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『穢れた手』(堂場瞬一/東京創元社)

*具体的内容、結末まで触れています。


『穢れた手』(堂場瞬一/東京創元社)
 
収賄の容疑で拘留された刑事、高坂。しかし、あいつはそんなことを
するようなやつじゃない。子どもの頃からの親友であり同じく刑事の
桐谷は信じていた。30年にも及ぶつきあいで、互いのことを誰より
よく知り合っていると信じていた。
高坂の無実を証明しようと、一人で動き始めた桐谷だったが、高坂も
かつて世話になった上司からもやめておけと言われる。
そして謎の脅迫メッセージが届く。
 
堂場瞬一って初めて読む。長年の男の友情!とわくわくして読んだ。
うーんー。期待持ったほどはときめきはなく(笑)、お話としても
まあまあ、な感じ。やっぱりどうにも、桐谷の独りよがりが鼻につく。
なんでそう一人で勝手に突っ走ろうとするのかね。
だんだん、高坂と親友で何もかも知ってるもん!って思ってるのは
桐谷のほうだけ、ということが明らかになり、桐谷は、僕だけ仲間外れ
にしないでよ!と駄々っ子な意地の張り方してるように見えてきて、
ややひく。
ハードボイルドに決めようとしているのか、ジャズとか珈琲とかなんだ
けど、それもなんかー。鼻につく。もういい加減ジャズが渋くて素敵と
いうモードはどうにかならないものか。。。私がジャズをまったくわか
ってないからダメなんだろうけれども。

二十年前、新人警官だったときに背負ってしまった十字架、というのが
高坂と桐谷と上司村井との間の絆、みたいに書いているんだけど、
それも微妙に、なんか、そーかなあ。。。と思ってしまう。隠蔽もみ消し
はそりゃあ心の重荷だろうけど、そこは乗り越えようよ。腹くくれよ。
そして何故か、村井からも高坂からも、守られちゃう桐谷。なんで?
桐谷の手が比較的穢れてないから。というのがなんか唐突な感じで私は
なんだかなあ、という気しかしなくて。
実は二十年前の件を復讐しようとしてる被害者の息子、とかも唐突。
うーん。
これは私の希望としては、この一冊じゃなくて三巻分くらいお話じっくり
描いて読ませて欲しかった。さくさくとても読みやすいんだけど、それが
余計に物足りない気分。
桐谷がひたすら独りよがりに突っ走ってみたけど、なにかと見当違いだし
勝手な思い込みばっかりだし、おめえ結局何の役にも立ってないじゃん、
で、終わって、誰にも惚れなかったなー。
馬鹿なのか? 結局馬鹿なのか? 桐谷はたぶんこの後昇進するのだろう
けれど、少しは賢く、まわりをちゃんと見られるようになってくれること
を祈ります。終わり。

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『キリング・フロアー』上下(リー・チャイルド/講談社文庫)

*具体的内容、結末まで触れています。


『キリング・フロアー』上下(リー・チャイルド/講談社文庫)

ジャック・リーチャーは、初めてやってきたジョージア州の小さな田舎町の
ダイナーで卵料理を食べていた。そこにきたのは単なる気まぐれ。しかし、
突然警官に銃をつきつけられ、警察へ連行された。容疑は、殺人。
 
映画「アウトロー」を見たとき、小説みたいな映画だなあと思ったので、
本を読んでみよう~と思った。原作は One Shot っていう、シリーズの
6作目くらいのやつみたい。でもまあせっかくなので最初のをまず読んで
みようと思いました。これが著者デビュー作。1997年か。これは
2000年刊行講談社文庫。
訳者あとがきによると、すでに映画化権は売った、ってことだったみたい。
その後こんなに時間がたって映画化なのかー。しかもシリーズ途中で?
と思うけど、まあ、映画化話はあっても実現しなかったりとかたぶんなんか
いろいろあるんだろうと思う。

しかもリーチャーの容貌はトム・クルーズとはぜーんぜーん違う!
かなりの長身、金髪、氷山のような青い素敵な目、らしい。きゃーやだそれ
かっこい~。そのまんまなキャスティングはできなかったのか。 
トムの「アウトロー」も好きだったからこそ本読もうと思えてよかったんだ
けど、そのスタイルなリーチャー見てみたかったかも~。
ともあれ読んでよかった。すごく面白かった!
 
話は、いきなり拘留されたリーチャーが、マーグレイヴという小さな町で
一体何が起こっているのか、だんだん深みにはまっていくように進む。

視点はリーチャー。元軍人。憲兵。人殺しの訓練をたっぷりうけた兵士を
取り締まるためいっそう訓練を受けた元軍人。除隊の後、自由を満喫する
ため、どこにも何にも属さず放浪している男。音楽が好きで、頭の中で
好きな音楽を何通りにも再生して一人で楽しむことができる男。

さびれた田舎町なのに、誰も困っていないようなマーグレイヴの町。
町を牛耳る町長。巨大な倉庫を建てて、町を潤している財団。眠ったような
その町に突然立て続けに起きた殺人事件。その被害者の一人が、リーチャー
のたった一人の肉親、兄であったことがわかる。
容疑がはれてさっさと立ち去るつもりだったリーチャーは、無関係では
なくなった。兄のために、できることをするしかない。

映画の印象から、リーチャーは女と簡単に寝ないタイプなのかと思った
けど、あっさりロスコーと一目ぼれしあってた(笑)ま、町に拠点は
いるしね。そしてこんな田舎町に何故かボストンで二十年警官を務めあげ
たハーヴァード出のベテラン刑事部長がいる。彼なりの事情で。そして
この町のよそ者として。彼らが、一時のパートナーになる。
謎がだんだん見えてくると、とてつもなく壮大な贋札絡みの犯罪がこの町で
行われているらしい、とわかる。兄、ジョーが掴んでいた鍵。おにーちゃん
すごいかっこいいよ。それを引き継ぐリーチャーもかっこいいよー。
仲間は三人。ハルブも少し加わるから四人くらいか。そして町全体を
敵に回すようなことになって、ハラハラドキドキー!

FBIのピカードね、彼に促されてロスコーが離れたときから、心配
だったー。誰を信じていいのかわからない。どう仕掛けられてくるか、
信用できないぞー信用しないぞー、と思いながらドキドキで読んだ。
面白かった~!

登場人物みんな魅力的。主要メンバーはもちろん。悪い奴らのほうも
たっぷり悪くて怖くて。さりげない町の人もなんかよくって。特に床屋。
最初なんてことない老人がやってる床屋で、たまたま世間話をして、
ってだけだったのが、ちゃんと最後までうまく効かせてくる感じ、いい。
ロスコーも美人で賢くて情熱的で仕事もばっちりできる女で素敵。フィンレイ
もかっこよかったなあ。
なんかおとぎ話めいた田舎町での、とんでもなくド派手壮大な犯罪、とか。
まさしくハリウッド大作映画にしてほしい感じ。
ちゃんと子どもは助かったし、女性がめちゃくちゃな酷い目にはならなかった。
そこは本当にほっとする。
リーチャーは、襲ってきた敵にまったく容赦なくしっかり殺してゆく。
孤立無援だし相手は5人とかで一人で対峙するとなっては殺してゆくしかない
んだけど。そのへんのアウトローな感じは冷酷さがあってとてもいい。
結局女とうまくはいかない、というのも、まあ定番だけどとてもいい。上滑り
じゃない納得できる感じがあった。

訳者あとがきによると、著者は英国人。グラナダTVに二十年勤めて、それ
から執筆活動を始めた、とある。でもいかにもアメリカ的プロットのアメ
リカ舞台の小説にしたのは

