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『拝復』(池田澄子/ふらんす堂)

これも読んだのは結構前。感想書けてなかったのでメモメモ。

『拝復』(池田澄子/ふらんす堂)

第五句集だそうです。
2005年後半から2010年までの作品。

句集、っていうのをまともに読むのは初めてくらいかも。
アンソロジーは読んだことあるけど。あ、子規句集とかは
読んだけど。蕪村とか一茶とかはある。でもあれもまとめ
みたいな感じだからね。一冊の句集、って今まで手にする
ことなかったなあ。

池田さんはお名前は知っています、という程度です。
 「じゃんけんで負けて蛍に生まれたの」 が有名かと。私も
それは一発で覚えた。一発で心奪われた。きゅんーっ。
東京マッハでご本人の姿を見られてよかった。イメージどおりの
華のあるステキな方だった。

俳句のきっぱりさとかかっこいいけれどその分私にはハードルが
高い。きまりが多いのも。俳句わかる人には永遠になれない気が
する。短歌ももう初心者っていえないくらいには長くやってるけど
でも短歌わかるようになったとは思えないからなあ。。。

ともあれ。
面白く読んだ。
ふわりとしてる。軽やか。とてもやさしく見せている。でもきりっと
していてゆるさとか甘さはない。かっこいいー。
何故その組み合わせ、と愕然としてぽんと突き放される感じもあって
心地いい。「ハッとした瞬間からドラマがはじまる」は、野田秀樹の
芝居の中のセリフだったのだと思うんだけど(でも違うかも。記憶曖昧)
ハッとさせられることが多かった。凄いな。

いくつか好きな句。

 春の夜の蚊よ蚊にさぞや会いたけれ
 この位置と蛇の決めたる蛇の衣
 般若波羅蜜多甘そう涼しそう
 死後の如しあぁ涼しいと呟くは
 八月来る私史に正史の交わりし
 いつか死ぬ必ず春が来るように
 ともだちよ春の空気につつまれて
 水母殖えて殖えて淋しさ殖えて殖えて
 冬いちご腹立っていて丁寧語
 翅閉じて蝶であること休んでいる
 雪であった氷が水になる光る
 本当は逢いたし拝復蝉しぐれ

ほんとはもっといっぱい付箋つけたし、読み返すたびにあれもこれも
いいなと思って、めくってもめくっても飽きない。

今年も、すこーーしだけ、俳句に近付けてよかったな。

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スタンレー・ホークの事件簿

年末なので慌ててメモメモ。

スタンレー・ホークの事件簿ってシリーズ。

『仮面―ペルソナ』スタンレー・ホークの事件簿Ⅰ(山藍紫姫子/角川文庫)

タフでクールな不良刑事、スタンレーと、その上司、冷たい美貌の
ロスフィールド警視。連続殺人事件を追う。

って、でもこれどっぷり耽美小説なんですけど。なんでフツウの角川文庫?
ともあれ、初めて読む山藍紫姫子。前々から名前は知っていたし、BL流行り
のずっと前からの作家さんですよね。
この本は1996年に刊行のもの。一緒に入ってた「ウロボロス」という
のは1998年の小説JUNE掲載だって。
なにかと懐かしい感じがするわけだ。
事件のこととか、なんか超能力??とか面白かったけど、やっぱりなんで
そこでそういうことをするのだ!?と、今だとちょっと笑ってしまう。
夏にこの文庫新刊で見て、へー、と思い、殺人事件~と思って買ったので
ジュネ読むぞーという心構えとはちょっと違って読み始めたせいもあるか。
もちろんそういうことになるだろうとわかってはいたんだけどね。

『葛藤―アンビヴァレンツ』スタンレー・ホークの事件簿Ⅱ(山藍紫姫子/角川文庫)

えーと一応事件は起ってるけど、きみら仕事しろよ。
仕事もしてるしまあ解決もしてるみたいだけど。
らぶらぶ三角関係なのがとてもステキで面白かった。
やっぱりなんだかどうにも懐かしい感じ。
これも1996年刊行のもの。
シリーズ、は、たぶん4まで続くのかな。順調に文庫化されるよう願ってます。

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『秘密』10 『MASTER KEATON』6

『秘密』10(清水玲子/白泉社 ジェッツコミックス)

MRI捜査が始まった。
青木はなんとか自分にできる捜査を進める。
薪は自分に向けられたメッセージを脳から再生された画像に見る。

前の終わりのときに苦しくて苦しくて、これ買って帰ったあとも
続きを読むのが怖いと思ってしまった。
でももちろん読んだ。薪さんが相変らずきれいできれいできれいで
脆くあやういのに強くてもうたまりません。
事件はなんだか壮大なことになりそうな。薪さんが錯乱しちゃったり
過去との因縁みたいなのがいろいろありそうで、えーとえーと、っと
思う。落ち着いてじっくりよく読まないといけないのに、悲痛すぎて
そんなじっくり読めないー。
事件が終わったら。初めから全部一気に読みたい感じ。
続き切望。薪さんどうするんだー。


『MASTER KEATON』6(浦沢直樹/小学館ビックコミックススペシャル)

5を買いそびれていて先日買った。
そしたらもう6の発売だった。
毎月の月末発売なんだよね。うっかりしてしまう。
ずっと買ってる。読んでる。
子どもの頃の話もあったりして。
どの話もすごくよくできていて面白い。上手いなあと感心するー。
6巻では、学生時代の友達、マフィアの息子だったアンドレアの
話が凄いよかった。そんなに長い話ってわけじゃないのに映画一本
見た気分。
全12巻になるんだっけかなー。半分きた。続きも楽しみ。

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映画「宇宙人ポール」

映画「宇宙人ポール」

*ネタバレあります。

コミコンにやってきたイギリスからの旅行者、SF作家のクライヴと
イラストレーターのグレアム。ただしどっちも売れてるわけではなさそう。
オタク趣味の延長、という感じ。
かねて憧れていたSF作家にサインをもらい、コスプレいっぱいのイベント
を楽しみ、念願の聖地巡礼、車を借りてアメリカ西部の旅に出発する。
目の前で事故った車に近づいてみると、暗闇から表れたのは、どっからどう
みてもグレイタイプの絵に描いたような宇宙人。ポール、と名乗ったそいつ
は、アメリカに馴染みまくっていた。
だが、ふるさとへ帰りたいらしい。なりゆき上ポールを望みの場所までつれて
いくことになった二人。ドタバタロードムービー。

