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『鏡の国の戦争』(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

*結末まで触れています。

『鏡の国の戦争』(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

東側にロケットが配備されている可能性がある。
その情報を掴んだ組織は、潜行員を送り込み、さらなる確証を
得ようと動き始めた。

ル・カレの著作4作目にあたるもの。
サーカスとは別の組織があって、諜報部とは違うのだ!我々も
また重要な役割を果たすのだ!と躍起になる話。

スマイリーも少しだけながら重要、大物な感じで出てくるー。
ピーターくんは、ギラムという名前のみ。寂しい。
管理官も出てくる。おお。コントロールまだお元気で。そして
意地悪というか、なんか酷いことしてるような。古臭い組織に
あえて引導渡すように親切めかして協力したのか?
役所の駆け引きって。。。

相変わらず地味な話。最初の潜行員はすぐに死亡。事故、では
ないんだろうなあ。
それからまだ若いエイヴリー。それから、戦争中に現役だった
ライザーを呼び戻し、訓練しなおし、国境を越えさせる。
下っ端スパイはつらい、という話。
スパイ小説なのに、実際のスパイとしての潜入はほんのわずか。
ずっと、ずっと、訓練をしたり、組織の予算取りに奔走したり
車や家の手配のことだったり、もー地味なんだから。
でも、そうやってひっそりと日々を重ねて、その内部だけで
熱が高まり、時代遅れ?時代錯誤?な、愚かさ痛々しさに
突き進んでいくのがたまらない。
共に訓練を重ねるうちに、エイヴリーが、ライザーをほとんど
愛するのだ!と共感していくのが面白いっ。

一人潜入するスパイの孤独。不安。混乱。ライザーがあまりにも、
またしても見捨てられ切捨てられるライザーがあまりにもつらい
じゃないか。酷い。英国酷いじゃないかー(涙
戦時なみに、って勝手にルクレールは満足してるけど、戦時じゃ
ないのに。冷戦時だろーけどでもでもー。
ほんと淡々とクール。容赦ない作者。
どうなっちゃったのライザー。捕まっただろうけど。イギリスに
戻れるのかなあ。。。

ところで、訳者あとがき(訳者、宇野利泰)に、「イギリスの
諜報機関には二つの系列がある。一つは外務省に所属して、
(ル・カレの小説のうちでは)『サーカス』と呼ばれているもの。
もう一つは陸軍内務省の部局のMI(陸軍情報局ミリタリー・イン
テリジェンスの略)だが、ジョージ・スマイリーはその前者、外務省
機関の一員である」とあった。
え?
スマイリーって、MI6かと思ってたけど違うの?
(バンコランはスマイリーの部下にはなれないの?)
まあ、作者としてはすべての機関もフィクションということみたい
なのだけど。
ざっくりぐぐってみた感じ、ウィキなんかではイギリス情報局秘密
情報部、通称MI6、で、ル・カレの作品もこれって感じになってる。
昔とは違ってるのかなー。まーイギリスがMI6認めたのも割と最近
のことみたいだしなー。まー気にしないでおくか。
ともかく、この作品の中ではサーカスとは違う組織があり、戦後と
なった作中現在、諜報部に存在を脅かされている、と、考えており、
力争いをしている、ということ。
そしてとばっちりは下っ端にいくということ。。。
事件は現場で起こってるんだ、どころじゃなくて、事件があるのか
どうかすらわからないのに踊らされてる現場、タイヘンツライ。
面白かった。

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映画「愛と誠」

*具体的内容、結末まで触れています。

映画「愛と誠」

1972年。新宿にやってきた大賀誠。いきなりの喧嘩で警察に捕まる。
少年院送りとなったが、何故か釈放され、名門青葉台学園に編入される。
それは、喧嘩のとき誠を見て暴力はいけません!ととめようとした、
超お嬢様、早乙女愛の願いだった。

昨日見てきた。
予告を見たときから、あの「新宿の目」の前に立つ学ラン妻夫木くんの絵
のインパクトが強烈で、やっぱり見ておこうと思いました。
昭和な歌謡曲いっぱい。ミュージカルのような。でもミュージカルという
わけでもないような。
歌って踊るけど。でもなんか。ミュージカルじゃないような。

原作のマンガは、読んだことはなくて、今となっては笑う名言、「君の
ためなら死ねる!」くらいはきいたことあるなーという程度。なので
原作が好きだったらどうなのかとかはわからない。
70年代。熱く燃える喧嘩や愛や貧しさやドロドロの心の奥底のマグマの
ようなものは、今はストレートには描けないだろ、というのはよくわかる。

岩清水くんが熱く「君のためなら死ねる!」と言うたびに、愛ちゃんにも
クラスメイトにもドン引きされ、スリッパではたかれ、誠には冷たいツッコミを
入れられる。
なのに、さらわれた愛を助けにいってくれ、と土下座するとき。
死ねるんだからお前行けよ、と言われながら、僕の愛は早乙女くんの幸せ
なのだ、早乙女くんを助けることなのだ、自分が行って死ぬのはいいが、
助けられなくてはただの自己満足だ。だから、頼む、と頭を地に打ち付ける
のを見たとき、はじめは苦笑いでつっこんだものの、やっぱりその本気さに
言葉を失わせる力があった。

ひたすらひたすらポジティブ天然スーパーお嬢様な早乙女愛の行動の数々に
誠と同じく、うざいー勘違い女ーっと苦笑いで見てるものの、どこまでも
どこまでも、本当にわが身を投げ出して誠を思い続ける姿に、やっぱり最後
うるっときちゃった。

バカバカしくてニヤニヤなぬるいコメディ。なのに、がっつりハードボイルド
だった。もうコテコテにベタなのに、それが、男だねえ。

役者のみなさん、みーんなすっごいよくやってる!と感激でした。
妻夫木くんドシリアス。笑わないねー。喧嘩強いねーかっこいいねー。
喧嘩シーンはさすが、迫力。痛そうなことこの上ない。濃厚な暴力が見られます。
スケバンなガムコさんwwwガム食ってるからガム子w
安藤サクラさん。まわりのチンピラスケバンちゃんたちもよかった~。
悲しい女、一見おとなしくフツウそうなのに実は影のスケバン長。大野いとさん
という人。無表情感がいいー。

