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『美しいこと』下(木原音瀬/蒼竜社 ホリーノベルズ)

*結末まで触れています。


『美しいこと』下(木原音瀬/蒼竜社 ホリーノベルズ)

離れたものの、松岡のことが気になる。自分のことを好きでいて
くれる松岡との心地よい時間。このまま、友達としていられない
だろうか。このまま、二人で楽しい時間を過ごすことができれば
いいのではないか。
だが、恋愛感情を抱いている松岡と、曖昧な態度のままの寛末と
の気持ちのすれ違いはだんだんごまかしようがなくなる。
 
ということで下巻。
「美しいこと」の続き少しと、「愛しいこと」という、寛末側
視点のお話とで、完結。どっぷりと、ひたすらどっぷりと恋する
男のどきどきもやもやきゅんきゅん盲目話だったー。
 
作者あとがきにあるように、寛末ってばもうー。

 「それにしても、優しく卑屈で、そしてちょっと無神経な男と
 いうのは、たちが悪いような気がします。寛末の台詞を考えな 
 がら「ああ、嫌な奴……」と何度呟いたことか。世間一般的に
 は、よくいそうな気もしますが」
 
ほんとにねー。よくいそうな気がしますが。基本的に優しくていい人
って感じだけどそれは実はどうせダメな自分から目をそむけて逃げ、
半端なプライドだけはあってやっかみながらもなんとなくごまかして
心地いいラクなところで自分のほどほどそこそこのところでなんとなく
うまくいけばいいのになー、と、いう男。

そういう、理想的ではない男、というのをちゃんと描いているのが
凄いなあと思う。 
BLカップルだと、わりと攻めくんは少々可愛いところもある完璧理想
の王子様タイプが多い気がするのだけど、寛末ってもーほんとーーーー
にイライラするリアルに普通っぽい男でさー。松岡くんなんでこんなの
がいいのだ!君の目は節穴だ!マジ恋は盲目! とつっこみたい。でも
恋しちゃったんだよねえ。

本当にすっかり恋愛小説だった。

松岡くん健気。
松岡くんがまさに理想的献身的可愛い健気完璧できる男でありながら
可愛い男。まあそうでないとBL的に成り立たないぜ、という感じ。
『薔薇色の人生』でも情けない系ダメおっさん攻めと、素敵完璧可愛い
受けってカップルだったな。両方がリアルっぽいダメ男だとまあカップル
にならないよね。

恋愛小説。これ、松岡くんが女の子だったらうろうろゆるい寛末も
すんなり恋愛してさっさとカップル成立してるんだよね。女装姿の時は
思い切って必死で積極的にアプローチしたわけだし。
リストラ後実家帰って兄嫁に「気になるなら結婚してみればよかったのに」
とすんなり言われちゃったりして。大好きな恋より二番目に好きくらいが
結婚にはちょうどいいのよ的な。それはそうだよなーと、結婚のリアルな
感じではある。
結婚したりつきあったりしてるカップルが全て最高の素晴らしい恋を成就
させているわけじゃない。なんとなく相性がいい、くらいのゆるさとか、
妥協や惰性のはてにでも、結婚はある。カップル成立はある。
 
でも男同士だったら。ゲイという自覚も覚悟もないただの男が、同性を
好きになってしまったら。
そのぐるぐるを、曖昧さをずるさを、とても丁寧に描いていて面白かった。
もう好きって覚悟決めろよ!寛末のバカ!!!とイライラするけど(笑

最後、優しくされて怖いもうやだ、という松岡くんが実に可愛い。
よかったね。マジで寛末は松岡くんにもう二度とこんな思いさせるなよ、
と小一時間説教したい(笑
 
すごく上手いなあ面白かったなあと思う。靴のエピソードとか実に上手い。
だけど木原さんの作品を私は大好きにはなれないのは何故だろう。
すんなりキャラに惚れさせてくれない。リアルっぽくダメなところダメに
描いている力量、だとも思う。けど、うーん。すごく上手いと思うだけに、
もう一歩惚れさせてくれるといいのに、と、私の勝手な思いでもどかしい。
たぶん私が恋愛小説がダメなのかなあ。
恋愛小説。うーん。
だから私個人の問題だなあ。うーん。恋愛。うーーん。なんだろう。
恋愛で好きなのもいっぱいあるから、BLだとか好きなはずなのに。

木原さんのはほんと、単純に気持ちよく消費するBLとはちょっと
違っているなあというのはよくわかる。
あと私が大好きなのは榎田尤利だけど、この二人がたぶん今トップクラス
なんだろーなーと、思う。(*個人のイメージです)
榎田さんのほうがしっかりエンタテイメントでサービスあるなあと、
比較すると思う。キャラ萌も榎田さんのほうがしやすいわ。その上話作り
もすごくしっかりしてて、読みやすく面白いよ。そして深いとこにも
しっかり刺さってくるなーと。
木原さんのほうがエンタテイメントではないのかもなあ。
でもすごく面白かった。満喫。
 

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