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『閉じこもるインターネット』(イーライ・パリサー/早川書房)

『閉じこもるインターネット』(イーライ・パリサー/早川書房)

グーグル・パーソナライズ・民主主義
というサブタイトル。

グーグルはパーソナライズされている。
これまでの私のクリックによって読み取った私に最適化された
検索結果を返してくる。
そーなのね。。。

いつのまにか、という気分。そうなんだろうなあ、という納得は
あるけれども、やっぱり、いつのまにかそんなー。気持ち悪い、
と私は思う。アマゾンで、履歴から新しいおすすめをされるのは
気持ち悪いなりに、うーんそういうビジネスだし、と思っていた
けれども、グーグルは検索ということであんまりビジネスだと
いう認識が薄かった。グーグルから直接的に何かモノを買ってきた
わけじゃない。
でも、グーグルだってビジネスなんだから。その認識が自分は
甘かったなあと思う。
私はまだフェイスブックは使ってないけれども、うん、私個人に
絞った広告がくるというのは容易にわかる。でも、広告のみならず
示される情報までもあっちでフィルタリングして出してくるのね。
なんとなくぼんやりと、そうなんだろうなあ、と感じて気持ち悪く
思ってはいたことを認識した感じ。

あらゆるデータを吸い上げられ、私にはわからないアルゴリズムで
判断された「私」に向かってだけ広がる「私だけ」のネットの世界。
インターネットって、始めたころは、世界に、まあネット使っている
人たちだけの世界とはいえ、広く世界にひらくものだとイメージを
していた。

でも、今はどんどん閉じていっている。
島宇宙、という表現をしていたのすら少し昔の話になるのか。
島宇宙化、趣味的に細分化していく小さなコミュニティに閉じこもる
のは、まだ自分の意向であったけれども、グーグルのアルゴリズムに
勝手に判断された自分の中に閉じ込められていくのは、自分の意向
ではないからなあ。。。
自分の過去の履歴だとか、つぶやいた言葉、住所やなんかわかんない
いろんなデータに未来まで閉じ込められて、自分にとってだけ快適な
ネット世界に閉じこめられて自分ループになるなんてイヤだなー。
でも自分にとっての最適解がスムーズに検索できて、っていう便利さ
は享受しているし、いい、けど。けどー。

でもいつのまにか、公平なお勧め最適解じゃなくて、広告主から
金もらってるからほらこれが一番です、ってお勧めされる情報に誘導
されてしまうんだ。ヤダ。でも。うーんー。

パーソナライゼーション。ターゲットマーケティング。それは必然
だろう。誰だってより効率的な広告をうちたいし何もかもがタダで
回っていくもんじゃない。
「無償サービスには、個人情報という対価を払っているのです。
グーグルもフェイスブックも、それを上手にお金に換えています。」
(P16)ですよね。

フィルターバブル。情報はフィルターにかけられ、自分が包まれている
フィルターの泡の中で見るのは自分が感心ありそうなニュースに限られ
てくる。つまり自分と大きく違う考え方に出会うチャンスが減ってくる。
フィルターバブルがなければ、出会ったかもしれない考え、体験が減る。
そして思考も狭まる。
もともと人は見たいと思うものを見る。それが強化される一方だ。
やだー。

システムを作る人、というのは、こんなにも人に影響を与え、政治的
社会的影響に責任を持つ、ということをはぐらかしているようだ。
でも、「システムが「インテリジェント」になると制御も理解も難しく
なる。システムが命をもつようになるという表現は正しくない―どこ
までいってもコードにすぎないからだ。ただあまりに複雑で、システム
を開発した人々でさえその出力を説明できなくなるのだ。」(P248)
システムのアルゴリズムによって、謎の判断が出てきても、制御できない
とかわかんないとか、えー。んー。

思っている以上になんだか今は未来で、莫大なデータ収集、統計、その
活用技術はすでに実用化されているのね。こわいような気持ち悪いような。
でも便利だし。

システムが自我に目覚めて、ハルだったりターミネーターなことに
なったりはしない、はず、と思うけど。
情報フィルタリングはなんとかバランスとっていってほしいなあ。
そして自分としては。フィルターバブルの中にいるんだ、ということを
自覚する忘れない、かな。
そしてこの本だって鵜呑みにすんな。
情報ってたいへん。

