『ねじれた文字、ねじれた路』(トム・フランクリン/ハヤカワポケットミステリ)
『ねじれた文字、ねじれた路』(トム・フランクリン/ハヤカワポケットミステリ)
ミシシッピ州、シャボット。人口が500人前後の町。
25年前、ひとりの少女が行方不明になった。
その夜デートをしていたラリー。生きた彼女を見た最後の人間。
死体はなくなんの証拠もなかったが、以来町の誰からものけ者に
されたラリー。
そして今、また少女が行方不明になった。「要注意人物」扱いの
ラリー。自動車整備士として、誰も客のこない仕事場を守っている。
孤独なラリー。
サイラスはシャボットで唯一の治安官。少年の頃、ラリーと友達だった。
ラリーとの友達関係は一時だけのもの。長く町を離れていた。
だが、ラリーの異変に気づいたのはサイラスだった。
ラリーは、撃たれていた。
話の時間がくるくる入れ替わる。最近こういうのばっかり、って
気がしてくるなあ。
視点はラリーでありサイラスであり、と、これもくるくる変わる。
むむーと思いながら読み進める。
少しずつ、過去のこと、現在のことが明らかになっていって、最後
のほうにはドキドキで、とても面白かった。
小さな田舎町。
人種差別も根強くある。学校でうまくやれないラリー。一人で
スティーブン・キングなんかの本ばっかり読んでいるような冴えない
少年。サイラスは野球をやって才能を発揮している。二人が森で
遊ぶ日々は少年たちならではの秘密の時間で。でも、少女が消えた
時からはるか時間がたって、孤独なおっさんになった男は、凍った
時間を解きほぐせるのか。
サイラスがしたことはあんまりだ。
複雑な思い。複雑な関係。それでも、25年はあまりにも長いんじゃ
ないのか。
でも、読み終わってページを閉じて、ほっとした気持ちになれる。
これから25年かけていってもいいのかもなあ、と、思ったりして。
どうかな。どうなるだろう。
きっと、この最悪の時よりはひかりのある未来だろうなと思える。
面白かったー。
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