツォ
と、オリヴィアの二人のシーン。
二人ともオーディションで発掘した? 素人的なキャストみたい。
ロレンツォくんが美少年かと、ポスター見たところ期待してたんだけど、
ニキビ跡がきたないわっ、とゆー、ふっつーにふつーの男の子だった。
でもすごく目がきれい。
もしゃもしゃの頭もいい。
黙っている顔、特別に表情つくるでもない顔が魅力ある。なんかすごい。

オリヴィアは、薬抜くために苦しんでのた打ち回って、こわい。すごい。
ボロボロな感じでいるんだけど、ちゃんと美人なんだよなあ。

映画だなあと思った。映画。映画。
言葉とかあらすじの説明は無意味。あの画を見るしかない。
見るしかない。
見に行ってよかった。
 
ボウイの曲は、とても重要。というか、ロンリー・ボーイ、ロンリー・ガール
の歌からこの映画を作ったのか、というほどのシーンだった。
そして、エンドロールでは原曲、「スペース・オディティ」。宇宙で孤独に
浮かぶ男。
 
ラスト、ロレンツォは結構前向きに「ちゃんと生きるのよ」といわれたように
行く感じではあるけど、オリヴィアはどうなるのかなあ。
あの煙草。結局、薬買ったよね? あの煙草に、まだ入ってるよね。それ、
受け取って持ってったよね。
ボウイの曲、あれあとでめいじゃーとむはジャンキー、って歌われてるんだよね。
オリヴィア、ジャンキーに後戻りしなければいいけど。
一緒に田舎に行くという男は大丈夫なのか。信用できるのか。できないような。
そういう不安な気持ちが残ったまま終わる。
がんばれ。
 
映画館音響で、ボウイの歌声を堪能できてしあわせだった。

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『双頭のバビロン』(皆川博子/東京創元社)

*結末まで触れています。


『双頭のバビロン』(皆川博子/東京創元社)
 
上海。ウィーン。ハリウッド。
ゲオルグ・グリーズバッハ。正確に名乗れば男爵ゲオルグ・オズヴァルド
・ハンス・マリア・グリースバッハ・フォン・ノルデンヴァルト。
彼は生まれた時には双子であった。母の子宮で居場所を争った双子。
特別な双子。腰のところがくっついたまま生まれた双子。しかし、片方を
できもの扱いし、分離の手術がうまくいったあと、片方、ユリアンは
いなかったものとして忘れ去られた。
ゲオルグはたくましく成長し、軍人となろうとし、しかし決闘騒ぎのあと
廃嫡されて新大陸へ旅立った。
ハリウッドで成功。俳優かつ監督となり、こだわりの映画を撮る。
 
ユリアンは、世話係であったヴァルターにひきとられ、ひっそりとした
古城の病院で育つ。ツヴェンゲルという同じく身寄りのない子どもと
二人、教育を受け、喧嘩もし仲良くもし、深い絆を結ぶ。
ヴァルターの興味は、特別な双子に特別な能力、離れていても感応しあう
能力があるのではないかということにあった。自動書記でゲオルグの記憶
を感じることに成功したものの、いつでもできるというものではなかった。
ゲオルグも、脚本を書こうと集中し無意識になるとき、ユリアンの思いを
書き始めてしまうことがあった。

ヴァルターの死。
裏切られた、という自分の激情がゲオルグを突き動かし殺させたと
思い込んだユリアン。なんとしても確かめたくて、新大陸をめざす。

って、あらすじも書ききれない。もっともっと複雑。もっともっと
あっちこっち。この話でも魂の双子という感じで意識がするっと変わる
のが続けて書かれてあって、んんん?と思うとあとからわかる、という
混乱が面白かった。

世紀末のヨーロッパ。くっついていた双子。双頭のバビロン。上海。
やっぱりものすごく耽美的退廃的うつくしくてうっとりな世界。そして
同時に汚猥に塗れた悪臭がただよい、それもまた素晴らしい。
ハリウッドの俗っぽさもたまらない。
華麗なる世界。すごくすきなイメージの数々。面白く読んだ。
でもなあ。やっぱり大好きじゃないなあ。なんだろう。こんなに凄いと
思うのに。
やっぱり私は登場人物に物凄く惚れちゃうキャラもえな感じ、か、
作者に惚れる、とか、なんかこう、強烈に惚れさせてくれる何かがある
のが大好き、なんだな。
ゲオルグもユリアンもツヴェンゲルも素敵ですが。惚れないなあ。
ゲオルグの語りとかユリアンのモノローグとかたくさんなんだけれども、
全体的に俯瞰の感じが遠くて大好きにならないのかなあ。
こんだけ壮大に複雑に物語があみあげられているので、俯瞰しなきゃ
無理かと思うしいいんだけど。
こんなに私が好きな世界があるのに大好きになれない自分がどうにも
自分で不思議。面白く読んだのに。

最後には、ゲオルグの自動書記は想像に偏っていて、実はユリアンの
ほうが残っていた、と、そこはまたあとでゲオルグは感応できたのかな。
あの願いのように、棺に土をかけてやれたのかな。そうであってほしい。
太字になっていたから、ゲオルグが感応できた、ということでいいのか。
ユリアンとツヴェンゲルのふたりの最後の時間が穏やかでうつくしかった
のであろうと思うのが救いかなあ。
ああでもそうか。やっぱり残酷さが物足りない気がするのかなー。
複雑な気分。うつくしくて凄い面白かったのに物足りなくて残念。
ないものねだりをしたいほどに素敵世界でした。