武井咲ちゃんは、まー、可愛い~wきらきら可愛い可愛い~。もっさりした制服
で、さほど出来のよくなさそうなロングヘアなかつら、だよね、あの髪型。
それなのにやっぱり可愛いわ。あの、ルンルン♪な感じでの歌のバカバカしさも
可愛いわー。お嬢様で勘違い女で、ボケボケでただそこで可愛ければいい、って
いうのがすごくよかった。
喫茶店のウェイトレスなのに、すっかりアヤシイバイトだけどw
あの黒ニーハイ、ミニな安っぽいメイド制服の絶対領域!をカメラで舐める!
あれーはーエロス~。あの絶対領域は神でしょう。えろす~~~。
可愛いお嬢さんをあんなにエロスに(実際直接的にえろいことは何もやってない
んだけど)見せてくれてありがとう監督!

きれいにまとめようとか、うまく整えようとか、そんなんじゃなくて、
全力で瞬間瞬間の爆発を捏ね上げたような映画と思う。この映画の熱量に、
私は負けちゃうのだ。負かしてくれてありがとう映画。

最後には誠は。思いもよらない、でもまあベタに、先生なんかに刺されて、
誠はやっぱり愛と生きられるわけはなくて。
でもかーちゃんを抱きしめることができたし。愛を抱きしめることができたし。
せめて最期は幸せだったのだと思う。
かっこよかった。

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  ◇

       ◇

                                   千坂麻緒


  そんなことしたい気分ぢやないんだよ 図書館からくる督促葉書

  スーパーの野菜売り場に春がきてカタカナで読む知らない名前

  「重要」とみどりの文字が記されて十年経過を知らせる手紙

  東京はなんでもあつてさみしい、と 知らない人の日記を読んだ

  水仙の緑の茎が伸びてゐる地面の雪をまるく融かして

  新しいノートを買ひに行く日とす手帳の白き四角を埋めぬ

  私の今日のお仕事干してゐる布団が飛ばぬやう見張ること

                           (未来 2012年6月号)


++++++++++++++++++++++++++++++


今月もタイトルはなし。パタリロの口じゃなくて、タマネギの口、といった
方が正確でした。
『パタリロ!』88巻出たね。きのうようやく買って読んだ。忍タマか。
バンコランやヒューイットや、氷のミハイルがまた出てきてほしい。
パタ版ジョン・ル・カレを妄想しているこのごろです。


3月ごろにつくった歌です。図書館の本は延滞してません、念のため。


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『スマイリーと仲間たち』(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

*具体的内容、結末まで触れています。

『スマイリーと仲間たち』(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

パリ。女。マリア・アンドレーイェヴナ・オストラコーワ。彼女の
もとにある男が現れたことから事態は動き出す。
彼女がモスクワに残してきた娘のことで重大な話がある、というのだ。
オストラコーワが助けを求めたのは将軍。
将軍は、かつてスマイリーの情報源だった。老いた将軍の死。そして、
引退生活からスマイリーは呼び出され、それからは強引に将軍の残した
手がかりをたぐりよせていった。
カーラへと。

スマイリー三部作、っていわれているうちのこれがラスト。
今回はもうすっかり引退していたスマイリー。サーカスでも、将軍が
連絡してきたことさえ面倒ごと扱いで、スマイリーにも揉め事を起こす
んじゃない、という。老人の死からよけいなものを掘り出すな。
でも、スマイリーは見つける。モスクワ・ルールだ、という老人の最後
の行動をたどり、謎めいた証拠の品を。
そして、そして、と、スマイリーが孤独に突き進んでいくのをハラハラ
と見守る心境で読み進めた。
スマイリー、70代なのかな?ともかくもう十分老人で、でも黙々と
突き進む行動力も頭脳も衰えはないわけで。

なかなかピーターくんが出てこない。ピーターくん、そばにいてくれよー
と思うのに、いない。パリに飛ばされてるのね。
再婚して身重の新妻が、とか。まあ、仕事的には不遇みたいだけど、生活
としてはなんかいいんじゃない。よかったね。
って、でも、スマイリーがきたと知らずにあわてて帰宅したときとか
すっごいかっこいい。もう50目前って感じみたいなんだけど、でもでも
やっぱりかっこいい~。
ほんと出番少なくてそれが寂しかったなあ。最後にはちゃんとスマイリーの
そばにいたけど。

カーラの秘密。カーラの弱点。カーラの人間味。秘密の娘のために
秘密に職権乱用しちゃうカーラ。
スマイリーとカーラ。
最後むきあったとき、互いの中に互いの一部を見た、とかさ。
アンのライターをまだ持っている、ここで使ってみせるカーラ、とかね。
たまんねえな。

最後の、待つシーンでの、ピーターくんの祈り。

「くる、とギラムは思った。いや、こない。くるかもしれない。これが
祈りでなければ、なにが祈りだろう」
「やってこい、とギラムは切に思った。みんなで応援しているぞ。はやくこい」
「やってこい。(←傍点あり)さっきほどの確信はなく、彼は祈りを東側の黒い
スカイラインへとどけとばかり投げた。それでもいいからやってこい」

もー、切実に、私も一緒に祈るしかないじゃないか。こい。こい、はやく。
なのに、スマイリーは、「くるな」「撃て」と、胸のうちで言うの。
もーっ。もーっ。もーっっっ。

ついにカーラが車に乗せられて去り。スマイリーとピーター。そのシーンを
私は読むことで見詰めて自分でびっくりなことに涙ボロボロ泣いてしまった。
トビーが言う。「ジョージ」「長かったなあ。夢のようだ」
長かったね、スマイリー。
長かったなあ。