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映画「捜査官X」

*具体的内容に触れています。結末まで触れています。

映画「捜査官X」

1917年。中国の小さな村にやってきた二人のならず者。
金を出せ、と脅し、襲ってきた家にたまたま居合わせた、紙職人の
リウ・シンジー。必死の抵抗をし、偶然に助けられたように男たちは
死亡した。
事件を捜査しにやってきたシュウ。彼だけは、これは偶然ではなく、
シンジーが実は武術の達人であり、素性を隠しているのだと疑う。
シュウの捜査によって暴かれてゆくリンジーの過去とは。

もとのタイトルは「武侠」というそうで、そっちのほうがとても納得。
シュウ捜査官は前半はともかく、後半はぶっちぎりでリンジーの物語
だった。ドニー・イェンって、すっごいのね。カンフーアクション?
凄かった。
実はタン・ロンという、えーとえーと、なんか殺人集団の2番手な
極悪な感じの過去。でもそれも虐げられた一族の、とかなんとか。
そして今はすっかりまともな小市民の一人としてささやかな幸せな家庭
のよき父親として暮らしている。
金城くんのシュウ捜査官は、天才捜査官、って予告でさんざん言ってた
けれども、えーと、思い込み激しい病んでる危ない変人、って感じ(笑
その思い込みが実は鋭く真実を見抜いていたわけで、うーん。
まあでも日本のタイトルや予告の感じからすると推理もの?ミステリ?
と思ってしまったけれども、そーじゃないので、あれでいいのかなー。

じーさんとの戦い。あのじーさんの、剣をも跳ね返す肉体!
ああいうのって、獏さんの小説で読んだんだっけかなあ。金剛拳とか
なんかこう。気を集めて体を鋼の如くに、とか。シュウが、針で経絡を
ついて、とか、菊地秀行のに針使う人のやつってなかったけ。退魔針と
か。でも読んでないかなー記憶曖昧。なんかそういう、伝奇バイオレンス
読みまくっていた昔を連想してなんだか懐かしい気分になったりした。

でもほんっと、タン・ロンとして戦い始めた後半、ほんっとかっこよくて
激しくて燃えた!凄い!

シュウ捜査官は変人で。でも彼なりの過去もいろいろあって、というの
も面白かった。法を守ることを絶対だ、と、あの思い込みは病的。過去
の話を聞いても、でもやっぱり、変人。。。自分に針をうって、とか
もうひとりの自分と対話しちゃったりして、えええ?と何度もびっくり
する。最後も、えとー。無事?そうじゃない?もう一人の自分の涙は?
ちょっとよくわからない。
でもすごくいいキャラで好きだなあ。
金城くんがかっこいいかっこいいかっこいいなのはもちろんだけど。
髭、丸メガネ。帽子。衣装。短髪。あのスタイル全部大好きー。
黒い傘持ってるのが可愛かったり。
日本映画だったら、このキャラ一回のみなんてもったいない。前日譚
なり続編なりつくってー、と思うところだなあ。
でもこの映画的主役は捜査官じゃないか。リンジーの物語だ。

迫力、緊迫感に大満足。金城くんを堪能~で大満足。面白かった。

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『J 少女たちは破壊を謳う』(五條瑛/徳間文庫)

『J 少女たちは破壊を謳う』(五條瑛/徳間文庫)

よく似た可愛い少女たち。中国、韓国などからやってきた少女たち
8人のグループアイドル、スカイ。
渋谷でただあてもなくぶらぶらしながら、知り合いを見つけては
適当に遊ぶ、という日々をすごしていた浪人生の秋生は、ある夜、
強くうつくしい印象の女性と出会う。ジェイ、とだけ名乗った彼女
はいつも、テロの現場の近くに現れるのだった。

単行本は2007年。タイトルは「J」だけだったと思う。
今月文庫発売だったのに気づいて購入。わーい。
加筆修正が行われているそうです。あんまり細かく覚えているわけ
じゃないので何が変わったかとかあんまりわかんない。
K-POPアイドル大人気の今。実際単行本出た5年前はどうだった
っけか、と、あんまり覚えてないけど、アジアからの可愛い女の子に
みんながきゃあきゃあしてるの今がこの本の中と同じ。
国内でテロは頻発しているわけじゃないけれど、こういう事件が
リアルに起こっても世間の反応ってこうかも、と、思うなあ。