ポールは六〇年前に宇宙船の事故でおっこちてきて、それから米軍基地に
囚われていたらしい。あんまり本人に自覚はなくて、いろんなSFネタを
提供し、文化的影響を与えまくっていた、らしい。
いろんな小ネタ山盛り。スピルバーグとは当然会話してる。X-ファイルの
モルダー捜査官はポールのアイデアなんだってさ。
私にわかるネタはごく一部なんだろうなーと思ったけれども、それでもニヤ
ニヤしてとっても楽しい。

男二人で旅してるとやたらゲイ扱いされるとか、アメリカの田舎って感じとか
はしゃぐオタク、バカバカしいのになんか繊細なイギリス人な二人とか。
キャラ面白い。
途中で加わるルースは、厳格な父親に囚われていたも同然。妄信的なキリスト
教信者で、進化論が冒涜!とかヒステリックなったりするのも、なんかそういう
のあるんだろうなーと思う。
ポールは煙草、つーか大麻か。スパスパやるし、やたらフレンドリーで下品で
これまた古いアメリカ映画の典型的なアメリカ人ってな感じ。
追っ手になるエージェントもオタクくんが一人いて、大人になれ、とか上司に
冷たくあしらわれたりして可笑しい。
どうにもコミュ力がいまいちだったりてんぱったり、あーなんかオタクおたくー
って感じとかすごく可笑しい。そして自分もそうだあああ、と自分の姿をそこに
見てイタイ、とか思う(^^;
そんでも一緒にそんな聖地巡礼する親友がいて幸せじゃないか君たち!
ちょっと切なくなったり、ちょっとほろっとしちゃったり。でも基本的には
ずっと可笑しくてバカバカしくて、何やってんだーという感じ。

ポールが寄り道したいたいところがある、って、最初におっこちたところの
おうちに行くのはきゅんとさせられた。
彼女、ずっと独りでいたんだ。変人扱いされて。
うわ、うちが、とびっくりしたけど、最後ポールと行く、というためには
よかったんだねーと思う。

しかし最後、二年後、って、賞とって立派になってー。見た目は変わってないけど。
んで、『ポール』って作品みたいだけど、えっとえっと、それはこの映画?
メタメタになったのかな?と思ったり。
でもまあどっちでもいいか。
とても楽しかった!

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『わが告白』(岡井隆/新潮社)

『わが告白』(岡井隆/新潮社)

第一部 日記は事実よりもつよい 2009年8月。
第二部 愛の純粋と生活 2009年10月―2010年2月
第三部 <虚栄の市>のなかの生 2010年3月―8月
第四部 運命を抱きしめて 2010年12月―2011年7月

日本を代表する大歌人には語られざる過去があった。
男女の愛とは何なのだろうか―。

という、なんかすごい帯がついててドキドキする。そこに写ってる
岡井隆の影を強調したような顔写真も凄い素敵だし。黒い本銀のタイトル。
ときめくー。

日記めいて日付のある文章。
詩となっている文章。
思考をそのまま書き写しているかのような文章。
日経での「私の履歴書」の連載には書かれなかったような、「私」の
ところのことを書きませんか、というような依頼があったそうだ。
そして過去を思い出し、書こうとし、罪を思い、思い出すのがイヤで
書くのがイヤで、というそのままの言葉が文字になっていてドキドキ
する。そんなにも辛く苦しむのか。
ならばやめてしまえばいいのに。
でも書く。
何度もやめてしまおうとしている。やめてしまおうという心を書いている。
どきどきする。
こんな懊悩を苦しみを思い出したくないとぐずぐずしているところを
覗き見て読んでいるような気がする。

語られざる過去、を、覗き見るというよりは、過去を思って苦しむ今の
岡井隆の姿を見る本だと思う。
どきどきする。

最後は震災時のこと、その後のことの文章で、その立場のあらわしかたや、
考えの変化、変わらないところ、の様子がよくわかる。
すべて機会詩なのだ。
と書いているのが凄い。とりつくろわずむき出しにその時の言葉を出して
きているんだと思う。
あ、もちろん言葉表現修辞日本語の達人なわけで、むき出しに、というのは
ありのままの率直な、ということじゃない。どんなにそんな風に見えても
見せてきていてもほとんど呼吸するように凄い文章を書ける人なわけで
もうほんとうにどきどきして読む。かっこいいなあ。素敵すぎる。

個人的に前々からファンです好きです大好きですせんせい。と思って
いるので、実際のところ何も知らずにフツウにこの本を読んで面白いのか
どうかは私にはわからない。
天皇陛下や美智子妃や、皇室の方々への歌についての話だとか、皇室での
行事ごとなんかのお話は単純にそういうことをやってらっしゃるのか、と
面白かった。美智子妃のことはもう誰もが好きになってしまうんだなあと
思った。そりゃそうか。天皇陛下にしろ美智子妃にしろ、間違いなく日本一
の知識人であり教養人だろう。

医師としてのこと。歌人としてのこと。戦時下の学徒としての工場労働など。
もの凄いエリートなのは間違いないだろうに、ご本人としては落ちこぼれて
失敗も多くダメ人間だ、と思っているようなのも凄い。
これまでいろいろ聞いたことのある話もなんとなく知っている過去のあれこれ
だったりだけれども。
これを書こうとして苦しむ、これを書いている今の岡井隆をリアルに
感じられて凄かった。
どきどきです。
大好きです。

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映画「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」

映画「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」

モスクワの刑務所。イーサン・ハントがそこにいた。

ブタペスト。運び屋から奪ったファイルが暗殺者にまた奪われる。
エージェントは死んだ。
そのファイルを再び奪いかえすこと。それがミッションの始まりだった。

いやーもー!トム・クルーズすっごい!すごーい!すっごーーーいい~!
きゃ~トムかっこいい~!きゃ~トムすごーい!うわー飛ぶ~!ぎゃあー
爆発~!うわああ。ぐわああ。どぎゃーん。どかーん。ぎゃあああー。
ああもーほんっとトム・クルーズ凄いわかっこいいわあああああ!
と、ポカーンと口あけて必至で見ていた感じ。面白かったあ。凄いテンポ
でどんどん進むから、もう細かいことはいいんだよ、と気にしない。
アクションアクションどんどかアクション!トム飛ぶ!トム走るっ!
モスクワ。ブタペスト。インド。ドバイ。世界を飛ぶ飛ぶ。
核戦争の危機が知らぬ間にあんな風に回避されてたんだとしたらどうしよう。
こわいわ(笑)

