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2010年8月

TITLE: 『短歌が人を騙すとき』
AUTHOR: シキ
DATE: 08/24/2010 00:23:08
STATUS: Publish
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BODY:
『短歌が人を騙すとき』(山田消児/彩流社)

短歌は、作者と作中主体が同じ、と思われやすい。
歌の中に出てくる「私」と、作者。同じ、と思いやすいし、
同じである場合ももちろんあるけれども、違う場合もある。
「作者であって作者でない複雑な「私」のありようと、
創られた嘘の部分があってこそ、生まれてくる短歌の面白さ」
という前書き部分に大いに賛同する。

穂村弘論。平井弘論。歌人論の中の「私」。嘘をつく「私」。
韻律、定型、主題
大きくこの五章にわたって、歌の魅力を伝えてくれる。

私は穂村弘好きー!平井弘好きー!なので、とても面白く読んだ。
うんうんというところもあれば、私の考えとは違うなあという
こともあり。知らなかったなあということをたくさん教えてもらった
一冊だ。

約15年にわたる期間に書かれたものを集めた、ということで、
ちょっと、ん?と思うこともなくない。でもそういう生な実感、と
いうところを感じたりするのも面白いなーと思った。

大辻さんの『紐育空爆之図』絡みの歌の論争、というのを、なんとなく
聞いたことはあるものの、知らなかったので、かなり丁寧に論じて
くれているのが面白かった。
9.11は、世界中に、あらゆることに、大きな影響があったんだ
なあと、今更ながらに思う。
まだまだ全然まったく。知らないことだらけだ。
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TITLE: 『極圏の光』
AUTHOR: シキ
DATE: 08/21/2010 14:41:47
STATUS: Publish
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BODY:
『極圏の光』(中沢直人/本阿弥書店)

著者第一歌集。
1999年から2008年夏ごろまでの歌、396首。
非常に硬質な印象だった。ストイックな、というか。
強い自負心。淡々と仕事をこなすこと。そういうところ、男性的な、
といってもいいのかもしれない。
旅の歌。学生を眺める教授としての歌。家族の歌。
アメリカや、日本のこと。法学の徒としてのこと。複雑かつ深い思いが
あるのだろうけれども、そこはさりげなく垣間見える程度かなと。
私が好きだったのは、強い、ようでも、やはり揺れ惑っているような歌
にひかれた。堂々と負けなし、のように見えても、そんなことを思った
のかそんなものを見ているのか、と、ふっ、と優しいように見える
歌が好き。強い自負心っていうのもかっこよくって素敵ですが。

タイトルがついていても、一連、短くて3首、というのが多くて、
一連の長さがかなりいろいろだ。約9年間にわたる歌、というなかで
厳選していったのかなあと思う。そういうところもとてもストイックなの
かもしれないと想像する。

好きだったり気になったりした歌いくつか。
 
 薄っぺらなこれが私だマクドナルドのコーヒーにやすらいでいる

 出世したい男n汗はぬめぬめとしてわがタオルうみうしのごとし

 くすぐってほしそうな顎ばかりなり夏の果樹園めく講義室

 穏やかな同僚といて間違いにはっきり気づく夜の地下鉄

 靴底で黒ずんでおり本当はあなたに降りたかったはずの雪

 すがれゆくパルテノン多摩若すぎて憎まれるうちに教授になりたい

 公務員試験にここは出ませんと言い添えて九条を終えたり

 ゆっくりと父に戻ってゆく父がちょうどよく巻き戻されますように

 二単位分むだなく俺を消費する意志たゆたえり春の教室

 二分おきに来る駅行きのバスを待つ 誰とでもする男の顔で

 このへんで帽子を脱ぐね美しいあなたの胸に朝靄を撒く

 少しずつ留保が増えて好きなのか好きだったのか 傘を差したい
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TITLE: 『ロンリー・ハーツ・キラー』
AUTHOR: シキ
DATE: 08/18/2010 23:58:04
STATUS: Publish
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BODY:
『ロンリー・ハーツ・キラー』(星野智幸/中公文庫)

オカミが死んだ。
若きオカミに人々は期待していた。その死後、不意に無気力に、生きること
すらやめようとする若者達がいた。そのように社会から消えゆくものを
<カミ隠し>と呼んだ。
<カミ隠し>からミコトをなんとか立ち直らせたいろは。友人である井上と
ミコトを引き合わせ、三人での絆をつくろうとしたいろは。
しかし、井上はミコトと語り合ううちに、世界は死にたがっている、と認識する。
ミコトを殺し、井上は死ぬ。
残されたいろは。生き残る、とは何か。
 
井上の手記、いろはの手記、モクレンの手記(日記?)という三部構成。
近未来幻想小説、と、後ろ表紙の紹介には書いてあった。
まあ、そういうもんかな。
井上には共鳴しちゃいそうだ。いろはのことは、まったく好きにも理解する気にも
ならない。モクレンは、かっこよさげだけれども、でも、それはそれでイラっと
したり。ミコトが素敵だーと思う。井上とミコトでラブラブだね。
とはいえ、キャラモエ小説ではなく文学。
でも今だってオカミなき社会じゃないのかなあ。何故オカミ亡き後の世、という
のを思考実験するのかよくわからない。私がそう思わないだけで、世の中では
オカミが今も重要な位置をしめているんだろうか。もうすでに十分に抽象化
されているのじゃないかなあ。まあもちろん生身の人間だって知ってるけど。
 
