« 「帰ってきた寺山修司」 世田谷文学館 | Main | 『のめりこませる技術』だれが物語を操るのか(フランク・ローズ/フィルムアート社) »

『キャパ その青春』『キャパ その戦い』『キャパ その死』 (リチャード・ウィーラン/文春文庫)

『キャパ その青春』(リチャード・ウィーラン/文春文庫)
『キャパ その戦い』(リチャード・ウィーラン/文春文庫)
『キャパ その死』 (リチャード・ウィーラン/文春文庫)

もともとは一冊の本だったようで。この文庫が2004年刊行、
単行本はその15年も前に出た、そうです。もともとのアメリカ
での本は1985年刊行みたい。
訳は沢木耕太郎。翻訳はこれが初めてってことらしい。アマチュアの
翻訳家、として書いたんですね。
後ろに、長めの「原注、訳注、雑記」がついている。文庫化にあたり
間違いの訂正したりいろいろしたようです。
が。
それでも私にはすごく読みづらくて、読むのにすごーく時間がかかった。
期待ほど面白くもなかった。。。特に一冊目は、まだ青少年つーくらい
の、キャパになる前のアンドレ、バンディくんのことで、何者でもない
一人の若者が焦ったり貧しかったり、という感じ。

著者がそもそも学究的な人物なようで、伝記を書くにあたって、
丁寧な取材、事実の検証を積み重ねて正確さを重んじて書く、という感じ
みたい。だからたぶん原文からして面白みとか情感的なことは排除して
書かれているんだろうなあと思う。
さらにその翻訳だもんね。
すんなり読めなかった私の頭が悪いせいばかりでもない読みづらさなのだ、
と、思いたいところ。
沢山出てくる人の名前覚えられないし、何月何日にどの部隊について
いったか、どこへ、とか、細々した記述をわたしは覚える気もないし
そういう細かいことはいい、と、気にしない適当人間なもので。。。

キャパの移動もすさまじくて、あちこちあちこち、どこがどうなのか
地名と地理が頭に見えない私には無理だった。な、なんかともかく
ヨーロッパのあちこちとか、戦闘がありそうなところへガンガン行って
いたんだなあとぼんやり思う。

著者は話を面白くするために盛る、とかいうことはしない。事実を
確かめようがない、人物の気持ち的なことは全然書こうとしていない。
物語的にドラマチックに、を求めてしまう私にはどうにもつまらない。
でも伝記としてはそういうものなのかなーと思う。

この、スペインでの内戦だとか、ヨーロッパが戦争している、という
社会状況みたいなことをキャパの動きにつれて書かれているの面白かった。
なんかもー。戦争になるって、たいへん。いやもちろん大変なのはわかって
いるつもりだけど、でも、なんかもう、たいへんだよね。こわいし。不自由。

あ、『ちょとピンぼけ』の翻訳にもいろいろ間違いがあるそうです。
あららそうなのね。なんか不思議な文体で面白かったけど、でも、翻訳って
大変だねえと思う。あの本はたぶんもともとのキャパの文章の面白い魅力が
たぶん不完全ながらもわかる気がした。こっちの本は、たぶん著者の生真面目
文章なのね、というのが、わかる気がした。翻訳って、翻訳ってー。

『ちょっとピンぼけ』で読んでいた以降の、マグナムを設立して
ビジネスマンとして優秀に活躍したキャパとか、それにもかかわらず
すぐ退屈して、ギャンブルばっかりやって、収入を得ても片っ端から
使ってしまう綱渡りなキャパの生き方とか、面白かった。
イングリット・バーグマンと、そんな素晴らしい恋人と、それでもやっぱり
結婚なんて考えられないというのも。
戦場はもうこりごり、になりながら、カメラマンなんていつまでも
やるもんじゃない、って感じながら、やっぱり戦場へ行く仕事を受けるのね。

定住や家庭とは無縁に、荷物は洋服とカメラ程度のホテル暮らしの人生。
あらゆる場所で友人をつくり飲みあかしギャンブルをし、人生を楽しみ、
戦争の死も苦しみも誰よりも深く見続けて。40歳で地雷で死亡。
もしももっと長く生きれば、結婚や家庭という居場所を作ったかもしれない。
でも、40歳。若いよなあ。
若くして成功し若くして恐ろしく経験をつみ、30代で人生に倦んでいた。
もう少し生きることがあれば、違う道っていうのがあったろう。

それでも、あの時代あの戦争の中でしか生きられない人生だったのか。
神様はたまにその時代その場所でしか生きられない人間をつくる気がする、
そういう人だったのかなあ、キャパ。
「ロバート・キャパ」というのは若い自分たちを売り込むためにゲルダと
作り上げた架空の人物。そして、ついにその架空の存在に「なった」時、
キャパは本当は何を思ったのかなあ。

誰もが親しく楽しく感じ、友達になるキャパの魅力。それはキャパの写真の
中にあり、後から知るには、こういう本を読むとかではだめなのかもしれない
と思う。もちろん、いろんなことを知ることができて読んだのはよかったと
思うけど。
キャパの写真展見に行った時の方が感動はあった。
 
沢木耕太郎は今『キャパの十字架』という本出してて。たぶん先日NHKスペシャル
で見た、「崩れ落ちる兵士」の写真に関してとかまあ、この本訳して、その後も
いろいろ考えたことの本なのだろうと思うんだけど。
でも、キャパにはキャパが残した写真がある。
それでいいのかもしれない。

キャパそのものじゃなくて、キャパをモデルにしたドラマチック物語を
読みたいと思うわ。

|

« 「帰ってきた寺山修司」 世田谷文学館 | Main | 『のめりこませる技術』だれが物語を操るのか(フランク・ローズ/フィルムアート社) »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 「帰ってきた寺山修司」 世田谷文学館 | Main | 『のめりこませる技術』だれが物語を操るのか(フランク・ローズ/フィルムアート社) »