 「英国を舞台にしたのでは書きえないもっと広がりのある、開放的な
 プロットをつくりたかったのです。外国人にとってアメリカの地形的な
 広さはとても魅力です」

というようなことらしい。

 「『キリング・フロアー』のような話は、ぜったいに英国ではおこり
 えません。舞台を英国にもってきていたら、もっと窮屈で、心理描写の
 多い作品になっていたでしょう。一読者としてはそういう話が好きでも、
 自分では書きたくなかった」

そうです。なるほど。私は英国舞台の窮屈な心理描写たっぷりの小説も
大好きだよー。でもこれもとっても面白かったよー。
シリーズは続いてるようだけど、翻訳全部出ているわけではなさそう。
「アウトロー」の原作は読むつもり、だけど、他の追いかけるかどうかは、
ちょっとゆっくりにしよう。映画もまた出来ればいいなー。楽しみ。

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『解錠師』(スティーヴ・ハミルトン/ハヤカワポケットミステリブック)

*結末まで触れています。


『解錠師』(スティーヴ・ハミルトン/ハヤカワポケットミステリブック)
 
マイクルは8歳の時のある事件で、ちょっとした有名人になっていた。
ひどい出来事。それからいっさいしゃべらなくなった「奇跡の少年」。
それから10年ほど。
成長した彼はトラウマを乗り越えて新たな人生を歩んでいるか?
確かに、新たな人生かもしれない。金庫破りの天才として仕事をしていた。

マイクの獄中からの手記、という形で語られる一冊。
なので、初めから結末はわかっているとも言える。彼は今刑務所にいるのだ。
9年間も。ということは「現在」というのは20代終わりということ。
どうしてこうなったか、というお話はマイクが10代の頃のこと。

青春小説的であるとも言える。心因的要因からしゃべらなくなった少年。
彼はいかに成長し、いかに鍵を開ける芸術家となったか。
鍵を開ける、という才能の他に、絵の才能もある、というのが素敵要因。
ろくでもない10代の後半。絵の才能があると認められた二年ほどの
高校生活は、唯一まともな幸せや暮らしがあった時期。
友達が出来て、そして、恋をした時。

犯罪者にならずにすむ道はあったはず。引き返すことができたポイントも
あったはず。振り返ってみればそう思える場面のいくつか。でも、まだ
17才ほどだったマイクは、他のやりかた、他の方法でうまく切り抜ける
ことが出来なかった。
何より自分自身が鍵を開けるということに魅了されてしまっていた。
心から愛した、運命の恋人を助けたかった。

手記、でありながら、そもそもの8歳のときのひどい出来事をなかなか
語りだすことができない。その過去と、捕まった当時と、両方の思い出が
少しずつ語られていく。
終わりのほうになってついに恋人アメリアに8歳の時なにがあったのか
示すことができたシーンには感動してしまった。

ろくでもない大人ばっかりってわけじゃない。伯父さんは伯父さんなりに
ちゃんとしてたよなあ。
鍵を開ける才能。鍵を開く芸術家。平凡じゃないその力があったばっかりに。

実際鍵をあけるシーンの数々は細やかな描写が凄くて引き込まれる。面白い。
しかし犯罪なのだ。マイクー。しっかりしろー、と、応援せずには
いられないです。語り口がとても魅力的。それにハンサム少年らしいし。
美少年俳優で映画になればいいのにー。
しゃべれないから難しいかな。でも心の声ってことでいいんじゃないかな。
ずっとモノローグで。

ついには捕まって、刑務所の中。でも捕まってよかった、というラストだ。
希望があるラスト。すごくよかった。面白かったです。

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『ケンブリッジ・シックス』(チャールズ・カミング/早川文庫)

*具体的内容、結末まで触れています。

『ケンブリッジ・シックス』(チャールズ・カミング/早川文庫)

ロシアに詳しい歴史学者、サム・ギャディス。妻とは離婚。離れて暮らす
娘のために、また自分の税金のために、まとまった金の必要に迫られていた。
古くからの友人、シャーロットから、かつて大事件だったスパイ、ケンブリ
ッジ・ファイブの他に、もう一人いたらしい大物スパイの噂を聞く。
シャーロットは記事を書く。そのあと、共同で本を出す、ということにした
矢先、シャーロットは死んでしまった。
彼女のメモから秘密を知る男にたどりつくが、男は秘密をなかなか明かさず、
この件に関わった人間が死んでゆき、サムの身にも危険が迫る。

イギリス!スパイ!裏切りのサーカス!わくわく!
と、かなり期待して読んだせいか、なんか、えー、とがっかりな感じ。
面白くない。

ギャディスが、本当に命の危険にさらされて、自分でも人を殺してしまった、
とガクガクブルブルになって、しかしそれでも謎を追いかけ続ける、という
のが納得できない。
一応金のため、ということもある。シャーロットを殺されて許さない、と
いうのもある。むしろこうなったら自分の身の安全のためにも秘密掴みたい
というのも、まあいいとしよう。でもなー。一般人な歴史学者が、本当に
命のやりとりの恐怖を味わったあとに、続けられるか????
娘使って脅迫されたりもある。でも、それ、ギャディスがこれ以上首を
つっこまなければいいってことで。娘のためにでもやめられない?
どんだけ自分勝手なマッチョ思考なんだよ。アホかバカかボケかクズめ。
という気分になってしまった。主人公なのにギャディス、魅力ないー。
それに結局あんまりお金に困って必死、みたいなこともなかったし。

一応、テレビ映えするらしいハンサムらしい、けどな。女性と出会いが
あったらすぐに一回やりたいなーということばかり考える40男。
まあねえ。それを考えるってところが愛嬌になればいいけど、なんか、
このキャラ設定には愛嬌も魅力も私は感じられない。
裏切られた!とか勝手にプンスカ怒っておいて、結局頼りまくるくせに
ターニャに対する態度は一体なんなんだ!自分から問題に巻き込まれに
突き進んでおいて、ターニャに八つ当たりってどういうことよ。げんなり。

そしてすべての元凶は、自己顕示欲にかられた老人、もと情報員の
トーマス・ニームなわけで。SISもさー、関わってしまった一般人殺す
はめになるくらいなら、こいつに安楽死してもらえばいいじゃん。最後に
もまた次のターゲットに手紙出してましたよ。早くこの老人に消えて
もらってー。

スパイのお話じゃなくて、過去のスパイを探る話、だった。
暗号名やら偽名やらで、ただでさえ名前をすんなり覚えられない私は
誰だっけ、と、何度も混乱してしまった。これは私の頭が悪い。

主人公の行動にいちいち、なんでやねん、とつっこみながら読んで
それはそれで楽しかったかもしれない。でも期待してしまったのが
悪かった。登場人物誰もかっこよくも魅力的でもなかった。
もしも映画化されたりなんかして、ものすごくハンサムかっこいい人が
演じたりするところっと脳内設定がかきかわるかもしれない。
でもなー。
やっぱりお話としても説得力も魅力も足りないと思うなあ。

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映画「レッド・ライト」

*具体的内容、結末まで触れています。


映画「レッド・ライト」

マーガレットは科学者。超常現象や超能力といった現象を研究している。
しかし、いまだかつて本物のそれを見たことはない。
助手をしているトム。物理学者。なんとか超能力の嘘を暴き、それを
信じてしまう人がいなくなるようにしたいと思っている。

30年前、一世を風靡した超能力者、サイモン・シルバーが復帰し、
公演を始めると知って、なんとか調査し、阻止しようとするトム。しかし
マーガレットはかつてサイモンと対決したことがあった。そして、彼は
危険だから、近づいてはいけないという。
一人でサイモンを調べようとしたトムだったが、実際怪しい出来事、危険
が、彼に迫ってきた。

トム・ハックリー博士を演じるキリアン・マーフィの目があまりにも素敵
じゃないか、とつられた。あのまなざし。とろけてしまう~。かっこいい
可愛い。あんな可愛い助手がいるなんて、マーガレットが羨ましい!