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『薔薇密室』(皆川博子/ハヤカワ文庫)

*結末まで触れています。

『薔薇密室』(皆川博子/ハヤカワ文庫)
 
第一次世界大戦時。ドイツ、ポーランド。
戦闘で傷ついた士官をコンラートは助け、僧院へ逃れた。
そこにいたのはホフマン博士。人間と薔薇を融合させる研究を
しているという。瀕死の士官を、薔薇と融合させれば、生き長らえる
ことができるかもしれない。
戦火を逃れ、僧院でひっそり薔薇と暮らす。

という始まり。うつくしすぎる幻想の世界。かと思っていたら、
ミルカというポーランドの少女のお話のところは、戦時下の暮らし、
たぶん結構リアルっぽく、辛い感じで描かれている。
うつくしき劣等体、という奇形の子どもたちがいる僧院でのお話、
始まりのところは実は病の博士の妄想じみた手記なのか、とか、
話の中の話、時間がするりと変わっていく。何が幻想で何が本当
なのか、最初少し戸惑った。緻密に織り込まれているのを読み終えて
から振り返ってみたりして。面白かったー。

著者はとても幻想的で耽美的、という評判をなんとなく知りつつ、
読むのは初めてな気がする。読んだことあったっけ。うーん。
ほんと、とっても耽美的。幻想的。薔薇とうつくしい若者との融合、
それは最高のイメージ。
でも最初、えーそれは無理やろー、と、ちょっとリアルにつっこみを
入れたい気がしてしまったんだけど、そこはまあ幻想、ということで
いいのか。最後まで、実はオーディンはどうなっているの? という
のが明確にわからなかったんだけど。実際には薔薇の根元に骸骨が、
という情景なのかなあ。でもそこは明確にせず幻想にゆだねておく、
ということなのかなあ。ミステリというよりはもっと幻想よりなのか。

ドイツ。SS。奇形の子ども。うつくしい若者と薔薇。最高です。
それ大好きです。
個人的好みでいえばミルカのお話いらない。でもま、邪魔ってほど
嫌いな感じではなかった。もうちょっと残酷ならもっとよかったのに。
と、ないものねだりを思ってしまうほど面白かった。

最後、ミルカは一年以上も一人で軟禁場所にいたの? というのが
なんか腑に落ちないように思う。一人で放置されてからそんなに時間
たつかなあ。せめて三ヶ月くらいとか。んー。朦朧としてたから?
出てきた時にはポーランドがある程度復活してなくちゃいけなくて、
ということなのか。
でも、ともかく、そしてその後、ミルカは最後には愛され結婚して
子どもも孫もいて、という晩年だったのね、と、幸福を思う。小序で
そういってた。だから、読後感としては明るい。
んで最初のその小序で案内される旅行者「私」は誰なの。作者?
細々と疑問は残る。

でもいい。面白かったしとてもとてもとてもうつくしかった。
読まず嫌いせずに他の作品も読んでみなくては。

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「おのれナポレオン」 東京芸術劇場

*具体的内容、結末まで触れています。

「おのれナポレオン」 東京芸術劇場

作、演出 三谷幸喜  
出演 野田英樹、天海祐希、山本耕史、浅利陽介、今井朋彦、内野聖陽

皇帝にまで登りつめた男、ナポレオン。天才的軍人。しかし最後には捕らわれの身
となって、セント・ヘレナ島で最期を迎えた男。
胃癌、といわれたその死は本当に単なる病死だったのか。砒素による毒殺では?
セント・ヘレナ島での最期の日々を知る者たちが語る、ナポレオン。奇人変人。
愛され憎まれた男の本心は、なんだったのか。

昨日見に行ってきました。
三谷さんで野田さんかー。というくらいしか知らずに行ったのですが、
ナポレオンの死の真相をさぐる、というかなりミステリ的なお話でした。
死後二十年、ナポレオンの最期を聞きに来た人間に(名前のみ、見えないキャスト)
主治医、付き従った副官、愛人、従僕、監視した総督たちがそれぞれ語る。

豪華キャスト。とーぜんながら、みんな上手いっ。天海さんきれいだわあ~!
さすが舞台栄えするわ~。内野さん、いい声~~~~!山本くん上手い。朗々と
上手い。浅利くんは可愛いキャラ。ラストには実は一番重要な秘密を明かす。
今井さんは微妙にヘタレ主治医。かっこいい。
野田さんは、ちっさい。のに、すっごいすっごいすっごい動く!さ、さすが。
変人奇人ナポレオン、そして凄みあるナポレオン。まさにナポレオン。

2時間20分、休憩なし。
面白かった~。
動きも会話もテンポいい。
話の動きも。病死なのだ、いや、実は、と、どんどん明かされていく真相の
どんでん返し。面白い。実は、彼らはナポレオンがあやつるチェスの駒。
自殺はしないナポレオンが、自分を殺すよう、病死にみせかけて殺すよう、
仕組んだことだった、とゆー。そして死後二十年たった今も、ナポレオンの
手の内なのだ。
最後にはナポレオンが実に凄みがありかっこよかった。