キックボクシングにはまって、変わっていき、生きる力を身につけ
てゆく秋生。
ジェイのスカウトに応じ、すべてをすてて夢の楽園を手に入れた
はずなのに、自分の甘さ、歪みに気づくことなく切り捨てられて
ゆく時津。
不運だった、と、言うにはあまりに辛い、久野。
強く生きるって、難しい。
けど、自分が変われば変わることができること。

ジェイたちの言い分も、日本のダメダメも、でも、一人ひとりの
人生も、全部どれもが正しいし悪い。
でもなあ。

破壊を謳う。
でもやっぱりテロはダメだ。希望を生んだりしない。強くなれ。

これはこの話ですっかりおしまいかな。秋生くんがなんだか若者
らしい若者で可愛くてがんばれよーと思う。ジェイとの再会が
ないことを願うよ。

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『ねじれた文字、ねじれた路』(トム・フランクリン/ハヤカワポケットミステリ)

『ねじれた文字、ねじれた路』(トム・フランクリン/ハヤカワポケットミステリ)

ミシシッピ州、シャボット。人口が500人前後の町。
25年前、ひとりの少女が行方不明になった。
その夜デートをしていたラリー。生きた彼女を見た最後の人間。
死体はなくなんの証拠もなかったが、以来町の誰からものけ者に
されたラリー。
そして今、また少女が行方不明になった。「要注意人物」扱いの
ラリー。自動車整備士として、誰も客のこない仕事場を守っている。
孤独なラリー。

サイラスはシャボットで唯一の治安官。少年の頃、ラリーと友達だった。
ラリーとの友達関係は一時だけのもの。長く町を離れていた。
だが、ラリーの異変に気づいたのはサイラスだった。
ラリーは、撃たれていた。

話の時間がくるくる入れ替わる。最近こういうのばっかり、って
気がしてくるなあ。
視点はラリーでありサイラスであり、と、これもくるくる変わる。
むむーと思いながら読み進める。
少しずつ、過去のこと、現在のことが明らかになっていって、最後
のほうにはドキドキで、とても面白かった。

小さな田舎町。
人種差別も根強くある。学校でうまくやれないラリー。一人で
スティーブン・キングなんかの本ばっかり読んでいるような冴えない
少年。サイラスは野球をやって才能を発揮している。二人が森で
遊ぶ日々は少年たちならではの秘密の時間で。でも、少女が消えた
時からはるか時間がたって、孤独なおっさんになった男は、凍った
時間を解きほぐせるのか。

サイラスがしたことはあんまりだ。
複雑な思い。複雑な関係。それでも、25年はあまりにも長いんじゃ
ないのか。
でも、読み終わってページを閉じて、ほっとした気持ちになれる。
これから25年かけていってもいいのかもなあ、と、思ったりして。
どうかな。どうなるだろう。
きっと、この最悪の時よりはひかりのある未来だろうなと思える。
面白かったー。

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映画「劇場版 SPEC~天~」

*具体的内容に触れています。結末まで触れています。


映画「劇場版 SPEC~天~」

4月1日のスペシャルドラマ「翔」の続き、となる映画。ですねー。
映画単発で見るものではない、と、思う。けども、見る人が楽しめれば
それでいいんだと思う。

荒涼とした場所にひとり佇む雅ちゃん。野々村係長待遇からの手紙を
読み始めるところから始まる。2014年。
そして遡る。2012年、9月。
洋上のクルーザーで、乗員すべてがミイラと化した事件が発生した。その
事件を未詳に持ち込んできたのは警視総監と内閣情報捜査官。だが彼らは
憑依されていた。

ってな感じで始まって、ファティマの預言だとかなんかこう、最終戦争的な?
人類の決戦みたいなことになる、ってなことが暗示されつつ、それは次回ー、
という感じかなあ。「結」なんてやんねーから。とまた最後に当麻が言ってた
けどやってくれ(笑)スペシャルドラマでいったん収まったかのようなところ
が、また謎の男とか増えてあきらかに続く!ってなってて、2012年のこの
事件のあと、雅ちゃんの冒頭につながる2年間くらい?の間にさぞやなんやら
大変なことがあるんでしょう。でも、それ、ほんとにちゃんと描けるのかなあ。
こういう壮大なことになっちゃうほど風呂敷広げて、ちゃんとたためる?
私の思う範囲だと最後までしょぼくならずにホントにちゃんと風呂敷たたんだ
のって、漫画の「デビルマン」くらいな気がする。「結」はやってほしいし
見たいけれども、心配だ(笑)