マーガレットをやってるのはシガニー・ウィーバー。やっぱり年をとってる
よなあ。今回は別に強い女ってわけでもなく、冷静でかっこよかった。
でもたった一つの弱点が、というほろっと弱いところがある感じ、よかった。
そして、まさかの途中で死亡。えっ。えーとー。彼女を殺したのはサイモン
側ってことでいいのかな。どうやって? そういうなんか細々とした疑問が
残ると思うんだけど。

一人でサイモンに対決しようとするトム。トイレでぼっこぼこにされたり
して大変。電子機器が火をふいたり、いろいろな怪現象が。ああいうのも
サイモン側? それともトムの無意識? こんな怪現象が起こりそう、と
思ったら無意識に起こしてしまった、みたいなことなのだろうか。

そう。サイモンは実は見るからに胡散臭かった予想どおり、実際には
検証実験にも思いがけないトリックを仕込んでいたのね。どんだけ準備が
できるのどんだけ部下がいるんだよそういうのが不思議だったりはするけど。
最後の対決では、実際にはトムが会場を破壊するかの勢い。トムが本当の
超能力者だった!ええー!
私はかなり素直に騙されて、おお~そっちか~!と楽しかった。
なにより血まみれボロボロなキリアンくんが~いい~。

予告や宣伝では、ロバート・デ・ニーロ演じるサイモンと、マーガレット
の対決がどーん!とクローズアップされている
クローズアップされている感じだけど、主演、キリアン・マーフィなんだよね。
トムが単なる助手っぽくされている宣伝段階からこのラストを隠す段取りなの
かなと思う。マーガレットもう死んじゃったの? 私かなりびっくりでした。
面白かった。

監督、ロドリゴ・コルテスという人。「リミット」という、えーとなんだっけ
男が気がついたら棺おけの中、さあどうするどうやって脱出する? って、
ずっと男一人棺おけの中だけっていう映画作った人だなーというので期待して
見に行った。(あれでも私、「リミット」見たのに結末とか覚えてないな。。。)
ワンアイデアをがつっと押して映画1本作っちゃう人なのかね。
お話としてはなるほどね、な感じだけど、見ている間は十分楽しい。今回も
主要登場人物ってその3人くらい。役者のがんばりが試されるのかもしれない。
キリアン・マーフィを堪能して満足しました。

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『The 500』(マシュー・クワーク/ハヤカワポケットミステリブック)

*結末まで触れています。

『The 500』(マシュー・クワーク/ハヤカワポケットミステリブック)

わたし、マイケル(マイク)・フォードはハーヴァードの学生だった。
誰もがあこがれるゼミ。ヘンリー・デイヴィスが講義をしている。彼は
ワシントンでもっとも力を持つ男だった。影の力を。
エリート学生の中では変わった育ち、毛色をしていたマイクは見込まれて
ヘンリーの会社で働くようになる。デイヴィスグループはロビー活動を
していた。人間にはすべて値段がつく。誰のどんなところを梃子で押せば
望みの結果が引き出せるか熟知している。
会社の、ヘンリーのやり方を懸命に学び、働き、夢でしかなかった豊かさ
を手に入れたマイクだったが、ヘンリーの裏側を知りはじめ、引き返せない
ところまで走り出してしまった。
 
ザ・ファイヴ・ハンドレット。
500人くらいのパワーエリートで世の中は動く。決まる。それを上手く
操るロビイストは影の権力者。みたいなの。ちょうど最近、五輪でレスリ
ングが正式種目から外れるかもしれない、ってんで、ロビー活動が足りて
なかったみたいな反省の弁があったりして、そっかオリンピックにもロビー
活動がいるものなのねーなんて思ったばかりでちょっとタイムリーな気分
で読んだ。

訳者あとがきによると、著者の処女作。2012年刊行。すでに映画化権
買われているそうです。
映画みたいだなーと、読んでいる最中にすごく思いました。さくっと
ぺらっとした映画になりそうな。アクション、素敵なヒロイン、陰謀、
貧しい暮らしから這い上がった昔ちょっと悪いこともしてた優秀で独特の
正義感ある若者が巨悪を打ち砕く。家族愛もあるよ。

どうしてそこでやめとかないんだー。長いものに巻かれておけー、と
つっこみながら読んだ。ま、いろいろ大変な目にはあってるけど、何事も
マイクに都合よくすすむよねー。まあそうでなくては話が進まないのだが。
特に、秘密のファイルの名前がわからない、わからなくてはどうしようも
ない、ってのを、アニーがさくっと立ち聞きしてわかる、とか。ええ~。
それそんなあっさりわかっていいわけ?とびっくりする。
まあでも結果的にそのファイルは見つけ出せず、保管庫(だっけ)ごと
火をつけられて燃やされてしまうから、結局ファイルの名前はどうでも
いいんだけど。
でもあまりにも、やっぱり主人公に都合よすぎないか、と、ひく。
どっかんと派手な映画にしちゃえば、もう細かいことはどうでもええやん!
ってことになるのかなあと思いましたが。

それに、ヘンリーもさ。こんなにあっさりマイクにしてやられるって。
今まで君が築きあげた会社ってそんな程度かよ、と、なんか巨悪としての
重みに欠ける気がしてしまった。ちょっとしょぼいなー。がっかりだなー。

なんだかなーと物足りなく思いつつも、読んでいるとわくわく感はそれ
なりにあって、終盤は一気読み。めでたしめでたしでした。しかしこの
めでたしめでたし、も、そんなもんですか~?となんか脱力でした。

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『ちょっとピンボケ』(ロバート・キャパ/文春文庫)

『ちょっとピンボケ』(ロバート・キャパ/文春文庫)
 
ニューヨークで、有り金はあと5セント、というある日、キャパは
手紙を受け取った。コリアーズの編集部から、戦争報道写真家として
緊急に雇い、英国へ出発して欲しいというものだ。前渡金1500ドル
の小切手も同封されている。

というところから始まって、キャパが第二次世界大戦の戦争の写真を
撮る日々の手記。

 「1913年、キャパはブタペストのユダヤ人の家庭にアンドレ・
 フリーマンとして生まれる」(文庫版あとがき)

この本の始まりはニューヨークからで、そこでなんとか出国のための
パスポートを手に入れなくては、と奔走しなくてはならなかったりして
なんだかいきなり大変である。それからもずっと戦地をめぐり、その度
に書類関係でもめたりごまかしたりすり抜けたり。
さまよえる人だったんだなあと思う。地に足がつかない感じ。どこに
いても異邦人な感じ。それは5つの戦場をめぐり常に旅の中にあると
いうキャパのイメージそのもので、でも、それはこちらの思い込みかなあ。
 
文章はもともとは英語みたい。でも後記によるとキャパのはどこか独特
だったような感じ。母国語ではなく獲得していったということなんだろうか。
翻訳でそのスタイルを現すのは大変なのだろうなあと察する。
それでも、面白い文章だと思った。

微妙にわかりにくさがあって、すっきりすいすい読める文章じゃないと思う。
そもそも私がキャパと同時代人ではないので、たぶんキャパが書いている中
で当然のことになっている世の中の感覚がわからないということもあるだろう。
なにより戦争についていって、そのめまぐるしい移動の地理感覚距離感覚と
いうのが、私にはピンとはこない。
戦争だけど、なんかこう、酒や煙草くれくればっかりだなーキャパも兵士も。
あと女の子と仲良くなることね。
ちょっとしたユーモア。ちょっとしたはにかみ。切ないロマンス。
そして戦争。
 