ドバイの世界一高いホテル、だっけ。あそこもトムはスタントなしであの
アクションやったんだよねえ。凄い。いやーいくらワイヤで何本も命綱つけて
いても、イヤでしょうあれ。いやというか怖いでしょ。変人だトム・クルーズ。。。
アクションはほんっとすごく面白かった。リアリティなんかどうでもいいさ。
ガツンガツン見せてくれるサービス満点!
時間が、というリミットばっかりの連続でハラハラドキドキ、ドキドキドキドキ
ドキドキドキドキ。コワイ。どうだどうだーこれでもかーと畳み掛けてくるー。
見てる最中はなにがなんだか考える暇もない。すげー。すげーよトムー。
細かいことを気にしなければ大体はストーリーわかるけどね。

前回結婚したよね。どうなったんだろどうするんだろ、と思っていたんだけど
それに関しての話がすごくうまくちらほら出てすごくいい塩梅で見せてくれて
素敵だった。

コネタというか、あ、1の時の覆面だな!とか、あのジャケットはトップガンかw
ってな、たぶん私にわからない何かもあるみたいで、ニヤ、っとさせてくれる
サービスもあり。
コンピューターとか秘密兵器?担当のダンとか分析官として登場するブラント
なんかもちょっと笑わせてくれたり。
計画がうまくいかなくて変更!終わり!とかすごくハラハラする。可笑しかったり
失敗だ、てのがあったりで、それも面白かったなあ。
予告を見たときには、すっごくすっごくすっごく面白そうで、あーこれまた予告が
一番面白いパターンだったりして。。。と思ったけど、私としては予告のわくわく
を十分に満足させてくれる面白さだった。
トムすごいよー。かっこいいよー。やっぱり年をとってるわねえとは思うんだけど
それでもかっこいいよー。好きだー。
先日テレビで1をやってたのを見たばかりだから余計にね。1の頃のトムはもちろん
かっこいいけど若くて初々しくて可愛いかった。そして今でもやっぱりかっこいい
って素晴らしいわ。大好きだー。面白かった。満足~。

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生きても生きても

生きても、生きても。
西さんのことを思うはずなのに自分のことを延々と思ってしまう
こっぱずかしいワタシ。
でも自分日記としてもうちょっとだらだらと書く。

『生きても 生きても』というタイトルはなんか至言だなあと思う。
二十代のころの文章、やっぱり西さん流で突き放しっぷりが凄いんだけど
それがだんだん変わっていく変化が見えてとても面白い。

若い頃ってやっぱりヒリヒリ痛いものね。
穂村さんのお話だったかなあ。やっぱり若い頃は社会とか世の中とか自分に
対する期待値みたいなのが高くて、許せないことも多くて潔癖だったりする
よね、というようなこと。
自分もやっぱりそうで、若い頃は、というか、思春期なんかは世界はもっと
凄いのだろうし大人は賢く凄いのだろうし自分自身だってきっと何者にか
なれるんじゃないかと根拠なく思い、期待し、絶望し、許せないことが
いっぱいでガチガチだったりした。
西さんももちろんそうで、鋭く鋭く鋭く繊細にモノゴトを描き出している。

そして年を重ねてのエッセイにあるように、なんかロックじゃない、という
自分に気付いて、あー、と思ったりする。
生きるんだな、と思う。

思う。私も思う。たぶん明日も生きる。

若かりし日々、ワタシもやっぱり二十歳までに死にたいと思っていた。
小学生くらいの頃から死にたい死にたいとはいつもどこかで思っていて、
大人になりたくないみたいなことを思っていた。たぶん思春期ってみんな
そーゆーこと思うよねー。超フツウだけどそんなこと鬱々と考えて酔ったり
してました。

ああ実際死ぬな、という瞬間が大学生のころにあった。
魔が差すってああいうことなんだなあと思う。
大体いつも死にたいとか思っても痛そうとか怖いとかヘタレなので実行した
ことはないんだけど、そういうのがふっと消えて、あ、今動いたら私死ぬ、
という瞬間があった。ありありと、あそこの包丁とって手首なり首なり腹なり、
切って刺して死ぬ、とはっきり自分でわかったときがあった。
なので、う、いかん。ほんとに死んでしまう。今動いたら死んでしまう、と
わかって動かなかった。
死にたいと日頃思ってるくせに動かなかったの。やっぱりヘタレなんでしょう。

もういい年をした今でも、ワタシなんか死ねばいいのに、というのはずっと
思っている。若い頃みたいなことはないけど、死ねばいいのにワタシ、という
自己嫌悪みたいなのは死ぬまで消えないだろうなあ。自意識過剰でハズカシイ
ですね。まあこれはこれでこういうものか、と思う。

そんなこんなで、尖りまくったところはやっぱり減って、世の中のいろんな
許せないことが許せることに少しずつなって、ゆるくなった。だらしなくなった。
ずるくなったし甘くなった。自分にね。

生きるんだな。
たぶんこの先もうしばらく。

生きても生きても 別に楽にはなってないけれども、生きるんだろうな、という
方向に考えることが多くなる。
年を重ねていくって、そうなのかなあと思う。
ほんとは残りの寿命は減っていくはずなのにね。生きることに折り合いをつける
方法を自分なりに見つけていけるようになるということか。

実際に若くして亡くなった人がいて、その衝撃、残された悲しみを実感したり
したことも大きい。実際に知り合いじゃない夭折の作家だとかはかっこいいけどね。
多少なりとも縁のある、自分よりずっと若い人が死んでしまう哀しみ。
生きていて欲しいと思う。
生きて欲しかったと思う。

西さんにはもうついていけない~と思うこの頃だけれども、西さんが生きて
くれる限り、見ていたいなと思う。
まあなんとか、生きようかねえと思う。
自分に本当に大事なことには甘くならない。
そして生きる。西さんて、私にはそういう存在だ。

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『生きても生きても』(西炯子/小学館ルルルノベルズ)

『生きても生きても』(西炯子/小学館ルルルノベルズ)

