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『ROMES 06 まどろみの月桃』(五條瑛/徳間書店)

『ROMES 06 まどろみの月桃』(五條瑛/徳間書店)

シリーズ3作目。
夏のピークを終えて平穏な日々の西日本国際空港。
密輸摘発にROMESを利用するようになり、水際での摘発数が飛躍的に
あがった。
しかし、捕まるのは末端の小物ばかり。
密かにもっと大きな、ある男の罠が幾重にも張り巡らされていた。

相変らずの成嶋さんと可愛いワンコのハルと。振り回される砂村くんと。
砂村くんのもと同級生、探偵をやってる堤。
ROMESの活用もますます幅広くなって、面白い。
空港を狙うのはやっぱり派手で、ゆえに強いメッセージを発したい
テロリストの標的にされる。しかし決してそれを許さないための万全の
警備をめざす成嶋さんたち。
でも今回、いつもシステムにしか向いてない成嶋さんの意識が、人間の
ほうに、人の強い思いのほうに、向いている感じがちょっと違ってて
ちょっと新展開なのかもと思った。
まだシリーズ続くかな?続いて欲しいなあ。もっともっとずっと成嶋
さんや砂村くんを読みたい。砂村くん、今回も体張ってがんばったのに
あんまり報われてないし出番もちょっと少なめでかわいそうだし。
外部の動ける人間、てことで今回は堤さんが便利に使われてたしね。

チベットのこと。
私はごくごくわずかにしか知らないけれども、五條さんの視線はいつも
理不尽な苛烈な運命にしたたかに立ち向かい決して諦めない人を描き出す。
すごく強い。どんな泥にまみれたとしても、とても美しい強さを見せて
くれる。強い思い。すべてを捨ててかけた願い。凄かった。

月桃のお茶、というのが素敵に使われていて、私は知らなくて、飲んで
みたいなあと思った。ハーブティーのようなものみたい。素敵な名前。
月桃。月桃の娘。沖縄に行ってみたいなあ。

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未来60周年記念大会。ニューウェーブって。

16日、17日に未来の夏の大会。
今回は60周年記念大会ということで 大々的にありました。
以下あくまで私個人視点の個人の日記、です。

16日の最初は「対談「岡井隆に聞く」」 岡井隆、穂村弘。

受付係りだったので、最初の方は聞けず、最中にも多少のシゴトしながら、
だったけれども、すごく面白く聞く。
下準備のお手伝いで岡井年譜を作ったのが私としてはすごくよかった。
なんなのこの超人。。。この人生5人分みたいなあれこれ。と思ったのでした。
やっぱり女性歌人についてはライバルとは全然思わないんだなあとか、
自分はそれなりにたいしたものですよ、とかすんなり自分で言う感じとかね。
ライバルは塚本、とか。もっともっと聞きたかった。さすがです。素敵です。

休憩後のシンポジウム「ニューウェーブ徹底検証」
パネリスト:川野里子、斉藤斎藤、石川美南、加藤治郎、田中槐、
       荻原裕幸(司会、コーディネーター)

シンポジウムも最初の少しは受付のバタバタで聞けなかったけれども。
ニューウェーブとかの当事者がまさにそこにいて、の話なのが面白い。
ぼんやりとは知っているけれども、もちろん私が短歌をやるよりずっとずっと
前の話なので、ふーむ、と聞く。(シゴトしながらだけど)
実際の当事者の感じ、というのと、それを後世から評価、というのがまだ
未分化な感じかなあ。80年代終わりのほうから、というと三〇年程度昔、か。
まだ当事者にあの頃どうだったの、ときいても、微妙に、うーん、今そういわれて
も、という感じなのかなあと勝手に想像。

私のイメージするところの、バブルの空気吸ってた人たち、っていうのはやはり、
自己の肯定とか、今ここ、というのを前提とすることに迷いがない、少ない、という
感じがする。
ニューウェーブのポエジーとか詩的飛躍、って、現実のここから、宇宙の彼方へ
何万光年も飛躍するような華やかさとか鮮やかさとか志向していくように思う。
現実のいまここ、に関してはあんまり疑いがないような気がするんだよな。
でも、もっと不景気な世代、というか。
世代的なことは私はいえないか。
私個人の思うところ、だと、今、って「現実の今ここ」「現実の今の私」という
ものを肯定している感じってしない。もちろん例外はいつもあると思うけど。
私の感じ、だと、百万光年の宇宙への詩的飛躍、ではなくて、5センチだけずれた
リアルから平行世界への詩的飛躍、という気がする。
ポエジーの志向が全然違ってるんじゃないのかなあ。