落下傘部隊といっしょに飛び降りて写真とるって、その最前線っぷりが凄い。
もちろん怖いだろう。手は震え、一度引き返したらもう前線になんか行けない。
なのに、もう一度やるんだなキャパは。
首になって困る、というとこもあるんだろうけど、なんで、行けるのかな。

兵士は、なんで行けるのかな。
もちろん訓練受けて命令受けて行くのだけど。でも、戦争を、なんでできるの
かな。平和ボケしか知らない私には分からない。

この戦争って、まだ国家という巨人が、肉体持って生身でガツガツ殴りあって
いるような手ごたえがある。そういうのを、読んでいて感じる。
作戦行動前に嘔吐する兵士。それでも出撃してゆく兵士。死ぬ兵士。

その中へ、戦闘ではなく写真を撮るためにゆく男。なんでそこへ行けるのか。

すっきりきっちり整理されているわけじゃない文章だけど、面白い。
盛り上げるような大袈裟さは全然ない。大変なことが起こっているのに、
現場の人間は、目の前のことでいっぱい。戦争が日常になっているあっさり
した感覚。ファシストは明確に敵。連合軍、米軍はヒーロー。
軽いわけではない。戦場に疲れ嫌悪し自己嫌悪し、苦しんでもいる。でも、
すっとそこに蓋をしてまた出てゆくような感じ。魅力的だと思った。原文で
読めたらもっと感じることができるのだろうか。なんだか不思議です。

映画みたいだ。いや、こういう事実から映画ができたのだ。

フランス解放の熱狂とか。そこでファシストに協力したからと頭を刈られる
女性。今の、私の目から見れば、哀しいことだけれども、当時その場の状況
としては、当然の報い。
私は平和ボケしかしらないぬるい命しか知らないと思う。
もちろん、時代というものは、どうしようもないことだと思う。

序文や、後記などなどにもキャパの死を悼む人々の思いが込められていて
キャパを知っているわけじゃない私もまた、大事な友達を失った気持ちに
なる。とてつもなく魅力ある人だったのだろう。
読んでみてよかった。
また、写真を見たいと思う。

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『今出川ルヴォワール』(円居挽/講談社BOX)

*具体的内容、結末に触れています。

『今出川ルヴォワール』(円居挽/講談社BOX)
 
大怨寺と呼ばれる寺で、死体が発見された。そこに居たのは御堂達也。
だが転落死と判断されアリバイが認められて警察からは放免される。
だが、達也の龍師の剥奪をかけて、双龍会が開かれた。 

ということで、前のほうで少し、双龍会があり、でも今回のお話の
中心は、達也の大怨寺への復讐、大怨寺での「鳳」という大賭博だった。
えーとー。
やっぱり私はこの著者と相性が悪い。話が全然入ってこない。シリーズ
三作目まで読んで、何一つ好きになるところがない。
言葉遣いも話づくりも、キャラも道具立ても何もかも私にとっては
面白くない。全て上滑り。

私が麻雀全然知らないし、博打とかうといせいかなあ。でもそういうの
出てても雰囲気で面白く読んだりもできるけどな。
漫画だったらなー。読めるのかもしれないなーと思いながらなんとか
最後まで読んだけど、もー、達也が復讐どーこーしようが、流とくっつく
んだろーが、ほんとどうでもいい。(くっついた、ってことだよね?流と
達也。それもまあ一作目最初からの予定調和だよね)

微妙に気持ち悪かったのが、辺理ちゃんが達也の母親そっくりな面立ち、
ということで、それは恋に落ちるだろうってな認識が登場人物たちに
なんの疑いも持たれず、好きなのどうなの、みたいな会話が繰り広げられ
ていること。まったくマザコン大肯定な思考回路め。
母親そっくりな人と付き合いたいって、男の子は思うのかねー。まあ達也
はどっぷりマザコンこじらせて復讐だとかなんだとかになってるけど。
女性キャラのほうもそこに何の疑いももってないのがきもちわるい。
なんだか素敵な淡い恋みたいに語ってんじゃねーよ。

まー、若い男女が仲良く頑張ってる共同体って、恋愛絡むよね。うん。
ヘテロなきゃっきゃうふふ甘酸っぱい的な恋愛に興味ゼロな私が読んだのが
いけなかった。

双龍会も博打も迫力も私にはなんも感じられない。はー。
次回からは論語くんが離れてくみたいで、それはちょっと面白いのかも
しれないけど、また撫子ちゃんが心揺れてみたいなことになったりして
いくんだろうー。私の好みからすると恋愛要素があまりにも多い。戦い的
なところが迫力ない。言葉づかいがきもちわるい。上滑り。
私にはのりきれなーい。
てことで、また続きそうなシリーズだけど私はもう読まない。読む前に
面白そうかもと期待しちゃったのが間違いだったー。相性悪かったー。

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映画「アウトロー」

*具体的内容、結末まで触れています。

映画「アウトロー」

無差別銃撃事件。殺された5人。逮捕されたのは、イラク帰りの元狙撃兵。
証拠はそろっているが、自白のサインの代わりに容疑者が書いたメモは、
「ジャック・リーチャーを呼べ」。

元陸軍。憲兵も勤めたことがあり、数々の勲章も受け、現在は行方不明の
ジャック・リーチャー。だが事件を知って彼は現れた。

トム・クルーズの新シリーズ!!!みたいな大々的宣伝してたと思うけど、
実際のところ興行的にはいまいちなんだろーか。今日見に行ったけどわりと
空いてたりしてなんか勝手ながら心配です。

リー・チャイルドによるハードボイルド小説が原作とのこと。「ワン・ショット」
というのが原作なのか。読んでみたいかも。

小説みたいな映画だなあと思った。
この頃は、ハリウッド映画にしたいのかよ、と小説読んでてつっこむことが
よくある感じがするけど、映画見て小説みたいだなあと思うのはちょっと面白い。
BGMがすごく少なくて、台詞もかなり少ない。
全体的に渋い。ハリウッド娯楽超大作!って感じではないのね。トムの新シリーズ
なんて前宣伝でミッションインポッシブル的などっかーんひゃっはー!みたいな
イメージもつと、肩透かしかも。

カーチェイスのシーンはひたすらエンジンの音とかぶつかる音ブレーキングの
ぎゃぎゃーんっていうのばっかり。盛り上げるぜ!というBGMはないのね。
そういう抑え目なつくりが渋くてかっこいい感じかも。
あ、酒場のシーンでBowieのヤング・アメリカンがかかってて、わ~いと思った。
この数少ない音楽の中に好きなのが入ってる。うれしかった。

トムの素敵な半裸の筋肉美シーンはほんっと少しだけだったしー。セクシーシーン
もなし。でも惚れられちゃうのはわかる。きゃ。

中途半端に巻き込まれちゃったサンディ。すごく美人で可愛かった。
真っ赤な口紅で、男に頼って男に利用されて、ってちょっとおバカなんだけど、
でもリーチャーに少し説教されて、ってあのちょっとの感じ、とてもよかった。
彼女が、リーチャーをハメるために殺されて、リーチャーが静かに怒るの、いい。
へレンが人質にとられたことより、そっちのほうに怒ってたような気がする。

弁護士のヘレン。私の好みからすると、もうちょっと美人であってほしかった。
有能なつもりよ、というけど、あんまり有能そうじゃない気が。。。まあ、パパ
との確執とあるのかね、というのもありがちでもありよくわかんなくもあり。
本読めばもうちょっとヘレンのことをよく思えるのだろうか。んー。でもヘレン
にはあんまり興味ないな。
彼女が人質にとられたってわかっても、知るか、みたいに電話をガッシャン!と
切るリーチャーが面白かった。
ムカついて電話かけ直してやっぱお前殺す、とか。そして相手が何か言いかける
けど聞かないで切ってしまう。可笑しかった。

