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『ハーモニー』(伊藤計劃/ハヤカワ文庫)

『ハーモニー』(伊藤計劃/ハヤカワ文庫)

人間が、おだやかに社会的に暮らしていくために。
一番いらないものは何?

読んだのは二回目。文庫になったのを買って読んだ。読み終わったのは
しばらく前で、地震よりも前。
少女たちは世界を憎み、世界の終わりを夢見た。という世界観が。今に
なると辛い。今けっこう世界終わってるわ、と思う。
 
ハーモニーの世界では健康であることが何よりも大事。人が健康に生き
社会的に立派に役割を果たしてゆくこと。感情は穏やかに。それぞれの
個人よりも社会的にどう役立つかが重要。個人の情報は常に開示されて
いる。自分は危険人物じゃない、と、周囲に知らせなくてはならない。

この本が出たのは2008年。
ソーシャルネットワークがあまねく発展した社会か、という感じがした。
勝手な印象だけど、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグが目指して
いるのって、こういうことなんじゃないの?と思った。誰もがフェイス
ブックのページを持ってる。誰もがそのページを見て相手がどういう人
なのか知る。現実的には、フェイスブックに登録しプライバシーを開示
するのは今、登録した本人が設定できるけど、公共機関がからめば、
このハーモニーの世界までわずかな差しかなくなるような気がする。
人々が社会的におだやかに思いやりを持って危険を回避し健康に暮らし
てゆくこと。それは理想世界だと思う。それはでもたまらなく息苦しく
生きづらいように私は思う。ミァハのようにはなれないし。トァンの
ようにもなれないだろうけれど。
意識をなくす、のはこわい。わたしはわたしをなくしたくはない。
でも、
いっそなくしてしまえば。
なんの苦しみもなくなって、それは素敵なことになるのかもしれない、
とも。少し思う。その時。どこまで人間なんだろう。それを人間と呼ぶ
のは、今の私には無茶だと思う。でも。苦しみを苦しみたいのか。
わたしがわたしでなくなって、でも、それも、いいのかもしれない。
わたしはよわいから。らくになるのかもしれない。らく、か、どうか、
すら、感情はなくなるのだから。

3.11以後。世界は変わった。ハーモニーの理想世界へ。加速するのか、
全然違っていくのか。世界はどうなっちゃうんだろう。

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