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『傾国子女』(島田雅彦/文藝春秋)

『傾国子女』(島田雅彦/文藝春秋)
 
神楽坂で、七海は一人の女性が車にひき逃げされるところに居合わせた。
その人は「白草千春」と自分の名前を告げるとそのまま動かなくなった。
それから一週間後、よく当たるという占い師のところへ行った七海は、
白草千春がくっついている、といわれる。彼女のが語りたがっている生涯
を、聞いてやること。
ついには会社をやめて、白草千春のことを書き記すことになった。
 
千春の残した日記やノート、アルバム。千春は14の時から、女の業を
深めて生きてきていた。
 
『好色一代女トゥデイ』だそうで、千春がいかに女として頂点を極め
没落もし、そして晩年はおだやかになったかと思えばやっぱりただの
主婦で終わるわけもない、というお話。

著者のデビュー30年、渾身の長編小説、って帯にあるけど、そうか。
デビュー30年かあ。確かに私も20年以上ファンやってるな、とやや
感慨に耽ってみたりもしました。
千春が思い起こせば、と日記を残してるのが1970年ごろからで、
それがもうはるか昔のことのように描かれているんだけど、それ私が
生まれた頃だ。千春のほうが今の私よりひとまわりくらい年上だけど
なんか、そうかー遙か大昔って感じに小説に書かれるようなのが自分が
生きてる頃だったりするんだなあ、と、そういうのもしみじみしちゃった。

表紙だとか中表紙の人物イラストがヤマザキマリ、テルマエの人で、
でも私、あんまり好きな絵じゃなくて、そこはがっかり。

千春の親友、甲田由里という人物がいて、二人で一人な感じが面白かった。
名前の字面も。
千春はとても美人に生まれて「女」としての人生を謳歌する。由里は
再生不良性白血病?かなんかで、毎月の生理も命がけ、出産は危険、処女
喪失も命がけになるからってことで、結局ずっと処女。千春の「女」と
しての生き方売り方をコントロールする頭脳となる。自分が「女」に
なれない分を千春に託す、という感じ。
千春は思考を外部発注するような由里との関係に安定を見出す。その
からっぽな感じ、いいねえ。

登場人物のモデルをリアルにあの人とか、と想像できる。これは今
リアルタイムで生きて読んでいるからだなあと思う。100年後だったら
*1とかで、だれだれがモデルと思われる、なんて注釈がつくかもしれない。
(つかないかもしれない。あくまでフィクション)

千春のモノローグで描かれているようなんだけども、でも書いているのは
七海ということでもあり、神(作者)もいるわけであり、すべて回想だし
物語の熱はあまり高くない。文章と出来事に距離があるような感じって
いうかなあ。俯瞰的っていうかなあ。その距離感、バランスがさくさく
読みやすくて私は好きだった。
千春、馬鹿だなーというのもあり、でも正義感あふれるメッセージでも
あり、かなあ。正義感な主張にも距離があるから嫌じゃない。
ついつい一気読みしてしまった。面白かったです。

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