リーチャーを襲おうとするチンピラどもが、どうにも弱っちくて情けなくて、
可笑しかった。襲撃シーンは大体お笑いシーンになってたな~。
リーチャー強い!ってとこなんだけど、相手がバカで弱いんじゃねーの。
でもやっぱそれはそれなりにトムかっこよかった。

射撃場で、マスター?経営者?なおっさんとのシーンもよかった。ああいう
元軍隊の人間同士、みたいなのかっこいいよね。
しかしその縁で、最後の襲撃の援助にきてくれるってのも、どーだろー。
ま、そこは映画だし小説だしいっか。

アウトロー。リーチャーは法律や裁判に従わず、制裁は自分の信じるところ
によって決める。敵を、悪い奴を殺す。
ヒーローじゃないんだ、って台詞もあったと思うけど、まさに、ヒーローじゃ
ない。バットマンだったら殺せないんだっけ。アメリカン・ヒーローだったら
私刑はしない。
かっこいいし自由だ。でも。そのへんの危うさが魅力だなー。
でも悪い奴のほうが、なんか曖昧だったからなー。何がしたかったのかよく
わかんない。悪いほうにもっと魅力があればよかったのになー。狙撃の彼は
なかなか素敵だったけど。

ハードボイルドな感じではあるし、現代の西部劇みたい、って書いてたコメント
も見たけど、うん、流れ者が現れて事件にけりをつけてまた去っていくって
西部劇っぽいのかなあ。西部劇をそんなに見たことあるわけじゃないので
イメージでしかないけど。
でもどっかキメてるようでもなんかダサくて可笑しくて可愛くなってる感じが
あって、私はかなり好きだった。
シリーズってことにほんとになって、次があればまた見にいく。トム好きだー。

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『美しいこと』下(木原音瀬/蒼竜社 ホリーノベルズ)

*結末まで触れています。


『美しいこと』下(木原音瀬/蒼竜社 ホリーノベルズ)

離れたものの、松岡のことが気になる。自分のことを好きでいて
くれる松岡との心地よい時間。このまま、友達としていられない
だろうか。このまま、二人で楽しい時間を過ごすことができれば
いいのではないか。
だが、恋愛感情を抱いている松岡と、曖昧な態度のままの寛末と
の気持ちのすれ違いはだんだんごまかしようがなくなる。
 
ということで下巻。
「美しいこと」の続き少しと、「愛しいこと」という、寛末側
視点のお話とで、完結。どっぷりと、ひたすらどっぷりと恋する
男のどきどきもやもやきゅんきゅん盲目話だったー。
 
作者あとがきにあるように、寛末ってばもうー。

 「それにしても、優しく卑屈で、そしてちょっと無神経な男と
 いうのは、たちが悪いような気がします。寛末の台詞を考えな 
 がら「ああ、嫌な奴……」と何度呟いたことか。世間一般的に
 は、よくいそうな気もしますが」
 
ほんとにねー。よくいそうな気がしますが。基本的に優しくていい人
って感じだけどそれは実はどうせダメな自分から目をそむけて逃げ、
半端なプライドだけはあってやっかみながらもなんとなくごまかして
心地いいラクなところで自分のほどほどそこそこのところでなんとなく
うまくいけばいいのになー、と、いう男。

そういう、理想的ではない男、というのをちゃんと描いているのが
凄いなあと思う。 
BLカップルだと、わりと攻めくんは少々可愛いところもある完璧理想
の王子様タイプが多い気がするのだけど、寛末ってもーほんとーーーー
にイライラするリアルに普通っぽい男でさー。松岡くんなんでこんなの
がいいのだ!君の目は節穴だ!マジ恋は盲目! とつっこみたい。でも
恋しちゃったんだよねえ。

本当にすっかり恋愛小説だった。

松岡くん健気。
松岡くんがまさに理想的献身的可愛い健気完璧できる男でありながら
可愛い男。まあそうでないとBL的に成り立たないぜ、という感じ。
『薔薇色の人生』でも情けない系ダメおっさん攻めと、素敵完璧可愛い
受けってカップルだったな。両方がリアルっぽいダメ男だとまあカップル
にならないよね。

恋愛小説。これ、松岡くんが女の子だったらうろうろゆるい寛末も
すんなり恋愛してさっさとカップル成立してるんだよね。女装姿の時は
思い切って必死で積極的にアプローチしたわけだし。
リストラ後実家帰って兄嫁に「気になるなら結婚してみればよかったのに」
とすんなり言われちゃったりして。大好きな恋より二番目に好きくらいが
結婚にはちょうどいいのよ的な。それはそうだよなーと、結婚のリアルな
感じではある。
結婚したりつきあったりしてるカップルが全て最高の素晴らしい恋を成就
させているわけじゃない。なんとなく相性がいい、くらいのゆるさとか、
妥協や惰性のはてにでも、結婚はある。カップル成立はある。
 
でも男同士だったら。ゲイという自覚も覚悟もないただの男が、同性を
好きになってしまったら。
そのぐるぐるを、曖昧さをずるさを、とても丁寧に描いていて面白かった。
もう好きって覚悟決めろよ!寛末のバカ!!!とイライラするけど(笑

最後、優しくされて怖いもうやだ、という松岡くんが実に可愛い。
よかったね。マジで寛末は松岡くんにもう二度とこんな思いさせるなよ、
と小一時間説教したい(笑
 
すごく上手いなあ面白かったなあと思う。靴のエピソードとか実に上手い。
だけど木原さんの作品を私は大好きにはなれないのは何故だろう。
すんなりキャラに惚れさせてくれない。リアルっぽくダメなところダメに
描いている力量、だとも思う。けど、うーん。すごく上手いと思うだけに、
もう一歩惚れさせてくれるといいのに、と、私の勝手な思いでもどかしい。
たぶん私が恋愛小説がダメなのかなあ。
恋愛小説。うーん。
だから私個人の問題だなあ。うーん。恋愛。うーーん。なんだろう。
恋愛で好きなのもいっぱいあるから、BLだとか好きなはずなのに。

木原さんのはほんと、単純に気持ちよく消費するBLとはちょっと
違っているなあというのはよくわかる。
あと私が大好きなのは榎田尤利だけど、この二人がたぶん今トップクラス
なんだろーなーと、思う。(*個人のイメージです)
榎田さんのほうがしっかりエンタテイメントでサービスあるなあと、
比較すると思う。キャラ萌も榎田さんのほうがしやすいわ。その上話作り
もすごくしっかりしてて、読みやすく面白いよ。そして深いとこにも
しっかり刺さってくるなーと。
木原さんのほうがエンタテイメントではないのかもなあ。
でもすごく面白かった。満喫。
 

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『近代という教養』(石原千秋/筑摩選書)

『近代という教養』(石原千秋/筑摩選書)
 
「文学が背負った課題」 というサブタイトル。
 
 第一章 文学史と観察者
 第二章 進化論の時代
 第三章 なぜ主人公が必要なのか
 第四章 物語と主人公の力学
 第五章 固有名という装置
 第六章 写真が与えた衝撃
 第七章 表情を読む感性
 第八章 苦悩を書く文体の誕生 
 
近代とは何なのか。という本。近代的自我とか近代文学の話。
著者は漱石研究者、というのかな?新書とか読んだことあるかも。
この中でも漱石をひいてというのが多い。いくつか雑誌に発表済みの
文章もまとめてはいっている。
 
