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『根津権現裏』(藤澤清造/新潮文庫)

『根津権現裏』(藤澤清造/新潮文庫)

にわかに秋めいてきたのに、私は着物も禄にない。着古しでもいいから
袷の一枚でも譲ってもらいたい、と、友人の石崎を訪ねようとする。
この頃は岡田もやってこない。
左脚の骨髄炎が痛む。
金が欲しい。性欲を持余す。金が欲しい。

そんなこんなで、それにつけても金の欲しさよ、と、ずーっと金が、
金さえあれば、と、病を抱えた身と貧乏を嘆いている話だった。
なにやってんだあんたたち。
でもなんかちょっと可笑しい。どーんとシリアスな悲惨な貧しい話、
という感じではないのは何故だろう。独り身の男だからかな。友達も
いることだし。でも石崎くんはまあ暮らしに困ってはいないようだけど
岡田は蓄膿を治せないほどやっぱり金がなくて挙句に気が違って自殺
しちゃうというどうしようもなさ。
岡田が何度もやってきてはおいおいと泣き、やめろというのに何度も
宮部のところへ行って、許してくれとすがるのは一体。実際のところ
よくわからないけれど、岡田。どうしちゃったんだ。もうその時から
おかしくなっていたというのはどうなんだろう。
なにやってんだよあんたたち。

章は細かいんだけれども禄に改行もなくだらだらとああでもないこうでも
ない金がないと言ったりやけに観念的になったり、人を非難して憤ったり
金がないと冷や汗をかいたり、なんかともかくどうしようもないのね。
金がないってどうしようもないよなあ。

これは貧しいけれどプライドは一人前な若者たちの深い関係、と、
じゅね脳発動して竹宮恵子の絵に脳内変換して読むとかなりもえる。
岡田が泣きつきにきて、うんざりして呆れて酷い事言いまくるところ
とかすごくいいかも。
それにつけても金の欲しさよ。

芥川賞とった、西村賢太がこの作品、著者にいれこんで再び世に出そう
とがんばってるらしい。ちょっと私には理解しがたいところだけれど。
どうしようもない迫力はあるかなあと思った。

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