映像は相変わらずさっすがにキレキレ見たこともないかっこよさ。痺れるー。
音楽使いとかも。ベタになるところもかっこいいところも両方あるから素敵。
小ネタもたっぷりたっぷり。なんどもガクッ、となって笑ってしまった。

そしてだからこその、シリアスシーンでの緊張感は半端ない。
屋上で。当麻と瀬文さん。そして野々村係長待遇。「心臓が息の根を止める
まで真実に向かってひた走れ」のセリフ。
ケイゾクから引き継がれてきたこのセリフ。刑事魂。ゴリさん最高です
素晴らしいです。ぼろっと泣いてしまいました。
勝手ながらやっぱり、朝倉はスペックホルダーってことにつながるのか?と、
思ってみたりうーん。
でももうケイゾクをわざわざつなげてきたりはしないのかな。

ニノマエが微妙に偽者だったり、あの最後だと結にニノマエはどうなるの?
って謎。白い男は、えーとえーと。向井くんだよね?たぶん。
世界つくりかえちゃうほどのスペックホルダーなのか???
この世界にニノマエいらない、消えちゃえって消しちゃったよね。
当麻のスペックが最強みたいに思ってたけど(死者召還ってすげーよね)
世界つくりかえるほどの、って、思うと、そんなのとどう戦える?
まあ、あの白い男、何のスペックなのかよくわからないけど。
謎もいっぱいだよなー。津田さんはほんとにあれで終わり?
青池さんは無事?潤ちゃんは一体どんな力が?誰の娘?どう産まれてきたの?
相棒の宮野って男は不審な動きしてたけど、どーなの。
伊藤淳史は死んだ?助かった?伊藤くんは伊藤くん本人役で、でも偽者
ニノマエくんと語り合ってたシーンはなんかよかたなあ。

瀬文と当麻の強さ、絆。キル・ビル青池さんに当麻がちょっとヤキモチ
っぽかったりして可愛かったなー。でもやっぱり、単純に恋愛関係って
いうわけじゃない。もう魂わけあった、みたいな絆が、素敵だ。

んでやっぱり野々村係長待遇は一体何者だー。どこまで何を知っている?
結局冷遇された下っ端昼行灯のようでいて、いろんな秘密を知っている
のは凄いような気がするんだけどなあ。
実は柴田がエライ人になってるよーな暗示がちらっとあったりしたりした
と思うんだけど、そんでなんかあるのかなー。ないのかなー。つか柴田は
生きてるの?真山さんはー?もうそのへんは出られない出さないかー。
うーん。
やっぱり、結、ってもう一本映画あったとしても話終わらない気がする。
どうなるのかなあ。なんなのかなあ。

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つなぐ

     つなぐ

                                  千坂麻緒

 
  集団は竜の如くに長く伸び箱根駅伝往路の一区

  つなぐ、つて言葉の重み殊更に この初春の震度四なり

  中継は感動を映さうとする選手の速さに追ひつけぬまま

  CMもなんだかとてもよいものに思ふ騙されやすきわたくし

  一日中パジャマのままのわたくしは走り出すには言ひ訳が要る

  襷を渡す目の前にきて倒れ込む スタートラインは遡れない

  蒼天に竜を見てゐるかも知れず走り続ける青年の目は

  眩しくて 襷をつなぐその輪へと入れる時がくるのだらうか

                          (未来 2012年 4月号)

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

未来掲載は三ヵ月後、というわけで、今新年の歌です。
新年早々地震がありましたね。けっこう大きく感じてこわかったのでした。
箱根駅伝見たなあ。あんまり熱心なファンというわけではないのだけれど、
見てるとやっぱりなんだかドラマチックだし、若者がんばれ!と見入っちゃう。
私の歌じゃ実際見るのにまったくかなわないのでした。
 
 


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映画「アーティスト」

*具体的内容に触れています。結末まで触れています。

映画「アーティスト」

1927年。
大人気俳優、ジョージ・ヴァレンティン。サイレント映画の時代だった。
彼のファンである女優をめざすペピー・ミラーとの出会い。
やがて映画はトーキーだ、という映画会社の方針には従わず、ジョージ
は一人サイレントにこだわりつづける。
一方ぺピーは、若く魅力的な女優として、少しずつ注目を集めていった。

