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『解錠師』(スティーヴ・ハミルトン/ハヤカワポケットミステリブック)

*結末まで触れています。


『解錠師』(スティーヴ・ハミルトン/ハヤカワポケットミステリブック)
 
マイクルは8歳の時のある事件で、ちょっとした有名人になっていた。
ひどい出来事。それからいっさいしゃべらなくなった「奇跡の少年」。
それから10年ほど。
成長した彼はトラウマを乗り越えて新たな人生を歩んでいるか?
確かに、新たな人生かもしれない。金庫破りの天才として仕事をしていた。

マイクの獄中からの手記、という形で語られる一冊。
なので、初めから結末はわかっているとも言える。彼は今刑務所にいるのだ。
9年間も。ということは「現在」というのは20代終わりということ。
どうしてこうなったか、というお話はマイクが10代の頃のこと。

青春小説的であるとも言える。心因的要因からしゃべらなくなった少年。
彼はいかに成長し、いかに鍵を開ける芸術家となったか。
鍵を開ける、という才能の他に、絵の才能もある、というのが素敵要因。
ろくでもない10代の後半。絵の才能があると認められた二年ほどの
高校生活は、唯一まともな幸せや暮らしがあった時期。
友達が出来て、そして、恋をした時。

犯罪者にならずにすむ道はあったはず。引き返すことができたポイントも
あったはず。振り返ってみればそう思える場面のいくつか。でも、まだ
17才ほどだったマイクは、他のやりかた、他の方法でうまく切り抜ける
ことが出来なかった。
何より自分自身が鍵を開けるということに魅了されてしまっていた。
心から愛した、運命の恋人を助けたかった。

手記、でありながら、そもそもの8歳のときのひどい出来事をなかなか
語りだすことができない。その過去と、捕まった当時と、両方の思い出が
少しずつ語られていく。
終わりのほうになってついに恋人アメリアに8歳の時なにがあったのか
示すことができたシーンには感動してしまった。

ろくでもない大人ばっかりってわけじゃない。伯父さんは伯父さんなりに
ちゃんとしてたよなあ。
鍵を開ける才能。鍵を開く芸術家。平凡じゃないその力があったばっかりに。

実際鍵をあけるシーンの数々は細やかな描写が凄くて引き込まれる。面白い。
しかし犯罪なのだ。マイクー。しっかりしろー、と、応援せずには
いられないです。語り口がとても魅力的。それにハンサム少年らしいし。
美少年俳優で映画になればいいのにー。
しゃべれないから難しいかな。でも心の声ってことでいいんじゃないかな。
ずっとモノローグで。

ついには捕まって、刑務所の中。でも捕まってよかった、というラストだ。
希望があるラスト。すごくよかった。面白かったです。

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