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『パーフェクト・スパイ』上下(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

『パーフェクト・スパイ』上下(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

マグナス・ピムはウィーン大使館勤務だった。父、リックの死の知らせを
受けた後、姿を消す。情報部が行方を捜すも手がかりはなかった。
ピムは一人、かねてみつけておいた隠れ家で、自分の人生を振り返っていた。
息子へあてた文章として、書物として、書き記す半生。ペテン師だった父、
リックのこと。自らの学生時代。いかに情報部員として活躍を重ねたか。
そして、いかにスパイになったか。

スパイ小説、ではなかった。。。スパイとなった男の物語。
解説が高村薫だった。高村薫からして読みにくいと書いてあったので、
そうかそうだよね、読みにくいのは私だけじゃないんだ、と思う。
図書館延長してしまったよ。
息子、トムへのピムの手記だったり、そうでもなかったり。自分のこと
だけれども「ピム」として記していたり。隠れ家での生活だったり、
ピムを探す上司、妻の話だったり。回想も現在も自在に時間軸が出てくる
から、なんだ、これ何の話?と悩むことしばしば。ル・カレの作品ってこう
だよなーと思うけれども、なんていうか、今までのは、まあ、それでも
一応スパイ小説って感じに言ってもいいかな、という、スパイ的ミッション
みたいな話の筋があったけれども、これは。ひとりの男の物語。
私は何を読んでいるんだろう、と、悩むことしばしば。
それでもがんばって読み進み、最後のほうにくるとなんでだろうなんだか
もう自分でもわからないけど感動させられてしまって終わった。
感動的盛り上げしようなんて気は著者にはさらさらなくて不親切この上ない
のに、そっけなさにもほどがあるだろっ、と思うのに、なんで私感動しちゃう
のかわけがわからない。このわからない迫力が、なんだか凄い。

面白かったー、っていうのは違う気がする。
正直退屈だなーとかなんなんだこれ、と、読み進めなくなったりした。
けど、最後のほうにはすごくやられてしまう。読み終わるとなんか圧倒された
感動がある。感動、っていうのかなあ。なんだろう。。。単に小難しい本
読んだぞ、みたいな単純な達成感ではない。はるばる深く広く遠く圧倒的な、
小説読んだなあと思う。ル・カレ、不思議。

ル・カレは一旦終わりにするー。やっぱり面白かったのはスマイリーやギラム
が出てきていたやつだな。スマイリーがいないと情報部にもえもえできないわ、
私。この三ヶ月、個人的ル・カレ祭りして楽しかった。満足。

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青空珈琲店

     青空珈琲店

                                 千坂麻緒


  一斉に色のあふるる公園ゆ徒歩三分の青空珈琲

  「よく吠える犬お断り」(大丈夫)よく吠えないし犬ではないし

  珈琲を淹れてくれるのを待つ間だけ座つてもいい椅子がある

  「雨なので閉店します」ちひさくて雨ニモマケロ風ニモマケロ

  珈琲を淹れてもらふのを諦めるうちの椅子には座り放題

  「晴れを祈ります」さうだね土曜日の天気予報のハズレを祈る

  一斉に花はひかりになりて消ゆみどりのかげの青空珈琲


                           (2012年 未来7月号)

+++++++++++++++++++++++++++++

 7月がもう終わってしまう。というわけで短歌書いておく。毎日暑くて
すでにバテバテです。この歌つくった頃は春で、あったかくなって嬉しいなあと
思っていたなあ。常春の国マリネラでマジで暮らしたい。


 

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『MASTER KEATON』(浦沢直樹/小学館ビッグコミックスペシャル)

『MASTER KEATON』(浦沢直樹/小学館ビッグコミックスペシャル)

全12巻、完結。
地道に買い続けてまいりました。
キートンタイチくんは結局就職というか、大学での道は開けなかったよう
ですが、どこにいてもどんなことをしても学び続ける、考古学者であり続
けるということで、ハッピーエンド、って感じかなあ。
ここにいる、と、居場所を定め、娘に手紙を書いて。
しかし奥さんへの伝言頼むのじゃなくて、自分で言えよ、と思うのは
私が間違ってるだろーか。

