« 『探偵はひとりぼっち』(東直己/ハヤカワ文庫) | Main | 合同歌集『間奏曲』批評会 2011年10月23日(日) »

『間奏曲』(糸永知子・河野泰子・寒野紗也・山本照子/六花書房)

『間奏曲』(糸永知子・河野泰子・寒野紗也・山本照子/六花書房)

四人の歌人たち。住んでいるところも選歌欄も違う四人が、ノートを
郵便で回して、それぞれの歌の評をしあったり、文章を書いたりする
のを続けてきたそうです。共通点は「未来」の仲間ということ。
その四人での合同歌集、とのことで。歌100首とエッセイ。面白い
なあとまずその成立が素敵だった。歌もそれぞれの味わい。面白い。

糸永知子さん。「草苑」いくつかすきな歌。
  己が手に酸素マスクを引き放しつと渡りたり夏の朝明を
  ふるさとの小学生は三人とぞ黄色い傘が木下道ゆく
  少女なら絵になるだろう北風に帽子とられて立つ一瞬は
  おおよその行事はわが身過ぎゆきぬ運動会か花火がきこゆ

年を重ねて生きてきたこと、生きていること。それが素敵に歌われて
いると思った。自然詠の目に見えるように歌われている様、それを
見る視線の確かさを感じる。自分のことも、見る視線がとても冷静。
かっこいいなあと思った。

河野泰子さん。「雨・雨」(レイン レイン)いくつか好きな歌。
  此処にかう草引くわが手在りながらこころは日傘のしたを歩めり
  姑と夫とわれと犬と猫それぞれの場にそれぞれの黙(もだ)
  水溶性ならむかわれは月の夜をゆらゆらゆらと佇みをれば
  ああさうなの、さうだつたのか、身にふかく野生のこゑを閉ぢこめてゐた
  階段状にゆくのではないといふことを肝に銘じよ死だつてさう
  普通だつてあなたは言ふけど刃こぼれの包丁のやうな目付きをしてる
  

もっといくらも付箋をつけた。すごく素敵だった。歌に凄みを感じる。
軽やかな乙女のようでもあり、山里に暮らす女でもある。比喩もとても
素敵でうっとりしてしまう。なんだろうこの迫力。少しだけ立場が近い
ところがあって、ああ、と、ぐっさり共感することも多々あった。
凄いです。

寒野紗也さん。「雲を踏む」いくつか好きな歌。
  薄紅の日傘のうちはうすべにとあなたの声の甘やかなりし
  摺足はちちの習いとなりたれば舞いいるごとし日々の歩廊を
  屋上の隅に背中の毛を立てて猫は雀の頭ころがす
  煮崩れてなにがなんだかわからない野菜スープにパプリカをふる

歌をひかなかったけど「草の穂」の一連がかなり好きだった。なんだか
不思議。とてもレトロな、懐かしいような道具立てで一連なしているのに
感傷的になってなくて並べて見せている距離感が素敵だった。こういう
距離感の出し方ってなかなか凄いように思う。面白かった。
あと猫の歌がいくつかあって、猫と一緒にいるのがいいな~と思う。
でもひいた歌のように猫を猫として見て歌っていたり。これも距離感
かなあ。ご家族への距離感も。愛情ありながらも。素敵です。

山本照子さん。「羽衣」いくつか好きな歌。
  「羽衣」を観て帰る街降るとなく雪人々の肩に散りおり
  二〇〇〇年ことは起らず朝明けて古き火鉢に炭火おこしぬ
  春菜の淡きにがさよ暗き顔に子は飯を食む何思いいむ
  練切りが食べたいと思う秋の夜を花を抱えて君帰り来る

平成四年に始まって、長い期間の歌を一度に読ませてもらった。
いろんなところへ行ったりいろんなことを観たり、というのを丁寧に
歌にしている。京都に暮らしている、ということで、時間感覚が素敵。
古代、とか、はるかな時間が自分の時間にふわっと同じに重なってくる。
微細な空気の違いのようなところを歌っていて、全体の印象としては
ひっそり静かだ。その中に、さくっと切り込んでくる強い印象の歌が
あったりして、面白く読ませてもらった。

四人分の歌を堪能~。なんだか読んだだけなのに充実感があるよ。

|

« 『探偵はひとりぼっち』(東直己/ハヤカワ文庫) | Main | 合同歌集『間奏曲』批評会 2011年10月23日(日) »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

If only all homeowners would become more aware of the dangers posed by carbon monoxide poisoning. Every year over twenty people are needlessly killed by carbon monoxide escaping from faulty boilers and many hundreds more suffer ill health because of it.

Posted by: boiler broken down | March 21, 2014 at 09:36 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 『探偵はひとりぼっち』(東直己/ハヤカワ文庫) | Main | 合同歌集『間奏曲』批評会 2011年10月23日(日) »