面白いのかどうか私には言えない感じ。人魚 のよりは面白くどんどん読んだ
けれども、まったく自分が好きにはならない小説だと思った。
『俺俺』の順番をのんびり楽しみに待つことにする。
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TITLE: 『悪貨』
AUTHOR: シキ
DATE: 08/14/2010 15:31:57
STATUS: Publish
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BODY:
『悪貨』(島田雅彦/講談社)

「愛とお金の物語」
池尻は、理想のコミューンを作ろうとしていた。貨幣経済の彼岸にある、
モノに根ざした助け合いの共同体。
14歳の少年だったころ出会い、助けた野々宮は、今や池尻のために
巨額の出資をする謎めいた男に成長していた。
ある夜。
ホームレスが手にした百万円。それは、銀行の機械さえも欺くほどの
精巧な偽札だった。

てな感じで、あおりの帯には「闇の天才ビジネスマンVS美人すぎる刑事
成功するのは、恋か、捜査か?」って書いてあったけれども、そ、そんな
話ですかこれは??と疑問。
偽札によって日本が崩壊するかも、という経済テロのようでもあり、個人的
理想、社会への復讐、のようでもあり。
各章が短くて筆致も淡々としてて、そっけないくらい。あー島田さんって
こうだっけ、とちょっと久しぶりに読む島田さんの感じと、でもそりゃいつも
同じテイストってわけじゃないし、って感じと、いろいろに思いながら読んだ。
面白くぐいぐい読める。でもこの3倍くらい濃厚に読みたいという気もする。
んーでもこのくらいそっけなくしてるからいいのか、とも。どうかなあ。
野々宮さんが終盤日本にきてからはなにかとお粗末。。。という気がして
しまうなー。読み終わってから、表紙と帯をみて、えっと、この「闇の天才
ビジネスマン」って野々宮さんのことか?とびっくりするくらい。ビジネスマン
って感じじゃないし、そんな天才って感じにも描かれてないよーな。

おまけというのか、悪貨の紙幣っぽい栞的なものが挟まってて、これ欲しくて
買った(笑)肖像が弥勒菩薩だ。「日本銀行券 零円」とゆー。

偽札って、あるのかなあ。出回ってるのかなあ。貨幣経済って、一体どうなんだ。
というのを、少し、考えてしまった。
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TITLE: 『目覚めよと人魚は歌う』
AUTHOR: シキ
DATE: 08/12/2010 23:44:18
STATUS: Publish
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BODY:
『目覚めよと人魚は歌う』(星野智幸/新潮文庫)
 
赤砂漠。ススキの野原。一軒の家。
擬似家族、のようなものだよ。という、丸越、糖子、蜜生。
そこに逃げ込んできた、あなとヒヨヒト。
夢のような、数日間。
 
ペルーの日系3世であるヒヨヒト。日本人との間での揉め事から
逃げてきたあなとヒヨを匿う数日のお話。
あんまりあらすじとかどうでもいいような。。。何がなんだかよくわからない。。。
夏の暑さとか、伊豆、が舞台のはずだけどとても異国めいているとか、
不思議な感じ。
面白い、って感じではなかったなあ私は。好きな感じでもなかったなあ私は。
2000年の三島賞受賞、ですね。
三島賞、よくわからないよなー。
 
みんながみんなそれぞれの夢想にひたっているような話。
サルサのリズムにのせて。とかいうのも。あんましサルサのリズムとか
私は脳内に浮かばないのですみませんって感じ。。。
私には読めない作家なのかなー。
ともあれもうちょっとは読む。
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TITLE: 『秘密』8 『period』4
AUTHOR: シキ
DATE: 08/06/2010 11:09:51
STATUS: Publish
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BODY:
『秘密』8(清水玲子/白泉社 ジェッツコミックス
 
一期一会 という短編が最初に入ってた。青木くんにめずらしく優しく
する薪さん。私服な薪さん。きゃー。きゃー。青木くんそんなメロメロ
なくせにもううー。
という、サービスマンガかな。でも第9の今後の構想とかなるほどーだった。
雪子さんとはもう。。。薪さんが好きすぎるので雪子さんは嫌いだ。。。

で、本編。
地震が起こった時。ある小学校で起こった事件。死んでしまった子供。その時、
ほんとうは何が起こったのか。
新人キャラ、山本さん。今後微妙に異分子として活躍してくのかな。でももう
すっかり薪さんの虜になっている気も。。。
薪さんの警官コスプレwとか相変わらず薪さんが薪さんが薪さんがきれいで
冷たくて素晴らしい。
お話は今度もやっぱりかなり切なく。
人それぞれ、何を見ているのか。何を考えているのか。それぞれ、いろんな人
がいろんな世界を見ているのか。その世界がどれほど違うのか。。。
それはほんとうにいつか第9のようなことができるときまで、いやできてからも。。。
わからないんだろうな。
 