ほんとにサイレント映画だった。モノクロだし。ちょっとだけは、セリフ
が字幕で見えるけれども、ほんと基本的に俳優たちのオーバーな演技で
見せる映画だった。そして音楽。音楽を堪能。
ごくごくわずかだけ音が入るシーンもあり、それがすごく印象的だった。
ちゃんと現代の映画なのね、と思った。

ぺピーは、最初いまいち垢抜けない感じだったのに、スターになっていく
と、やっぱりどんどんきれいになっていって、あーさすが女優~。
でも最初の頃こっそりジョージの楽屋に入ってって、とか、それストーカー
じゃねーの、となんか笑った。ジョージの衣装使って抱き合うとか。
きれいなシーン、とも思うけども、ちょっとキモイ、とも思ったよ(^^;

ジョージが、最初スターで、だんだんやさぐれていくんだけれども、
それもまたセクシー。サイレントスターだから、表情もアクションも
すごく大きいんだけれど、やさぐれてって一人黙々と酒を飲むシーン
なんかでも素敵だったー。
そしていつも、いっつも相棒ずっとくっついてる愛犬くんがすーごい
可愛い!いいなーいいなーあんなわんこと一緒に暮らしたいよー。
賢くて可愛くて忠実で素晴らしい。
運転手、執事?なじーさんも素敵。
ジョージは、すごく恵まれているし愛されているのにね。妻とはそりゃ
うまくいかなかったけどさ。
一人でこだわってトーキーの時代に逆行しようとしたり。世界恐慌は
大変なことだけど、落ちぶれちゃったのもかなり自業自得なのでは。
でもいい男だからねー。
女に惚れさせちゃう男だからねー。
ほんとに素敵なラストシーンで終わって、気持ちよかった。

アカデミー賞で作品賞も主演男優賞も、で、5部門とったんだよね。
なるほどね、という感じ。映画愛たっぷりだしシンプルに美しいし
苦味も幸せもあるし。犬可愛いし!
私の好みとしては、すごくいい!とか大感動!とか、傑作!とまでには
感じられなかったけど、好感もたれる作品だなあというのはよくわかった。
たぶん私が知らない気づかない、過去作品へのいろんなオマージュが
あるんだろうなー。そういうのを楽しめる場合にはもっとにやっとできて
楽しいのかも。ま、わかんなくても楽しいです。可愛いです。うん。
よかったな。

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『十七音の海』(堀本裕樹/カンゼン)

『十七音の海』(堀本裕樹/カンゼン)

俳句という詩にめぐり逢う
という副題。
第一章 「共感力」を養う
第二章 「季語」の豊かさに触れる
第三章 言葉の「技」を身につける
第四章 覚えておきたい俳句

という章立てで、初心者への俳句入門、俳句鑑賞入門という一冊。
私でも、お、知ってる、というような句もあれば、今現在な句もとりあげ
てあって、バラエティ豊かな感じ。なにより丁寧でとても読みやすい。
見開きで一句につき2ページ。最後の章だけ1ページ一句になってたけど、
その読みの丁寧さ読みやすさが親切だなあと思う。
俳人の紹介もあり。ほんと初心者にはありがたいです。

俳句って、そのものはとても短いのに、こんなに鑑賞文が書けるのかー。
まあそこはもちろん、俳人、プロなのねということなのでしょうが。
もちろん著者が好きというか認めている句をとりあげているのだろうから
当然かと思うけれど、ほんとに心から大事に句に向き合って読んでいるのね、
というのがよく伝わってくる。なので、読んでいるうちに私もその句を好き
になってくるし、いいなあと思う。
時々、そこまで読むのか?とか、私はそうは思わない、とか、多少反発
してみたりしながら読むのも面白い。

俳句は季語だなあとか、切字かっこいいとか、実例にそってのお話なので
よくわかる気がする。
気がする、というだけかなー。まあでもとりあえずでも、気がするように
させてくれるのは嬉しい。俳句も読めるようになりたいな。
特に三章の「技」の解説が面白かった。そういういろんな技があるんですね。

なんとなくじわじわとぼちぼちとゆっくりと、俳句にも親しむようになりたいな。

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『黒猫の遊歩あるいは美学講義』(森晶麿/早川書房)

『黒猫の遊歩あるいは美学講義』(森晶麿/早川書房)

24歳の若さにして大学教授となっている、黒猫。本名は誰も呼ばない。
彼とかつては学生仲間であった、現在博士課程一年目の私。腐れ縁として
浮世離れした黒猫の付き人としての現在がある。
黒猫は美学。私はポオの研究者としての道を歩もうとしているところ。
そんな二人が解き明かす、身の回りの小さな謎。

