『ラギッド・ガール』廃園の天使Ⅱ(飛浩隆/早川書房)
『ラギッド・ガール』廃園の天使Ⅱ(飛浩隆/早川書房)
5つの中編集。2006年刊。
夏の硝視体(グラス・アイ)
ラギッド・ガール
クローゼット
魔術師
蜘蛛(ちちゅう)の王
「夏の硝視体」は、『グラン・ヴァカンス』の700年前、ってことかな。
硝視体が見つかり始めた。ジュリーがそれを育ててみようと思いついた、
ジョゼにコレクションを見せてもらった、というようなお話。大途絶から
300年。おだやかな眩しい永遠の夏の景色の世界。
「ラギッド・ガール」は、まだ<数値海岸>開発前夜、という感じのお話。
阿形渓、とても醜い人。直感像的全身感覚の持ち主。あらゆる感覚をすべて
記憶の中に積み重ねている。
彼女のその病が、仮想世界をつくりあげる基礎になる。
とても素敵だった。醜くて。残酷で。世界がぐらつく感覚を味わえて。
「クローゼット」は、事故、か、自殺、か。死んだカイルの痕跡を求める
ガウリ・ミタリのお話。仮想世界が十分に利用されはじめている頃。
<数値海岸>の恐怖のイメージは、アンナなのか。渓のプログラム、アガサ
にそっくりだったアンナ。渓が求めた似姿。渓が、仕込んでおいたのかなあ。
面白かった。
「魔術師」は、鯨の話。鯨の話、じゃないか。鯨の存在の説明があったり
するけど。鯨がメンテナンスされる区界の話。
そして現実世界、物理世界でのインタビュー。AIの人権のための活動家、
ジョヴァンナ・ダーク。いかに、大途絶が起ったか、というお話。
そういうことがあったのか、と、『グラン・ヴァカンス』からのもやもやが
やっと少し解消した。
「蜘蛛の王」は、ランゴーニのお話。生まれ、育ってゆくお話。王として
特別に生まれた少年。<父>の役割をするのは女性らしい。ランゴーニに
こっそりと蜘蛛を与え、成長を眺め楽しむ<父>。その蜘蛛は、区界に
あってはならないものなのではないか。
大途絶の跡、王として世界を維持し、情報収集し残虐を解き放つもの。
何を、しようとしていくのだろう。
<父>は浅井たがね、なのかなあ。プレゼントした蜘蛛、ダキラは、ガウリ
が残した蜘蛛か、な。先にランゴーニに飲ませた薬はなんだろう。プログラム
の書き換えをするものなのかなあ。ちょっともやもや。何故ランゴーニだけ
そんなにも特別になったのか。やっぱり<父>のせいなんだろうけど。
んで、ウーゴって誰。何。もやもやが残る。
三部作、らしい廃園の天使のシリーズの、これが2、ということでいいのかなー。
早く続きを読みたい。どう完結するのか読みたい。
うつくしくて残虐で素晴らしい。イメージが1よりよく見えてきて面白い。
ランゴーニと物理世界の話になるのかなあ。わかんないけど完結が待ち遠しいー。
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