小男だったというナポレオンをひきたたせる、天海さんたち。(浅利くんは
ちいさめだけど)なのに誰より動き舞台を圧倒するナポレオン。
どのくらいアドリブなんだかわかんないけど、いっぱい笑ったー。

東京芸術劇場というのは初めて行った。
舞台を囲むように、コの字型に客席つくってあり、役者さんが出たりはけたり
するのが単純に上手下手じゃなくて。客席の通路使ったりしてた。
私の席のほうも、何度か通っていって、うわーうわーすっごい間近にキャストが!
き、きれい~かっこい~きゃ~!と、ときめきました。しあわせ。

最後のおじぎのとき、野田さんの、ぺた、っと深々と前屈するよーなおじぎが
私はとても好きです。
天海さんのドレスのおじぎはさーすがほーんとーにきれい華やか~。好き~。
大 満 足! 楽しかったです。

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『短歌のレシピ』(俵万智/新潮新書)

『短歌のレシピ』(俵万智/新潮新書)
 
俵さんが投稿された歌を添削して実例見せながら、「こんなレシピが
ありますよ」と、推敲のやりかたを見せてくれる本。ちょっと変更を
してみるだけで変わるなあ、という実例を見るので、とってもわかり
やすい。気がする。レシピ、というのも、とっつきやすく、料理初心者
へ伝えるコツです、みたいなこと。推敲、っていうだけで難しく感じる
人への配慮みたいなことなのか?よくわからないけど。

まーでも自分で推敲のときって客観的になることそのものが難しいのー。
でもこれが注意点っていうのを知っておくのはほんと大事だと思います。
 
 はじめに
 第1講 味覚に訴えてみよう 擬音を生かそう
 第2講 時には荒療治を試してみよう 「あの」って、どの? と言われ
     ないようにしよう
 第3講 比喩の出し方に心をくだこう だめ押しの一歩手前で止めよう
 第4講 枕詞をつかってみよう 同じ言葉、同種の言い回しは避けよう
 第5講 序詞をつかってみよう メールを使って恋をしよう
 第6講 リフレーンをつかってみよう 時には表現を薄めることも
 第7講 A+Bの効果を狙おう 倒置法を活用してみよう
 第8講 理屈は引っ込めよう 意味の重なりに気をつけよう
 第9講 読者を信頼しよう ものづくしという手法
 第10講 あと半歩のさじ加減を考えよう 時にはドラマチックに
 第11講 格言的なフレーズを生かすには 「ような」をとって暗喩で勝負
     してみよう
 第12講 動詞にひと工夫してみよう 「は」と「が」で変わること
 第13講 リズムをとるか助詞をとるか 動詞をさらに工夫してみよう
 第14講 主役は一人にしよう 語順をよく確認して仕上げよう
 第15講 「できごと+思い」という構造 旅の歌を詠んでみよう
 第16講 季節の変わり目をとらえよう 歌の並べ方を考えよう

と、目次うつしたらもう全部書いてある、みたいな感じ。
そうだなあ気をつけないと、と思うことばかり。するする読める上に
ものすごく実用的。この平易さでちゃんとしっかり伝わるのはさすが。
短歌をつくろうとかに興味がないとしても、鑑賞ポイントみたいなの
もそういうものかーとわかって面白いと思う。
そしてここに書いているのが絶対正解、ってわけじゃない。だから「レシピ」
ってしているのかな。基本はもちろんあるけれども、それぞれ好みのレシピ
を見つけていってもいいんだなと思う。

そしてこれ多分初心者向けだと思うけど、それ難しくて無理、と思ったのも
多々。やっぱ私はまだまだ初心者レベルから全然進歩してないのか。。。
がんばろー。。。

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美術手帖 2013.03

フランシス・ベーコンのことを少しはお勉強しようかしら。
と、美術手帖の三月号を借りてきた。特集フランシス・ベーコン。

年譜的なことさっくりわかった。なかなか過激に同性愛であぶなっかしいことも
やってきていたのね~。というのを知ったのは面白かった。

でも評論的なこと? それはわかんないなー。読んでもわかんないなー。
美術評論な世界を私が全然知らないので慣れなくて読めないってこともある
だろうし、ことばを知らないこともあるし。
でもそーゆーことはわからなくていいか、と思った。
私は絵を見に行って自分なりにすごく面白かったから、それでいいかなあと。
美術史的世界とか、比較とか流れとか知ってもっとすごく面白くなるのかなと
わかるけど。
美術の世界にまで手を広げられない。
時々興味が向いたことを、少しずつ知っていきたいなあと思う。

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『青い脂』(ウラジミール・ソローキン/河出書房新社)

『青い脂』(ウラジミール・ソローキン/河出書房新社)
 
ボリスからリプスへの手紙で始まる。舞台は未来?別世界?
ロシア語と中国語が入り混じって語られ、あるいはオリジナルな言語も。
個体(オブジェクト)と呼ばれる、クローンがいる。
トルストイ4号。チェーホフ3号。ナボコフ7号。パステルナーク1号。
ドストエフスキー2号。アフマートワ3号。プラトーノフ3号。
かつて作家であったもののクローンが、青い脂を生成する。
青い脂、は、絶対零度の物質? 何なのかははっきりわからない。

そんなこんなで、がんばって読んでみたけど、私にはわかったとは到底
言えない本でしたー。えーとー。読んだ、けど、自分が何を読んでいる
のかわからない。
スターリンとフルシチョフのえろしーんなんかは、なかなかステキ、なんて
読んだけど、でも、だからどうってことは。んーう。

クローンが書く作品があって、それぞれの作家に詳しければ、おお、ってな
楽しみがあるのかも。でも私はよく知らないので、ドストエフスキーくらいか、
ふむーなるほど、なんて思ってみたくらい。
ロシアにもっと詳しければもっと面白いんだろうか?
 