ということで、6つの短編集同じ人物の時間がゆっくり経過していくので
連作短編集かな。ポオの小説がモチーフとして使われている。
アガサ・クリスティー賞第一回受賞作、だそうです。
なんなんだアガサ・クリスティー賞。
著者は、まったくの新人ではなくて、ラノベで一冊著書があるらしい。
受賞の際の選評にはポオのネタバレがある、ということが少し問題だった
みたいで、本になったときには改訂されてるのかな。ポオの作品は
古典だし具体的内容に触れてはいるけど、んー、まあ、ネタバレは一応
さけているのか。

一つ一つは読みやすいしさらっとしている。美学講義、っていうのか、
黒猫の薀蓄云々はあるけれども、おしゃべりの形なので読みにくい難しい
ということはないと思う。まー語られてる内容がどうなのか、ってのは
私にはわからない。へー、と思って読み飛ばす。
人が死ぬ、ということはあるんだけれども、血みどろどろどろではない。
ほのぼのっていうほどでも、ないかなー。
そして黒猫と、「私」との関係も少しずつ、近寄る?どうなの?という
感じ。

で。
面白い人には面白いんだと思う。でも私の好みとしては無理ー。
うへえ。
若き天才黒猫くん。料理してくれてピアノ上手くてモテモテ。私のほうも
むかーし小学生時代とはいえクラス一番の美少年に告白されたことが
あるの~だし。腐れ縁ですとかいいながら黒猫の部屋に泊まりこんでみたり
ご飯つくってもらい送ってもらい手をひいてもらい電話もらい、まあねえ。
研究者としても君の才能はなかなかのものだよ、と認められうれしい、とか
なんかねえ。
勝手にきゃっきゃウフフしてろよよかったね。と、モテナイ私の僻み炸裂(笑
若い男女がときめきを自覚しないようにしながら謎解き、楽しいね、と、
そういう風には私は全然楽しむことができないー(笑)古いステレオタイプ
な少女マンガみたいと思った。無理ー。

男同士だったら私はとっても楽しいけどね。
もちろん私がそういう趣味だから、でもあるんだけど、男同士だったらなんで
いいかというと、私のようにもうーつきあっちゃえよとヨコシマに妄想する
しないはともかく、仲良しだけど友達、というのが無理ないからなんだよねー。
ヘンに甘ったるく恋愛がらみなの?という方向にいかなくてすむのがいい。
若い男女がきゃっきゃしてたらすぐ恋愛、っていうのもまた固定観念で
ダメだけど、でも、まーこの作品に関しては、友情?腐れ縁?でも、好き、
かも、という、その、「好き」ということをちらちら存分に出してきてる。
それがねー、私にはうっとおしい。
なんだろうなあ。
キャラの魅力が私には全然感じられない。若き天才くんも、ちょっと
天然系っぽく無自覚な感じの私も、ありがち、から出てないと思う。
文章やレトリックにもむずがゆさがつきまとう。ヤメテ。ハズカシイ、と思う。
黒猫、と呼ばれていて誰も本名を呼ばない、って。。。黒猫ねえ。
5話目、なんだか雰囲気ありげな喫茶店でコーヒーを頼むと「闇よりも濃い
ブラックコーヒーが運ばれてくる。」って。
うううう。嘘でしょ。闇よりも濃いブラックコーヒーね。うー。

身近な謎というところなので、世界が限られるのは仕方ないにしても、
ホントに主人公たちの縁者の間のことでしかないのでどうにもご都合主義に
見えすぎる。狭い。
文章的にも受け付けない。キャラにももえない。なんで読んじゃったんだ。
たぶん面白くうきうきと読める人はいっぱいいるんだと思う。
ただ、私にとってはダメだった無理だった。うへえ。もう読みません。


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『卵をめぐる祖父の戦争』(ディヴィッド・ベニオフ/ハヤカワポケットミステリ)

『卵をめぐる祖父の戦争』(ディヴィッド・ベニオフ/ハヤカワポケットミステリ)