西さんのエッセイ集。
ルルルノベルズってなんだ。よく知らなかった。見た目は
フラワーコミックスと同じようなカタチで、実際コミックの新刊
と並んでおいてあった。へー。エッセイ集が出たのね、と購入。

西さんのことが私は好きで好きですごく好きで、それは私が
なりたかった私、理想の私、私の一歩先を行くとても私によく
似ている人、という思いがある。なんだよ自分スキーか、という
感じでこっぱずかしいけれどホントだから仕方ない。たぶん年齢近い。
たぶん子ども時代の感覚も近い。なんとなく読み取れる範囲でのこと
だけど。地方育ちで親の期待にそこそこそう普通にいい子で、でも
自意識の強烈さは半端なくて、という感じ。まあでも世の中の大部分
の人はそんなもんかな。

マンガが好きなのはもちろんだけど、書いている文章がまた
ものすごく好きだ。ああこういうのわかるそう私だ。と、もの凄く
一方的に共感しまくってしまう。もちろん私じゃないし私の百万倍
スゴイなーとわかっているけど。でも自分でおかしいくらい共感
しまくってしまう。なんだっけ、忘れたけど(忘れてるね私バカ^^;)
西さんがマンガのあとがきだか途中だかに短く書いてたことが切実に
自分すぎると思って声上げて泣いたりしたことがある。ハズいけどホント。

懐かしい文章がいくつもあった。
小説Juneで読んでた。あのー、映画「青い春」の感想文はもの凄く印象的で
私もちょうど映画見てて、読んで、深々とため息ついたりしたものでした。
松田龍平も育ったよねえ。それでもやっぱり特別感はあるよねー。まあそれは
見ているこっち側の問題か。

西さんがかっこいいのはなんだかんだの苦しみも痛みも努力もバカも、
うが~!っとなりつつも、でも自分で引き受けていく感じ、と思う。人のせいに
しないし自分が自分で生きる、という覚悟。腹のくくり方、というか。
世界に一人で立ち向かいますがなにか。というあっさりとしつつもきっぱり
とした覚悟。凄いよなあ。

さすがにお絵かき教室の1回目、あたりは見てないと思うけど、私は西さんの
ことはJuneでの投稿時代から見ていて、デビューになって、と、ずーーーっと
好きでいる。途中まではカンペキにフォローしてたけど、まあその後ほどほど
な感じになって、この頃は新刊見てもあまり買わない。
『娚の一生』がたぶん世の中でメジャーになり人気なのだろうけれど、あれは
私も好きだけど大好き、ではない。

STAYのシリーズあたりからかな。西さんはちゃんと腹をくくって、自分とか
世界とかと和解というか、調和をとっているのだろう、なーと、想像する。
もっと前からかなあ。
しばらく離れていたりしたから勝手な適当な印象なんだけど。
ヘテロな恋愛世界をプロの自分の作品としてきっちり仕上げる。そうなって
きたのじゃないか、と、思う。ほんと私の勝手な印象にすぎないんだけど。

このエッセイ読んだ感じでももともとJune系じゃなくちゃダメだ!というわけでも
ないようなので、そういう方が西さんのナチュラルなのかなあ。ま、June的なのも
嫌いじゃないのは確かだと思いますけれども。
ただ私がついていけない。私はまだそこは夢見るまんまでいたくて、どんなに
西さんテイストであろうとも、ヘテロなセクシャリティには関心が持てない。
もうほんっとーに、ヘテロな恋愛してるキャラのことを全然好きにならない。
ヘテロな恋物語は、どんなに男性キャラが美形だろうが変態だろうが渋かろうが
なんだろうが、かっこいいなーへー(棒読み)、な感じになる。
なんだろう私。
別に男女な恋愛ものでも好きだったりするのはある、と、思うけど、うーん。
ある、かな。んー。面白がるけど大好きになることはない、かな。うーん。
なんかこう、ミステリとかスリルとサスペンス、だとか、恋愛物ど真ん中じゃ
ないものだったらイケルのかも。ううーん。
夢見るまんまというか私はもうほんとーに心底、美少年美青年美中年美老年同士
じゃないと興味持てないんだわー。
西さんにはかなわない。
(はじめからかなうわけないしかなったことない)

なので、この頃の人気ある西さんの世界に手を出すことはたぶんないかなと思う。
それでも、やっぱり西さんが理想で憧れでかっこよくって大好きだ。
見ていたいな、と思う。

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『グレン・グールド 未来のピアニスト』(青柳いづみこ/筑摩書房)

『グレン・グールド 未来のピアニスト』(青柳いづみこ/筑摩書房)

少し前にグールドのドキュメント風映画を見た。あとがきでふれられている
「The Inner Life of Glenn Gould」というやつ。カナダではテレビ放映された
そうで、映画ってわけじゃないのね。

著者はピアニストだそうで、実演奏者としての視点、というところがちらほら
出てくる。自分はこうこう、というレコーディングやコンサートの時の話。
そういうのはふーん、と面白い。
で、グールドの演奏について。曲について。実に丁寧に細かく描写してくれて
いるし事実のあれこでもとても面白い。
しかし私が、音楽的知識が全然なくて、説明されていることがよくわからない。
なんかほんとごめんなさい。私がもっと音楽用語とか作曲家とか演奏のあれこれ
について、きっとほんと基本的なことを知っていたらもっと面白く読めるんだろう
なあと、すごく思った。自分のバカ。

グールドのトランス状況。グールドは音楽にとりつかれ、ピアノだけじゃなくて
歌い、あいた手で指揮をし、楽譜の記号だけじゃなく作曲家に訪れた音楽の霊感
そのものにせまり自身でも音をつくりあげている総合家なのだということ、いい
なあと思った。
私は単なるグールドのイメージのファンで、音楽のこと全然わからないんだよなー。
聞くのは好きだけど、なにがどうなのかとか全然言葉にできない。
クラシックというか、音楽評論の世界も知っていけばわかるようになるのかなあ。
まーそこまで私は手は出ないけど。
ラン・ランの話がチラッと出てて、あ。のだめのピアニスト、と思う。のだめの映画で
のピアノはラン・ランが弾いてるんだよなたしか。