読んでも読んでも、どんどんずれていく。読んでも読んでも、何読んでる
んだろうか私は。。。と、遠い目をしてしまう。スカトロっぽいよーな
ところはあんまし好きじゃないし。シーンではなんとなく面白かったり
好きだなと思ったりした気もするけど、でも、次にはもう何だかわからない
ようになってて、なんとなく苦行スイッイオン、の気分でひたすら黙って
つきあって読んだ。
私が何にも知らないでうっかり読もうとしたのがいけないんだわ。。。

ソローキンは1955年、ロシア生まれ。作家というよりは、コンセプチュア
リズムの芸術運動に関わる、とか、芸術家な感じみたい。最初は地下出版みたい
な感じだったみたい。まあ、怒られそうな感じはすごくするよね。

何だろう。何読んでるのかなあ俺は。。。って思いながら読むのは、
けっこう面白かった。
でもこの本が面白いかどうかは私には判断不能、でした。。。

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映画「千年の愉楽」

*具体的内容、結末まで触れています。


映画「千年の愉楽」見に行ってきた。

中上健次の同名短編小説集?原作だそうです。本は読んだことない。

海と山に挟まれた路地。
そこでオバァは産婆として多くの子どもをとりあげてきた。赤ん坊は
仏様からの授かりものだ、と全ての母であろうとするオバァ。
夫は坊主で念仏をあげる。生と死がつながっている。

中本の家の男は、高貴な穢れた血、といわれる。うつくしい男は、
宿命のように数多の女とかかわり、短い生涯を破滅で終える。
中本彦之助が女に刺されて死にかけていたとき、その息子が産まれ
ようとしていた。森へ消えた彦之助。そして、うつくしく育った息子
半蔵もまた、路地で女たちに迷い、また刺されて、死んだ。

そんな感じで中本の血を受け継ぐ男は、美貌であり、女のほうがどんどん
寄ってきて、受け入れて破滅する。
しょっぱなから、血塗れ新が死にかけていた。さっすがのインパクト。
迫力~。素敵だうっとり。
そして高良健吾くんが半蔵。美形だなあ、と、つくづく眺めた。
女のほうが寄ってきて困るんだよ、っていうの、とっても納得。あれは
ほっとかれるわけないわ。あんなところにあんな男がいたら、一度でも
どんな風でも、なんとかしたいなりたいやりたいとなっちゃうわ。納得。

私の印象で高良くんて、朝ドラ「おひさま」の好青年印象だったから、
こう色っぽく破滅してく、でもどうにも本人はきれいなまま、という姿
を見られてとてもよかった。いいなあ。笑うと可愛くなって、でもあの
路地でどうしようもなく刹那の快楽だけでやって、自分でもうんざりで。
そういう姿、そういう男、うっとりだ。

三好も、愚かでよかったなあ。
達男は、なんか、オバァの被害者なのでは(笑)半蔵とかは軽くいなして
いたのに、そこで女になるのか。可哀相。

ほとんどすべてをオリュウノオバ、寺島しのぶにゆだねているってのは
どーなのよ、と思った。寺島しのぶの語りが全て、だった感じー。

中上健次の本、読んだことあるかなあ、程度なのでなんともいえないけど、
でも、こんな話なのか? 随分あっさりさっぱりしちゃってるような気が
する。中上ってもっとずっしり濃密な気がするのです。
ま、映画は映画だから、原作がどうこうとかは忘れるとしても。
勝手ながら、中本家の血、とか、中本家の男たち、の話なのかと思って
いたんだけれどね。寺島しのぶ物語だった。。。
生きて、死んで、生きて、死んで。
神話的モチーフ、そしてすべての母であるオバァ。うーん。うーん。
でも物足りない。

若松監督は、事故で亡くなってしまい、これが遺作となりました。
あとづけで言えば、生と死の物語の遺作、というのはきれいに収まり
すぎている気がします。
突然の死というのは、仕方ないもので。私の個人的印象では、あんまり
よいとは思わなかった映画が最後、この納得いかない感じが、
そういうものかな、と、思いました。


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フランシス・ベーコン展  東京国立近代美術館

フランシス・ベーコン展  東京国立近代美術館
 
行ってきました。
ベーコン、なんか名前は知ってる気がする、くらいだったのだけれど、
終わりのほうで、デビッド・リンチやデビッド・クローネンバーグが影響を
受け、というような文言があり、なるほどと思う。リンチ大好き。どっか
でいつのまにか名前を見たことがあるんだ。