脚本家である「私」が自伝的エッセイを書くことになる。が、自分のこと
がつまらない。祖父の話をきいてそれを書くことにする。という始まり。

戦時下、レニングラードに住む17歳の少年だったレフ。
ドイツに囲まれている。人々は飢え、ものはなくなり、爆撃に怯える毎日。
ある夜、ドイツ兵が落ちてきた。
パラシュートの先で、凍死していたその兵士を見つけたレフたちは
落下点にかけつけ、兵士の持ち物を奪う。が、そこを運悪くつかまって
しまった。監獄に送られ、そこで、脱走兵として捕まった青年に出会う。
捕まっているというのに落ち着き払っている。コーリャ、と自己紹介する
ハンサムな彼と翌日連れて行かれたのは大佐のところ。大佐の娘の結婚式
のために、一週間以内に卵をみつけて来いという特命を申し付けられた。

あとがきを読むと、この作者が祖父に話を聞く、ということからして
フィクションだそう。作者の祖父はとってもアメリカ人みたい。へー。
ともあれ、読んでいると、ソ連の一般市民の暮らしが凄まじく悲惨で怖くて
戦争怖くて恐ろしいんだけれども、でもこの祖父は今生き残っているのだ、
という確信だけはあるので、どこか遠く思えて悲惨さが息苦しくはない。
なによりコーリャの魅力のおかげで、大変な悲劇と恐怖の中なのに基本的に
明るくユーモア下品で可笑しい。

”ニコライ・アレクサンドロヴィッチ・ヴラゾフです、友達にはコーリャと
呼ばれています”というコーリャ。その名前でその愛称というのが私には
全然わからないけど、とにかくコーリャが素晴らしい。
とことん女好きで、まだ童貞のレフにいろいろ教えてくれたり、減らず口
でレフには全然面白くも可笑しくもない小話を聞かせ続けたり、素晴らしい
小説の話をしたり。その小説、実はコーリャが書こうとしてる小説なんだ、
ってあとからわかったり。とにかくへこたれない深刻にならない黙らない
コーリャ。
ハンサムは正義だわー。
多少苛々しつつも、結局はコーリャに惚れまくりました。

なんだかんだでドイツ兵の捕虜となり、どうするんだ、どうなるんだ、と
最後のほうはたまんなかったです。すごい。
チェス対決も面白かった。私はチェスわかんないんだけど、なんか。
そして最後にはやるせなくてたまんなかったです。コーリャ。
そしてほんとに最後のところではほっとして。めちゃくちゃにぐるんぐるん
振り回された気持ちがすとんと落ち着いた。ヴィカ。かっこいいなあ。

いろんなところでいい評判聞いてたこれ、図書館の棚にあったんで
どーかなーと思いながら読んだんだけど。コーリャがこんなにハンサム
青年だって知らなかった(笑)知ってたらもっと早く読んだ。
金髪碧眼スタイル抜群笑顔が魅力的という。童貞レフくんも可愛いし。
人食いに襲われかけたりとにかく食べ物がなくて飢えていたり。そういう
怖いこといっぱいなのに、コーリャのおかげでなんか大丈夫になる。
面白かったー。

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東京マッハvol.3「新宿は濡れてるほうが東口」

昨日、4月1日(日)東京マッハvol.3「新宿は濡れてるほうが東口」 
に、行ってきた。

新宿ロフトプラスワン。
メンバーはいつもの、千野帽子、堀本裕樹、長嶋有、米光一成、ゲストに
川上弘美さん。
前回ゲストの池田澄子さんに続いて、男子4名が紅一点の川上さんに
きゃっきゃうふふしてる様子が微笑ましいというかなんというか、引くわ(笑)

会場のみんなも選句、というところから始まって待つ間も結構楽しい。
今回は背もたれのある椅子で、テーブルの席を確保できて幸せだった。それでも
やっぱり会場全体きゅうきゅうな感じであんまり落ち着かない。よく言えばこれが
一体感。
千野さんおすすめの、ということでしょうか。スペシャルメニュー、純米吟醸 
桃の滴 というお酒と、生麩があった。京都直送だとか。せっかくなのでビール飲んで、
それも飲んで食べて、としてるうちに開始。

まずは壇上のみなさんが選んだのを披露。それがかなりバラけていた。
30句あって、6句並選、特選一つ、逆選一つなのだけれども、最高点が3点という。
(特選は2点に数える)凄くお見事なバラけ具合。なので逆に、どの句について話すか、
についてまず悩む感じだったりして。特選入れたもの中心に話がわいわい始まる。
あと逆選入れたものについても。
今回、お題としては、米光さんから「口」、川上さんから中年縛り、というのが
あったようです。中年縛りというのは最初読んだときにはわからなかったなあ。