未来のピアニスト、というサブタイトルは最終章だった。
グールドが未来に提示した問題。ピアノを歌うこと。演奏旅行に忙殺されるのが
いいことなのかどうか。巨大コンサートホールでのピアニストの苦心はいいのかどうか。
レコーディングはレコード会社の都合にあわせていいのかどうか。自分で自分の
音楽を、レコードをつくりあげる方法の模索。
今だったら、自宅で演奏録音世界への配信までやっちゃうことも可能になってきた。
グールドは半世紀前にそうしていたんだなあ。
音楽のことがわかんないなりに、面白く読みました。

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榎田尤利/交渉人シリーズ

榎田尤利さんの交渉人シリーズを一気読みした。
がっつりBL読むのちょっと久しぶりかな。なんかこの頃懐古趣味に
なりがち。榎田さんも一時はパーフェクトに追いかけていたけれども
しばらくなんだかもういいや、となっていたのでした。
交渉人のも最初の一冊は読んでたけどその後の続きは手に取らず。
したらいつのまにか7冊出ていた。で、一旦はオシマイということ
らしい。そんなわけで二冊目から一気読み。

すべて榎田尤利。大洋図書シャイノベルズ。

『交渉人は黙らない』2007年。
これは出た当初に買って読んだ。
細かいことは忘れた。。。けどまあ、元検事、元弁護士、な現在交渉人
としてご町内トラブル解決します的なことをやってる芽吹と、かつて
高校で後輩だった、現在ヤクザ若頭な兵藤との再会、そして、という所。
ポジティブにがんばる芽吹とやけに芽吹に執着する兵藤。過去の因縁等等。
榎田さんのファンなのでもちろん面白く読んだけど、いまいち自分が大好きに
なるよーなキャラもなく、まあねえ。ヤクザねえ。という印象だったのかな。
続編を買い続けるにはいたらず。あと絵もまったく好きじゃない。

で、今年の夏にシリーズ一旦終わり、ということになったみたいで、
このBLがスゴイとかの一位にもなったみたいで、久しぶりにオトナ買い。

『交渉人は疑わない』2008年。
ホスト絡みのトラブルを解決、したと思ったらホストから依頼がきた。
溝呂木というその男は兵藤の過去を知る男だった。
つーわけで兵藤の若かりし日のことなんかがちらほら。人を殺したことがある、
てな感じだけど、まあ事故みたいなもん。でも心の傷みたいな感じ。よくして
もらってた兄貴分だったが、そいつが薬で暴れてそれをとめるはずみに、と。
んでまあ、なんだかんだあって、二巻目にして芽吹は後ろのせっくすを初体験。
芽吹のかつての同僚、七五三野(しめの)という現役弁護士も登場。兵藤が
びしばしライバル視したりして。

『交渉人は振り返る』2009年。
振り込め詐欺グループに半分足をつっこんだ友人を助けたい、という依頼から
偶然、芽吹は弁護士だったころ、無罪を勝ち取った相手と再会する。朝比奈。
無罪になったとはいえ、恋人を死なせた男、として、彼は社会的には落ちぶれていた。
彼をもう一度、信じたい芽吹は、一緒に薬を飲むことを承知した。
てなわけで今回は急激な薬物過剰摂取みたいなことと拉致監禁だったりして
芽吹は兵藤に心配かけます。変わろうとする相手を信じようとする芽吹。
芽吹の過去のなんらかのトラウマ。

『交渉人は嵌められる』2010年。
芽吹のところに送られてきた、ボールペンの形をしたUSBメモリ。芽吹が
忘れられない事件、親友だった若林を弁護士として助けたかったのに、結局
自殺へおいやってしまった事件の、新たな証拠となるメールの記録だった。
同じ頃、ヤクザ真和会がらみらしい、秘密のデータが偶然芽吹の預かるところ
となる。それもボールペン型のUSBメモリ。しかし、それが奪われた。
兵藤と対立してでも、過去に囚われる芽吹。
ってんで、暴力団絡みのあれこれと、それぞれの立場の違いに苦しむ二人と、
そんでもって、天才詐欺師で兵藤に執着する環とのあれこれで、兵藤に捨てられる
芽吹。どうなるー。というところで続く!続きものだったのか。

『交渉人は諦めない』2010年。同時発売だったのかな。
まんまと環に騙されてUSBメモリも兵藤も失った芽吹。だが、芽吹は一人じゃ
ない。チーム芽吹なんだ、というわけで、みんなでなんとか環を騙してメモリ
を取り返そうと企む。しかし環のほうが一枚上手、かと思ったが。
結末まで読むと、へー、と思ってもう一度再読したくなるような。騙し騙され
が面白かった。信じる、信じたい、というのが強い、みたいな。ベタに愛は勝つ
みたいなことだけど面白かったな~。
芽吹のほうから兵藤が大事だ俺のものだっ、と激しく嫉妬、求めたりして
そーゆーのもきゅんとくる。二巻続きの満足感あり。

『スウィーパーはときどき笑う』2010年。12月刊。去年いっぱい出たのね。
これは番外編。
芽吹のところのバイトのキヨくんと、勝手に出入りしてる高校生の智紀くんとの
ラブラブ話。最初は背が小さいコンプレックスのあるトモにとってはやたらデカイ
邪魔な存在のキヨ。しかしキヨのほうはちっちゃくて可愛いトモに一目ぼれ。
巨大わんことしてひたすらトモになついていた。
キヨの清掃人としての仕事のバイトについてった時、偶然見つけ保護した小さな
子ども。その子の母親を見つけてやろうとして。と、まああれこれあって、
んでトモのほうもキヨが好きだよ、というわけで。可愛くらぶらぶでした。

『交渉人は愛される』2011年。
これまで散々対立し酷い目にあわされてきた鵜沢組の組長からの依頼だった。
病で余命わずか。ぼんくら息子を助けて欲しい、と。断るべきだった。だが、
死を目前にした親の願いを断れる芽吹ではなかった。
ってことでまあ、鵜沢組の崩壊でしばらく平和が訪れるのかなーという割終わり。
芽吹の自覚もくっきりはっきり。よかったね。