シンポジウムももっと話を聞きたい感じだった。ほむらさんもいたのに発言なかったのが
残念だったし。おおつじさんも。会場からの発言なしっていうのは残念だったなあ。

そして祝賀会。
たくさんのえらいひとのスピーチを聞いたり、素敵なお琴演奏をきいたり。
おかいせんせいの朗読をかぶりつきで聞いて幸せだった。

慣れない女装のせいでへろへろ、明日も朝早い、というわけで、祝賀会のあとは
早々に帰宅。つーかーれーたー。

二日目は歌会。
朝からみっしりと。
司会の方、評者の方、お疲れ様でした。あの人数なのに全部やっちゃったのは
ほんっとーに凄い。
毎度ながらあの数の歌を見て、評を聞いて、うんうん、とかいやそれは、とか
集中して考えるのはすごく面白い。疲れもするけど。
打ち上げに少し参加。
ちょっとだけ泣いちゃったりもありつつ、ビール飲んでワイン飲んで美味しく食べて
土曜日絶食状態で痩せたぶんはがっつり取り戻しました(笑
お疲れ様でした。

今回スタッフの一人としてお手伝い。 ほんとにほんとに皆様お疲れ様です。
ありがとうございました。会えた方、お話させていただいた方、
みなさまほんとうに、ありがとうございました。

やっぱり記念大会って大変だった。でもすごく華やかでよかったなあ。面白かった。

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『日本語と時間―<時の文法>をたどる』(藤井貞和/岩波新書)

『日本語と時間―<時の文法>をたどる』(藤井貞和/岩波新書)

古代人は「過去」を6種類にも言い分けた?
新発見!<時の助動辞>の豊かな世界

てな帯がついていて、ちょっと面白いかなー、古典文法のお勉強して
みようかなあ、と思って買ってみた。読んでみた。
えー、読み物的なものじゃなくて、しっかりお勉強の本だった(^^;
私の馬鹿さでは何言ってんだかついていけないことが多々。そもそも
の前提として日本古代文学とか文法の知識がさび付いているというかもう
ほとんと覚えてないし知らない、ので。気軽に読もうと思っちゃって
ごめんなさい、という感じだった。

でもさっぱり理解はしなかったくせに、読んでる最中は面白いと思い
ながらじわじわ読んだ。現代口語(か?)では過去って基本的に「た」
でしかないけれども、古代では「けり」「き」「ぬ」「つ」「たり」
って言い分けしている。完了とかね、そういう文法の言葉が私は結局
わからないまま受験もやりすごしてきちゃったけど、時をどうとらえて
表現してきたのか、というのを、今、こんなにも厳密にたどって研究
していっているんだなあというのが面白かった。
物語や歌や、様々な文献から例をひろい、使われ方の分類をし積み重ね、
めっちゃメンドクサイ~。研究者って素晴らしい。

自分が歌つくるのになんとなくな文語使ってみたりするようにこのごろ
なってきたけれども、まー、なんとなく、でやってしまっているからなあ。
やっぱり勉強はしたい。する。その上で、なんとなーくな感覚でやって
いきたいなあと思った。

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『不死細胞ヒーラ』(レベッカ・スクール/講談社)

『不死細胞ヒーラ』(レベッカ・スクール/講談社)

ヘンリエッタ・ラックスの永遠(とわ)なる人生

ヘンリエッタ・ラックスという一人の女性。
彼女から採取された癌細胞は、培養され、分裂を続け、今もなお生きている。
世界中の科学者の研究素材となり、癌治療のための研究のみならず活用され
てきている。
しかし、彼女の家族たちは長年その事実を知らされることはなかった。

ヒーラ細胞、というのが有名でそんなに世界中で使われているものだとか
いうことは私は全然知らなかった。
なんでヒーラ細胞だけが不死細胞となって増え続けているのかはわからない、
ということ。わかんないのかあ。ヒーラ細胞が他の細胞を汚染する、とかいう
のもあんまりピンとはこない。そーゆー方面の知識ゼロなので、この話の
出発点としては六〇年ほど昔の話、から現在までなんだけど、なんとなくSF
っぽいような気がしてしまう。細胞の培養とか。その細胞が不死だとか。無限
に増えてるってどーゆーこと。とか。