川上さんの句評がなんか細部まで丁寧というか鋭いーと思う。「消す」と「余寒」が
近いとか。締めの「暮春」が無理やり感があるかな、とか。
それぞれの人の句の好みがわかるの面白い。女の好みを見抜かれるようだ、とか笑う。
千野さんは中7が8になるのは厭だけど、下5が6になるのは色気があって好き、
とか。
堀本さんはやっぱり基本的に有季定型がいい、とか。
米光さんはいつまでも少年の心で句をつくるらしい、とか。
長嶋さんは手のひら返しとか(笑)相手を見て態度を変える様がとても素晴らしい。
あのあからさまさが憎めなくて凄い。いいキャラだなあ。

川上弘美さんはちょうどお誕生日だったそうで、壇上のみなさんだけ特別に、
大吟醸の桃の滴をあけて乾杯してた!うらやましいすごい美味しそう。
私がいただいた吟醸もまろやかでとても美味しかったので大吟醸はさぞや。。。
うらやましー。
で、そのお誕生日おめでとうの挨拶句として、千野さんの句は「かわかみひろみさん
おめでとうするの」をアナグラムにして「観桜す広さの分かる目と耳で」という句を
つくってらした。凄い。
挨拶句だとは川上さん気づいてとってらしたけど、そこまで凝ったものとは気づかず、
千野さん本人からの解説があって、おお~と会場どよめく。川上さんは立ち上がって
千野さんのところへいって頭なでなで。すごいですねー。

それぞれにいくつも挨拶句があって、あんまり私は意識できてなかった。こういう
イベント的句会ってやっぱり挨拶句つくるのが定番なんですかね。一回目の時には
堀本さんしかつくってなかったと思うけど、それから会を重ねるにつれてみんなが
挨拶句いれてくるようになったみたい。そういう縛りがあるのも思いがけない句が
つくれるきっかけになったりして面白いのかも。

休憩二回はさんで、会場から高得点だったものが壇上ではノーマークだった、とか
なんだかんだでかなりたくさんの句評があった。
会場からも、ということで、やっぱり会場にも今回もたくさんいたらしい有名人
からの発言とか。
東直子さんが選んだ句についての読みがあって、その読みは短歌的だなあという
言葉があったりして、それはどーなの、と思う。
時間の経過を見るのは短歌的?そういう言い方はあまりにも安易だと思ったけど。
まー歌人の東直子さんて紹介されてのことだからそういう簡単なレッテル貼りして
いうのが分かりやすい感じになっていいってことかなー。ヘンなの。
そして今回は会場にいらした池田澄子さん。ふたついい、と挙げた句がどちらも
川上さんので、とても哀しいいい句、と解説されたのがなるほど、と思った。
佐藤文香さんが、川上さんの句をあてる!と質問したのが、実は長嶋さんのだった、
とわかってもりあがったり。楽しかったー。

今回私が選んだ句は千野さんのが一番多かった。前回は一句もとらなかったのに。
ほー、と自分で思う。合う合わないの波長って変化するのね。
逆選にしたのは堀本さんのだった。こんなの素敵にかっこよすぎるわ!と思って
逆選にしたの。
やっぱり堀本さんのはととのっていてかっこよくって、時々かっこよさが過ぎる!と
思っちゃうんだなあ。素敵だなあ。

以下、勝手ながら私がとらせてもらった句。

  いくたびも架空の町の名を暮春   千野帽子 (特選)
  麗らかや沖のボートの狙撃兵    千野帽子
  卒業の熱はココアの膜くらい    千野帽子
  花見るふりタメ口に気づかないふり 千野帽子
  春陰や文房具屋で売る玩具     長嶋有
  口移しするごとく野火放たれぬ   堀本裕樹
  久方に消す鉛筆の字や余寒     長嶋有
  歌舞伎町の鴉を殺す春の夢     堀本裕樹 (逆選)

6句並選選ぶの難しかった。6にしないといけないから無理やりいれてみたのも。
選って難しいー。自分の中の基準がなんとなく好き、くらいしかないからなあ。。。

会場では先日出た堀本さんの本、サインつきで売ってた。しまった。
本屋で買っちゃった。
マッハに行くんだから会場にあるだろうと予想しておくべきだったなあ。
いろいろ楽しませてもらいました。

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