みんながみんな、もの凄い過去をしょってて、でも深刻になりすぎず、明るい。
芽吹くんが明るくがんばるので。おっさんみたいだし。気負わずがんばる。
んでも、まあ、芽吹が動かなきゃ話が話しにならないというか仕方ないんだけど、
それにしても芽吹ー、お前もうちょっと慎重に、人に心配かけないように
できないのかっ。前向きにもほどがあるっ。人を信じようとするにもほどがあるっ。
そうせずにいられない過去のトラウマとか丁寧に語られててわかるけどさー。
と、どうにもイラっとしてしまうワタシ(笑)兵藤が不憫で。あんなに愛してる
のに可哀相と思う。
しっかりした大人とか、元気のいい女の子とか、子どもとか、やっぱり配置が
うまい。でも最後の、座木さんの姪っこの桃子さんはいくらなんでもやりすぎ。。
と思うけどなあ。話作りもいろいろ、ねーよっ、とつっこみたいところは
盛りだくさんだけど、テンポよく読ませるし面白いしうまい。
えろいシーンも、ほんとバリエーション豊かにあの手この手でえろくたっぷり
あってとってもいい。兵藤がんばれーと思う(笑)えろいシーンがほんとに
いろいろでえろくてやっぱり榎田さんステキです。

この感じって、あれだと思った。ススキノ探偵シリーズ。たまたま私が今
まとめて読んでいるせいもあるけど。ススキノ探偵も、探偵というわけじゃなくて
街の便利屋的立場。ヤクザなお友達もいる。仲間もいる。そしてよせばいいのに
揉め事をなんとかできないかとがんばって巻き込まれて酷い目にあって。
ススキノシリーズもゲイの人いっぱい出てくるよなあ。探偵本人は違うけども
差別偏見はゼロ、でも理解もできないけど、というニュートラルさがかなり好き。
芽吹は一応仕事の依頼がきっかけ、ということなんだけどね。
探偵もののシリーズってこういうパターンか、という感じで納得した。
芽吹たちの街も、新宿渋谷なんかじゃなくて、両国錦糸町がなわばりってとこで。
下町風情な感じも味わいかなあ。
オトナ買いに後悔はない。面白かった。
でも大好き、っていうふうには私はならないなー。やっぱり芽吹にはイラっと
するし(笑)環にちょっと期待したらわりとヘタレな最後をむかえちゃったし。
つまらん。。。悪に魅力がないと私にはつまらないという個人的好みとして。
ヤクザといっても兵藤らの組は昔堅気で残虐非道なことはしない、ってスタンス
だったりして。まあ主人公サイドだからそういうことにしないとねってのも
わかりますけれどもね。愛しあって、幸せになってね。

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『ストロベリー・デカダン Eternity』1~3(本橋馨子/竹書房バンブーコミックス)

『ストロベリー・デカダン Eternity』1~3(本橋馨子/竹書房バンブーコミックス)

兼次おじさまのシリーズの、完結篇。
完結篇をやってるって知らなかった。どうやら今年一気にコミック発売に
なったみたい。
オトナなのでオトナ買いをして3巻一気に読んだ。
昔よりはすこーしだけ絵柄はすっきりめになったかなあ。それでもやっぱり
華麗!豪華絢爛!金も力も美貌も万全の兼次おじさまは最高!36歳か~。
もう私のほうが年上に。いい年だわ。まだ若い。そして十分大人。かっこいー。

兼次おじさまは永遠の愛、自分の命以上、すべてであった太郎ちゃんと
愛し合い、世界一幸せな二人になり、そして太郎ちゃんは天国へいってしまった。
だいぶ馬鹿馬鹿しいノリだったりしながらも、花ゆめコミックスで読んでた頃、
最後にはぼろっぼろ泣いて泣いて泣いた最後でした。
その後、ですね。このお話は。

1巻の最初の「新・たゆとうとも沈まず」は、なんか読んだことがある気がする。
描きなおしなのかな。
若いまだ日の目をみてない役者との出会い。彼は太郎ちゃんにとてもよく似ていた。
求め合うはずなのに、叶わない想い。
とゆーわけで、二人の激しい恋、愛、渇望、すれ違い、追いかけあい。
三巻一気読みできて幸せだった。
マンガだマンガ。ありえない華麗なる劇的すぎる展開。
でも最後にはすごく感動しちゃったよ。素晴らしいよ。
太郎ちゃんと花ちゃんの愛と、そしてそれからの先生と高顕くんの愛。
苦しんだねいっぱい。だって太郎ちゃんと花ちゃんの愛の永遠を消すことは
できないから。それでもまた次の永遠を二人でつくっていってね。うるうる。

更科さん、最初誰だこれ、と思ったけど前からいたっけ(^^;あんまし
覚えてない。でも読んでくうちにだんだん彼のことも愛しくなる。狂ってる
けどね。花ちゃん太郎ちゃんを見せ付けられてそれでも花ちゃんを愛して、
愛して愛して愛して愛して、愛することをやめられない。バカで素敵だ。

兼次おじさまがしあわせになってよかった。
太郎ちゃんともども見守りたい気分だ。ずっと幸せでいてね。

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『象られた力』(飛浩隆/ハヤカワ文庫)

『象られた力』(飛浩隆/ハヤカワ文庫)

中編小説集、かな。四編。

 デュオ
 呪界のほとり
 夜と泥の
 象られた力

「デュオ」は、双子の天才ピアニストと調律師の話。
双子といっても、デネス・グラフェナウアーとクラウス・グラフェナウアーは
腰から下が一つ、の繋がった双子。聴こえず離せない双子。会話は手話。
そして見えない秘密の三人目、が、いる。
双子の求める音をつくりだす調律師、イクオは双子の秘密に気がつき、やがて。
ちょっとミステリめいている感じ。反転。反転。
ピアノ。音楽。双子。テレパス。めくるめく感覚。すごく面白かった。

「呪界のほとり」魔術めいた力があたりまえの呪界からおっこちてしまった
万丈。それを助けた放浪の哲学者パワーズ。竜のファフナー。ドタバタが
あったりして、かなりユーモラス。これはマンガになるなーという感じ。

「夜と泥の」宇宙に進出した人類。さまざまな星を地球化、する協会。
ある星のある場所に見える少女の幻。恐怖と幻想の世界。

「象られた力」開発してゆく星々の話。
たった二日で、原因不明のまま消えた星、百合洋<ユリウミ>。その文化で
あるエンブレム、図形。シジックで流行っている図形の力。見えない図形を
つきとめるよう依頼された圓は、図形の秘密をさぐるうちに隠された力に
気がついてしまう。
図形。力。そのぐるぐるする感覚が凄い。圧倒的なパワー。圧倒的にうつくしい。
くらくらする。世界が反転する感覚。
これは小説だからだなあと思う。どんな映像になったところでこの圧倒的な
イメージの奔流に比べたら陳腐になるだろう。百合洋のエンブレムの力は
こうなのか、と、言葉の力を思う。凄いよなあ。

