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『連禱』 (不識書院/桜木由香)

『連禱』 (不識書院/桜木由香)

著者第一歌集。
まず印象に残るのは、聖書、キリスト教のモチーフの数々。拾って数えて
みたら、ざっくり私が気がついただけでも20は超える。10ページ足らず
のうちに必ずひとつは出てくる感じ。私は聖書に詳しいわけじゃなくて、
ぼんやりしか言葉をつかめないのだけれども、著者は、その信仰のある生活
が自然なのだなあと思う。
他も、神話的だったり、星座、シェイクスピアだとか。植物も月桂樹だとか
アネモネミントメタセコイヤミモザ等等やっぱり西洋的だと思う。
読書体験も、西洋の古典という感じ。音楽もクラシック。
 
西洋美術館だなと思う。古典的油彩かなあ。上野にはいくつも美術館が
あるけれども、この歌集の世界は西洋美術館だなあと思う。
 
いくつか、好きな歌。
 
  たましいのくるしみひそかに夕映にきらきらきらとポプラ戦げり(そよげり)
  (P28)
 「きらきらきらと」にひかれる。魂の苦しみの中見たそのきらきらきら。
 夕映えのポプラは別世界な感じがしたのだろう。戦ぐ、の漢字の印象も
 ちょっとだけどきりとささってきていい。

  人ごみにまぎれてゆきし君の傘還らざる日の記号となさん(P87)

 いくつかあった気がする傘の歌。これが印象に残った。見送って君がいなくなる
 雨の日のさみしさ。もう帰ってこない日への「記号」とするというのが面白い。
 記号?アスタリスクみたいな記号かなあ。
 
  同じ曲を何十回も聴く夜のわたくしという壊れた部品(パーツ)(P131)

 自分が壊れた部品というモノになっているのに惹かれた。同じ曲を何十回も
 鳴らしている機械に自分が同化して、自分がそうしてるはずなのに壊れてる
 感じになってるどうしようもなさが胸にせまる。
 
  照る月の浸透圧に耐えながら自転車を漕ぐ木の間木の間を(P191)

  水無月の風に吹かれてひらひらと児はペダル漕ぐ電磁波のなか(P123)
  鉄塔のそびゆるそらの満月へじんじんじんと電磁波寄せる(P8)
 なんかこう、電磁波とか浸透圧とかちょっと固い、他と違う感触の言葉が出て
 くるのが好きだった。ヘンな感じがするのが面白い。「月の浸透圧」に耐える
 という感じがとてもうつくしい。深海にいるみたいな感じがする。そんな中で
 自転車に乗って木立の中を自転車のスピードで走っていくのが素敵だった。
 

昨日、『連禱』を読む会 があったのに参加させてもらった。
三枝昻之さんが最初にお話。最近の僕は深読みではなくシンプルに浅読みなの
ですよ、なんておっしゃりながら丁寧に読んでいくお話で面白かった。
抽象化の巧みなすぐれた歌集ですね、とのこと。
今の歌壇で気になる言葉表現の問題なんてお話もちょっと。歌壇の中でこもる
のではなく外からの目も視野に入れておかなければというような感じ。
いろいろ納得。
 
そして、ほんと、「読む会」だった。会場からのいろんな人がそれぞれの
読みのお話、著者との関わりやご夫君との思い出エピソードなどいろいろ。
私は個人的背景のことは全然知らなかったので、そんなドラマチック素敵
物語があるのか、と、びっくりしながら聞きました。
何故か私にもマイク回していただいたので、上記のような感想を緊張で
震えながら喋る(^^;我ながらヘロヘロでなんの深みもなくて申し訳ない。

80名超えての参加者だったのかなあ。いろんな方からのいろんな話を聞いて
面白かったです。終わってご挨拶したときに、ちょっとだけ三枝さんとお喋り
できて嬉しかった~。

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