ラストシーンはピーターとスマイリー。「オールドフレンド(朋輩)」という
呼びかけが素敵だ。
面白かった。

映画見てからの二ヶ月ほどの間、特に三部作はすぐ読んじゃわないように
ゆっくり時間をかけて、ずーっとスマイリーの姿を眺め続けてきた気分。
たっぷり時間かけるだけの存分の満足を味わわせてくれた。
一気読みしちゃうやめられないとまらないも好きだけど、こんなにどっぷり
いつまでもいつまでもいつまでも読み終わりたくない小説、凄いよなあ。
さて、あと遡って、読んでないのを読むつもり。
スマイリーも名前くらいは出てくるのだろうか。(『寒い国から帰ってきた
スパイ』みたいになってるのかなあ?)
スマイリー、ピーター、この世界が好きすぎてどうしよう。素晴らしかった。


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映画「MIB 3」

*具体的内容、結末まで触れています。

映画「MIB 3」

昨日見に行ってきた。字幕、3Dで。

エイリアンから地球を守るMIB。エージェントであるKとJの
コンビは相変わらずで、あちこちでエイリアンの揉め事の始末に
奔走し、ピカっとやって人々の記憶をごまかす日々。
月の刑務所から脱走したアニマル・ボリス。
40年前、Kに腕をふっとばされ捕まった極悪エイリアン。
タイムスリップで40年前に戻り、今度こそKに捕まらず逆に
殺してしまうよう企む。
ある日Jがいつものように出勤すると、誰もKを知らない。
Kは、40年前に死んでいたのだ。
ボリスをとめ、Kを救い、地球を守るためJも40年前へジャンプ
する。

ってことで、シリーズ3作目。前から10年たっているそうです。
そっかー。
トミー・リー・ジョーンズはもともと若くないけどもっとすっかり
おじいちゃんな感じ。
それになにより、缶コーヒーBOSSのCMのおかげで、K、あんた
も宇宙人だろー、と、思わずにはいられない(笑
ま、いっか。
あんまりお笑いコメディという感じではなくて、あー相変わらずだなー
と、少しにやにやと眺める感じ。
Jと、Kと、いいコンビだなあ、と二人を眺める感じ。
40年前の若きKに違和感なくておかしい。似てるー。
シリアス、というほどではないにせよ、JがKのために一生懸命に
がんばっちゃうのがすごくいいなー。好きだった。

そして最後にはね、あの軍人さんが実はJの、っていう。おおおー。
めっちゃベタだけどうるっとさせるじゃないか。
Kが、結局ピカっとはしちゃうんだけど、でも、余計なごまかしでは
なく、父さんはヒーローだった、とだけ伝えるのは素敵だ。

5次元に生きてるらしい?グリフィンという青年姿の宇宙人くん。
ありえる未来が同時に見えるらしい。えーとー、5次元ってゆーのは
時間が自由になるんだっけか。まあよくわからないし気にしないけど。
彼がかるーく説明してくれるので、あーいくつもの並行世界、とか、
未来の可能性、それが選ばれる偶然の奇跡、みたいな感じがさらっと
なんとなーくわかったよーな気になる。

高いところ怖いっこわーヒヤヒヤっ、というのもたっぷり味わったし、
楽しかったです。

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『パラダイス・ロスト』(柳広司/角川書店)

『パラダイス・ロスト』(柳広司/角川書店)

 誤算 
 失楽園
 追跡
 暗号名ケルベロス 前篇 後篇

短編集。結城中佐率いるD機関。日本軍に密かに設立された
秘密諜報機関。軍人ではなく、民間からの、優秀な若者を集めて
育てられた優秀なスパイ。それぞれの活躍を描く。
って感じでしょうか。シリーズ3冊目になるのかな。

最初、あれこれ前にも読んだっけ?と思ってしまったけど、今年
の新刊だし雑誌は読んでないし読んだことないはず。
悪く言えばマンネリ。同じような描写があるので、自分の記憶力
がポンコツな私には読んだことがあったっけ、と不安になる。
最後まで読むと、うん、読んだことないわ、と思ったけど。
よく言えば安定の面白さ。期待通りの面白さ。期待しても期待を
下回ってしまうってのもよくある話で、期待通りを維持している
のはさすがの実力でしょうか。

「追跡」の、結城中佐の過去を探る話面白かった。どのくらい
真実でどのくらいダミーなんだろう。まったくすべてがダミー?
でも嘘をつくには真実を混ぜるのが基本だろうから、そこそこ
ホントがあるだろうなあ。
英国情報部で修行、みたいなのがあって、個人的にわくわくした。
サインがC、だなんて、おー、コントロール!と思ってもえる。
ル・カレの作品はスパイ小説の傑作として名高いそうなので、
多少の遊びをこめてそういうの書いたりしたのかな~と勝手に想像。
ま、スマイリーとはちょっと時代が違う。まだまだ若きスマイリー
が現役だったくらいだなー戦争開始当時。
なんて関係ないことを妄想したりして楽しかった。

「暗号名ケルベロス」は、船の上での殺人、ということでとても
ミステリっぽい。スパイがらみとはいえ動機は復讐。ふーん。
エニグマとかちょっともえる。暗号の本、読もうと思っててまだ
読んでないのもあるー。読まないと。
なんかちょっといい話風に終わるのはなんだかね、と思う。ふーん。

読みやすいし面白いしで楽しかったです。

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『一匙の海』(柳澤美晴/本阿弥書店)

『一匙の海』(柳澤美晴/本阿弥書店)

著者第一歌集。
2006年から2010年の作品を選んでの一冊。年齢的には
27歳から31歳に当たる、とのこと。
歌壇賞をとったものから、この歌集自体もいくつか賞をとって
らっしゃるようです。凄いなー。

のっけから一読、鋭い。怖い。
硬質。ガラスや氷のような感触の歌集です。鋭いエッジを突きつける
ような歌たち。世界にも自分にも向けられた鋭さ。

題材としては、父のこと、恋人とのこと、教師としての日々、生徒
との関わり、というところでしょうか。
そして短歌との関わり。詩について短歌について、くっきり言及して
いる歌があるのって凄いなあと思う。そしてそこに甘さが一切ない。