この著者の言葉やイメージ、つくりあげる世界は圧倒的にうつくしくて
くらくらする。凄い。
この文庫の発行が2004年。発表は85年あたりから90年代初めくらい。
『グラン・ヴァカンス』で復活、とおいう感じみたいで、デビューは83年
だそう。ほんと寡作で、時間かかって、知る人ぞ知る、から、復活!とはいえ
やっぱりまた長い時間待たされて、ということみたい。
でもこの世界だもんなあ。じっくりほんとうに、たっぷり時間かけてくれて
いいよ。と。ファンは納得して待ち焦がれるしかないんだろうなあ。
空の園丁(仮)、が、もうこの時にも楽しみだ、と書かれていて、えっとー、
それから七年すぎてるわけか。すごいなあ。
待ちますよー。書き上げてくださいね。

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狂言劇場 その七 Bプログラム「語」

狂言劇場 その七 Bプログラム「語」

十二月八日(木)14時~ 世田谷パブリックシアター。

今回は語り、だそうで。動きよりは語りで見せる舞台でした。舞には
圧倒されたけど、語りには引き込まれるー。

「柑子」

太郎冠者にまんさいさま。
主にいいつけられて預かり持ち帰るはずの柑子を(みかんの一種だそう)
途中で食べちゃいました。というお話。短い。太郎冠者が、こうこうこういう
感じで食べちゃいました、と言う語り。可笑しい。萬斎さまはセリフの途中に
ふいと一言だけ普通な、というか、今の話し言葉混ぜてきて、そこに笑って
きゅっとつかまれた。うまいなー。

「奈須与市語」(なすのよいちのかたり)

万作さま。

能の「八島」(「屋島」)の間狂言の特殊演出、だそうで。
平家物語の扇の的を射る話ですね。
舞台に一人で、登場人物の立場入れ替え、動きとしては基本的に座ってるのに
馬で駆けていく様まで見せてくれた。凄い。
平家物語だもんね。すごくきりっとしている。ひとりっきりであんなに
演じきるんだなあ。ひとりっきりであんなに場を制圧するというか、語りで
場内すべてをつかむのね。かっこよかった。

休憩挟んで。

「悟浄出世」

中島敦。
萬斎さまは中島敦がお好きなのね。
朗読劇、というのかな。みんな本を持っている。読み上げている。妖怪達、魚の精
などなどの出入りはあるけれども、悟浄はずっといる。地の文を読む人でもある。
最後の方のところで、まんさいさまが穴に入るときに本をバサっと落として、
わ、と勝手に私がびびってしまったけれども、ご本人はまったく落ち着いていて
言葉の切れもさほど不自然ではなくて、さすが。おおむね覚えているんだろうけど
素敵だなあ。うっとり。
ずーっとまんさいさまの声を聞き続けるので幸せだった。うっとり。ああいい声。
一時間あまりだったかな。聞き惚れる。

動きも出入りも最小限、という感じだった。笑わせてくれるところもあったり。
中島敦の世界だなあ。漢字の世界と言うか。みっしり漢字が多い文庫本にならぶ字面を
思い浮かべてながら聞き惚れる。そういうのにふさわしい声で舞台だと思った。
かっこいい。
朗読かっこいい。
尺八とか囃子で鈴だとか音が入るんだけどそれもほんとミニマムな感じでかっこいい。
渋いよなあ。
最後、悟浄が三蔵についていくことになって、サラリーマン的スーツ姿になるの。
さて我とは何か、と悩み苦しんでいた病は治った、のか?悩みを気にしなくなった
のでもういい、のか?
結末の解釈にそのスーツ姿?うーん。なにかと皮肉な感じだろうか。んんんー。
その衣装替えに私は見た瞬間は笑ったけど、どーなのかなあ。やっぱり皮肉?んー。
そんなこんなで、うっとり堪能。かっこよかった。面白かった。

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朗読発表会

4日日曜日、朗読発表会、終わりました。
ほっ。

今回、プログラムのつなぎに、というか始まりの時に短歌を読むという
構成になっていました。
プログラムにあわせて短歌書かせてもらったんですが、読むのは
それぞれの発表の方に、と思っていたのに、先生がでろでろー読め読めー
と言ってくださって、ずうずうしくも毎度登場して、パーツごとにとか、
何人かで一緒にとか、いろいろで読みました。
何度も登場してすみません、と内心思いつつも、ありがたいことでした。

自分が読んだのは正岡子規の「蝶」という掌編?エッセイ?で。
子規もえー、な気持ち的に満足しました。
あー、持つ手がちょっと震えちゃうわーと思いつつも、練習はたっぷり
したので、それなりには出来たと思います。

その後の入れ替わりがちょっと戸惑ってしまって恥ずかしかった。
んが、まあ無事終了してよかったー。

ミステリあり、映像に合わせたナレーションあり、お芝居っぽくしたのも
ありで、他の人のを聞いているのも面白かった。

そして何より先生お疲れ様ですと思う。
発表会の裏方仕切り、いろいろ大変だよねえ、というのはよくわかるので。
スタッフやってくださったみなさも。ほんとうにありがとうございました。
充実の一日でした。

教室通うようになってたぶん二年半くらいにはなるかなあ。
今月でやめることにしました。
朗読楽しいなと思うけど、ずっとレッスンに通うのはいったんお休み。
今回の発表会で自分で満足しちゃったなあという感じがある。
声を出して読むことはやろうと思うけど、レッスンに行くのはもういいかと。
個人レッスンや単発レッスンも受け付けてくれるところなので
またなんかあったら行くか、という気持ちはある。
すごく楽しく褒めてのばしてくれるタイプの先生で、いいとこ見つけた。
ひとまず終わり。
来年からはまた何か違う新しいこと、始めたいなあ。

そして夜には坂の上の雲、第三部開始。
旅順。203高地。覚悟していたけれども本当につらいところでした。
一瞬、子規さんの声がした。
わーん子規さーん。
3年がかりのドラマも今年で終わりか。じっくり見ます。

