『翁―OKINA 秘帖・源氏物語』(夢枕獏/角川文庫)
『翁―OKINA 秘帖・源氏物語』(夢枕獏/角川文庫)
7歳のその子を見た人相見は唸った。ただの子ではない。王の相を
持つ子だ。どのような道をゆくことになるのか、見当もつかぬ御方だ、と。
獏さんが源氏物語なのかー、と思ってわくわくして読む。
ちなみにこれも、電子書籍と単行本と文庫と同時発売。私は文庫で買った。
獏さん流、ということで、源氏物語の現代語訳というものではなく、
源氏をテーマにした新しい小説、ということらしい。蘆屋道満が出てくる。
葵の上に生霊が憑き、というあのへん。うんうん。それなら獏さん流ですね。
わくわく。
でも、道満が出てくるんなら、なんでー晴明さまに相談するのが先でしょー
筋でしょーーー、と、凄く思う。うーんそこは一緒にはできなかったか。
主人公が晴明と光の君と二人になっちゃう。獏さん的美形キャラな光の君
だから、姿の形容的にも晴明さまとモロ被りになっちゃうからなあ。
源氏物語だけどもののけの話。あやかしの話。光の君はもののけが見える。
道満と同じ側にいるひと。女を愛しながらどのおんなにも、いや、どの人間
にも冷たい。うつくしくつめたい。す、ステキ。うっとり。惚れた。この
光の君がいい。大好き。獏さん的美形キャラの流れ的にも大好き。うっとり。
源氏物語を題材にしているとはいえ、これは陰陽師だなあ。
そして仏教や古の神々の話、景教やらミダス王やら、壮大に神々の話を
絡めて、嗚呼こういうの好き、と、うっとりする。獏さんの世界だ。
ずうっと読み込んできた獏さんのブッダの話やら空海の話やらもつらつらと
連想してうんうん、と満足する。長年読み続けファンやってきてますから、
と、自分に満足。楽しいー。
道満がメフィストフェレスで光の君がファウストのような、と、あとがきに
よるとそういう感じらしい。源氏でファウストですか。あれもこれもだな(笑)
とても楽しかった。ときめいた。素敵だった。大満足。
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