『向こう端にすわった男』(東直己/ハヤカワ文庫)
『向こう端にすわった男』(東直己/ハヤカワ文庫)
ススキノのバー、<ケラー・オオハタ>は静かな老舗バーだ。
俺はそこにいる。
『探偵はBARにいる』の映画にはまったので、本を読もう~と、
図書館でざくざく予約入れてみた。さすがに最初のと、映画原作のは
なかなか借りられなさそう。シリーズの順番気にしないでまずはこれ
がきたので読む。
短編集だった。ススキノ探偵シリーズとしては4作目になるのかな?
短編集としては初かな。雑誌初出は92年~95年あたり。シリーズの
最初の方と時期としては同じだろうか。
「向こう端にすわった男」
「調子のいい奴」
「秋の終わり」
「自慢の息子」
「消える男」
探偵、二十代だ。探偵というよりはなんでも屋。二十代の終わりのほう
とはいえ、まだ若造じゃん。でも若いわりにはうまいことススキノを
渡り歩いてる、のかな。金をかせぐ手段しては博打と大麻って。そう
なんだー。そりゃなんでも屋でろくろく稼げるわけじゃないか。でも
なんかそこはイメージしてなかったので、わりとびっくり。
でもまあ、やせ我慢などっかいい人になっちゃう感じとかは映画のまま
であり、酒の飲み方にこだわりたい、とか、まだ若い感じなのもいい。
大泉洋というよりもうちょっとだらしなくかっこいいかも、という感じ
だなあ。でももう少し年とっていけばいいかなあ。
高田くんが出てきたのは一つだけだった。もっと見たいぞ。高田くんは
映画のまんまな感じ。年齢的にも。北大のオーバードクターで。強い。
探偵と同級生か~。でもそれもいい。探偵と話すときはぶっきらぼうな
そっけないタメ口で、あー友達同士、って感じだけど、他の人と話す
時には普通に丁寧語だったりして、まっとうな人っぽさが素敵だ。
もっと高田くんが読みたいよー。
その高田くんが出てくる「秋の終わり」。
客引きしてる顔なじみのノブが、ある女を助けたい、と言う。
小学生のころの同級生で、少し知能障害がある感じの女の子。でも、
という話で。けっこうきた。ため息。うーん。やるせなかった。
彼女なりの幸せの中にいるのだ、ということはわかったけどね。
ノブあんたも何やってんだか。
最後「消える男」は書下ろし。
なんだか訳ありの過去ありの男。全共闘?学生運動?のなにか過去の
いわくありげな男。今はいい仕事をしている企画会社の男、なのに。
人殺しがあるのはこれだけだなあ。
そして、探偵にもその過去に、その相手に、踏み込めなかった。読者
である私にも何かあったんだなあ、ということしかわからない。
でも、短編、探偵一人称としてはこの感じかな。
桑田さん、どうなったの。何が。
まったくおっさんどもは。
でもとてもよかったなあ。
映画化ありがとう、だ。見に行かなかったら読んでなかったし。今まで
知らなかったし。他のも読むの楽しみ。
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