でもこの本のメインは、ヘンリエッタ本人、その家族の物語。
貧しい黒人ファミリーだったヘンリエッタ。彼女の家族は、彼女の細胞が
研究に使われて生きていることを知らず、知らされた後には混乱ばかり深めて
いく。ヘンリエッタの娘のデボラの苦しみや狂気めいた不安定さ。
何故そんなにも怖れるのか、何故そんなにも母の細胞に執着があるのか。
その愛情のあり方って、正直私は共感できなかった。宗教観の違い?もちろん
生きてきた環境も違うし。ラスト近くの宗教的救いのようなシーンとか。
目の当たりにすると納得するのかなあ。不思議だった。
ともあれ、著者が誠実に綿密に取材を続け、書きあげたのだろうというのは
わかる。

自分の体組織がいつのまにか研究に利用されていくことに関して、きちんと
した定義はなさそうな。難しいのかなあ。私の細胞が私の知らないところで
培養されなんか研究され、っていうことになったら。んー。別に私は気にしない
ような気がするけど、もしも実際そうなったら、と思うとわからない。まして
それが何らかの利益を生み出すことになったとしたら。んー。でもその成果って
私のせいではなく研究者の成果だから、とも思うけど。うーん。わからない。
そしてなんだかやっぱりSFのような気がする。不思議。
何故ヒーラ細胞だけがこんなに生きて、増えてゆくんだろう。不思議だった。

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映画『スーパー8』

映画『スーパー8』

*ネタバレたぶんあり。


ジョーは事故で母を亡くしたばかり。
14歳。
小さい頃からの親友チャールズと仲間6人で一緒に、映画祭に出す映画を
つくっている。
女優としてアリスを誘った、というチャールズ。
深夜、うちを抜け出して駅で映画の撮影をしていると、列車と車の衝突事故
に遭遇する。爆発し飛び散る列車。その現場にいち早く現れたのは空軍だった。

あんまりどういう映画なのか知らないままに見に行った。
製作、スピルバーグ、監督、J.J.エイブラムス、というのだけが派手に宣伝
されてたように思う。SFというよりはノスタルジーな映画だったなーと思う。
舞台設定は1979年らしい。ウォークマンがものめずらしい感じだったり
まだ誰も携帯もってないしうちにパソコンもない。
子供たちは映画作りに夢中。
理解しあえない親。仲間との絆。初恋。そんな物語。
映画少年だった監督たちが子供の頃こんなだったーとかこんなだったらよかった
のにー、という思いなのかなあ。派手目無茶SF版スタンド・バイ・ミーみたいな
気がした。
無垢なる少年だからって、母を亡くした哀しみの中にある少年だからって、
あんなにがつがつ人間喰ってた宇宙人とわかりあっちゃうかなあ。まあ、触ると
テレパシーみたいので一瞬で理解しあう、とか、実際わかりあったかどうか、
って感じではあるけど。
アメリカ軍、いろいろヒドイです。そんなーと思うことしきり。昔だからいい
のか?アメリカ人は気にしないのか??
なんかいろいろつっこみたいというか、え?みたいなことはあるけど、いいか。
主人公のジョー少年がねー。
お父さんの無理解に無言でいるときのうるんだ目とか、母を思うときのうるん
だ目とか。うるうる目がー、そしてちょっと笑うのがーすごくよかった。
実は俺のほうがアリスが好きなんだ、っていう親友、でもおれデブだし、って
いうチャールズ。火薬マニアの子とか、すぐゲロっちゃう子とか。
男の子だよねー。
馬鹿っ。危ないよっ。あぶねーよっ!
というのがほんと男の子だねー。男の子の映画だったなあ。アリスもよかった。
私としては、ジョー少年に満足。
あと、エンドロールに、少年たちがつくった映画、完成版、が流れる。笑った。
面白かったです。

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『陰陽師 醍醐ノ巻』(夢枕獏/文藝春秋)

『陰陽師 醍醐ノ巻』(夢枕獏/文藝春秋)

短編集。
相変らずの晴明と博雅。相変らずの安定感。定番中の定番。
パタリロと同じく、安心していつものお話を楽しむ感じ。いいねえ。
博雅は無垢で清らかなすぎるし、晴明さまはそんな博雅を溺愛して
甘やかしているし、らぶらぶしてんじゃねーよ。と相変らずに
にまにましながら読む。いっつも二人で飲んでるんじゃねーよー。

でもそういうのがいいわ。と思う。
気心知れた相手といつもの感じでのんびりどうでもいいような話を
したりして飲むのが一番いい、と思う。陰陽師の世界は平安の闇と
人の心を描いているわけだけど、晴明の屋敷の感じ、って桃源郷だ
なあと思う。季節のうつろいを愛で美味い酒を飲んで友がいて。
蝉丸なんかもたまにやってきて。琵琶の音。もちろん博雅の笛の音。
天界だろ、と思う。
そんな彼らが人の業や哀しみのもつれをほどきにゆく物語だ。

