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『海境』『抒情装置』合同批評会

2005年12月4日(日)13時〜17時
角田純『海境』資延英樹『抒情装置』合同批評会

ぐっと寒い日でした。
私は飛行機にて当日朝に東京へ。一応受付のお手伝いなので11時す
ぎに日本出版クラブ会館へ。
迷子になったら時間的にやばいなあと思っていましたが、無事に辿
り着きました。(しかし受付としてお役に立てたのかは疑問^^;
みなさまありがとうございました)
一応メモをとりつつ聞いていましたが、発言などすべて記録できる
わけもなく、一応レポート、のつもりで書きますが、あくまで私の
主観によるものです。極個人的記録としてご了承ください。また何
か問題がありましたら御指摘ください。文責はすべて千坂麻緒です。

パネリスト 高橋睦郎 小池光 池田はるみ 菊池裕 中沢直人
      石川美南
司会 田中槐

前半、角田純『海境』評

石川美南さんの評が最初。
あこがれと苦しみの対比で読む歌の数々。
孤独感、の切実な表現など、たくさんの歌をひいて丁寧に読みとか
れていました。
「〜かな」「〜さ」の多用の危険性の指摘も。

続いて菊池裕さんの評。
ニヒリズム、サンボリズムなどの観点でたくさんの歌がひかれてい
ました。抽象的にすぎるかもしれない。もう少し具体的なものを入
れてほしい、やはり、三句切れの「かな」の多さが気になるという
指摘があり。しかし、完成度の高い歌集で、シンパシーを感じる、
ということでした。

三番目に池田はるみさん。
抽象的な歌が多く、作者の正体が歌からはわからなかった。エロス
を感じるやわらかさがある。もう少し具象があれば、読者としては
救われるのになあという御意見でした。

四番目に中沢直人さん
抽象画の世界で、全体に淡いという印象。虚空に失ったものを見い
出そうとしている歌をひいていました。

五番目に小池光さん
短歌は氷山の一角で、水の下に何があるのか、というのをさぐって
みたくなるのだが、『海境』ではその一角のみで勝負しようとして
いるようだ。作者の境遇などには一切ふれようとしていない歌集。
「昭和」という一連に少しだけ、窓があいている。作者にとって夜
は明けていないのかもしれない。

六番目に高橋睦郎さん
短歌を、書かずにはいられない、となるまで、歌わないでほしい。
しかし、現代の歌人は量産をしなくてはならない。
塚本的方法として、感動未満を疑似感動にする。
岡井的方法として、感動未満を感動未満のまま表現する。という二
つの方法がある。
心があまり、言葉があまっているようだ。「かな」の多用は抑えて
ほしい。いっそ俳句にしてはどうか。
テーマをもっている一連は比較的成功しているようだ。

など、まずはパネリスト6名の意見。
えー、私の断片的メモではまったく伝えられませんが、それぞれに
高い評価でありながらも、問題点の指摘も集中しているようでした。
作者の正体が不明だ、不明だ〜という中、ああ、私は少しは正体を
知っているのかも、と、ふふふーと思う。とはいえ、やっぱり私も
この作者って一体ナニモノ?と思うことしきり。

続いて会場からも意見が多数。
四国、松山を知っています、という方が何人かいらっしゃり、歌の
中の海の情景を実際に思い浮かべられるのは読む上でヒントになる、
という意見も。私もそう。
でも、実際のあの海の、港の景色をリアルに想いつつ、この歌の幻
想の力が重なると、ほんと、くらくら酔ってしまいます。

15分の休憩を挟んで、後半は資延英樹『抒情装置』評

中沢直人さんの評から始まりました。
ダーマトグラフを剥く人、というレジュメがあり、色彩感、社会へ
のまなざし、自意識の感覚など、たくさんの歌をひいての丁寧な読
みがありました。華やかに感じる。

次に菊池裕さん。
『抒情装置』というタイトルからして、近代意識へのアイロニーで
ある。指示代名詞の多義性の歌は、ポストモダン以降のアイロニー。
意味の無化、散文的記述、シニカルな目線、コンセプチャル短歌、
など、さまざまな方法が並んであり、短歌の試みがつまっている。

三番目に池田はるみさん。
世界への向かいかたが、確信犯的に斜め、である。多数の切り口が
あって、どこかしら面白く読めるように、開かれている歌集である
ようだ。

四番目に石川美南さん。
時代や社会への批評と、詩としての広がりの両方があるような歌が
いいと思う。
題詠マラソンの歌を、イラクの年、表、裏として連作にしているの
が面白い。しかし、題詠そのままで並んでいるものは、歌集として
読むとものたりなさを感じる。

五番目に小池光さん。
サブカル風だったり現代風俗の先端に窓をあけているようだ。
素材や文体に岡井隆の強い影響を感じる。
つじつまのあわないものもあれば、まっとうすぎるほどまっとうな
歌もあり、並べていたりする。いろんな方法を学びつつあるのが見
える。

六番目に高橋睦郎さん。
岡井隆的、小池光的であるのではないか。
感動未満のままに歌うことには力技が必要。多作して、多捨しなく
てはならない。
第ニ歌集で真価がとわれるだろう。

ひきつづき、会場からも多くの意見が出ました。
歌が多く、バラバラに見えるのが、いいとも悪いとも。
私はいろいろ盛り沢山なのが面白かったです。ああ、ブンガクだあ
と思わせてくれる歌が多いなと感じていて。勝手ながら、資延さん
が読んでいる本、私もこれ読んだなってのがあったりして、そんな
個人的楽しうれしのあった歌集でした。題詠マラソンも参加したし。

最後に会場のみなさん一言ずつ、とマイクが回ったのですが、一言
ではすまないのも多くて、残念ながら途中でひとまず終わりに。
締めとして、岡井塾塾長(^^)の岡井隆より。
二人とも今の自分のトップの作品として評価できる。などなど。

みっしり4時間、とても刺激的でした。
批評の場って凄い、と思いました。凄く面白い。集中したなあ。
大坂にも行きたいよーと思った。
とてもとてもいい時間でした。ありがとうございました!

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