『period』4(吉野朔美/小学館 イッキコミックス)
 
一巻に時間がつながった。
ヨキ、どうなっていくんだろう。こわいし心配だ。。
ハル、父のように、なっていくのか?クールで賢い分、ヨキよりずっと怖く
なっていくだろうなと思う。二人、どうなるんだろう。
そして、死んでもなお、こんなにも二人を支配する。お父さんにぞくぞくする。
たまりません。好きすぎる。父と、二人。どうなるんだろう。
続きを待つのがほんとーーーに長い。。。早く読めますように。
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TITLE: 映画「インセプション」
AUTHOR: シキ
DATE: 08/05/2010 19:29:44
STATUS: Publish
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BODY:
見に行きました。
ネタバレするよー。読まないでー。
 
客席はシニア率が高かった。シニアになるといつでも1000円だよね。
羨ましい。
今回はいろんな予告を見られて面白かった。
ハリーポッター楽しみ~。トム・クルーズとキャメロン・ディアスの
やつ、なんかバカバカしそうだけど見たい♪トム可愛かったっ。
そして!
スペースバトルシップ ヤマト の予告も!
なんで宇宙戦艦じゃダメなんだ。。。ともかく、古代くんはなんか
やさぐれてた。。。アニメとかとはかなり違う話みたい。
見に行くべき?べき?どうしよう。。。
 
と、さて。
「インセプション」
 
コブは人の夢に潜り、情報を抜き取ることができる。
サイトーの夢の中で情報を盗ろうとするが、失敗。
そのサイトーから、逆に仕事をもちかけられる。敵対する会社の
跡継ぎ息子に潜って、その会社を潰すように、情報を盗むのではなく、
植えつけるように依頼される。
 
というのが始まり、かなあ。
しかし、何が夢なのか。どこからどこまで夢なのか。あの最後の
コマは、倒れるのか。
倒れそうにぐらついたけれども。。。
夢。
夢の世界。
夢の夢の夢の中へ、より深く。より長く。夢の夢の夢の夢の夢の。。。。
夢の中から、夢の中へ。夢の奥から、現実へ。
現実?
現実は、どこに?

正直私はあんまり整合性がどーのこーのとか気にならない。
ので、ひたすら映画館の大スクリーンと音響、その世界を堪能して
あんぐりびっくりうっとり痺れて参りました。
すーごーいーーー。
 
『メメント』にも痺れたクチだし、『ダークナイト』には死にそうに
ヤラレタ。クリストファー・ノーランの世界が大好きなんだなー。
意味はわかんないけど。
 
レオ様もかっこよかったし、謙さんもかっこよかった!
アリアドネちゃんも可愛いし、奥さんもなんか迫力。チームのメンバーの
みんなも好きだった。かっこよかったー。
テレビスポットの予告とかけっこう見ちゃって、期待もって行って
しまったけれども、期待十分満足した!
 
レオ様が、新幹線で、「京都で降りる!」とか言ってて笑った最初。
外国映画に見る日本ってなんでこう違和感ありありなのかなあ。
海辺の城とかも一体何だ。かっこよかったけど。
ともあれ、絶対映画館で見るべきと思う。よかった。
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TITLE: 『わたしたちが孤児だったころ』
AUTHOR: シキ
DATE: 08/04/2010 17:52:09
STATUS: Publish
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BODY:
『わたしたちが孤児だったころ』(カズオ・イシグロ/ハヤカワepi文庫)

1930年。ロンドン。「わたし」はケンブリッジを卒業後、探偵になろうと
決めてロンドンにいた。
幼い頃は上海にいた。不幸な事件によってイギリスにきてから、精一杯うまく
周りに溶け込んでやってきたと思う。
「わたし」の思い出、事件、記憶の物語。

一箱古本市で、トヨザキ社長んとこから買ったの。社長のオススメ一言メモ。
「わたし、これ、探偵小説のフレームをかりた、反(アンチ)ミステリー
だと思う。秀逸な探偵論にもなってるので、ミステリファンは読まなきゃ、ウソ」
だそうです。
 
これ、ミステリなのかな?と思う。主人公は探偵、だけども、事件を解決、って
いう話じゃない。いろいろ事件解決して、名声を得て社交界で人気者になって、
って感じだけど、そういう事件についてはほとんど語られない。
主人公の生涯の願い、というか、ほんとうに解決したい事件は、自分が10歳の
頃に、上海で誘拐され行方不明になった両親を探し出すこと、その事件を解明する
こと、で。大人になって上海に行って、無謀な行動にでたりするんだけど。
でも。
 
静かな語り口。冒険も、懸命さも、過去、としての静謐さの中にある。
本当は?
ほんとうは、何か解決されたのだろうか。
あれはアキラだったのだろうか。
救いはあったのだろうか。
幸せ、だったのか。孤児になったあのときよりもあとの世界で。
望みどおり優秀な探偵になって、それで。でも。
取り戻すことはできないのだろう。
 
なんともいえない気持ちになって、じわじわ染み込んできて遠くにいって
しまえる本でした。
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