冷戦後、という社会情勢。一応ベルリンの壁崩壊後、みたいな感じだけど
東、というのはまだまだ不安定不穏な社会、という背景が面白かった。

新しく連載が始まったようだけれども、どうなんだろう。
この最後からは20年後くらいの設定、らしい。まー、私はおいかけたい
ほどに大好き、では、ないかな。

どのお話も凄くよくできているなあと思ったし、キートンさんもインテリ
優男かつタフでかっこいい。だけど、惚れないんだよなー。

浦沢直樹の漫画って、ものすごく上手いんだなあ、という気がするんだけど
好きにはならないなあ。面白いとは思うんだけど。
これは個人的趣味の問題で、私にとっては色気がないしキャラに思いいれ
持てないし、かっこよくって痺れるっっっ、ってところがない。
設定もお話もこんなに好きそうなのに何故だろう。
ガチへテロだなーとは思うけど、そうであっても好きになったら好きなんだ
けどな。
ひねりとかきいてるとは思うけども、結局いい話に落ち着くなーというのが
退屈なのかもしれない。もちろんいい話は素晴らしいんだけど。
うますぎて安定感が退屈なんだろうか。まあ、そんなこんなも贅沢なないもの
ねだりです。
完全版12巻そろえたことに悔いはなく、とっても面白く読み終わりました。

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『俳句いきなり入門』(千野帽子/NHK出版新書)

『俳句いきなり入門』(千野帽子/NHK出版新書)

  まえがき―短いんじゃない。俳句は速いんだ
  第一章 句会があるから俳句をつくる
  第二章 俳句は詩歌じゃない
  第三章 言葉は自分の「外」にある
  第四章 だいじなのは「季語以外」だった
  第五章 きわめて大雑把な「切れ」の考察
  第六章 文語で作るのは口語の百倍ラク
  第七章 ひとりごとじゃない。俳句は対話だ。

という章立て。
東京マッハや、日経オンラインでのかわずくん連載の実作を
たくさん引用しているので、説明がとってもわかりやすい。
個人的には東京マッハ見に行っていたし、日経オンラインのは
最初の頃は見ていたりしたので、うんうん知ってる、ということ
が出てくるのに勝手ながら親しみを持って読んだ。
千野さんのついったーをフォローしているわけじゃないけれど
たまにツイートが見えることがあって、ああこういうようなこと書いて
いたなーというのが、すっきりまとまってとても読みやすく書いて
あって面白かった。
でもこれにのりきれないなーなんだかなーとも思った。文章の言葉遣い
が私は時々うへえと思ったりした。

「切れ」についての話があまりよくわからなくて、著者もあまり
きっぱりわかって書いているわけではないそうなので、というか、「切れ」
がなんなのか、って、くっきりきっぱり説明できることではないのかなー
と思う。
「つきすぎ」の感覚なんかも。
質問してみたことあるけどやっぱり、そういう感覚は、慣れとか、結局は
個人的感覚になるみたい。あきらかにつきすぎだろ、ってわかるのは
ともかく、どのへんまでだとつきすぎでヤダ、とするかの線引きは個人的
なものになるし、同じ個人だって日によって気分によって違ったりするの
だろうなーと、ぼんやり思う。
むずかしー。

句を作らなくても句会ができる!というスタンド句会だとか面白そうなこと
いっぱいなので、ほんとこれ読んでとりあえず句会やってみる、っていう
遊びをしたらすごく楽しそう。

「異化」のことちらっと書いてあって、おー納得、とクリアに思えた。
「異化」だよねえ、と、なんかぼんやり思っていたことが(つまり私は
わかってなかった)なるほどと腑に落ちて。(P202)
「写生」についてもなるほどーとクリアにされた気がした。
でも鵜呑みにしちゃいけないと思う。