  定型は無人島かな 生き残りたくばみずから森を拓けと (P9 
  拓 ルビ、ひら)
  くりかえし覚悟問われる悔しさは闇をつつみて連なるつぼみ(P39)
  引用という牛乳のやわらかき皮膜にとわに守られていよ (P64)
  明け方に穂村弘の亜流来てぬたぬた冷めたうどんをすする (P72)
  「トモダチニナリマセンカ」という腕が歌の区切れにひしめいて
  おり (P72)

甘い短歌に容赦ないって感じがする。ひいた歌は短歌のことっていう
わけではないのかなとも思うけれど、こう、覚悟というか自身の厳しさ
を感じた。歌としてもはっとさせる鋭さがあって上手い。

恋人への歌も、甘やかな気分というよりは切なさ、求める寂しさを
強く感じる。甘くやさしいなあうっとり、という要素もないではない
と思うけど、クリーム的甘さではない感じ。恋人が理系な人、っていう
感じもちょっとストイックな印象で素敵なのかもしれない。愛しい。

  くちびるをわれの額に載せたまま髪の先まで眠るきみあり (P54)
  葉脈が試薬に染まるやさしさで忘れられてもいいよきみには (P56)
  蟷螂のみどりみだらにきみを食む想像をする職員室で (P61)
  あ/フリーズ/逢いた/フリーズ/いくらでも強制終了できる恋かも
  (P65)
  理学書の栞代わりにされている おととしのわたしからの手紙は (P88)
  実験用マウス殺める手技のこと眠るまぎわにきみは語りき (P125)

正直どの歌をとってもきりりと凛々しくてかっこよくってうまくて、
全部がいい、という感じ。
今日読んだ感じとして、好きだった歌いくつか。

  古書店に軒を借りれば始祖鳥の羽音のような雨のしずけさ (P9)
  鉛筆の記憶は悲し 手を得れば「愛されたい」と便箋に告ぐ (P12)
  軒先に並ぶほおずき選ばれることのなかった明日のために (P45)
  遠雷を わたしの父を社会から追ったすべての賢き者へ (P95)

この強さはなるほどー賞をとるのね、と納得です。凄い一冊だと思いました。
  

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『汀暮抄』(大辻隆弘/砂子屋書房)

『汀暮抄』(大辻隆弘/砂子屋書房)

著者第7歌集。
2006年から2010年までから選ばれた350首、だそうです。
著者40代後半というところでしょうか。

あとがきにあるように、身近ないくつかの悲しみがあり、とのことで
家族や親しくしていた人の死の歌が多い。
身近な家族の死、というのは私にも経験あり、あるいは家族でなくとも
知る突然の訃報、というのも経験もあり、そういう出来事を著者は実に
誠実に丁寧に細やかに歌にしている。
たぶん百万回言われていることだろうけど、自然描写、細部を見る目、
それを歌にする言葉の巧みさ、本当に沁みてくるうつくしさだ。
自然や旅の景色などなどの歌はどれもうまくて好き、って選びきれない。

ところで私は、あまりひとの最期のこと、それにまつわる歌を読みたく
ない。歌、凄いなあと思いながらもでもでもでも私は読みたくない、と
思う。家族の死とかねー、私、言葉にできないんだ。もう時間は随分
たっているんだけれどね。
読むとやっぱりいいなあすごいなあと思うけど好きとは思えない。これは
完全に私の側の個人的問題だな。

先日『ルーノ』を読んだから勢いでっとこっちも読んでみた。
やはり年齢を重ねているせいか、そして題材的なせいか、変化している
のだなあと思う。
『ルーノ』の頃はどうしたってやっぱり自分自分のことが多かったと思う。
こちらは、人のこと、自然のこと生徒のこと、だったりしている。
若さって自分のことで精一杯かなーと思う。年をとるって、人に責任を
持つってことかなーと思う。

ロマンチックで甘い歌は減ったものの、自然描写の歌のやさしさに
愛しさがにじむようで、こういうやわらかさはほんと大人で素敵だ。
んでも時々、社会詠的なというか、鋭いところもあって、ドキッとする。
たまにあやうい気持ちにもさせらられるけど、そういうのもいいな。

いくつか好きな歌。

  くさかげの雫にふるふミカエルは天使第九階梯の第八 (P12)
  大天使ミカエルその他もろもろの跳梁したる秋のなかばは (P12)

何故いきなりミカエルなんだろう。でもきれい好き。跳梁って、悪霊跋扈
みたいなイメージが私にはある言葉なんだけど、面白い。

  白墨といへば初冬の匂ひしてやさしく曲げてみる文字の肩 (P47)
  やや遅き梅のひらきを寂しみて父は昨日のことばかり言ふ (P53)
  やや遠くなりたる耳をわが声にかたぶけ寄せて聴きたまひきに (P156)
  山鳩が中途半端に鳴きやみてそののち深き昼は続きぬ (P180)
  青古たる柘榴といへる比喩ひとつ思いつきたれど使ふすべなし (P184)
  トゥイントゥインと音の卵を産み落とす警報機あり夜の草はらに (P190)
  暗黒に脚を浸してゆくことのときめきに似て階をくだりつ (P191)
  いつせいに解答用紙ひらかれて風ふく朝の野をおもひたり (P193)

「柘榴」の一連は、柘榴のことをひたすら歌って13首かな。凄い。
そして「使うすべなし」っていいながら歌にしてますやん、とつっこみたい。
比喩に使えなかったってことなんでしょうけど。
「音の卵」というのがとても好きです。

  腋に触らるるやうにくすぐつたからうよ月の光を感じて竹は (P66、
  触 ルビ、ふ)

これはとても可愛い。とても美しい景色なのにとても可愛くできていて
好きです。
面白く読ませていただきました。


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『ルーノ』(大辻隆弘/砂子屋書房)