近代小説、というのは坪内逍遥あたりから、という、基本的文学史的
なところから入って、近代的自我とか近代の悩み、というのは、女の
謎、というあたりで終わり。まだ途上という感じの一冊だった。

帝大生が日本中から集まったごくごく一部の超エリート、というのは
まったくだと思う。そして小説を読み、悩みのレッスンをしていたの
ではないか、というのはちょっと面白かった。
日本に肩凝りが蔓延しているのは漱石先生のせいだ、というネタを連想。
エリートたちは漱石に悩みを習ったのか(笑
日本の文学というのはこういうエリートたちが新たに悩みたいところから
始まったのかー。
文学って悩みかなあ。悩みだなあ。
まー基本的に奴隷に働かせて自分たちは悩んだり議論したりってゆーのが
芸術や哲学や文学ですよね。素敵。
 
近代は進化論が圧倒的価値として受け入れられていた、と。そう言われると
ああなんかそうだなあと。それがそうだと意識されないほどに広まってこそ
パラダイム、なのですね。その意識が私はなかった。

主人公という装置。どうでもいいような語呂合わせ的な名前ではなくて、
個人名固有名が現れてから、自我ができる、という展開面白かった。

女、というものは徹底的に受身で見られる存在だったものから、漱石先生の
小説の中で、表情を見せるようになって内面の謎を見せる、というのも
面白かった。不思議。女の表情、女の内面というものが、そんなにも封じら
れてきたものなんだなーと、改めて認識した。
最初の頃の「女学生」の描写は、着ている物の描写のみ、みたいなのが典型
だったのね。それを見る男の側からの視点しかなかった。
なんか。
女って不遇だったのね。文学の中で。
そして、漱石先生の小説はやっぱり凄いのね。新しさ、共感を持たせたり
複雑な驚きを盛り込んだり。
たぶん著者も漱石よりだろうし、私個人も漱石大好きなので、これは私が
過大に漱石先生すてきーって思いながら読んでいるせいがあるだろう。
でもやっぱり漱石の文章はすごくすてきだなあ。

実はまだ『明暗』は読み残している。漱石全部読みきっちゃった、ってなる
のがもったいないんだよね。でもそろそろ読もうかなあ。私ももういい年だ
よなー。と、思ってみたり。
初めの作品からゆっくり読み直していきたい気分。
 
白樺派あたりは読んだことがないなあ。読むべきか迷う。
『浮雲』だの『蒲団』だのもちゃんと通して読んだことがない。『少女病』
っておそらく日本で初めての電車の車内での視姦の話、って、なにそれ。
田山花袋って素晴らしい変態だなあ。
東京という都市の成立、なんて話に展開してて面白いけど、単純にそれ
読みたいわ。

細々と改めて言われるとふーむ、ということばかりで、面白かった。
なんとなく勉強になったような気がする。近代小説読みたくなったよ。

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「エル・グレコ展」

「エル・グレコ展」 東京都美術館
 
 1-1肖像画家エル・グレコ
 1-2肖像画としての聖人像
 1-3見えるものと見えないもの
 2  クレタからイタリア、そしてスペインへ
 3  トレドでの宗教画:説話と祈り
 4  近代芸術家エル・グレコの裁断画:画家、建築家として

>エル・グレコ(本名ドメニコス・テオトコプーロス、1541~1614年)は16世紀から
>17世紀にかけてのスペイン美術の黄金時代に活躍し、ベラスケス、ゴヤとともに
>スペイン三大画家の一人に数えられます。

だそうです。没後400年だそうですね。ギリシア、クレタ島生まれで、ヴェネツィア、
スペインと移動したようです。へー。

私がエル・グレコの名前を覚えたのは漫画で。むかーしむかし、竹本泉の
『パイナップルみたい』ってゆー漫画でれーこが彼氏が出来るきっかけかな、エル・
グレコがすきーと盛り上がってた、んだと、思う。(ぐぐってみたよ。ウィキに
よると1982年の連載みたい。あのころは「なかよし」読んでたなあ。よく覚えて
るなあ自分。面白かったんだろうなあ。昔は好きなものへの集中力記憶力ばっちり
あったんだなー)
なんとなく、よいものステキなものとして記憶した名前。
それから多少は目にすることもあった気がするけど、こうまとめてたっぷり見られる
のは嬉しい。
 
聖人像もそこに生きている人間の肖像画のように描く、というの面白い。
受胎告知や、十字架のキリスト、キリストの復活、宗教画もなんかすごくかっこいい。
稲妻のような光のなかの神の象徴(?)な鳩とか。
キリストがかなりイケメン。かっこいい。
マリアとかキリストの赤い服青い布。服の感じはざっくりしている。人の輪郭が
ふわーっととける感じがしてずーっとじーーーーーっと見てしまう。
 
手が、とても素敵。すごくかっこいいよねー。好きだああいう手。
足の指の感じもすごくかっこいい。好きだー。

教会の祭壇や天井に飾る絵、としての、見上げる人に向けて、人物の縮尺を
ながーくしているとか、面白かった。確かに見上げるととても迫力。
最後のところの「無原罪のお宿り」は本当に凄い。迫力。天上へ螺旋描いて登って
ゆくエネルギーを確かに感じる。かっこい~!

聖家族 では、赤ん坊のキリストが光の源である、という表現がとっても素敵。

「十字架のキリスト」、ほぼ同じ絵で、西洋美術館所蔵のと、ゲッティ美術館所蔵
のと両方見られたのが面白かった。西洋美術館のほうが筆致がざっくりしてるのね。
ゲッティ美術館所蔵のは腰布なんか緻密に描かれてて白くて全体滑らか。でも私は
どっちかというと西洋美術館所蔵のが好きだなあ。
こんな風に同じような絵を何度も描いたのか。
教会を飾るもの、教会の建築や飾り方なんかもやっていたのね。職人的だったり
するのかあ、というのは全然知らなかったので、へー、と思いました。
 
人物の顔や体が緑ががっていたり黄色っぽくしていたり、色使いの感じが独特に
思った。ポストカード買ってみたけど、やっぱりあの色がポストカードの印刷
では全然ダメで、がっかり。まあ仕方ないか。
 
『聖☆おにいさん』を読んでいらい、どうしてもこう、イエスやその使徒たちは
なんとなく漫画な感じでちょっとにやけてみてしまうんだけど。でもそうして
見るのもすごく楽しかった。満喫満足しました。

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映画「TED」

*結末まで触れています。


映画「TED」

8歳の少年だったジョン。いつも仲間はずれで友達は誰もいなかった。
クリスマスの日、プレゼントにもらったクマのぬいぐるみ。テディと
名づけて、喋れるといいのに、と願って眠った翌朝。奇跡は起きた。
テディは動いて喋って、ジョンの永遠の親友になった。
 
それから27年。35歳になったジョン。テディもまた、おっさんなクマ
になっていた。二人は今も仲良しだったが、ジョンの恋人、ロニーは、
いつまでもクマと親友で子どもじみたままのジョンに呆れ始めていた。
テディとは離れて二人で暮らそう、ちゃんと大人になって、という
ロニーの頼みに応え、ジョンとテディは別々に暮らすようになる。
 
子どもの頃クマのぬいぐるみと親友になった!のは微笑ましくステキな
ミラクルだけれども、そのまんま35歳になったら、そりゃあな~~~、
という設定でまず可笑しすぎる映画。15禁映画なだけあって、おっさん
二人は大麻でハイテンションになって、映画見て下品ジョーク連発して
二人だけで通じ合う27年来の友情のお遊びに明け暮れる。