1090年、ダブリンに生まれる。1945年頃がデビュー、かな。
1992年死去。享年82歳。

 1、移りゆく身体 1940s-1950s
 2、捧げられた身体 1960s
 3、物語らない身体 1970s-1992
 4、エピローグ:ベーコンに基づく身体
 
という構成で展示されていました。
展示されていたのは大作が多いなあと思いました。初期の頃は色が暗い。
最初のやつは背景が鮮やかなオレンジだったけれども、他は、大体黒い。
人物の輪郭線はなくて、半透明だったりする。叫ぶ口、歯、は見えるけど
目ははっきり描かれていない。
立方体な四角の線に閉じ込められている? 囲われているのに、不安定。

絵のガラスと金の額縁にこだわりがあったようで、その注意書きが何度も
あった。ガラスの反射や映り込みが見難いだろうけれども、それもベーコン
のこだわりです、というような。
隔たりがいいのだ、というようなことばがあって。
その隔たりとか、枠とかに囲まれている叫ぶ人。憂鬱気な人。ぐにゃと
力強く歪む人。閉じ込められているというよりは閉じこもりたいんじゃない
のかなあ。でも不安なんだよなあ。出てゆきたくもあるんだよなあ。たぶん。

「走る犬のための習作」かなり好き。影みたいな輪郭のはっきりしない白い犬
の姿、が、それなのに犬で、不安定になる。首をかしげてずーっと見てしまった。

三習作、というのがあって、同じ人物を三方向から描いて三つで一そろいに
している。
犯罪者を正面横から、って写真写すような感じに。
それもでも顔が歪んで。

恋人、「ジョージ・ダイアの三習作」もねー。恋人だけどこうも歪むのね。
何故穴。黒い穴。穴がこわい。ふふふふふ不安定になる~。
背景のピンク、淡い桃色、かな、その色はきれい。
同じくらいの年に描かれた(1970)「三幅対―人体の三習作」、
女体だけど顔は男っぽいような、白い綱渡り的な大きいやつの背景も同じ色
だと思う。

「ジョン・エドワーズの肖像のための三習作」(1984)はわりと具象な
感じの肖像画風で、このときの恋は不安定じゃなかったのかしら? と妄想。
爽やかな色合いだったし。
 
死の数ヶ月前まで製作を続けていた、という最後の作品、「三幅対」(1992)
は、自画像な顔? と、セナの顔? とが顔写真風で、あと下半身。真ん中のは
頭部に矢印。あちら側へ行こうとしているような下半身。あちら側から越境しよ
うとしているかのような下半身?
こう、ずらっと見てくると、ブレないテーマだったのかなあ、と納得する展示
でした。

真ん中あたり、ゴッホの肖像のための習作 はカラフルだし色が力強い。
ほとんどペンティングナイフでガツガツ絵の具乗せてったのかなーと思う。
でも大体のは輪郭が溶けていく感じが、こわい。力強いのに、不安定~。

スフィンクスのシリーズも好きだった。肉がついてるのじゃないのが好き
だった。ババっと部分的にしか色のせてなくて描かずにおいて形が見える
のがすごいかっこいい。

三分ほどの、インタビュー映像見た。クリアに喋る人だなあ、という感じ。

土方巽の舞踏? のフィルムも見た。うーん。ベーコン的身体?
不思議。舞踏とか、わかんない。。。そしてなんか間寛平ちゃんに似てる、
顔も動きも、と思ってしまってからダメだ。いや、なんかわかんない迫力
あるんだけどー。わかんない。
最後のインスタレーションの映像も。
インスタレーション、って、こういうものなのですか、と思ったけど、
ベーコンに基づく身体ですか、と、思ったけど。ん~う。私にはわからない。
映像もの、っていうのが私はそもそもあまり好きじゃない。好きに見たいの。
自分が好きなように見たいの。映像って、見せられている時間をそっちに
コントロールされるのがなんか嫌。

そんなこんなでじっくり見て、二周ほど見て、堪能しました。
2時間以上経過。疲労困憊。一応ざっくり常設のほうも入ってみたけど、
丁寧に見るような気力はなし。
ルソーの絵が一枚あって、それはわーい、と喜んで見ました。
中村不折の西洋画の大きいのも一枚あった。へー。
工芸館へ行く気力はなし。帰宅。

何も知らずに行ったわりにはすごく面白く思えた。ちょっとくらいは
知ってるほうがきっともっと楽しいんだろうなあ。
一応美術手帖の特集があったやつを見てみようかな、と、図書館チェック。
ほんとは行く前に見ておけばよかったかなあ。ま、解釈とかできなくても
好きに見るでもいいのよ、と、自分を慰めておく。
ゆったり見られてよかったです。

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映画「まほろ駅前多田便利軒」とテレビ「まほろ駅前番外地」

*具体的内容、結末まで触れています。


今日も雨風強くてたいへんだけど、昨日も一日雨だった。
昨日、録画ためてたのをまとめて消化。映画の「まほろ駅前多田便利軒」と、
テレビドラマの「まほろ駅前番外地」をずーっと見ました。とてもよかった
ので、雑感覚書をのんびり書いておきます。
 
私は原作は読んだことない。(たぶん今後も読まない)テレ東のドラマを
一番最初に見ました。
映画化の時にも見に行こうかなと思っていたのだけれど、なんとなく逃した。
瑛太と松田龍平に興味をそそられていて、そのキャストそのままのドラマと
いうのでかなり期待しました。脚本、大根仁という人、「モテキ」をやった人
だというのにも期待。「モテキ」は見逃してしまって評判のよさから映画は
見に行って(音楽も好きなのだったし)、面白かったな~という印象です。