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狂言劇場 その七 Aプログラム「舞」

世田谷パブリックシアターに、狂言を見に行った。久しぶり。
狂言の舞台は静かだ。客入れの音なし。開演前のアナウンスもなし。
しずかに照明の変化だけで始まる。

狂言劇場 その七 Aプログラム「舞」

小舞「七つ子」「暁」「鮒」

男たちが舞台に登場。扇を出して、すっと、自分の前に置くのが
始まりのしるしなのかな。謡のみ。
「七つ子」は可愛い感じ。「暁」は、金星?最初謡を聞いただけでは
あんまりわかんなかったけど、解説を読むと後朝って感じなのか。
「鮒」は萬斎さまー。鮒の精が飛び跳ねる様、だそうで。
跳ねたり、つつつつつつつ、と動いたり、動き激しい。ちょっとコミカル。
かっこい~。

「棒縛り」
この話は知ってる。前にも誰かの見たことあるなあ。主が留守の間に
酒を飲んじゃう太郎冠者と次郎冠者。今度はそうはさせまいと縛って
出かけるが、縛られつつもどうにかこうにか酒盛りしちゃう二人。
太郎冠者が万作さまー。動きがとっても面白い。知ってても笑っちゃう。
酒盛り始めながら、歌え、舞え、といって舞うのが、その前にやった小舞
の「七つ子」と「暁」だったよ。そういうサービスになってるのか~!と
いっそうニヤリとしちゃってとても楽しかった。

休憩を挟んで。
「MANSAIボレロ」
「今回は、芸能の原初を喚起させる「古事記」のアメノウズメ伝説や、
律動的な囃子に足拍子を踏み鳴らす『三番叟』を「ボレロ」に重ね合わせ
ながら、生から死そして再生する生命への祝福をめざした新振付と独舞に、
萬斎が挑みます。」
とのことです。

三番叟かあ。三番叟はマジックステップ。祈りというか儀式というか。
それで生と死、再生する生命への祝福ですかなるほど。アメノウズメ伝説か。
だから最初真っ暗で闇なのね。衣装も巫女っぽいよね。赤と白。
んでも直衣?狩衣?直衣って感じかなあ。まあそういう装束なので、晴明さま!
と、もえーなワタシ。白いし。萬斎さまって白いよね。
んで、そういう装束なのに烏帽子してるわけでもなく直面ていうの?なにも
してないから無防備に見えてドキドキしちゃう。
あんな長方形な装束きてよく踊れるよな。
もちろんバレエとは全っ然違うボレロだった。

始まりは完全に真っ暗。かすかに聞こえてくる音楽と同時に細くひと筋、光がさす。
シルエットが浮かぶ。座っている。夢幻の世界。
ゆっくり動き出す。少しずつ光が増す。音楽といっしょに。
扇の動きで光が広がって行くのが面白い。光量も増してくる。ゆっくり。少しずつ。
音楽と絡み合って動く。垂直な体が時々斜めになるのがとても色っぽい。そうか
アメノウズメなのか。うっとり。
袖をぶんぶんぐるぐると巻きつける振りが面白い。袖をそういう風に使うんだ。
かっこいいー。
音楽の盛り上がりとともに表情も厳しくなる。力が漲る。光が強くなる。
跳ぶ。
高く跳ぶ。
その瞬間、暗転。
光と跳んだ姿が目の奥に残像に残った。
凄いっ。

自分でも驚くけど舞台の迫力にエネルギーにうつくしさに圧倒されて涙が出た。
かっこよくて泣いちゃうなんてなかなか味わえないわ。素敵すぎる。うっとり。

最初のカーテンコールでは(カーテンないけどね)きれいな形のきれいなお辞儀。
暗転。ひかり。
二回目、三回目の登場では少し力抜いたというか、少し一息ついた、というか、
姿が少しやわらかくなって、にこ、ともしてくれて、あーもーーっかっこいい!!!
きゃー☆
すごくすごく素敵でした。見にいけてよかった。

今回のがAプログラム、とのことで。来週はBプログラム見に行くぜー。今度のは
「語」ということらしい。楽しみー。


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『猫は忘れない』(東直己/早川書房)

『猫は忘れない』(東直己/早川書房)

俺は4日間旅行で留守をするというミーナに、猫の世話を頼まれた。
猫の名前はナナ。餌をやりにいったら、ミーナの死体を発見してしまった。

ススキノ探偵シリーズの12作目。2011年9月刊。
原発、の言葉がセリフにさらっと一瞬出てきてドキっとして奥付みたら、
今年の本だった。そっか。
今現在のところで最新刊、ですね。シリーズけっこう読んできたなあ。
高田くんも相変らずのようでなにより。今もやっぱりかなり強いのね。
華さんともやっぱりまだ別れずに続いてるんだね。心配されてるね。ふーん。
と、いろいろ相変らずな感じでだいぶ馴染んだ気分で読む。

猫を飼いはじめた、のだろうか、著者。猫をあずかることになった探偵が
ナナについ話しかけてしまうとか振り回されて、なんだこれ、と憮然とする
感じが面白かった。猫の様子もあー、うんうんという感じがして、私も私の
猫を思って、あー猫とまた暮らしたい、と切なくなったよ。
猫飼ってるのかどうかはわかんないけど、著者はやっぱり人間描写も猫描写も
すごく上手いということですね。

ミーナの死について、首突っ込まないで。警察にまかせて。という華さんの
心配はごもっともなのに、やっぱり首をつっこむ俺。
いろいろ動き回って波風たてて種はまくけど、やっぱり最後の最後まで事態は
よくわからないままで、最後にわーっとたたみかける終わりは面白い。

俺に見せていたミーナの顔はごく一部で、ミーナにはいろいろ別の顔があって、
そのへんのことは結局よくはわからなくて。山越というか西本にもなんか凄い
ことがありそうで。そっちの複雑そうな人間関係が気になる。
このシリーズのスタイルだとそうなんだよねえ。不気味な相手サイドのことは
わからない。それはそういうものとしていっかなーと思うけど、そっちのドロドロを
見たい。。。と思う。
うーん。そこはまあ妄想しておくかなー。

このあと、ナナはどうなるんだろ。俺が飼いつづけるのかな。楽しみだ。

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