ロニー、どうしてジョンのことそんなに愛せるんだよ、と、笑ってしまう
んだけど、見ていると確かに、ジョンといるのがロニーの幸せなんだなー
と、納得する。ジョンは情けなくてだらしなくて子どもじみてて、でも
本当に優しい。
へんにマッチョ思想の男じゃなくて、本当に優しいって、確かにレアだ。
本当に素直に優しい彼といることが自分の幸せ、ってちゃんと決めたロニー
がとってもあっぱれだった。
幸せって、世間体とか他人に言われてとかじゃなくて、自分で決めるのが
いいんだよね。単純だけど難しいこと。
 
なんかもう変人いっぱいで笑っちゃうんだけど。あと映画ネタがいっぱい
みたい。嗚呼私がもっとマニアック映画オタクで、ネタが全部わかれれば
もっと笑うんだろうなー。多少はわかったつもりだけど。
まーお下品ワードが連発されててうげげ、と苦笑いしなくもないけど、
おっさんとはいえ、一見可愛いクマのぬいぐるみではあるわけで、ズルイw

そして、最後にはやっぱり泣いちゃうし。大事な、友達なんだよなー。
大人になりきれなくて、でもがんばって、失敗も喪失もして、でもほんとに
大事なことに気付いて、って、ベタで王道なストーリー展開。
 
これはくだらなくて極上の大人の御伽噺。いろいろありつつめでたし
めでたしで終わって満足させてくれる。
15禁でいいよねー。それなりにやるせない経験経て大人になって見るほうが
くる。楽しかった。

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「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」

横浜美術館に行ってきた。

「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」

ロバート・キャパというのは、最初は、アンドレ・フリードマンと、ゲルダ・タロー
と、二人でつくった架空の名前だった、というのを、私は知りませんでした。

NHKスペシャルで、「沢木耕太郎推理ドキュメント 運命の一枚~戦場写真最大の
謎の挑む(2月3日)」というのを見た。
キャパの名前が最初に世界的メジャーになった、「崩れ落ちる兵士」というのが、
本当は戦闘で撃たれた瞬間ではない、そしてそれはゲルダが撮ったものではないか、
というドキュメントだった。面白かったー。
 
ロバート・キャパの名前程度は知っているけれども、ゲルダのことは知らなくて、
そしてその運命の一枚のことも知らなくて。ユダヤ系だったのも知らなかった。
パリで出会った二人。恋人になった二人。一緒に報道写真家として、一緒に戦場へ
行って、一つの名前を共有して。どんなつながりだったのだろう。
そして、その戦場で死んでしまった恋人。27歳という若さだったゲルダ。
残されたフリードマン。22歳だったんだって。そして崩れ落ちる兵士の写真が
注目集めて。22歳の青年が、一人背負ったものを思うとくらくらする。もうそれ
だけでドラマチックすぎる。それからも戦場を撮り続け、一人でロバート・キャパ
になるしかない。なる、と、逃げなかった男の人生。凄い。
キャパもまた、40歳の若さで、地雷を踏んでしまい、死ぬ。
そんなにも、そんなにも、そんなにもドラマチックだったとは知らなかった。怖い。
 
写真展は、最初はゲルダが撮った写真から。
訓練する女性兵士の姿が印象的。
雑誌で、この展覧会の紹介記事見たんだよね。そこで印象的だった、ヒールの靴の
まま、銃撃の訓練で片膝ついて上体低くして逆光かな?構えてる女性の写真が凄く
心にきたの。NHKスペシャル見たせいもあるけど、この写真、見たいと思った。

スペインの内戦は、ファシズムとプロレタリアみたいな対決だったのね。
その辺歴史よく知らないです。1936年とか37年頃。女性兵士のための装備
みたいなのもありはしない。女性の社会進出始まったばかり、みたいな。
兵士たち、そろいの軍服で、とかでもない感じが、なんていうか、リアル。軍隊
ではなく市民が戦っているという感じ。
バリケードに登る少年も。死体も。眠る兵士も。普通の人が、そこにいて、そこで
死んでそこで戦ったのが伝わってくる。
 
キャパの写真もかっこいい。
すごく、物語が見える気がする。
被写体がなあ。みんなかっこいいんだよ。ふつうの兵士のはずなのに。やっぱり
西洋人はかっこいいか!と思った。
壊れた街で。瓦礫の残骸のところで、ボロボロになっているふつうの人々が、
それがやっぱりかっこいい。
映画みたいだと何回も思った。
でも、映画は、こういう事実の写真やなんかからつくっているんだった。
こっちが先なんだった。
もちろん写真に撮っている時点で切り取りがあるんだけど。絵になる場面が。
でも演出してるとはとても思えない生々しい現場な感じもすごくあって。
そこに人がいるんだなあと思う。

まあいろいろ、映画なんかで見たり、それこそいろんなドキュメント見たり。
私のほうが勝手な思い込みや思いいれを持っているんだと思う。その思い込みを
写真の中の物語として読み取っている。でもそういういろんなことを思わせる
ような、目をした、写真なんだよ。凄い。

革命記念日のパレードの日のパリ、とか。ハレの日だからかな。ふつうの人々
みんながお洒落だなーと感心。ステキ。水玉プリントのワンピースの女性とかね。
男性はスーツ。少し着崩したジャケット。昔のファッションステキ。

ドイツからの開放の日の写真とか。連合軍側のアメリカ兵のヒーローっぷり!
ドイツに協力した女を見せしめに頭丸刈りにして、っていう、ああああ。
ノルマンディー上陸の海の中の兵士。それを写真にとるキャパ。ああああ。
なんというドラマ。

イギリスで、防空壕の中での団欒な写真。これ、あの、コニー・ウィリスの
『ブラックアウト』がわーっと頭の中に蘇った。うううう。

中国や日本の写真は、ほんとうにまったく西洋とは別の国だなと思う。

写真展をこんなに面白く見られるとは自分でも思ってなかった。凄いよかった。

常設展のほうもかなり面白かった。ガラスのひかりのとかきれいだったし。
シュルレアリスムのところが一番好き。キリコ、デルヴォー、マグリット。
ダリのすーごいでっかいの。<幻想的風景>っていうのかな。

集中して見たし、たっぷり二時間半あまり歩いたしで、もうぐったり。
みなとみらいがすごいみらいな感じだ、とびびったりしてすぐ帰った。
またもうちょっとあのへんものんびりして遊びたいなあ。
ロバート・キャパのこともうちょっと、本読んだりして知ろうと思う。
面白かった。見に行ってよかった。

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『B.L.T』(木原音瀬/ビーボーイノベルズ)

*具体的内容、結末まで触れています。

『B.L.T』(木原音瀬/ビーボーイノベルズ)
 
書店アルバイトの面接。北澤眞人は5年前別れた大宮雄介と再会した。
店長になっていた大宮。5年前、まだ中学生だった北澤が振り回した、
それでも真摯に好きだと告白してきた大宮。
 
 ライン
 B.L.T
 dessert box
dessert box plus

と4つのお話。最初「ライン」が同人誌だったらしい。その次
本になる時に書き下ろし、dessert box は同人誌から。
dessert box plus は今回書き下ろし。私が読んだのは2010年の
新装版。もともとの本は2002年刊行。同人活動がいっぱいなのか。
一旦絶版になったのがこうして新装版ってまた出て、ってファンは
たいへんでもありうれしくもあり、なのかなあ。大人気なのですね。
 
中学生への痴漢が出会いって(笑)
中学生相手になにやってるんだ大宮!しっかりしろ大宮!とつっこみ
ながら読む。再会後にはなかなか現在の恋人と別れられず、ヤンデレ化
の被害者。大宮くんは振り回されるタイプなのね。
dessert box とかでその後の彼ら、というのが描かれていてそこそこ
フォローされているけれども。
なんかみんなたいへん。恋におちるって、ままならないことばかり
だよね。でもだからこそ、みんなもっとちゃんと話そうよ。
と、またしても対話のなさが原因で余計にぐちゃぐちゃになるパターン。