ドラマの一話目、潰れそうなプロレスの助っ人レスラーになれ、と、突然
プロレスすることになる二人。だるだるーとした雰囲気。脱力しまくりな行天。
常にどっか不機嫌そうな多田。ゆるゆるーふわーとした笑いと味わい面白い。
期待通り、瑛太と松田龍平、多田と行天の佇まい、あの二人が並んで煙草吸って
軽トラによっかかってるだけで完璧で最高だった。そこに余計な力いれない、
でもちゃんと魅せるお話。これは素晴らしい~。

数回見て、その後もずっと録画はしていたのだけれども、しばらく録画見る
時間気力がなくてためてました。
そしたら、映画もテレビでやったので、それも録画。やっと昨日見た。

映画は、番外地よりも前。中学の同級生だった二人が十数年後再会して、
なんとなく一緒に便利屋やるようになる、という出会いの物語。
二人の過去をこれで始めて知りました。二人ともバツイチ。
行天はたぶん幼児虐待的な家庭問題があったのかもしれない。行天の結婚相手は
レズビアンな人で、結婚して子どもつくるための精子提供に協力して、という
おだやかな関係だったこと。多田と出会った夜、たぶん両親を殺そうとしていた
らしい、こと。
多田は、そこそこ順調な人生だったはず、だけど、妻の浮気発覚の頃子どもが
できて、でも生まれたその子を愛しく思っていたのに突然の病気で亡くしてしまい、
そして妻とも別れた、ということ。
行天の小指を、多田のせいで中学の時のささいな揉め事、事故で、深く切ってしま
ったこと。切れたのがくっついたのかな?ちょっとはっきりはわかんない。
一応因縁の関係、だったのね。
特別なものっすごい不幸、というほどではない。でも、挫折というか、順調な幸せ
からは外れてしまった30半ばの男たち。
そういう二人なんだなあ、というのがわかった。

映画ではクライマックスに多田が激しく語る、というのはあったけれども、
そしてちょっと説教くさいかーという気はしたけれども、でもやっぱり全体的に
テンションは低めで、ぶつ切れ感がいい感じで、好きだったなあ。

そんな二人か、とわかったあとで、テレビドラマの録画消化。5話目から。
過去にとらわれるなよ、と、赤ん坊の時取り違えられた男の話で、おう、と思う。
なかなかいいタイミングで映画を見たかもしれない。
その後にも映画からの引き続きのキャラがいて、わかったのはよかった。
高良健吾の星くん、かっこいい。クールでアブない自称青年実業家な裏の人間。
まほろ署の刑事の早坂。岸辺一徳。官房長~。ここではヒラですか~。
多田たちを胡散臭く思ってて、映画のときもテレビでも、あの味わいあのゆるさ
で、なおかつひんやり怖いの、すごく素敵。大好き。

映画から続けてみると、テレビのほうが小奇麗だったな。おしゃれになりすぎない、
でも素敵な画面だったと思う。

ヘンだったりバカバカしかったり、ささやかなどうでもいいような小さな仕事、
頼みごと、事件のお話。
最後、二本でひとつのお話の、女子高生ちゃんたちのと、真木よう子が未亡人の
は、比較的シリアスで痺れるかっこよさ。

女子高生ちゃんたち。どうしようもないクズ家庭ではずみで父を死なせて
しまった園子と、中学の時仲良しだった晴海。二人の回想のちょっと百合的雰囲気も
素敵だったし、女子高生だからこその痛々しさや苦しさ、よかった。
そういう子に、嫌な大人じゃない、でも大人な、行天くんと多田がいて、よかった。
あそこで携帯のデータ以外見逃す星くんはやっぱり自称青年実業家なのか。甘い
ような。でも下手にひきこむよりはあのくらいの距離感で離すほうが賢いな、と
いう気もして、かっこよかった。

ラストは、取り壊すまで格安で、借りていた駅前のビルの部屋。ついに出て行って
くれといわれる日が来て。
その時遺品整理仕事を頼まれ出会った真木よう子。カシワギアサコさん。
真木よう子あて書きみたいなもんだそうで、実に素晴らしかった。魅力がすごい。
あれは多田が惚れるのも仕方ない納得。
アサコさんのクズな兄に関わって、ヤクザに襲われたりそれでも助けに行ったり
する便利屋の二人。ぼろぼろに血みどろになるのがよかったー!いい!血塗れ素敵。
殴るうちに多田が笑いながら暴力の衝動にはまるのもすごいよかった。

そんで捕まる行天くん。引越しですっかりからになった二人で暮らした便利屋の
部屋。それでも、最後には、行天くんは執行猶予になるらしいし、また二人になる
のか、それはそれで別れるのか、余韻は残りつつ、いい終わりだった。
激しい盛り上がりはあって、でもやっぱり余計な力は入れない。うまいわ。
 
多田は、ずっと、子どもを亡くしたこと、を、常にどっかひっかけていて
苦しいところがある、って感じなのかなあと思った。別にそれに苦悩し続けてると
いうのではないんだけれど。心のどこかが重いような。
アサコさんに恋して、実はバツイチで、と少し過去のことを喋れたりして、ほんと
少し、前向きになったんだなあと思った。
「極力ひきうけます」から、「何でも引き受けます」という宣伝文句に変えた
トラック走らせててね。