『ルーノ』(大辻隆弘/砂子屋書房)

タイトルはエスペラント語で「月」。宮沢賢治の詩篇かたとったとのこと。
著者第二歌集。1993年刊。
1989年から1992年までの間、著者28歳から32歳の時期の歌だ
そうです。

さて当時短歌界は、ライト・ヴァースのあとニューウェーブというのが
流行っていた頃、でしょうか。私が短歌に興味を持つ前のことで、全然
その頃のことは知りません。
ごくざっくりとネットで見た感じ、荻原さんが「ニューウェーブ」と名づけた
のが1991年らしい。『新星十人 現代短歌ニューウェーブ』という本が
出たのが1998年。その本でまとめられるくらいに若手(?)が活躍して
きていたのがちょうど90年代初めってことなんでしょうか。たぶん。

大辻さんの歌は文語旧仮名のとても端正でうつくしくてうっとりものだと
思います。
そんな中ちょっとニューウェーブっぽいような感じなのかなーと思う歌。

  あがあが、と声だしながらカルピスの膜がはりつく喉を見せあふ(P49)
  ほつかほかかーぺつとの上に目覚めたるその名かんぴんたんのわたくし
  (P101)
  「超ヤバ!」はすなはち不可思議の意にて石上真一郎、答案をやぶる
  (P101)
  うるうるの月光液に涵さるるぬばたまの爪先のペディキュア(P127、涵
  ルビ ひた)
  
あくまで私の勝手な主観だけど、なんか似た感じの歌を連想する言葉選びな
気がする。イメージ的に。ニューウェーブって、でも実はあんまりよくわか
らないのだけれど。。。口語的だったりオノマトペの多用だったり、かなあ。
可愛いな、と思う。

中ほどにある、「徴候<KIZASHI>」は、集団朗読用とのことです。
哲学的というか記号やら意味やら。なんか懐かしい。こういうの流行った
なあという気がする。学生の頃にがんばって読もうとして、でも私には
わかったってほどのことはなくて。大辻さんは哲学がご専門なのでしたっけ。
集団朗読で聞くとどうだったのかなあ、と興味はある。けれど、詩として
読むのはちょっと私には全然わからない。このテキストもとに、朗読やると
して自分ならどう演出するかな、って考えてみるのは面白かった。
でもこれ耳で聞いて意味伝わるのかなあ。その辺が記号?意味?
やっぱり私には難しい。

歌集読んだ印象として、最初の方は「みづ」や「ひかり」が多いと思った。
そして全体的にリフレインも多いと思った。
後の方には妻がいて妊娠、子ども、というテーマになっていく。
生活的なことよりは観念的というか。絵とか音楽とか思想をうたう、という
感じ。そういうのがステキだなあ好きだなあと思い、自分の乏しい知識なり
に、連想広がったりするのは楽しい。
ちょっと上滑りに思うこともあるけど。

やっぱり、正当な感じのするうつくしい歌に憧れる。歌はうつくしいのが
いいなあ。そんなんばっかりじゃいられないのはわかっているけれども、
憧れます。

  目覚めよ、と呼ぶこゑありて目ざむればまだ手づかずの朝が来てゐる
  (P12)
地をあゆむ鳩が瞼をあはす時つかのまくらし真昼の庭は (P44)
  イ・リ・ア<そこにあること>つひに寂しきをこの熟れ梨は余る、わが
  掌に (P88)
  つきかげは細部にも射し陶片の青磁のいろの夜半のはなびら (P120)
  凍るやうな薄い瞼をとぢて聴く ジュビア、ジュビア、寒い舌をお出し
  (P124)

なんというか、とても切なく共感した歌↓。

  いまだから言はうか 保弖留海豚がいでたる秋のTOKIOの遠さ
  (保弖留海豚 ルビ ホテル・ドルフィン P92)

保弖留海豚は未来での当時注目の若手有志?の合同歌集ですよね。たぶん。
1987年に出たのかな。なんかこう、あー、と思ったのだろうなあ、と
勝手ながら想像。
遠いのだ。

終わりの方に、妻の妊娠、子どもの歌が出てくる。
それが、なんだかとても、妊娠、子どもを異様なものとしてとらえて
いるように思う。妊娠子ども、というのが私にとってわからないもの
だから、こういう歌を見て私が異様に思ってしまうだけなのかも。
実際子どももつ実感っていうのがこんな風なのか、著者にとっても
異様なことなのか、私の側の思い込みなのかわからないです。
でも単純に喜びとか可愛い可愛いとかではないのは確かだと思う。

  獣乳の腐る匂ひにつつまれて産み月に入る妻はねむりぬ (P138)
  プチトマト サラダの端に置くゆびの産み終へてまた緊まりゆく妻
  (P148)
夜の蝉が咒と啼く闇へ、ふたひらの薄き耳もつ子を連れてゆく 
  (咒 ルビ、じゆ P149)
  しろがねの和毛しづかにかがやける李のごとき吾子の陰見き
  (和毛 ルビ、にこげ 李 ルビ、すもも 陰 ルビ、ほと P155)

可愛いやさしい相聞的歌もやっぱり大好きです。

  滅びゆく鼻濁音「が」のやさしさを聞いてゐる夜、君とゐること
  (P15)
おそなつの夜店に妻が買ひ来たる押せばシャボンの玉を吐く熊
  (P119)

日付のある歌とか岡井風なのか?と思ってみたり。いろいろ面白く読み
ました。きれいな本でした。

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『スクールボーイ閣下』上下(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

