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『キリング・フロアー』上下(リー・チャイルド/講談社文庫)

*具体的内容、結末まで触れています。


『キリング・フロアー』上下(リー・チャイルド/講談社文庫)

ジャック・リーチャーは、初めてやってきたジョージア州の小さな田舎町の
ダイナーで卵料理を食べていた。そこにきたのは単なる気まぐれ。しかし、
突然警官に銃をつきつけられ、警察へ連行された。容疑は、殺人。
 
映画「アウトロー」を見たとき、小説みたいな映画だなあと思ったので、
本を読んでみよう~と思った。原作は One Shot っていう、シリーズの
6作目くらいのやつみたい。でもまあせっかくなので最初のをまず読んで
みようと思いました。これが著者デビュー作。1997年か。これは
2000年刊行講談社文庫。
訳者あとがきによると、すでに映画化権は売った、ってことだったみたい。
その後こんなに時間がたって映画化なのかー。しかもシリーズ途中で?
と思うけど、まあ、映画化話はあっても実現しなかったりとかたぶんなんか
いろいろあるんだろうと思う。

しかもリーチャーの容貌はトム・クルーズとはぜーんぜーん違う!
かなりの長身、金髪、氷山のような青い素敵な目、らしい。きゃーやだそれ
かっこい~。そのまんまなキャスティングはできなかったのか。 
トムの「アウトロー」も好きだったからこそ本読もうと思えてよかったんだ
けど、そのスタイルなリーチャー見てみたかったかも~。
ともあれ読んでよかった。すごく面白かった!
 
話は、いきなり拘留されたリーチャーが、マーグレイヴという小さな町で
一体何が起こっているのか、だんだん深みにはまっていくように進む。

視点はリーチャー。元軍人。憲兵。人殺しの訓練をたっぷりうけた兵士を
取り締まるためいっそう訓練を受けた元軍人。除隊の後、自由を満喫する
ため、どこにも何にも属さず放浪している男。音楽が好きで、頭の中で
好きな音楽を何通りにも再生して一人で楽しむことができる男。

さびれた田舎町なのに、誰も困っていないようなマーグレイヴの町。
町を牛耳る町長。巨大な倉庫を建てて、町を潤している財団。眠ったような
その町に突然立て続けに起きた殺人事件。その被害者の一人が、リーチャー
のたった一人の肉親、兄であったことがわかる。
容疑がはれてさっさと立ち去るつもりだったリーチャーは、無関係では
なくなった。兄のために、できることをするしかない。

映画の印象から、リーチャーは女と簡単に寝ないタイプなのかと思った
けど、あっさりロスコーと一目ぼれしあってた(笑)ま、町に拠点は
いるしね。そしてこんな田舎町に何故かボストンで二十年警官を務めあげ
たハーヴァード出のベテラン刑事部長がいる。彼なりの事情で。そして
この町のよそ者として。彼らが、一時のパートナーになる。
謎がだんだん見えてくると、とてつもなく壮大な贋札絡みの犯罪がこの町で
行われているらしい、とわかる。兄、ジョーが掴んでいた鍵。おにーちゃん
すごいかっこいいよ。それを引き継ぐリーチャーもかっこいいよー。
仲間は三人。ハルブも少し加わるから四人くらいか。そして町全体を
敵に回すようなことになって、ハラハラドキドキー!

FBIのピカードね、彼に促されてロスコーが離れたときから、心配
だったー。誰を信じていいのかわからない。どう仕掛けられてくるか、
信用できないぞー信用しないぞー、と思いながらドキドキで読んだ。
面白かった~!

登場人物みんな魅力的。主要メンバーはもちろん。悪い奴らのほうも
たっぷり悪くて怖くて。さりげない町の人もなんかよくって。特に床屋。
最初なんてことない老人がやってる床屋で、たまたま世間話をして、
ってだけだったのが、ちゃんと最後までうまく効かせてくる感じ、いい。
ロスコーも美人で賢くて情熱的で仕事もばっちりできる女で素敵。フィンレイ
もかっこよかったなあ。
なんかおとぎ話めいた田舎町での、とんでもなくド派手壮大な犯罪、とか。
まさしくハリウッド大作映画にしてほしい感じ。
ちゃんと子どもは助かったし、女性がめちゃくちゃな酷い目にはならなかった。
そこは本当にほっとする。
リーチャーは、襲ってきた敵にまったく容赦なくしっかり殺してゆく。
孤立無援だし相手は5人とかで一人で対峙するとなっては殺してゆくしかない
んだけど。そのへんのアウトローな感じは冷酷さがあってとてもいい。
結局女とうまくはいかない、というのも、まあ定番だけどとてもいい。上滑り
じゃない納得できる感じがあった。

訳者あとがきによると、著者は英国人。グラナダTVに二十年勤めて、それ
から執筆活動を始めた、とある。でもいかにもアメリカ的プロットのアメ
リカ舞台の小説にしたのは

 「英国を舞台にしたのでは書きえないもっと広がりのある、開放的な
 プロットをつくりたかったのです。外国人にとってアメリカの地形的な
 広さはとても魅力です」

というようなことらしい。

 「『キリング・フロアー』のような話は、ぜったいに英国ではおこり
 えません。舞台を英国にもってきていたら、もっと窮屈で、心理描写の
 多い作品になっていたでしょう。一読者としてはそういう話が好きでも、
 自分では書きたくなかった」

そうです。なるほど。私は英国舞台の窮屈な心理描写たっぷりの小説も
大好きだよー。でもこれもとっても面白かったよー。
シリーズは続いてるようだけど、翻訳全部出ているわけではなさそう。
「アウトロー」の原作は読むつもり、だけど、他の追いかけるかどうかは、
ちょっとゆっくりにしよう。映画もまた出来ればいいなー。楽しみ。

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