行天は、天使的だなあと思った。
彼本人、たぶん辛い苦しい子ども時代を送ったようだけど、でもそれなのに、
だからこそ? よわってる相手に対してふわふわと優しくなっちゃう。
多田は、多少の葛藤なり悩みなり持ちながら相手を切るとかできなくて優しく
なってしまう人間くささがあると思うんだけど、行天の感じって、ふわーっと、
ぽいーっと、我が身のこととかあっさり全然関係なしに助けになろうとしてる。
そう感じるのは、松田龍平のあの雰囲気のせいかなあ。
なんか人間離れしてるんだよー。

そんな行天に、多田は必要だった。ドSなパートナーに飼い慣らされる、と
いうのはもちろん(たぶん9話での診断メーカー)、地上の人の本当の優しさ
みたいなので繋いでくれるんじゃないかな。多田って。
多田もまた、ふらふらくっついてくる役立たずの行天がいて、あれ、一人じゃない、
って思えたんじゃないかなあ。
もちろん見て私が勝手に妄想したことです。
とにかく二人がだらーっと、なんかまっすぐじゃなく、だらーっと、立ってる姿が
最高だった。いいなあ、二人。
 
瑛太がものすごい、と感心してしまった。今期、私は「最高の離婚」とこれとを
見たわけで。全然違うのね瑛太って、作品によって。たしかに瑛太なのに、まるで
違う役にちゃんと、しかも自然になってる。すごい。あとNHKの単発で
「極北ラプソディ」も同時期に見たんだけど、やっぱそれも違ってて。
瑛太、すごすぎる、と、惚れ惚れした。
(真木よう子も「最高の離婚」で。二人共演なのに、二人ちゃんと違ってる。
当たり前だけどなんかすごいー)
松田龍平はいつも松田龍平だなあと思うんだけど、そうであっても作品にちゃんと
馴染むそういう役になってて、やっぱいいなあと思った。

ゲストにきてた役者さんたちもみんなよかった。そう思えるのはほんとどの回も
まほろの作品世界があったんだなあと思う。
あの二人をずうっと見ていたい。でもちゃんと終わったのも満足。
いいものを見ました。

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『言語都市』(チャイナ・ミエヴィル/新☆ハヤカワ・SFシリーズ)

*結末まで触れています。

『言語都市』(チャイナ・ミエヴィル/新☆ハヤカワ・SFシリーズ)

辺境の惑星、アリエカ。そこにもともと住む、ホストと呼ぶ種族には口が
二つあり、二つの口で発する「ゲンコ」で会話する。ヒトが機械を通して
その発話を真似ても、アリエカ人にはノイズでしかない。ヒトが二人一組
になって「ゲンコ」を発声した時、初めて会話が成立した。「ゲンゴ」は
嘘の概念、抽象の概念がない。アリエカ人と会話できる大使を通じて、
アリエカの中にヒトの住むスペース、エンバシータウンを築いていた。
そこで育ったアヴィス。彼女はイマーという宇宙を旅するイマーサーになる。
結婚し、エンバシータウンに戻り、新任の大使がやってきた場に居合わせた
時、これまでとは違うタイプの大使によって、災厄が始まった。
 
SFだあー。
完全に異星人の異世界のSF読むのって私久しぶりかもしれない。
とにかく全然別世界なわけで、この小説の舞台設定を理解するのにまず
時間がかかった。というか、最後まで理解したかどうかには自信ない。
アリエカ人というもの、そこで暮らす異邦人としての人類、この宇宙、
イマーとか「ゲンゴ」とか、出てくるなにもかもがこの世界のもの、なので
読んで考えながらじゃないと見えないー。
アリエカ人は昆虫っぽい感じなのかな。なかなか不気味そうな感じ。

そして、「ゲンゴ」をめぐる物語。その「ゲンゴ」がなんなのか。
表記としても「」の中に真ん中線で両側にことばがあったりして、えーと
えーと、と引っかかりながら読む。
嘘がつけないとか、直喩になるとか、げ、ゲンゴがどうなのかっての、
結局なんとなくしかわかんない。まあでも仕方ないよね。小説の中でフランス語
説明されたってきっと一冊小説読んだってきっと私はフランス語がわかるように
なるわけじゃなくて。それがましてや全然概念が違う異星人のゲンゴなんだから
まあ、嘘がつけないとか現在しかないとか文字はないとか、まーそんな感じ、
くらいにしかわかんなくても。一応話は読んでいける。
 
新しい大使のゲンゴが麻薬となってアリエカ人たちを狂わせる、とかね。
マクロスを連想してイメージした。敵が歌声で「デカルチャ!!??」って
ビビッてうろたえまくって陶酔してとかになってたなーと。
 
ゲンゴが変わると認識思考世界が変わって革命になる、というの、面白かった。
伊藤計劃の『虐殺器官』も連想。あれは虐殺を呼ぶことばがどうこうの話。
私はそうやって似た感じ、を連想しながら読んだ。この本だけの概念で一気に
理解っていうのは私にはむずかしー感じ。

直喩から隠喩になりたい、とか、直喩からずらしていって嘘を教える、とか
そこに大興奮!とか、それが苦行とか、面白い。エウレカ!だとかいって
昔発見した感じってこう世界が変わったのかなーと思う。認識が変わった時に
世界が変わる感覚、というのはアリエカ人ほどの苦しみや激しさはないにせよ
自分でもわかる気はする。