著者が言う俳句って楽しい!はよくわかって、わーいいなー面白そう~
と思うけど、でも、これ読めば読むほど俳句つくるハードル高い(^^;
センスないバカはダメとしつこく書かれてるもん。俳句こわー。
ま、もちろん、やりたい人がやればいいし遊べるし楽しいし、でも
センスないとね、っていうのはホントだし。
この本を鵜呑みにはできねえなあと思うものの、すごく勉強になった
気がする。

この著者は「俳句は詩歌じゃない」だけど、堀本さんは『十七音の海 俳句
という詩にめぐり逢う』なのですよねえ。(「逢う」だし)
でもそういう違う二人が組んでのコンビだからバランス、幅があって面白い
んだろうなあ。ちょっとずつ俳句でも遊んでみたいなあ。

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『特捜部Q Pからのメッセージ』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)

*具体的内容に触れています。


『特捜部Q Pからのメッセージ』(ユッシ・エーズラ・オールスン/ハヤカワポケットミステリ)

休暇あけ、カールがコペンハーゲン警察本部の地下の自分のオフィスへ
出勤すると、誰もいない。
アスベスト問題だかなんだかで、地下を追い払われることになるらしい。

山積みの未解決事件ファイルの中、さらに届いたのは古いボトルメール。
血で書かれたらしいメッセージで、読み取れるのは最初の「助けて」。
他は滲み劣化し、それでもなんとかいくつかの言葉は拾える。Pで始まる
名前の人物からのメッセージ。
カールを無視して勝手に夢中になるローセ、アサド。やがて、それは今も
なお進行中の事件となる。

シリーズの3作目。
図書館で借りた。分厚いなーと思ったけれども、面白くてやめられない
とまらない状態になってしまう。
今回もカールが見舞われるトラブルはあれもこれも。戸籍上まだ結婚して
いる妻のヴィガ。言うことききゃしない息子イェスパ。下宿人モーデンは
ひきとった元同僚ハーディの世話をしてくれるが、なかなか順調ってわけ
でもなさそう。部下のはずなのに勝手気ままなローセ。途中で双子の姉の
ユアサと変わって、えーとでもでもユアサって。つか、気付かないのか?
双子だっていわれたらそういうものかと思っちゃうの?不思議。。。
アサドはとっても役に立つたよりになる相棒といっていいかもだけれど、
個人的事情がすごくありそうでまだまだ謎のまま。
カウンセラーのモーセにめろめろだけれども、恋が叶ってよかったね、と
いう状況でもなさそうでタイヘンだね。
周りの人間に恵まれているんだかそうでないんだか。
キャラクタがそれぞれ魅力的ー。そして謎としてちりばめられていること
がちょっとずつ、ほんとにちょっとずつ見えてくるのも面白い。いっそう
何だよどういうことなのよ?と気になる~。

10年以上昔に、ある少年が書いた血のメッセージ。特捜部Qに届いた
メッセージ。それが、今現在の事件となって、ああ早くっ早く助けて
早く、間に合って、早く犯人を捕まえてっ犠牲者をこれ以上出さないで、
と、切実にハラハラドキドキさせられるのは相変わらずさすが。
シリーズも3作目なので、きっと間に合うはず、とも思うけど、でも
ダメかもしれない、というドキドキがたまらない。

登場人物の名前にまだ慣れないなあ。不思議。デンマークの労働事情とか
どうなってるんだろうとかも不思議。デンマークのお国柄とか全然知らない
んだなあと思う。結婚事情とかも、どうなってんの。どのくらいが普通な
のか基準がわからないから不思議。なんとなく、北欧、だよね?いろいろ
福祉とか行き届いた差別の少ないいいお国なのでは、とぼんやりイメージ
があるけれど、まあ、それだけなわけはないよね。
宗教的にも。あとがきによるとルター派プロテスタントが国教らしい。
けれどももちろん信教の自由はある。新興宗教もいっぱいあるみたい。
まあそういうのはどこでも一緒かなあ。日本だってあるような事情だし。
移民が多い社会事情みたいなのは実際の事件を作中に入れてたりして
結構深いんだろうなあ。アサドのようなキャラがいるわけで。
観光案内じゃわからないようなことを多少は知ることができるのも面白い。
シリーズ続きが出ればまたぜひ読まねば。
カールの事件、アサドの背景もっと知りたいです。