*結末まで触れています。

『スクールボーイ閣下』上下(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

ジェリー・ウェスタビーは工作員。香港でカーラの資金を探るべく、
呼び戻された。
任務は終えた。だか、ジェリーは戻らなかった。

スマイリーが復帰してカーラの動きを探る。CIAとの共同作戦、と
いうところかな。CIAとは書いてないけど、えーとーたぶんCIA
なんだよね?
相変わらずとっても地味に、書類作業を緻密につめてつめてつめて
金の動きからスパイを焙り出す。なんて地味なんだ!
でもこう、ひっそり閉じこもるスマイリー。その側近として付き従う
ピーター・ギラムってすっごいもえる。痺れるねえ。
護衛のフォーンも。
そして、スマイリー三部作、ってことだけども、この話のメインは
タイトルの「スクールボーイ閣下」ってあだ名のジェリー・ウェスタビー。
でもシェリーは下っ端工作員で、ジェリーに沿って読んでいると、最後
のほうには、え?え?えー??とまたしても混乱して呆然。
スマイリーが何を考えているのか、何をしようとしていたのか、下っ端
にはわからない。ピーターくんも報われず可哀相。

話は、この事件そのものが終わった、という時点で描かれているので、
時々、この時の失策は、みたいにすでに終わったことへの寸評みたい
なのが書かれて、えええ、とハラハラする。読んでいる私はまだ事件の
結末を知らないわけで、でももう終わったことで、でも結局スマイリー
の心情みたいなことは一切説明なし。比較的描写されてるのはピーター
くんなので、なんかもうほんとピーターくんタイヘンだね、と思った。
作者もスマイリーも全然説明してくれないのね。
とってもピーターくんかっこいいよ。惚れる。

ジェリーがやっぱりリジーに惚れてる欲しい、と、サーカスを無視して
勝手な行動始めてしまってからはひたすら胸が苦しい。下っ端工作員は
つらい。『寒い国から帰ってきたスパイ』みたいに。
スパイは恋をしてはいけない、なんていうとあまりにも陳腐だけど。
でも、恋なのだ。
007ボンドが気軽に女をとっかえひっかえしてるのとのなんという
違いだろう。(ボンドは映画しか知らないので本だとどうなのかわから
ないけど)
切ない。
そしてながいこと心寄せて読んできたジェリーのなんというそっけない
死に様。作者ーっ。。。こういう書きぶりが素晴らしくかっこいいけど。
この突き放す容赦なさにはまるなあ。ドM気分がふるえるわ。

ゆっくり読もう読み終わるのもったいない、とじわじわ2週間近くかけて
読んだ。面白かったー。さて次にいくぞ。

(あっ。BSで7月22、29にシャーロックの第二シーズンやるって!
シャーロックだーピーターくんだ。絶対見る見る楽しみ)

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映画「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」

*具体的内容結末まで触れています。

映画「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」

ノーベル文学賞をとるか、と噂されている三島由紀夫。しかし彼は文学者
としてではなく、国を思う男として、自衛隊の訓練に体験入隊を繰り返す。
若者たちと語り、志を同じくするものたちを集め「楯の会」を結成する。
すべての活動資金は三島由紀夫が出し、若者たちにも自衛隊の訓練を受け
させ、決起の時を計る。
中でも森田必勝は三島に心酔し、死を求めていた。
学生運動。赤軍事件。自衛隊は動かず、警察の威力が増すばかり。
ついに、密やかに厳選された数名のみで、三島はその日を決行した。

三島由紀夫を演じるのは井浦新。この役を機会に、名前をARATAから
本名井浦新に改める、という意気込み、だそうで。
たしかにエンドロールに、先頭に一人出てきた黒バックに白の明朝体漢字
のその名前のほうがいいかなーと思う。
でも、あのギリシア風?だかなんだか派手な西洋建築の屋敷で着物を着たり
大理石暖炉に日本刀を飾ったりしている三島由紀夫だから、別に漢字の名前
じゃなくてもいいかもね、とも思う。ともあれ、新がどう熱演しているのか
を見に行った。

三島由紀夫大好き。
凄く好き。めちゃくちゃ好き。豊饒の海を読み終わった時にはしばし放心
だった気がする。うつくしい。
あんな世界をつくりあげながら、一方でこう、軍人としてーなんて自衛隊
訓練にのめりこんだり楯の会の若者に演説ぶったりしていたのかと。。。
いやうーん、それも納得をもうしてしまうしかない。三島由紀夫って
やっぱり怪物すぎてわからない。わからなくていいしわからなくて当たり前。
日本随一の文学者でありながら自衛隊に決起促して結局腹斬って自決、って
そんな人物のこと古今東西誰にもわかるわけない。

新はやっぱり姿がとてもとてもとてもきれい。気迫の剣舞のシーンのきれい
なこと迫力あること素晴らしい。
三島と顔が似てるわけじゃないと思うけど、手とかなんかこう、ポロシャツ
着てる感じとか似てるーと思った。喋り方も。東大の立てこもってる学生達
と話すシーンとか。
あの最後の演説の熱弁っ。おおおおこんな感じーと思う。
といっても、三島が自決したのは私は生まれてない時。なんだろうな、
近代史振り返るみたいなテレビ番組なんかで見たりしたのかなーあの演説。
ヘリやら野次やらで煩くて誰にも届かなかった、誰も聞かなかった演説。

なんかもう最初からね、三島が痛々しくて見てるのが辛かった。
どうしようもなかったのかなあ。誰にもとめられなかったのかなあ。

森田くんが、最初は義理でというかつきあい的に三島のところにきたのに
だんだん、三島のところで死ぬ三島に命あずける三島先生死に所を示して
ください!と、がんがん煽っていく猪突猛進な信者になってって、三島も
呼応して死にに行く、みたいに描かれていた。
森田ー。てめー三島を独占したいんだろう~、と嫉妬。ずるい。
三島さんもう森田を抱いてやれよ!!と思ったり。どーなのかは知らないけど
今だったらエロスのほうで昇華しちゃったりできないかなあ。でもああいう
思想の男の世界ってのがいいんだろうから無理だったかなあ。
しかし、みんなでサウナで話し合って盛り上がっていくのはちょっと笑った。
いや、ドシリアスで気迫凄かったんだけど。
三島んちサウナがあったんだったっけな。もうきみら抱き合えよキスしろよ
やっちゃえよ!
彼らなりの愛と信念の行動がああなってしまったのだろうけど。