しばらく前からか。時々登場する保憲もなかなか。晴明との微妙な
関係が好き。どうかなあ。なんかこう、長編でどろどろのぐっちゃ
ぐちゃなところが読みたいなあと思うけど、獏さんはもうそういうの
書かないだろうなあ。陰陽師の長編はあるかもしれないけど、もう
大体はこういう澄み切った世界になっちゃうんだろうなあ。

あとがきによると獏さん60歳だそうで。
還暦おめでとうございます。
長く読み続けてきたことであるよ私。このごろはさすがに以前ほどの
熱狂で新刊を切望もしなくなったけどね。この先もずーっと読むから
キマイラをほんと、書いてね。完結させてくださいね。

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『二壜の調味料』(ロード・ダンセイニ/ハヤカワポケットミステリ)

『二壜の調味料』(ロード・ダンセイニ/ハヤカワポケットミステリ)

短編集。
ナムヌモという肉や塩味料理にかける調味料のセールスをしている
スメザーズ。ロンドンで部屋を探しているときに、偶然一緒に案内
をうけていた、リンリーさんと同居することにした。
リンリーはオクスフォードを卒業したばかりらしい。オクスフォード
の流儀を学ぶのは有利になると考えたのだ。
リンリーの素晴らしい頭脳で、迷宮入りと思われた事件の真相が明ら
かになるのを目の当たりにすることになった。

本の前半くらいが、リンリーの活躍をスメザーズが語るもの。
途中戦争があったりするのが時代だなあ。最初に発表されたのは
1952年らしい。60年ほど昔か。江戸川乱歩が「奇妙な味」と
して絶賛したとか。
今読んで、その結末とか、そんなそこまで恐ろしいとは思わない
けれど、ごく短くきりっとまとまってて面白かった。トリックと
いうかネタ的ににはわかるけど、出た当時としては斬新というか
目新しいところだったのかなあと思う。ま、それはどっちでもいいか。
ちょっともってまわったいいまわしの感じとか、時代なのかなあと
思ったり、この著者の特徴なのかなあと思ったり。
ミステリというよりはちょっと不思議なのもあったり。
「アテーナーの楯」って、メドゥーサの伝説だったりして。
解説によるとファンタジィの作品を書いたりもしている作者らしい。
へー。
チェスの機械が嫉妬して殺人、とか、SFっぽいのもあったり。
なんか奇妙な味、ってそういうことかなあ。楽しみました。

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『マイナス・ゼロ』(広瀬正/集英社文庫)

『マイナス・ゼロ』(広瀬正/集英社文庫)

浜田俊夫はお腹をすかせた中学生だった。
終戦目前。空襲警報の中。
それから18年後。ある約束を果たすために、浜田俊夫は当時住んで
いたところのお隣、へ、やってきた。

タイム・マシン。タイム・トラベル。
ちいさな好奇心から取り返しのつかないことになり、過去に取り残される。
自分が同じ時に二人になってどうなる?とか、自分が自分に対面したら
どうなる?というのは、この世界ではありなんだな。
及川美子さん、伊沢啓子さん、小田切美子さん、そ、それはーそんなん
までありなのか、と、びっくりした。う~ん。
そしてとばっちりの巡査はどうなるの!?と気になった(笑)

この話が書かれたのは昭和45年か。
そんで、舞台設定のメインはその10年前くらい。そして過去は、戦前、
昭和初期、というあたり。過去の時代について、金銭感覚とか技術の比較
とか、かなり念入りに調べて細々書いている。飛んだ先の過去が三十年前
くらい、というのはなかなか絶妙な設定だなあと思った。めちゃくちゃ
時代錯誤にもならず、でも間に戦争を挟むから十分に劇的。でもこの本
全体のトーンとしては、なんとなくほのぼの。ふわっとしてる感じなのは
この著者の味わいなのかなあ。
もともとのタイム・マシンの作り手の未来人?な先生は何者なんだとか、
気になることが残る~。でも面白かった。
発表された当時に読んだら、もっと身近でわくわくしたろうなあ。
銀座とか知ってる人には懐かしいとかすごく共有するとこが多いだろうし。
今読んでも古臭いって感じは全然なくてすいすい面白い。
これが面白い、って評判をよく見ていたのでようやく読んでみたけど
納得だった。
解説を読むと、星新一が思い出話を書いていて、わりと若くして、なのか
短い活躍期間しかなく亡くなったのだろうとわかる。惜しまれたんだろうな。
それでも作品が残る。古びないって凄いなあと思った。

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