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映画「J・エドガー」(二回目)

ドラゴンタトゥーの女 を見に行きたいのに。早く見に行きたいのに。
今日が初日なのに。って自分でも思いつつ、水曜日からのドキドキときめき
がどうしても収まらず熱が冷めず頭から離れず。もう一回やっぱり見る、
と決めて行ってきた。

*具体的内容に触れてます。感想と言うか個人的妄想です。


「J・エドガー」

二回目なんだから少しは落ち着いて、細部までじっくりとー。
というつもりだったんだけどももうどうにもこうにも、クライドくんが
健気すぎて切なくて二回目でもきゅんきゅんで死にそうだった。素敵。

脚本家的には、絶対にカミングアウトなんかできなかった、自分自身にも
自分の気持ちを認められなかったエドガー、ということなのでは、と思う。
私はそれに反応しまくってしまったんだと思う。過剰に。

二回目なので少しは冷静に。
監督的には、やっぱり、老い、ということの映画なのかなと思う。
晩年のエドガーの口述によっての回想。
若き日と、老人の日と、めまぐるしく時間は行き来する。くっきりと見える
のは、老いた彼の痛々しさ。醜い。独断。傲岸不遜。自分だけが正しい。自分
だけが国家を守る英雄になろうとする。
確かに彼がつくり上げたFBIは必要なものだし、科学捜査の先鞭をつけた
行動力は素晴らしい。
独断も横暴も、実際国家安全のために必要だったこともあっただろう。
しかし時代の変化や、自分自身の衰えをかたくなに認めないエドガーは
あまりにも痛々しい。

エドガーはもちろんながら、ヘレンも、クライドも、メイン三人の老けっぷり
素晴らしい。
ヘレン、老人になってもうつくしかった。きりっとしてて。
エドガーのプロポーズ断ったあと、よくまああんなに長く忠実な秘書でいられ
たなあと、それも不思議だった。彼女も実は同性愛?と勝手に邪推。
秘密を守れますか?結婚に興味はなくて仕事第一なんです、って。それは
秘密にしなきゃいけないようなことなのかな。時代的には女性の自立って
まだ変人扱いってこと?うーんでも。結婚しない、とあの若さにして断言
してたりするのって、何かあったのかなあ、と、思う。全然わかんないけどね。
彼女の私生活はまったく出てこなかった。女性を排除した映画だったなあと思う。

そして誰も信じられないでいるエドガー。あまりにも孤独。
だれよりも忠実なクライドにさえ悪態をつく。ヘレンにさえ試すようなことを言う。
なんて酷い男。なんて酷い老人。
それなのに、なんて切ない男。

幼いエドガーに、母は特別よ、と囁く。あなたが一族の繁栄を導く。
母親は、えっとー、あれは厳格なクリスチャンってことなのかな。宗教的な
ことが私にはあんまりわかんないんだけれど。
ともかく厳格に、男らしく、立派に、自慢の息子になるべく育てあげたのね。
吃音を治すよう強制。まあ、それはそれでいいのかもだけれど。
たぶん女装にひかれるような傾向が見えたことが幼少期にあったのかな。
それを絶対にダメ、そんなやつは死ね、と、決して認めない。
エドガーのほうも母の期待に応えることを何よりの目的にして育ったみたい。
自分でもそれが誇らしいのだ、と、自分に思い込ませ立派に強く、強くあれ、
とひたすら言い聞かせながら。
なんて苦しい。
あるべき自画像を自分で描き、英雄になりたがり、ほんとうはそうじゃない
自分を感じながらも自分で決して認めない。
なんて哀しい男。

ディカプリオはさすが上手くて、喋り方とか母が亡くなったあととか、ほんと
熱演だったと思う。
虚勢はりまくりの厭なひどい怖い長官なところと、母の息子である小さい子ども
みたいなところと、クライドの前で思わず脆くなってしまうところと、たくさん
ギャップありまくりで私もえ死んだ。

クライドくんは、自分はゲイってことを自分でも認めてる男。でもどうして、
あんなに酷いエドガーを愛しつづけられるんだろう。あんなにそばにいられ
たんだろう。
健気すぎる。切ない。可愛い。かっこいい。
紳士だよなー。
ブチ切れて押し倒してキスしたら、もうちょっとやっちゃわないか?
んーでも怒ってるから離れるか。でもあの時エドガーも脆くなってて、
でも怒ってたから、うーん。
いいスーツ着て、すらっと見栄えよくて、もの静かで落ち着いていて。
エドガーのむちゃくちゃをなんとか多少中和するように苦労しまくった
だろーに。彼なりのプライド。エドガーのパートナー。凄いなあ。
どうしてあんなについていけたんだろう。やっぱり愛かな。愛だろうな。
なのに悪態ばっか言うエドガー。それでも、卵割ってあげるエドガー。
じーさんな二人のよりそい方はじーんとくる。
あんな長い時間、一緒にいたんだなあ。クライドくん健気。
僕にだけは嘘をつくな、と言える強さ。
自分の愛を自分の中の脆さを認めないエドガーを、クライドは認めて
許して愛していたのかなあ。強いな。
二人のときには親密に穏やかに、愛する時間があったのかなあ。あったら
いいなあ。切なすぎるよ。

私、なんでこんなにもひきつけられたんだろう。
同性愛的シーンあるらしい、とは知ってたけど、前宣伝的には、フーバー長官を
描く、みたいなことでそういうシーンのことは触れられてなくて、まー同性愛的な
ことってほのめかし程度なのかな、と思ってたのに、どっぷりがっつりJuneな味わい
でびっくりしてしまったこと。
それがほんとうに、「アナザー・カントリー」以来か、ってゆーくらい、苦悩と
切なさいっぱいなのに参ってしまったこと。
ディカプリオはやっぱかっこいーし。
そしてやっぱり映画づくりとしてとても淡々と突き放しているので、私のほうが
ぐっとのめりこんでいってしまった。
そしてさらに、人が老いていくこと、というずっしりくるところを見せつけられて
老いとかのテーマを他人事じゃないほどずっしり感じるほどに自分も年をとって
いて。単純にもえたーかっこいー♪じゃすまない作品だと思うからかなあ。

二回目なんだから少しは冷静に。と、じっくり見たんだけど、最後には本当に
泣けて泣けて涙がとまらなくて、エンドロールが終わってもまだとまらなくて。
でもいっぱい泣いたので、少しは熱も流れた気がする。落ち着け私。
はまったなあ。
いい映画だった。

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