森田を演じていたのは満島真之介。ひかりの弟ー。
やっぱり物凄く目が強い。印象的。素晴らしかったよー。

豊饒の海、「完」まで書いた原稿や遺書みたいなのをきちんと置いてゆく
ところではじーんとくる。そういうエピソードのあれこれは知ってたりして。
文学者でいてほしかったよ。
文学者でいてほしかったよ。

みんなで車で行くシーン。意外と明るいじゃないか、というのが切ない。
それぞれの辞世の歌が出たけど、当然ながら三島のがよくってかっこよくって
切ない。
「益荒男がたばさむ太刀の鞘鳴りに幾とせ耐へて今日の初霜」

最後の演説のシーン、新の声いいよねえ。ところどころ当時の写真なんか
が入ったので、生首写真でるかなどうかなと期待したけどなかった。
まあそこまでやると悪趣味でしょうか。でも桜やら日本の美しい風景やら
にするのはどうなのかなあ。海外向け?んー。どうなのかなあ。

新をたっぷり見た、という点では大満足。いっぱい脱いでくれててきゃー。
やっぱり日本人たちはつるんとしててきれいだ。

学生運動たちあの辺の時代のことはやっぱりどうしても、私にはわからない。
どんなに話を聞いても、どんなに映画やテレビを見ても。
客層、けっこうおじさん率が高かったと思う。学生運動現役だったりした人
たちだったりするのかな?とちょっと思う。どうなんですか。
そうまだあの頃バリバリやってた人たちが今も生きてるのがなんだか物凄く
不思議な気持ちになる。どうなんですか。実際突き進んで死んだ人もいる
只中から今フツウのおじさん的人生を生きているのって。
それがいい悪いじゃなくて、どうなんだろう?と、本当に不思議な気がする。

映画終わって、新宿の街を少し歩いて駅に行くのが不思議な感じだったよ。
映画の中で新宿で大規模デモだか闘争だかあったよーなのを見たあとで。
まだ歴史、というには近く、でも実際には知らない時代。いろんなことを
情報知識としては知っているけど、その空気のことは知らない時代。
知ってる人は、あの空気は話きれるものじゃないわからないだろう、という。
わからないよなあ。やっぱり。空気ってわからないよなー。。。

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映画「外事警察 その男に騙されるな」

*具体的内容結末まで触れています。


映画「外事警察 その男に騙されるな」

ウランが流出した。
日本では、震災で崩れた大学の研究室から精密な起爆装置の資料が盗まれた。
核テロサミットを目前にした状況での不穏な動き。日本と韓国の機密組織が動く。

テレビドラマでもどっぷりハマって大好きだった外事警察。
なんといっても、住本主任をやってる渡部篤郎がすさまじく色気があって
かっこよくってたまんなくって身悶え。テレビの時には勢いあまって「ケイゾク」
のDVDセット買っちゃったのだった。あの痺れる真山さんを思い出してね。
あれから年を重ね、なんなんだこのやっぱりすっごい役やっちゃう渡部篤郎よ。

映画はさすがスケールが大きくなってて、北との核問題。大きすぎるー。
官房長官が「日本の手にはあまるのよ」と吐き捨ててらしたけどほんとそう
なんじゃないかなと思った。結局住本は日本政府は一切関知しない、って
立場でいくしかないわけで。
でもそれってますますミッションインポッシブルみたいでかっこい~。
韓国側の安眠鉄もすんごいかっこいい。
韓国での爆発。銃撃戦。やっぱりすーごいなー。

とにかくとにかく、ほんと役者みんなが凄まじくかっこよくって痺れる。
真木よう子演じる果織。ひなちゃん尾野真知子。おのまちちゃんは「カーネーション」
の時期と撮影かぶってたらしいけど、凄いな。まあほんっとにガラっと違う役
だからできるってこともあるのかなあ。糸ちゃんは糸ちゃんで、ひなちゃんは
ひなちゃんだ。したたかに成長していて、でもまだやっぱりひなちゃんで。

母である覚悟決めた果織の前で、ひなちゃんはやっぱり負けてて、そういうのも
すごくよかった。ひなちゃん、まだまだ強くもしたたかにもなっていくだろう。
かっこいい。
テレビのときみたいに、果織をズブズブにしてやんよ、ってのをじっくり見たい
気もしたけど、まあ、それはドラマでやったしね。時間がないんだ、というのが
緊迫感でもあるので、あのテンポでいいかなあ。

んでっ。やっぱり田中泯は凄い。
かつて日本で学んだ北の原子力学者。日本に妻子を残していることを住本に
つけこまれて、日本へ戻り上玉の情報源とみなされる、が。
住本渡部篤郎との息詰まる競演。しかし田中泯の眼光のすさまじさったら。
最初の登場からしてもう圧倒的。闇に光る眼。炯炯と、とかってつまりああいう
眼なんだろうか。そんな形容がふさわしい眼っていうのを初めて見ました。
無理。もう無理。田中泯みてるだけで私が壊れてなんかもう、あの、爆弾前に
してのシーンからあともうずっと涙が止まらなかった。緊迫感が凄すぎて。
感動の涙なんかじゃない。緊迫感。見てるだけのはずなのに臨場感。あの力
凄い。なんかもう、役者って凄い、って見せ付けられるわ。

住本は、またすれ違いざまにぐさっと刺されちゃってましたがw
学習しろよー。人とすれ違う時にはもっと気をつけてー。
でも、どーなんだろう。住本の心の奥底には破滅願望のようなものがあって、
いつでも俺を殺せ、と、願っているのかもしれないと妄想。
自殺なんかはしない。任務に全力をかけてる。でも、死ぬことを恐れていない。
だから、徐博士と同じくガソリン(かな?)自分もかぶることができる。
その闇にひきこまれちゃうんだなあ。ああなんて色っぽい。エロスとタナトス
だわー。惚れずにいられようか。

