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『シャーロック・ホームズの事件簿』(コナン・ドイル/創元推理文庫)

*ネタバレしてるのもあります。

『シャーロック・ホームズの事件簿』(コナン・ドイル/創元推理文庫)
 
ホームズ最後の短編集。「最後のあいさつ」で終わりじゃないのね、と
最初混乱したけれど。「ショスコム・オールド・プレース」が1927年
に発表された、ホームズ物語の最後のものだそうです。
ワトスン君が書いたもの、とするものだけでなく、三人称だったりホームズ
自身が書けといわれるから書いた、っていうものなどがあって、シャーロキアン
たちは「聖典」たりえるものなのかどうか、と議論になったりしている、らしい。
私はシャーロキアンというには程遠い単なるミーハーファンなので、そういう
論議が、とかいうのは面白いけれども、自分が参加したいとは全く思わない。
ワトスン君が書いてくれたのがいいなあと思うものの、ホームズものとして
そぐわないかどーかとか、解説読むまで気にしてなかった。あれ、ちょっと
変わってる、くらいのもので。ドイルは約40年間ホームズものを書いてきた
とのことなので、そりゃあなんか目新しいことしたり筆ののりが悪かったりする
こともあるだろー。そうでなくても細かい設定とか昔のことは気にせず適当に
書き綴ってるよーな感じだし。
でもそういうの細々と研究してる熱烈ファンがいるっていうのも面白いところだ。
 
ドイルの前書きで、読者の人気に甘えて何度もさよなら公演をするテノール歌手
のようになることを恐れる。すでに過去の人なのに、とか、終わらせようとした
のは生半可な覚悟じゃないとか、書いている。「いよいよこれでシャーロック・
ホームズともお別れだ!」と、ご愛顧に感謝と、日々の煩いから解放するって
書いている。でもドイルさん。ホームズはそれから85年後くらい?の今でも
過去の人じゃないしなおも日々愛されてるよ、と、教えてあげたいねー。ドイル
にとってはホームズを書くの大変だったろうなあと思うけど。
 
「高名な依頼人」「白面の兵士」「マザリンの宝石」「三破風館」「サセックスの
吸血鬼」「カリデブが三人」「ソア橋の怪事件」「這う男」「ライオンのたてがみ」
「覆面の下宿人」「ショスコム・オールド・プレース」「隠退した絵の具屋」

の、12編。
解説、日暮雅通、エッセイ?有栖川有栖、訳者あとがき、深町眞理子の、1991年
初版の文庫。

「サセックスの吸血鬼」は、タイトル的にもそそられるけど、謎解きのところで、
吸血鬼と疑われた後妻は実は子どもを守ろうとしていた、実は先妻の息子、父を
深く愛していた長男が、嫉妬のあまり赤ん坊を排除しようとしていた、とかいう、
なんてそれジュネ展開!とときめくもので惚れたー。
 
ホームズは隠遁してワトスン君と離れているらしいのが寂しいなーと思ったけど、
ワトスン君はサセックスに「たまさか週末などに訪ねてきてくれるぐらい」(P339)
とかって。ワトスン君がきてくれないかなあーと心待ちにしてるくせに!自分から
行けよ!ホームズのツンデレくんめ!と、まあそれあんまり疎遠って感じでもない
のじゃないかしらと思ってみたり。
ワトスンくんとホームズのらぶらぶいちゃいちゃがちらほら読めて楽しかった。
 
「ガリデブが三人」は、赤髪連盟的な話で。犯人追い詰めたところで、いきなり
撃ってきて、ワトスンくんが怪我すると取り乱すホームズ!

 「「ワトスン、だいじょうぶか? 後生だ、たいした怪我じゃないと言ってくれ!」
 怪我のひとつやふたつ、なんでもなかった―いや、怪我などいくらいしょうとかま
 いはしない―いつもは冷ややかな仮面のごときその顔の奥に、こんなにも深い友愛
 と真実とがひそんでいるのを知ることができるなら。友人の澄んだ、きびしい目が
 わずかなあいだ曇り、強くひきむすばれたくちびるがふるえた。後にも先にも、こ
 のとき一度だけ、私は偉大な頭脳のみならず、偉大な心の存在をも垣間見たのだ。
 多年にわたる私のささやかな、だがひたむきな奉仕のすべては、まさしくこの啓示
 の一瞬のために積み重ねられてきたのである。」(P238-240)

ですってよ。啓示!そこまで言うか!ワトスンくん健気すぎる!ホームズも自分じゃ
いろいろ酷い扱いしちゃうくせにワトスンくんが撃たれるとそんなに心配するのね。
普段からもっと大事にしろよ!でも甘えちゃうんだよねワトスンくんには。うんうん。
超楽しい。

「ソア橋の怪事件」では汽車に乗っている途中で。

 「そのうち、目的地が近づいてきたあたりで、とつぜん私の前へきて、向かいの席
 に座ると―私たちは一等車をふたりで占領していた―私の両膝にそれぞれ手をかけ、
 こういう茶目っ気たっぷりな気分のときの常として、独特の奇妙に悪戯っぽい目で
 私の目のなかをのぞきこんだ。
 「ねえワトスン、たしかきみは、こういう小旅行に出かけるとき、いつも武器を身
 につけてくるんじゃなかったかい?」」(P289)
 
ですってよ。なにそのふたりっきりで一等車独占、らぶらぶな見つめあいは!ワトスン
くんが武器をもってくるのはホームズがあぶなっかしいからなのねー。愛だねー。

「這う男」では、ワトスンくんは拗ねつつも、僕はホームズの愛用の品だもん、と独白。

 「彼は習慣の人であり、その習慣も、ごく範囲の狭い、根強いものにかぎられてい
 るが、そのなかに、この私も組みこまれていたのである。たとえてみれば、私は彼
 にとって、ヴァイオリンや、例のいやなにおいのする刻み煙草や、古く黒ずんだ
 パイプ、索引帳、その他それ以下のろくでもないものどもと同列に位置するのだ。
 いったん緩急あらんか、しかもそのさい、多少の信頼のおける、度胸のいい相棒が
 必要だとなると、私の役割はおのずから明らかである。とはいえ、私の用途は必ず
 しもそれだけではない。まず、彼の知性を研ぐ研石の役をする。いわば刺激剤だ。」
 (P298)

ですってよ。ホームズの大事な習慣の一部として奉仕するワトスンくん。健気すぎる!
大事なことは見逃しまくりとか言われながらも助手を務めたり、へんな実験に参加
させられたり、ワトスンくん可哀相wそれでもらぶらぶな二人がとても可愛いー。

あと有名な「都合ガヨケレバスグコラレタシ。悪クテモスグコラレタシ。S・H」
って電報もこの「這う男」のときなのね。なにその勝手な言い草!w可愛いー。
楽しかった! 

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