嘘を覚えると麻薬が効かなくなる理屈はよくわからなかった。。。エズ/ラーの
ゲンゴのズレが嘘を知らない知覚には麻薬だったのか。嘘を喋れるようになると
ズレがただのズレになってもう麻薬じゃなくなるのかなあ。うーん。
サイルはどうしたかったんだろ。

戦いに向かうアブサードの群、止まってよかったね。オームをとめたナウシカみたい
な感じか、と、また連想しながら読み終わり。
結構疲れた。。。

時間の単位もこの世界の中のことなのでピンとこなくて。この革命がどのくらいで
行われたんだ。けっこう早かったのかなー。あんまり食料に困るとかいう感じでは
なかったな。でも都市もタウンもかなり壊れてるよーでもあり、よくわからない。

まあでも、エンバシータウン、新生してよかったね。終わり。


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映画「クラウド アトラス」

*具体的内容、結末まで触れています。


映画「クラウド アトラス」

「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟監督、が、兄が姉になっての
監督作品! と、なんかそういうのでも話題作かなー。
6つの物語が、平行して描かれる。輪廻転生の物語?
でも、生まれ変わりとか前世とか来世とかのつながりがほんのり示される
けれども、そこが一番というわけじゃなくて。
それぞれの物語の中で、それぞれの時代の中で、生きて、少しでもよりよい
方へ、生きてゆくこと、という感じかなあ。

一番の主役?は、トム・ハンクスが演じる男の生まれ変わりか。
レビュー見ると、昔悪かった彼がよりよく生きて浄化されてゆくメイン
ストーリーな感じ、みたい。そういわれればそうだったかも。
 
古いほうから行くと、奴隷制度があったころの船の旅の話、5,60年位昔?
20世紀はじめくらいの作曲家美青年の話、現代、近未来あたりの、
石油ロビイストがどーこーのエネルギー問題絡みのちょっとアクションミステリ
っぽい話、老人施設に強制的に入れられたおじーちゃんがそこを脱出する話、
クローンが不当に搾取されているSFアクションな未来の話、もっと未来な
文明崩壊後の原始状態な汚染された地球の話、という6つか。

それぞれの話がちょっと描かれてはすぐ別の物語になっていく。
最初の最初は何の話なんだ? と見えなくてもどかしいけれども、どれも
少しずつ進んでいくにつれどんどん面白く引き込まれ、それぞれの話が
クライマックスになっていくカタルシスは6倍!って感じで面白かった。

どのお話も、アダムが言ってたように、雫の一滴もやがて大海になるのです、
というようなことかなあ。大海の前にささやかな小さな一しずくでしかないと
しても、やがてそのしずくがあつまれば海になる。
ひとりひとりがよりよく生きる、と、いうことかなあと。
 
んでっ。
作曲家めざす美青年くんですよ!ベン・ウィショー。007のQで激萌だった
けれども、今回も、もーーーったまらなくステキ! ロバートくん可愛い!
いきなりシックススミスくんと裸で寝てるシーンからきて鷲掴みにされてしまった。
モーリスですよアナカンの世界よ~。風木とか連想したよ~。きゃ~。
たぶんお貴族? な、シックススミスくんと別れ、老作曲家のところへ採譜係りと
して乗り込んで。一緒に作曲したりして、でも曲を奪われそうになり勢いで発砲。
逃げて、そして自殺。シックススミスくんにずっと手紙を送り続けていたのね。
最後の最後ですれ違い、ロバートくんは気付くけど、再会はしないまま、独りで
死を選ぶ。なんてうつくしい。
人の愛の物語として、これか! 痺れました。
アダムと新妻とかあったけどさ、あっちの話は奴隷解放のほうがメインだよね。
愛の物語は、ロバートとシックススミスなんだ。なんて素敵。かっこよかったあ。
夢のシーンで、何故か陶器壊しまくる二人とかね、すごいよかった。切ない。
彼らの話だけで二時間お願いしたいくらい素敵すぎてめろめろです。

ペ・ドゥナがクローンなメイド? をやる未来SFなところ、「空気人形」を
連想。そして「マトリックス」を連想。ここも二時間お願いしたい、って感じの
面白さだった。

船で黒人奴隷を結果的に救ったアダムが、毒飲まされたり助けられて介抱されたり
そのへんもとっても素敵だった。えろす、と思ってしまうのは私だけでしょうか。
 
6つのお話が平行してある、ということは、それぞれがあらすじでいいとこな
シーンの集まりでもある。でも、最終的にどわーっとクライマックスがきて、
そして、地球を遠く離れた男の語る千夜一夜物語、という終わりになっていく
そのぎゅーっとまとまる感じ、うまいなあと思う。いろんなあらすじを見た、では
なくて、長い長い壮大な時間の物語を見たと思えた。

上映時間172分。てことで実際長いんだけどね。約3時間だ。やっぱり映画館で
集中して見てよかった。
そしてたぶん、誰がどれやってるんだ、って全部はっきりわからなかったけれど、
それが気になる場合にはブルーレイでね!ってことだ。
エンドロールの時に、それぞれの絵さーっと出してくれたけど、それでもわからんわw
面白かった。

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