『虚言少年』(京極夏彦/集英社)
『虚言少年』(京極夏彦/集英社)
うつくしい青春なんてないだろう。子ども時代がよかったなんて嘘だ。
ごちゃごちゃと屁理屈をこね達観しているようでそうでもなく、単に馬鹿で
あるという「僕」は、内本健吾。小学6年生である。
クラスで目立つことなくどうでもいい存在の僕。誰にも気にされていない
けれども、嘘つきである。
とまあ、少年たちの馬鹿話。
子どもが子どもらしく、ってことはなくて、京極夏彦の語りだなあ。
この語彙は小学生じゃねーだろ、ってこともあらかじめ断り済みなので
ああもうそういうものなんだなと思って読む。
そもそも最初に、嘘つきなのだ、と宣言されている。
それが本当なのか嘘なのか、は、どうしようもないことだ。そういうものだ、
と思うしかない。
小学生でモテたい願望がなくて、クラスで目立たずあんまりあたりさわりなく
やってく、けれども、何故か馬鹿のウマがあうという校外での仲良し、仲良し
というか、仲間というか。一味というか。そういう友達がいて。平凡な毎日が
の馬鹿馬鹿しく面白い些細な日常、のお話。
もー。馬鹿男子!と、小学生なやつらである。可笑しい。みんないいキャラ。
京野達彦はちょっと京極夏彦、京極堂入ってる感じね。中善寺くんの少年時代
がこんなだったりして、と思うとかなりもえる。
時代をはっきりとは設定してないにせよ、こっくりさんが大ブーム、とか、
ノストラダムスの大予言、とか、私自身の子ども時代もそんなんありあり、と
いう感じ。昭和のどこか、ということで。京極夏彦は1963年生まれ、か。
私よりは上だけど、ノスタルジー的には共感できるところ。
最初になんだかんだ書いてたわりには、十分素晴らしく楽しい子ども時代って
いう作品になっていると思ったなあ。実際、なんにもこれといった目標や目的
があって努力して、というタイプではまったくないので麗しい青春の汗と涙と
感動、っていうのではないけどね。馬鹿だし。屁だし。
とても面白かったよ。
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