震災直後な日本。すごく「今」の感じだと思う。ぞっとする。リアルだったら
どうしようと思う。リアルなのかもしれないと思う。
細かいとこだけど、官房長官の会見の時に横に手話の人がいたりしてね。
そういう小さなリアルがなんかリアルでこわい。さすがNHKって気分。
どうしましょうこんなことになったら。日本は本当に大丈夫なの?
大丈夫じゃないよね?でも本当は大丈夫なの?国民が知らないだけで、公安
は本当に暗躍してくれているの?していてほしいわ。。。
脚本、古沢良太という人。
昨日の「リーガル・ハイ」でもコミカド先生に10ページに渡るとかいう長セリフ
まくしたてさせていたのだ。あのセリフの圧倒的な感じも物凄くて。凄く「今」
で。挑発的だと思う。そしてもちろん本気なのだと思う。よく書くよなあ。
そして、よくそれをドラマにも映画にも、つくりあげるよなあ。核。原発。今の、
これからの日本を、見ろ、という気迫が凄い。

住本が実は誰かに寵愛されてて、とかってのももえた。
誰なんだろー。有賀さん?石橋凌。それじゃ微妙にぬるい気はするけど、
有賀さんは政治に近いとこにいるわけで、あのぬるい感じが表の顔的偽装で
ほんとは凄くて、みたいなのを妄想。政治に近いとこにいなくちゃいけない
人も必要で、そうだとやっぱり表的なことしかできなくてあのくらいの
ぬるさがリアルなのかなあと思ってみたり。
かっこいい。もうなにもかもすべてがかっこよかった。はー。

最後、あのDNA鑑定は本物なのか?とか。子どもさらったのは住本の
手配かっ、とか、ああああ、と呆然。うーむ。
子どもさらったのって、攫ったやつは手配したとして、その後のえっと、
でもあの、北のやつらと巧妙につなぎとったってことなのか?そこまで
危険冒すのか。爆弾の現物にたどり着くためには、そこまでリスクとらない
とダメか。。。凄い。本当に爆発はするかもしれない。ソウルで核が。
それでも、そこは日本じゃない、とまで割り切りして独断した?できる?
そこまでやるから魔物なのか住本っ。
ひなちゃんに、ほんとは弱くてもろい、とか詰め寄られてたけど、そう
思わせるのもあのDNA鑑定出すためのタイミング?でもそこまで操ること
ができるかなあ。できる、かな。。。
操れなくても、でも、その時々で本気で柔軟に次の手うっていける、って
ことか。
ほんとは弱くて脆い、のも本当。そうでありながら、次の手を非情に
繰り出すことができるのも本当。底知れぬ闇だし罠だ。住本凄い。素敵。
うっとり。。。

大 満 足 ! ! !

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映画「ダーク・シャドウ」

*具体的内容結末に触れています。

映画「ダーク・シャドウ」

コリンズ家はかつて水産業を興し町を発展させた名家である。
バーナバス・コリンズは、若き坊ちゃま。気ままにメイドの
アンジェリークとつきあったが、愛してはいなかった。
愛を求めるアンジェリークは魔女となる。バーナバスが愛した
ジョゼットを操り崖から身投げさせる。そしてバーナバスは
ヴァンパイアにされてしまい、村人に捕まり棺に閉じ込められ
埋められてしまった。
それから200年。
1972年に掘り出されたバーナバス。かつての繁栄を失った
子孫とともに、コリンズ家を復活させようとする。

とーにかく、ヴァンパイアの白塗りなジョニー・デップはやっぱり
きれいだな~。いいよヴァンパイア。そしてやっぱりヘンでステキ。
それから、魔女になるアンジェリーク。エヴァ・グリーンという
女優さん。すっごいゴージャス美女!そりゃあフラッと手を出して
しまうよね。積年の恨みがあるだろうにやっぱり誘惑されたら
やっちゃうよね(笑)激しいやっちまいっぷりは可笑しかった。
そのあと賢者タイムで憮然としてるジョニーも可愛かった。いやいや
バーナバスくん。あんたがわるいだろ。

魔女になって相手一族を呪うとか恋人殺すとか、そのやり方はダメー、
と思うものの、アンジェリークのほうがなんだか可哀相な気にもなる。
愛してたのはホントだと思いたい。
最後に心臓を差し出すのは切なかった。
でもダメなのよアンジー。
ゴマブッ子さん流に言うなら、バーナバスにはあなたじゃなかった。
あなたにはバーナバスじゃなかった。どんなに好きで思っても、人の
気持ちは変えられない。どんな手をつくしても。だから自分が執着を
捨てて変わらなくちゃ、仕方ないんだよ。
アンジーにあの女ブログを教えてあげたい!ww

しかしコリンズ一家のほうもなんか化け物じみていたり。。。あの
娘ちゃんがオオカミ人間になっちゃったりとか、唐突すぎて私には
わからない。
もとはテレビシリーズだったのかな。そういうのでなんか元ネタというか
そういうキャラになるような話があるのかもしれないけど。
わからんー。
そういうのが好きだったりするともっと楽しいのかもしれない。

前宣伝でイメージしていたほどコメディ的でもないような。
ホラー、というのとも違うし。私はわりと淡々と見てしまった。くす、
っと笑ったりもしつつ。怖いというのはあんまりないか。でも思ってたより
血は流れるー。
あれは一応ブラックなハッピーエンドなのかしら。ヴァンパイアとして
結ばれた、の、かな。でも大事な家族、コリンズ家はダメになっちゃった
んじゃないのかなあ。どうなのいいの。ま、いっか。

まあ安定の、ティム・バートン監督、ジョニー・ディップ主演。
ヘレナ・ボナム・カーターもいるよ、というわけで。
私、このコンビがなんかワイドショーなんかで持ち上げられたりしてる
ほど好きなわけじゃないんだった。ジョニー・ディップもまあ好きだけど
別に大好き大好き!ではないんだったー。でもまあまあ見てると思う。
そして毎回まあまあの満足。
今回はゴージャス美女アンジェリーク素敵~!というわけで結構満足。

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