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『ドイツの小さな町』(ジョン・ル・カレ/早川書房)

*結末まで触れています。

『ドイツの小さな町』(ジョン・ル・カレ/早川書房)

ボン。ドイツの小さな町。
そこにあるイギリス大使館で、いくつかの秘密文書が行方不明になった。
長年の臨時雇いであった男も、消えた。
アラン・ターナーは、ボンへ出向くよう命じられた。消えた男、リオと
書類を探し出すために。

ル・カレの5作目にあたる作品。文庫だと上下巻。でも図書館で下巻
がないようだったので、単行本。古い本だった。昭和50年刊行って。
1975年かあ。1ページに上下組、みっしり。久しぶりだこういうの。
そのせいばかりでもないだろうけど、やっぱりすいすいは読めないよ
ル・カレ作品。。。

これにはスマイリーは全然、影さえも出てこなかった。

ターナーが、ボンの大使館へ乗り込んで、おりしも、ドイツでは嫌イギリス
らしくなんかでかいデモが起こっている最中、みたいで。
政治情勢云々の話もかなり延々と。大使館の連中に聞いてまわる話も、
だれも聞いたことにすんなりと答えてはくれないわけで、何の話を聞いて
いるのか私にはわけがわからないよーとなってしまうこともしばしば。
一応、目的としては、消えたリオを探すこと、なくなった秘密書類を
取り戻すこと、だと、思うんだけど、えっとー、リオがスパイって感じ
でもないのか?これはスパイ小説?いやなんか違うよね?政治小説?
いや、なんかもう、何小説とかいうのはどうでもいっか。
と、前半、いや話の3分の2くらいはひたすらもくもくターナーくんに
付き従うだけの感じで読んだ。
ターナーくんもわからない状況でいろいろ探っているので、読んでいる
私にも何が起きたんだよ何を隠してるんだよどうなってるんだよ、という
のがわからない。

大使館の責任者?なブラッドフィールドに、ターナーがもう帰れ、って
言われて、ターナーが襲われて、帰国しないでさらにつっこんで探って
いって、ってなる最後の最後の方にはやっぱりドキドキのわくわくで
一気に面白い。

ターナーがブラッドフィールドにつめよって暴いていくとき、「官房長!」
って呼びかけるんだけど、「相棒」を連想(笑)なんか官房長、うん、凄く
この作品に入っても似合ってる気がするw
しかし正義って何だよ。
そういうところも「相棒」をちょっと連想だなあ。

そして決着がついたのかつかないのか。。。結局リオ・ハーディングは
誰が犯人ともわからない混乱の中に死んでしまって、そっけなく終わり。
この作者のこの死へのそっけなさ容赦なさは極上。
また、おいてかれた気分。面白かったー。

この作中でドイツは1960年代半ば、くらいみたい。敗戦国として、
でもヨーロッパの一員として、NATOやら経済連合やらで、金だけ出せ
みたいにいいように使われてる、というような演説があったりする。
英国の軍の費用負担させられているだとか。
日本みたいやなーと思う。日本、は、それから2012年にいたる今も
そーゆー立場ですわね。ドイツはこの頃から敗戦国から今はEUでは主要国
となるまでに立場回復してるけど。(といっても、今ヨーロッパの軍事状況
とかワタシ何も知らないな。。。でも、EUでのドイツの立場強いだろ、と
いうのは確かと思うけど、どうだろう)
日本は敗戦国のままなのか。
どうなのか。
60年代とかって、日本でも安保闘争的なのが激しかった頃だっけ。
んーう。
日本の今って。

30年近く昔の本を読んで今を考えてしまう。
ル・カレすごいと思う。

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