うーん。しっかりしろー。
あ、これはあんまり強姦ってほどではなかった。

ヤンデレ化とかには私はあまりもえないので、げんなりしてしまう。
大宮とかいい年してるんだから恋は盲目とかじゃねーだろしっかり
しろ、仕事しろ、と、どうしてもつっこみたい。もー。
いやいやこれはBLファンタジー。仕事しろじゃなくて、もっと
素直に胸きゅんしなくては、と、思う。
これ書店が仕事場だから、書店員そこそこやってきた私としては
ああもう、という気分が余計してしまったかも。
木原さんが上手くてちゃんと日常部分をそれなりに描いているから
単純にBLファンタジーとかじゃなくて、仕事しろ、とか思って
しまうのかもなんだけど。なかなかバランスは難しいですね。
ともあれ、無事ハッピーエンド。最後のはダイビングしようと
がんばってる大宮くん微笑ましくてよかったね。この先もずっと
仲良くやっていきそうな感じがして。
面白かった。

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英田サキ、遠野春日

*具体的内容に触れています。
 
『いつわりの薔薇に抱かれ』(英田サキ/ビーボーイノベルズ)

八重澤高峰(やえざわたかね)は公安の刑事。表向きは若き実業家、
だが中国マフィアとの疑いがあるアレックス・ウォンを監視し、情報収集
するため、彼の泊まるホテルのバトラー・サービスの一員として潜入した。

ってことで、まずは信頼を得るためにバトラーとして無理難題に応え
サービスをつくすうちに、強引ながらも情熱的な口説きに押し倒されて
深く愛し合ってしまうー。と、ステキなBLファンタジー(笑)楽しい。
刑事とマフィアだけど、執事とご主人様、っていう二重のコスプレ感覚。
当然ながら二人とも美形。当然ながら出会って10日くらいでもうかけがえ
のない愛しあう関係。昼間は執事と客。夜は激しく求め合う二人。って。
刑事の仕事しろ(笑)いやまあ刑事の仕事も多少はやってたけど。
初めての時には挿入なしで、だんだん、っていうのよかった。別に挿入
なしでもせっくすっていっていいと思うんだけど、なんかいれないとほんと
のせっくすじゃない、みたいな感じみたい。なんでだろう。
最後にはアレックスは香港へ。ちゃんと刑事の仕事しようと思った
高峰くんえらいねよしよし。でもまた会うかもだし、というふんわりと
した余韻はよかった。
2007年刊。

『この愛で縛りたい』(英田サキ/ビーボーイスラッシュノベルズ)
 
大学の時に出会ってから8年。阿木は、いつも明るく人付き合いのいい
永瀬に片思いしていた。はじめは友情のはずだった。だが、つのる恋心を
どうしても消せず、旅行に誘い、眠らせ、縛りつけ監禁し、一方的に体を
重ねる。ロスへ転勤になる前に、この想いに決着をつけたかった。
一方、親友だとばかり思っていた阿木の気持ちをぶつけられた永瀬は、
初めは怒りをもったものの、考えた末にやはり阿木を失いたくないと決意。
空港で阿木をつかまえた。
 
ってことで、始まりは監禁(笑)そしてハッピーエンド。
受けくんのほうが監禁して無理矢理やっちゃうっていうのが私には新鮮な
感じだったー。たたせてやれるものなのか。ふーん。
最初のは2006年頃に雑誌発表。で、書き下ろし加えて、2009年刊行。
書き下ろしも加わって、二人の気持ちがほんとに本気、ってところを強調
したのはステキかも。特に永瀬。いい人キャラなのはうざいけれども、
そーゆーバカいい人なのが阿木くんみたいなのには救いになるなーと。
私の好みから言えばちょっとバカいい人がすぎるけどな。
2009年。

『覇帝激愛』(遠野春日/ビーボーイノベルズ)
 
秋菫は若き皇帝。朝廷の腐敗を一掃し、国を建て直し、勇猛果敢ながら
人々に慕われていた。
ある日、狩りの最中見慣れぬうつくしい湖のところへ迷い込んだ。見事な
金の簪を拾う。その持ち主は、天界の公子。一目見て秋菫は彼を手にいれ
ようと決めてしまった。簪がなくては天へ帰れない公子。強引に後宮へ
連れ帰り、連日責めさいなみあらゆる行為で快楽を教え込む。
 
古代中国ファンタジー?
後宮に新しく入れた女(これは男だけど)に入れ込んで日ごと夜ごと
やってばっかり、ってこれ確実に国滅びるパターンですが(笑)
そういう危機も訪れるけど、まあ大丈夫だった。さすがファンタジー。
天帝とか、天界人とか。そういうのわたしは苦手なんだけどまああまり
気にしないで読んだ。
あとがきに書かれていたように発想もとは羽衣伝説ですねー。
まあとにかくいろいろいっぱいやってるので楽しかった。
2008年。

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『美しいこと』上(木原音瀬/蒼竜社 ホリーノベルズ)

*具体的内容に触れています。


『美しいこと』上(木原音瀬/蒼竜社 ホリーノベルズ)

松岡洋介。別れた彼女が残した、もう捨てて、という洋服をちょっと
着てみようかな、と着てみた時から女装にはまる。
その辺の女の子よりずっときれいだ。ずっと可愛い。週に一回の
ストレス解消の遊びだった。
だが、女装姿の時に出会ってしまった。同じ会社、部署は違う寛末は
不器用だが優しい男だった。女だということに疑いもなく、好意を
寄せられることに、最初は困りながら、だんだんほだされてゆく松岡。
それが本気の恋になってしまった。
 
うーんうーん。自分を女だと信じきって恋している男が、自分が男
だとわかったあとにも愛してくれると、信じてしまえる松岡が不思議。
松岡自身は最初から男同士だけどどうしよう、と、散々悩んで、よし、
と踏みこむ決意を固めるわけだけど。寛末は、相手は高嶺の花とはいえ
女、と、いう前提を微塵も疑っていないわけで。
松岡はもともとゲイではないけれども男の相手を好きになってしまった。
だから寛末もゲイではなくても自分との恋を続けてくれるはず、と、思
えるかな~~~。松岡くんの思考回路が不思議ちゃんすぎる。
寛末の思考の中にゲイという選択肢がない状況だ、というのを、考えな
さいよ松岡くんー。
ま、恋は盲目ですからね。
そしてなんだかんだいっても、寛末のほうもやっぱりなんだか、という
感じがあって、下巻ではどう展開するのかな~。楽しみ。

女性キャラに魅力がない。。後半2・2カップルになろうーって感じに
紹介される人見知り友達キャラ、実はいい子、って感じゼロだし。
松岡と一応気の合う同僚葉山ちゃんも、基本松岡視点で読んでいるので
ウザい(笑

そんで、やっぱりはじめてやるときってほぼ強姦だーねー。木原さんの
場合あんまりわかりあったりしない状況でいきなりやるとこから関係が
始まる感じなんで基本強姦なんだねー。もちろんフィクションのお楽しみ
だからいいんだけど。なんだか可哀相。
そして微妙にのりきれないのは、その最悪な始まりを越えてらぶらぶ、って
なる展開が、私にはあんまり説得力なくて物足りなくて、なんか、ふーん、
まあBLだから都合よくうまくいっちゃうかね、と思ってしまうところ。
この本は2007年刊行。
今後の展開は納得いくほどうまく面白くなるだろうか。下巻早く読みたい。

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